竿魂   作:カイバーマン。

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ここ最近アニメの事で色々とネットで騒がれてますが

とりあえず面白いアニメ観て落ち着きましょう

「ケムリクサ」とかおススメですよ



第七十九層 通りすがりの変態仮面だ、覚えておけ

素っ裸状態ではあるが将軍である茂茂を無事に保護出来たアスナ

 

しかしそれと同時に今最も会いたくない人物、悪名高き攘夷プレイヤーのキリトとも遭遇してしまうハメに

 

正直この場で斬り捨ててやりたいという衝動に駆られながらも、アスナは必死にこらえながら、今成すべき事を優先する事にした。

 

「という事で将軍様、いい加減服着て下さい……」

 

「うむ、しかしこのような広い大地の上で裸のままでいられるというのは、正直全てのしがらみから解放されたこの状態を失うのは惜しい」

 

「なにちょっと目覚めかけてるんですか! 惜しいってなんですか惜しいって!」

 

ゲームの中の世界とは思えない程に広々とした草原を前にして、いっその事このままブリーフ一丁のまま全ての事を忘れて駆け抜けたい衝動に駆られている茂茂に、思わず語気を強くさせて叱りつけるアスナ。

 

前々から色々とストレスを溜めこんでいたとは察していたが、まさかこれ程までとは……

 

「あの、駆け抜けるのは全然構いませんがそれは服を着た上でやって下さい、一応私この世界の治安を護る立場なので、目の前で下着姿でいる男性をこれ以上放置するのは流石にマズイんで……」

 

「そうか、それはすまなかった、そなたの立場も忘れてつい自分勝手な行いをしてしまっていた、我ながら迂闊な行動をし過ぎた事に反省している」

 

「い、いえわかって下さるのであれば良いので……! 将軍様がこのゲームを楽しんでくれるとわかっただけで正直私も嬉しいですし……!」

 

思い切って正直に意見をぶつけてみると茂茂はあっさりと己の非を認め、更にあろう事か頭まで下げようとして来たのでそれは流石に制止するアスナ、将軍に頭を下げさせるなど以ての外だ。

 

しかしそこへ空気も読まずにまたしてもあの男がシレッと……

 

「いやここはキチンと謝らせておくべきじゃないか副団長さん? こういうのはキチンとケジメつけないといずれまたやるぞこういう性質の悪い露出狂は、土下座だろ土下座、ここは土下座させるべきだって」

 

「ちょっとアナタねぇ! いい加減その態度なんとかならない訳!? このお方は将軍様だって何度も言ってるわよね私!? なんなの!? 死にたいの!?」

 

「いやだから、そんなふざけた話信じられる訳ないって俺も何度も言い返してるだろ。なんでこんなチョンマゲブリーフが俺達の国の将軍なのかキチンと証明をだな」

 

一度怪しいと思うととことん疑いまくる性分なのだろうかこの男は……そんな生き方で楽しいのかと、アスナはジト目で睨みつけながらそう思いつつ

このままでは埒が明かないと突然キリトの方へ歩み寄り、ガッと後襟を掴んで無理矢理引きずっていく。

 

「……将軍様、申し訳ありませんがしばし時間を頂きます、この男に話があるので」

 

服を着替える為にメニュー操作に難儀している茂茂にそう言うと、アスナは抵抗せずに黙って従うキリトを引きずって茂茂の耳には届かない位置にまで移動したのであった。

 

「あのさ、アナタが人の話をまともに聞こうとしないアホな厨二病だっていうのはこっちもわかってるのよ、けど今回はお願いだからその過ぎた言動をどうにかしてくれないかしら」

 

「どうにかしろと言われてもな、あんな格好されてたらいくらここが仮想世界でも注意はすべきだろ、本来ならアンタがやるべき事だぞ、血盟騎士団の副団長さん」

 

「私は血盟組の副長であると同時に将軍様の護衛の任を受け持ってんのよ」

 

肩をすかして悪びれる様子を見せないどころかこちらに言い返してくるキリトにアスナは殴りたい衝動を抑えながら話を続ける。

 

「今私があなたの為にこうしてわざわざ親切に警告してあげてるのは、「将軍様は何事もなく無事にこの世界をお遊びになられました」と将軍様の友人の警察庁長官に報告する為なの」

 

「警察庁長官って……おいおいまさかそんなデカい人物までアンタの口から出たとなると……ひょっとして下手な冗談じゃなくてマジでアレがウチの国の将軍なのか……?」

 

「だからさっきからずっと言ってるじゃない……」

 

