竿魂   作:カイバーマン。

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Qキリトの攻撃力はいくつですか?

Aヴェルズ・ウロボロス

Qユウキの攻撃力はどれぐらいですか?

A究極変異態・インセクト女王

前に銀さんの攻撃力を2600と例えたらメールでちょくちょく聞かれるようになったんで、とりあえず答えときます

その代わり結構適当な上に作中でキャラの戦闘力とか書きたくないんで、デュエリストのみに伝わるアンサーですけど

おまけ

Q屁怒絽さん

A CiNo.1000夢幻虚光神ヌメロニアス・ヌメロニア


第七十二層 身内の色恋に首突っ込むのは大抵暇人

「ったく余計に時間かけさせやがって……入りやすぜ近藤さん」

「あなた一回自分の部隊を再編制させたほうがいいわよホントに……失礼します」

 

真撰組の拠点である屯所へとやって来た結城明日奈は、沖田総悟と共に局長・近藤勲の部屋へと入った

 

「「……」」

 

しかしその瞬間、二人はすぐに無言になる。

 

てっきりいつものように胡坐を掻いてどっしり構えてる真撰組の大黒柱がそこにいるのかと思いきや

 

 

 

 

 

布団の上でローブ姿で横になった状態で頭と足の下に枕を敷き、ジャスミンの香料を放つ小瓶を枕元に置いて

 

意識高い系のOLがするようなリラックスできる完全体勢で

 

頭にしっかりとナーヴギアをハメて仮想世界を満喫している状態の真撰組の大黒柱がそこにいたからだ。

 

「え、ナーヴギア……え、近藤さんもしかして……」

「つうか今この人絶賛仕事中の筈じゃなかったっけ?」

 

 

 

 

 

 

それから数分後、二人に叩き起こされてようやく現実世界へ戻ってきた近藤。

 

ナーヴギアを外すと、制服に着替えて、改めて明日奈と沖田の向かいに座って豪快に笑い飛ばす。

 

「いやーすまんすまん! うっかり夢中になってしまって約束の時間をすっかり忘れてしまっていた!」

 

「勘弁してくだせぇ近藤さん、俺じゃあるまいし勤務中にゲームしないで下さいよ」

 

「最近のゲームはホントに進んでるんだな~! まさか「たけしの挑戦状」からここまで進化していたとは! すげぇな最新のたけし!」

 

「人の話聞いてますかぃ? てかアンタがやってるゲームたけしじゃないから」

 

あまり悪びれてない様子ですっかりEDOにハマってしまっている事を話し続ける近藤に、珍しく沖田の方が注意していると、そこへ明日奈が少々意外だと驚いた様子で

 

「て、ていうか近藤さん……いつの間にEDOやってたんですか? 私正直びっくりなんですけど……」

 

「最初は俺の愛するお妙さんとお近づきになる目的でやってみたんだが思いの外面白くて、今じゃすっかりドハマりしてしまいました」

 

「不純な動機ですね……まあ楽しんでくれてるなら嬉しいですけど」

 

何故か敬語でEDOを始めた経緯を語る近藤に明日奈が怪訝な表情を浮かべる。

 

「それでお妙さんとは仮想世界で会えたんですか?」

「……俺が買ってあげたナーヴギア、弟君にあげたんだって……」

「あ、ご愁傷さまです……」

 

ショックで項垂れる近藤に、やっぱり上手くいかなかったのかと、明日奈は頬を引きつらせた。

 

彼の恋を応援したいのは本音だが、それと同時にこれ以上お妙に付き纏うのは止めてほしいという思いもあるので、正直かなり複雑な気持ちだ。

 

「ていうか同じゲームやってるって言って下されば私お手伝いしたのに……」

 

「ハハハ、明日奈ちゃんにバレないよう手を借りずに、己の力で会いに行って驚かせようと思っていたのさ」

 

「今の時点で十分驚いてますよ……私の尊敬する人が女性にストーカーするだけじゃ飽き足らず、仕事をほったらかしにしてゲームに夢中になってると知って……」

 