口をポカンと開けて「しまった」といった感じで反応するキリトに、アスナは呆れた様子でジト目を向ける。

 

「ホントバカじゃないの? このままだと私まで首が危ないのよ、アナタなんかのせいで私達一族が没落したらどう責任取るつもりよ」

 

「マジかよ……あんなのがこの国を統率するお殿様だったなんて……もうこの国はダメだ……」

 

「人の話聞いてないし……」

 

自分が散々言った事について反省するどころか上乗せする始末、ここまで来るとアスナもアホらしくなってきた。

 

「言っておくけどあの将軍様は常に民の事を案ずるご立派な方よ、どこぞの自分の事しか考えずに好き勝手暴れるバカよりはましよ」

 

「おいおい自分を責めるなよ、アンタだってよくやってるよ、もうちょっと自分に自信持てって」

 

「私じゃないわよ! アナタよアナタ!」

 

相手が将軍だと気づいてもなお減らず口の減らないキリトだが、それに負けてたまるかアスナも声を荒げてツッコミを入れると、一通り彼との会話を終えた事で一気に疲れたかのようにフゥ~とため息をつく。

 

「とにかく、ここからはちゃんと将軍様を目上の人、いや雲の上の人として丁重に扱うのよ、幸い将軍様はあなたに助けられた事に恩義を感じてるせいもあって寛大な心で許して下さってるんだから」

 

「へーい、確かに国一番の権力者の割にはあんま偉そうにしてないしその辺については俺も好感は持ってるよ、パンツ一丁という完全ラフスタイルを貫く姿勢については如何なものかと思うがね」

 

「一々皮肉を織り交ぜないと喋れないのアナタ……? とりあえず将軍様に数々の暴言を吐いた罰として、これ以上将軍様がトラブルに巻き込まれないよう私と協力して護衛を……」

 

後頭部を掻きながらブツブツ呟くキリトを諫めながら、本来顔さえ見たくない相手であるし傍にいるだけで苛立つ一方だが、彼の実力は十分に認めているのでここは穏便に済ませて茂茂の護衛役に抜擢しようと試みる。

 

だがその時

 

「ってあれ? 何かしら、なんかこっちに向かって黒い塊が落ちて来る様な……」

 

「というかこっちといより将軍の方へピンポイントに落ちて行ってるな」

 

アスナとキリトから少し離れた場所、つまり将軍・茂茂がいる位置に向かって上空から不審なモノが綺麗な曲線を描いてヒュルヒュルと落ちて行きそして……

 

その塊が茂茂の傍へ落ちた瞬間、ズドガァァァァァァァン!!!と激しい爆発音と共に

 

彼の姿は一瞬でアスナとキリトの視界から消えてしまった。

 

「……え? ちょっと待って……もしかしてさっき降ってきた奴って……」

 

「GGO型のグレネードランチャー弾か、へーあんなクセが強いのを実戦で使う奴がいるなんて驚いたな」

 

「呑気な事言ってんじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

冷静に茂茂に着弾したモノがなんなのか推測するキリト、アスナはそんな彼を怒鳴りつけた後慌てて茂茂がいた方へと駆け出す。

 

「しょしょしょ、将軍様ァァァァァァァ!!!」

 

「いよっしゃあ! 行っけぇトッシィィィィィィィ!!!」

 

「!?」

 

着弾地点に出来ているクレーターの大きさからしてかなりの高威力の飛び道具に直撃してしまったと瞬時にアスナが気付くや否や、突如小さな少女の様な甲高い声がどこから聞こえた事にバッと反応して顔を上げた。

 

「もしかしてプレイヤーキラー……!? 第一層では初心者の考慮としてPK行為は血盟組が全域禁止命令を出してるのに……!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ!!! ダメダメやっぱ僕には無理でござるぅぅぅぅぅ!!!」

 

「絶対に許さない、私達が治安維持の為に敷いたルールを無視し、あまつさえ将軍様を襲うなんて言語道断……! 確実にとっ捕まえて永久アカウント処分を与え……あれ?」

 

怒りで奥歯を噛みしめながら、絶対に将軍を襲った輩をとっちめると誓いつつも、先程聞こえた悲鳴にアスナはキョトンと戸惑いの色を浮かべてしまう。

 

何やら妙に聞き覚えのある叫び声がしたのは気のせいだろうか……

 

「い、いや気のせいよ絶対、だって私の知ってる”あの人”ならこんなヘタレで情けない声なんて死んでも上げない筈……」

 

「レン氏ィィィィ!!! 僕はもうダメだ! 後は君にすべてを託そう!!」

 

「あーもう! やっぱりこうなるんだとわかっていたよ全く!」

 

しかしすぐにその該当する人物な筈ないと首を横に振り自己否定するアスナ、するとそこへ何者かが怒った様子で猛ダッシュで突っ込んでくる足音が

 

「もう頭にきた! 殺す! フカもトッシーも加えてこの場にいる奴等全員殺してやる!」

 

「!?」

 

聞き覚えのある声にアスナが思わずその場で思慮を巡らせていた隙に、爆風によって起こった砂埃をカモフラージュにして何者かが彼女に向かって襲い掛かった。

 

全身をピンクに統一した軍服衣装を着飾る自分よりもずっと小さな可愛らしい少女、そして両手に持つのはこれまたピンク色という異様な短機関銃。

 

 

見た目は可愛らしい少女だが、間違いなく将軍をPKしに来た連中の一人だ。

 

「まずは一人目……あれ? この人なんかどっかで、つい最近リアルで会った人とそっくりな気が……まあいいか覚悟!」

 

「く!」

 

相手がGGO型の中距離戦を得意とする短機関銃を扱うタイプだと判断したアスナは

 

何故かこちらに銃口を向けながらポカンと口を開けて固まる少女に向かって腰に差す細剣を抜こうとするが、この距離だと後は引き金を引くだけの相手の方が有利だ。

 

このままだと先手を取られる、そう思った次の瞬間、アスナの背後から勢いよく……

 

「どっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「うえ!?」

 

彼女の背後から現れた新たな相手に少女が面食らった様な表情を浮かべる。

 

隙を見せていたアスナの前に遮ったのは、黒づくめの片手剣剣士、キリトであった。

 

「こちとら将軍様のお怒りを食らう前にポイント稼いでおかないといけないんでね、普段の俺ならPKなんて素通りする所なんだが……」

 

「新手!? しかも近接主体のSAO型!?」

 

「柄にも無い真似をするのは不本意だが、ここは副団長様を手助けしてやるよ」

 

「あーもう! だからまずは相手の情報を把握するのが先だって言ったのに!」

 

ここにはいない誰かに激昂しながらも、突如現れたキリトに向かって短機関銃・P90を乱射する少女。

 

無数の弾丸に襲われながらもなんとか回避して、キリトはその場で横に一回転しながら右手に持った剣を彼女目掛けて突き出す。

 

「距離を詰め過ぎたな! この距離なら多少無茶すれば剣一本でも押し通せる!」

 

「ヤバ……!」

 

自分の眼前にキリトの繰り出した剣先が見えた時、少女はやってしまったと目をつぶり敗北を悟る。

 

だが

 

「……おい、敵を目前にしてなに目をつぶってやがる」

 

「「!?」」

 

キリトと少女が同時に目を見開き言葉を失う。

 

 

キリトがアスナの前に立ち塞がって迎撃したかのように

 

討たれる少女のピンチに颯爽と駆けつけ、一人の男が禍々しく輝く怪しい刀でキリトの剣を防いで見せたのだ。

 

その男は一見古めのオタクっぽい格好をしてはいるが、開いた瞳孔は真っ直ぐに敵であるキリトを見据え……

 

「腹をくくって死ぬ覚悟をする暇があったら、何が何でも相手の喉笛を掻っ切ろうとする強い執念を持て、戦場では生きる事を諦めた奴が負けだ、覚えておけ小娘」

 

「ト、トッシー!?」

 

「ト、トッシー……?」

 

少女を護る為に現れたのはトッシーと呼ばれた謎の男。

 

しかしまさか彼に助けられるとは思ってなかったかのように意外そうに叫んでいるレンを尻目に

 

キリトはそのトッシーという男と剣を交えながら怪訝な表情を浮かべていた。

 

「なあ……アンタ前にどっかで会わなかったか、その……ラーメン屋とかで」

 

「ああ? 誰がテメェみたいなガキと……っていぃ!?」

 

こちらを全力で斬ろうという強い殺意に溢れているトッシーにキリトがポツリと尋ねると、彼は突然顔色を変えて焦った様子を見せた。

 

どうやらキリトが彼に見覚えがあったように、トッシーもまたキリトの顔をどっかで見た覚えがあったらしい。

 

やがて二人の間で微妙な空気が流れたのも束の間、そこへ……

 

「アナタだけに好き勝手やらせないわ! 私だって将軍様を御守りするんだから!」

 