「いいかい明日奈ちゃん、男ってのは不器用なんだよ、仕事も恋もゲームも、全部器用に出来る奴はいないのさ……」

 

カッコ良さげに腕を組みながら答える近藤に、明日奈は訳が分からんと呆れ気味に「アハハ……」ととりあえず苦笑していると

 

「近藤さん、それより俺達をわざわざ呼びつけた理由をいい加減話してくれやせんかね?」

 

「あ、そういえば私もその為にここに来たんだった……」

 

「おーそうだった、すまんすまん、俺の方から呼んだというのに余計に時間を取らせてしまって」

 

「心配しなくてもいいですよ、俺はともかくこっちの方は毎日暇ですし」

 

「暇じゃないわよ! 分刻みのスケジュールよ!」

 

「嘘つけこちとら浩一郎君から聞いてんだぞ、お前実家出てから仕事もせず……」

 

「いやしてるから! 江戸を護る為に働いてるから!」

 

隣に座る自分を指さしながらサラッとキツイ事を言ってくれる沖田に明日奈がムキになって返しているのをよそに

 

改めて「まあまあ」と近藤が話を始めた。

 

「実を言うとお前等を呼んだのは他でもない、単刀直入に言うとだな、今後しばらくは二人で揉め様を起こしてほしくねぇんだ」

 

「俺とコイツが? 近藤さん冗談はよしてくだせぇ、俺がいつこんな世間知らずのお嬢様と揉め事なんて起こしやしたか? コイツが一方的に突っかかって来るだけですよ」

 

「それはあなたの方でしょ……昔から事あるごとに私の事イジメて……」

 

「いやいやだから! そうやってギスギスした雰囲気を出してほしくねぇんだって!」

 

言った直後にまた睨み合って喧嘩腰になる沖田と明日奈に、近藤が慌てて仲裁に入る。

 

「総悟も明日奈ちゃんもわかってるだろ、今後近い内に」

 

 

 

 

 

「明日奈ちゃんの兄である浩一郎君と、総悟の姉、ミツバ殿が晴れて挙式を上げられる準備が出来つつあるって事を」

 

彼の言葉に沖田と明日奈もさすがに押し黙った。

 

そう、何を隠そう明日奈の兄は今、沖田の姉と結婚式の準備をしている真っ最中なのだ。

 

二人の事を良く知っている近藤にとって、これ以上にめでたい話は無い。

 

「浩一郎君の事は俺はガキの頃からよく知っている、それに当然ミツバ殿の事もだ。この二人が結婚すると聞いたときは俺も心底驚いたもんだが、兄貴分としてしっかり見送ってやりたいんだよ」

 

「そいつは俺もですよ近藤さん、何せ俺は浩一郎君の事はずっと気に入ってるんでね、そんな相手なら喜んで自慢の姉上を嫁に出せまさぁ、まあその妹とふてぶてしいニコチン中毒者と親戚関係になるのが不満ですが」

 

「私もミツバさんが義理のお姉さんになってくれるのは子供のころの夢が叶った気分で嬉しいですけど……余分な弟がセットで付いてくるのが嫌です」

 

「なんなの君達? 喋る度に争わないと気が済まないの? セリフに毎回相手への悪口を言わないといけない決まりでもあるの?」

 

昔からよく見た光景ではある沖田と明日奈の不毛な言い争い。

 

近藤派二人の仲が悪い原因も薄々気づいているので今まであまり強く言ってこなかったが、今回ばかりは状況が状況だ、ここは年長者らしくビシッと言っておかねば

 

「総悟、確かにお前の姉であるミツバ殿が浩一郎君と結婚するのはめでたい事だ、しかし実を言うと、名家である結城家に家柄もない田舎出身のミツバ殿が嫁ぐ事に不満を持つ輩も少なくないらしい」

 

「わかりやした、そいつ等全員粛清してきます」

 

「そういう方法で解決して来いって言ってんじゃないから!」

 

澄まし顔ですぐに腰に差す刀を抜こうとする沖田に慌てて近藤が叫んで止める。

 

「とにかく、俺としても腹の立つことだが……身分の差が大きすぎるという事でミツバ殿も立場上ツラい状況に置かれているんだ」

 

「そういう話は姉上からの手紙には書かれてやせんでしたが……結婚が遅れた事にはそういうのが関係してたんですかね」

 

「多分な、これ以上状況が悪くなると、最悪反対派に押し切られて当人の意志も関係なく婚約を無理矢理解消されてしまうという可能性もある」

 

「なるほどねぇ、家柄を気にするセレブ共には、どこぞの田舎から出てきた娘が、将軍家とも縁の強い名家の後継ぎと嫁ぐのが面白くねぇと……大層ご立派な考えなこって」

 

面白くなさそうに近藤が呟くと、沖田もまた表情に変化はないモノの、その目は鋭く気が立っているようにも見えた。

 

そして話を聞いていた明日奈もまた顔をしかめてここに来る前に出会ったある男の話を思い出す。

 

「そういえば父の下で働いているいけすかない男がそんな話してました……私の兄を厄介者として跡継ぎ候補から外して、いずれ自分が私と結婚して結城家を手に入れるとか……」

 

「よしわかった、真撰組全隊出撃してそいつ粛清してくる」

 

「いやそこまでしなくていいですから! それに既に先程粛清されましたから!」

 

真顔で重い腰を上げて真撰組に号令をかけようと動き始める近藤を明日奈が慌てて止める。

 

「兄がミツバさんと結婚するのを反対しているのは、もしかしたら彼を支持してる連中かもしれません、理由はどうあれ批判の声を大きくすれば兄の信用を失わせるチャンスだと思っているのかも……」

 

「う~む、ミツバ殿だけでなく浩一郎君の立場も危ういって事か……これじゃあますます結婚が上手くいくかどうか不安だ、とにかく今俺達が出来る事があるとするならば……」

 

明日奈の話を聞く限り、沖田の姉だけでなく婿である彼女の兄も色々と面倒な事に巻き込まれているらしい

 

おまけにこれを理由に家を乗っ取ろうとする不届き者まで現れる始末だ。

 

ならばここはやるべき事はまず……

 

「やはりここは総悟と明日奈ちゃんにはしばらく争う事を止めてもらう他あるまいな」

 

「だからなんでそこで私達が出るんですか……」

 

「花嫁の弟と花婿の妹の仲が険悪だと知られれば、反対勢力に上手く利用されるかもしれん、ここは上手く隠し通通して連中にこれ以上餌を与えないようにしよう」

 

近藤の言葉に沖田はやや不満げな表情でピクリと耳を動かす。

 

「ひょっとして近藤さんが俺とコイツをわざわざ呼んだのは、それを俺達に言い聞かせる為だったんですかぃ?」

 

「ああ、ここは俺も浩一郎君とミツバ殿の為に、お前等にもキチンと身の振り方を改めろと思ってたんでな」

 

「……そいつが本当に近藤さんが考えた事であれば俺は従いやすが、実際の所違うじゃないですかぃ?」

 

「どうしてそんな事わかるのよ」

 

「近藤さんにしては回りくどい手だ、恐らくどこぞの誰かに入れ知恵でもされたんだろうよ」

 

そのどこぞの誰かも当にわかっているような口振りで沖田が答えると、近藤は後頭部を掻きながら苦笑い

 

「やっぱお前には隠せなかったか、コイツは本人に口止めされていたんだが仕方ない」

 

「いったい誰なんですか? 近藤さんに指示できる人なんてそうそういないと思うんですけど……」

 

「トシだ、お前達に、自分の代わりに言ってくれとな」

 

「十四郎さんが!?」

 

意外な名前が出て来たので明日奈は思わず目を見開く、まさかあの鬼の副長がわざわざ自分達に忠告を?