血盟騎士団の名にかけてここで攘夷プレイヤーのキリトに負ける訳にはいかないと、剣を抜いて華麗にアスナが参戦

 

しかし彼女がキリトと相まみえている相手を直視した次の瞬間

 

 

 

 

 

 

「……え? あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ん? あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

両者互いの顔を見るなり大声を上げ、信じられないという表情で固まってしまう。

 

まるでずっと昔から深い関わりを持つ相手と思いもよらぬ場所で遭遇してしまったかのような反応だ。

 

「どどどどうして!? どうしてこんな所にとうし……!」

 

「ヒャッハー! 第二波かっ飛ばすぜー!」

 

「!?」

 

困惑しつつ声さえまともに出ない状況でありながら、アスナが全身を震わせながら男に向かって何か尋ねようとするが、またしても最初に聞こえて来たここにいる少女ではない別の人物が発した叫び声が木霊する。

 

そしてまたしても

 

「キャア!」

 

「どぅおわぁ!!」

 

下から真上に向かって発射し、上手い事こちらに向かって落ちて来たであろうがグレネード弾はアスナとトッシーのちょうど真ん中目掛けて振り落とされた。

 

またしても強力な爆発が発生し、今度はこちらではなく味方である筈のトッシーと少女まで巻き込む形に

 

「ゲホゲホッ! ちょっとフカ! 私達まで巻き添えにしないでよ!」

 

「めんごめんご~! 許してちょんまげ~!」

 

「古ッ!」

 

間一髪の所で後方に下がって直撃による一発爆死は免れたピンクの少女が、後方支援担当の味方に向かって怒りながら立ち込める砂埃にしかめっ面しながら口を手で押さえていると、次第に辺りの視界は晴れて来た。

 

「一旦仕切り直しになっちゃったじゃん、せっかくあの人にかかった呪いがようやく解きかけていたのに……」

 

「ったく、滅茶苦茶な奴等だなホント、ウチの鬼畜天パ&合法ロリといい勝負だ……」

 

少女が煩わしそうに砂埃を手で払っていると、その先に立っていたのは同じ様に手を振っているキリトであった。

 

そして彼の傍には、片膝をついた状態ではあるがなんとか爆撃を防いだアスナの姿も

 

「何処から撃っているのわからないけどここまで正確に撃ち込んでくるなんて……は!」

 

さっきから容赦なくグレネード弾を振らせて来る人物に腕は確かだと賞賛を送りつつも、彼女はすぐにある事を思い出してその場ですぐに立ち上がる。

 

「あの人は! あの人はどこ!?」

 

未だ健在である敵の少女をスルーしてアスナは必死に辺りを見渡し始め、男はどこへ消えたのだと歩き始める。

 

すると数歩歩いた時に、彼女は足で柔らかい変なモノを踏んだ感触を覚えた。

 

「え? 今私なんか踏んだの? 一体何を……ってあぁぁぁぁぁ!!!」

 

足元を見降ろしてかなにを踏んだのか確認したアスナだが、またしても何度目になるかわからない叫び声を上げる。

 

「しょしょしょしょ将軍様ァァァァァァァ!!!」

 

なんと自分が思いきり足で踏みつけてしまったのは、あろう事かこの国の征夷大将軍・徳川茂茂公の後頭部であったのだ。

 

どうやら一回目の爆発で吹っ飛ばされた彼は、自分達が乱戦してる中ずっとここで横たわっていたらしい。

 

「も、申し訳ありません将軍様! 私としたことがつい我を忘れて畏れ多くも将軍様の後頭部を!」

 

「……問題ない、余は平気だ、これしきの事で将軍は倒れん……それに」

 

自ら犯してしまった不祥事にいっそこの場で泣き崩れたいと思うアスナだが、誰よりも器のデカい将軍・茂茂は彼女の行いを咎めるつもりはないらしい。

 

そしてまるで何事も無かったかのように茂茂は彼女の前ですくっと立ち上がるのだが……

 

「何故だかわからんが、以前よりさらに清々しく開放的になった気がするのだ」

 

「「キャァァァァァァァァァァ!!」」

 

 

大丈夫そうに立ち上がって見せた茂茂に対して、アスナと敵の少女が同じような悲鳴を上げて慌てて彼から目を逸らした。

 

初心者でありながら二度の爆撃をなんとか耐え抜いた茂茂、しかし今の彼の状態は

 

 

 

 

 

 

 

股間の部分をモザイクで加工しただけの、紛れもなく全裸であった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! なんというお姿になってしまわれてるんですかァァァァァァ!!」