 

「自分が言ってもどうせ聞かないだろうから、ってな」

 

「やっぱそうだと思ってやしたよ、あの野郎が考えそうな手だ、いけすかねぇ……」

 

「どうせ聞かないって……十四郎さんが言ってくれるなら私は素直に従うつもりなんだけど……」

 

「俺は聞かねぇからな、姉上が結婚する事になんの反応もしなかったクセに、俺達に根回したぁどういうつもりでぃ」

 

「……」

 

自分達に忠告したのは近藤ではなく土方だとわかり、沖田は段々荒っぽい口調になりながら悪態を突く。

 

いつもならここで明日奈がムキになった様子で突っかかるのがお約束なのだが、彼女はふと別の事を考えて彼の言葉に耳を傾けていなかった。

 

「十四郎さんはミツバさんが無事に結婚してもらう為に、余計な波風が立たないよう陰ながらフォローしていたのね……でもなんでかしら、私としては十四郎さんがミツバさんが結婚する事を素直に受け入れている事がちょっと……」

 

ミツバと土方は昔から交流があったのを明日奈はよく知っている。小さな頃によく土方に連れられて彼女の所に遊びに行ってた事をよく覚えている。

 

そしてすぐに自分達に素っ気なく背を向けて、自分と同じく小さかった沖田を連れてさっさと道場へ行ってしまう

彼を、何も言わずに見送る彼女の顔も……

 

「大丈夫かしら十四郎さん……それにミツバさんも……」

 

「野郎が望んだ結果だ、姉上も幸せになる為に、前々から姉上に惚れていたテメェの兄貴の所へ嫁ぐんだ。妹なら実の兄貴の幸せの事だけ考えてろ」

 

ふと二人の事が心配になる明日奈に沖田が目も合わせずにサラッと呟くと、彼女はジロリと目を向けて眉間にしわを寄せる。

 

「……あなた十四郎さんの忠告聞く気あるの? なんか早速私に噛みついてるみたいだけど」

 

「野郎の言う事を聞くのは勘弁だが、ま、姉上の幸せの為だ、人の目が多い所では、お前をイジめるの止めておいてやるよ、感謝しろ」

 

「できれば一生止めて欲しいんですけど……全くこの男といいあの厨二剣士といい、どうしてわざわざ私に突っかかって来るのかしら……」

 

ふと頭の中に一人の人物が浮かび上がり、その者と口を開けば言い争っている光景を思い出し、明日奈がハァ~と疲れた様子でため息をついていると。近藤は腕を組んだ状態でうんうんと頷いて

 

「とにかくこれ以上厄介事は勘弁だ、これからが大事な時期なんだから大人しくするんだぞ二人共、特に総悟、お前は明日奈ちゃん関係なくトラブルを引き起こす厄災みたいなモンだからな、流石にしばらく自重しろよ」

 

「わ~ってますよ、これからは犯人にバズーカ10発ぶち込むのを止めて9発にしまさぁ」

 

「いやわかってないじゃん! たった1発しか自重してないじゃん! 9発でも十分やり過ぎだから! ホント勘弁してお願い!」

 

絶対にわかってない口振りで平然と答える沖田、わかってはいたが、やはりこの男は全く人の話を聞かない……

 

「つーか俺達以前にもっと気を付けた方が良い奴がいるでしょ」

 

「え、誰の事?」

 

「近藤さん使ってまで俺達に忠告してきやがった土方さんでさぁ」

 

「十四郎さんが?」

 

「トシか……」

 

自分よりも自重すべきは土方だと沖田が肩をすくめて主張すると、明日奈は「は?」とわかってない様子で首を傾げ、近藤は察したかのように難しい顔をする。

 

「近藤さんだって気付いてるでしょ? ここ最近あの人の行動がおかしくなってるって事を」

 

「確かにここ最近のトシの様子はどうもおかしい……自室に籠る時間も増えたし一体どうしたんだ……」

 

「十四郎さんになにかあったんですか!? 部屋に籠るってまさか病気!?」

 

「いや、病気ではないとは思うが……最近のアイツはちと行動が読めなくてな」

 

あの鬼の副長がまさかの病の危機に瀕している、二人の会話を聞いてそんな風に危惧した明日奈に近藤は苦笑いを浮かべながら説明して上げた。

 

「真面目に業務をこなして副長としてのメンツは保ってはいるんだが、隙あらばいつの間にかアニメ観たり漫画読んでたり……部屋にオタクっぽい人形を飾ってしげしげと眺めていたりと、以前のトシには絶対にあり得ない事ばかり繰り返してるのをよく見てな」

 

「と、十四郎さんがアニメぇ!? そ、そんなこと絶対にあり得ないですよ! あの人はそんなモノに現を抜かす人じゃありません!」

 

「あと、携帯の着信音が妙にポップな感じになってたな、その音が鳴るとトシは突然慌ててどっか行ってしまうんだ」

 

「ポップな感じ……もしかしてプリキュアですか!?」

 

「いやプリキュアかどうかは知らないけど……てかプリキュアってなに?」

 

トシ、土方十四郎の様子が明らかにおかしくなっていると話してくれた近藤に、明日奈はワナワナと肩を震わせながら動揺する。

 

あの、隊士の誰もが(一人除く)尊敬してやまない鬼の副長が、自分の部屋にフィギュアを置いてそれを眺めているなんて全く想像できない、というかそんな現実を受け止めたくない。

 

ショックを受けて呆然とする明日奈を尻目に、沖田もまた近藤に口を開く。

 

「理由はわかりやせんが土方さんのオタク化はいずれ他の隊士達にもバレちまう、さっさと原因を突き止めねぇと真撰組の面目丸潰れですぜ?」

 

「しかし本人にも俺から何度か聞いてはいるんだがなぁ……なんでもねぇの一点張りで詳しく語ろうとしねぇんだアイツ……」

 

「なんでもあるから聞いてるってのに……困った野郎だ、俺達に口を出すよりテメーの身の振る舞いをどうにかしろってんだ」

 

「まさか俺にも言ってくれないとはな……せめてどうしてオタクに目覚めたのかぐらい教えてくれてもいいだろうに……俺は別にオタクだからって気にしないんだけどなぁ」

 

口を割ろうとしない土方に沖田は悪態を、近藤は顔を曇らせて素直に心配している中

 

そこで明日奈がハッとした表情で何かに気付いた。

 

「もしかして十四郎さんがオタク化したのって……交流関係にあるんじゃないですか?」

 

「交流関係? いやいや、俺達真撰組にオタク趣味の奴なんていないぞ」

 

「もし真撰組以外にいるとしたら……」

 

「真撰組以外、そういえばトシの奴、最近電話でちょくちょく俺達以外の誰かと話しているみたいだったな……」

 

「それです!」

 

彼女の追及に近藤はアゴに手を当てふと土方の不可解な行動の一つを思い出すと、彼に向かって明日奈はビシッと指を突き出した。

 

「きっと十四郎さんその電話の相手と知り合ってから変わり始めたんですよ! それもあのバリバリ硬派の十四郎さんを、オタク化させるぐらいという事は既にかなり親密な間柄の人物……」

 

「なにぃ!? 親密な間柄という事はもしかしてアレか!? いわゆる彼女的な!?」

 

「実は私、前に十四郎さんと出会った時に電話の相手に向かって叫んでいるのを聞いたんですよ……どうも相手は女性ぽかったです」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!? 未だお妙さんの携帯番号も知らない俺を差し置いて!! テメーは女と電話でイチャイチャしてやがっただとぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「いやそこまでは言ってないです……」

 

明日奈の話を聞いて近藤は両手で頭を抑えながら狼狽え始める。

 

長い付き合いである彼でさえも、あの土方が電話越しとはいえ女性と会話する事なんて絶対にあり得ないだろうと思っていたからだ。

 