 

「うむ、先程の爆発の後、気が付いたらこうなってしまっていた」

 

「その状況においてもなんで冷静なんですか!?」

 

 

もはや生まれたままの姿でしかない茂茂にアスナは両手で目を隠しながら叫ぶしか出来なかった。

 

そしてこの状況を前にしてキリトも頬を引きつらせ

 

「やべーよ、遂に将軍様唯一身に着けていたブリーフを脱ぎ去って完全なる全裸になっちまったよ、しかも将軍あっちの方は全然”将軍”じゃねぇよ、”足軽”だよ」

 

「将軍家は代々、あっちの方は足軽だ」

 

「聞こえてたよ、もう俺達完全に打ち首拷問だよ」

 

全裸になってもなおどっしり構えて言葉を返してくる茂茂に、キリトは己の死期を静かに悟った。

 

ゲームの世界とは言え、公衆の面前で将軍を全裸にして晒してしまった、これはもう言い逃れは出来ない

 

「けどどうしてブリーフが無くなったんだ……爆風で体が吹っ飛ぶならともかくどうしてブリーフ限定で……」

 

「ハハハ、もうそんな事考える必要ないじゃない……どっちにしろ私達みんな死ぬんだから……ん?」

 

何故彼のブリーフだけが何処かへ消えてしまったのか疑問に思うキリトをよそに、アスナは既に諦めている様子でヤケクソ気味に渇いた笑い声を上げるのみ

 

しかしそこへ砂埃の中から一人の人影がスッと現れた事で、彼女の表情は一変した。

 

「そ、そこにいるのはもしや……!」

 

うっすらとシルエットが見えて、アスナは将軍が全裸だというのも忘れて目を凝らしてよく見つめる。

 

やがて少しずつはっきりと見えるようになると、そこに立っていたのは

 

「あのーすみません、何処の何方か知らないんすけどー、一体僕を誰と勘違いしてるんですかねー」

 

「へ?」

 

もしかしたらあの人かもしれないと、見えて来た人物を凝視していたアスナだったが

 

その先に見えたのは予想も付かぬ信じられない光景であった。

 

「いやだって、僕はただの」

 

 

 

 

 

 

「通りすがりの変態仮面っすから」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

現れたのは先程顔を合わせた男本人の筈なのだが

 

その恰好はさっきと打って変わって、身に着けているのは腰に穿いたブリーフと

 

顔面を覆うブリーフのみという紛れもなく変態スタイルであったのだから。

 

「ち、違う! 絶対に違うわ! さっきまで私がもしかしたらと思って人だなんて絶対にあり得ない! だって私が尊敬するあの人がこんな恥知らずな格好するなんて絶対にあり得ないわ!」

 

(よし、上手い事誤魔化せたようだな……)

 

彼を涙目で指さしながら何度も首を横に振るアスナの反応を見て、トッシーは若干傷つきながらもなんとか誤魔化せたとホッと胸を撫で下ろす。

 

(あっぶねぇぇぇぇぇぇぇ!!! アイツと顔会わせたとき終わったと思ったが、あの爆撃の隙に上手く変装出来て良かったぁ! しかし咄嗟に掴んで顔を隠すために被ったこのブリーフ、随分と臭ぇな一体誰の……)

 

だが最初から穿いているブリーフはわかるとして

 

顔を覆うブリーフは一体「誰」から入手したのだろう……

 

変態仮面ことトッシーは辺りをふと見渡して、誰から奪ってしまったのかと探してみると

 

その人物はすぐそこにいた。

 

「将軍様わかりました! 将軍様のブリーフを盗んだのはあの変態仮面! あろう事か徳川家の所有物を盗んだ大罪人です!!」

 

「……え?」

 

アスナがこちらを指さしながら非難する一方で、話しかけている人物を見てトッシーは思わず我が目を疑う。

 

そこにいたのは”仕事上”度々顔を合わせる事がある、一度見たら二度と忘れない整った凛々しい顔立ちをした人物、そして先程の彼女の発言から察するに、あの人物は間違いなく。

 

(ちょ、ちょっと待て……もしかして俺がブリーフを奪った相手って……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が国の名主たる徳川家に泥を塗った不埒な輩を!! どうかあの者を断罪する許可をお願いします!! 徳川家14代目将軍・徳川茂茂様!!」

 

(将軍かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!)

 

トッシー、思わぬ大失態

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いずれ新作を書く予定なのですが今の所忙し過ぎてて手が付けられません……

書きたい作品は沢山あるんですけどねぇ……

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