「あの女にまるで興味の無かったトシが!? く! 気になる! 一体どんな女性とお付き合いしているんだ! すっげぇ気になって今からトシの所へ乗りこんで行きたい所だ!!」

 

「近藤さんならそう言ってくれると思っていました、私も常々十四郎さんにはいい人を見つけてほしいと思っていたんです……だからこそ! この千載一遇のチャンスをあの人に掴んで欲しいんです!」

 

「やべぇ、すっげーどうでもいい、早く部屋に戻って昼ドラ観たい」

 

一人冷めた表情を浮かべている沖田をよそに、近藤と明日奈は一体どんな相手なのかと強く気になり始め

 

遂にはその場で立ち上がって今頃自室にいるであろう土方の所へ向かおうとする。

 

「そうとわかればここで大人しく考えてる場合じゃねぇ! 直接アイツの所へ行って詳しく聞かねば! 部下の色恋に口を出す! これもまた局長しての責務!!」

 

「私もまた女性の立場で彼にアドバイスして上げたい! これもまた従兄妹としての責務です!」

 

「あ、俺は興味ないんでパス」

 

その場に横になって軽く手を振るやる気ゼロの沖田を置いて、土方のプライベートに理由をつけて首を突っ込みたがる近藤と明日奈は結託。

 

そしていざ尋常にと、二人は部屋を出ようとしたその時……

 

 

 

 

 

「トッシーィィィィィィィィ!!!!」

「「!?」」

 

明日奈達が部屋の襖を開ける前に、突然目の前で勢いよく開かれた。

 

二人の目の前にいきなり現れたのは真撰組の者ではなかった、茶髪にウェーブをかけた見慣れぬメガネを掛けた女性、明日奈は勿論の事、近藤も全く面識がない人物であり思わず驚いて言葉を失ってしまう。

 

「トッシー!? トッシーどこよ! ここにいるって聞いたんだけど!?」

 

「「ト、トッシー……?」」

 

「おおっとアバター名じゃ通じないか、あれ? てかトッシーの本名ってなんだっけ? う~ん、前に蓮から聞いたんだけど思い出せない……伊達政宗? 夏侯惇? ロロノア・ゾロ?」

 

困惑している自分達をよそに、どうやら彼女は誰かを探している様子。

 

メガネを指でクイッと上げながら顔をしかめて探し人の名前を思い出そうとしていると

 

「おいテメェ! そこでなにしてやがる!」

「あ!」

 

そこへ不意に後ろから彼女に向かって叫ぶのは、制服ではなく私服姿の、近藤と明日奈が会いに行こうとしていた土方十四郎その人であった。

 

彼女の声が聞こえたのか、慌てて土方が部屋から出て来ると、彼女はすぐ様後ろに振り返り

 

「ヘイ、トッシー! お邪魔してるんだぜ!」

 

「お邪魔してるんだぜじゃねぇ! ここは真撰組の拠点だぞ!」

 

ビシッと手を伸ばして物凄く軽い感じで挨拶する女性に明日奈がビクッとする中、土方はキレた様子でまたも怒鳴りつけた。どうやら二人は顔見知りらしい

 

「テメェみたいな奴が来ていい場所じゃねぇんだよここは! さっさと帰れ殺すぞ!」

 

「おーおー物騒な事言いなさる、しかしトッシーよ、今の我々には不毛な争いをする猶予は残されていないのだ、大人しく身柄をこっちに渡して抵抗せずに私に導かれたまえ」

 

「は? 何を言って……ぬお!」

 

相手が怒っている事もお構いなしに女性は友好的な態度で土方の方へ歩み寄ると、すれ違いざまにがしっと彼の後襟を掴み、不思議と慣れた様子で廊下をズルズルと引きずりながら行ってしまう。

 

「さあ行こうぜトッシー! ウチ等のリーダーがいる所へトゥギャザーしようぜ!」

 

「止めろテメェ! きょう別に顔会わせる予定なんて無かっただろうが!」

 

「フハハハハハ! 女が男と遭う事に予定なんて必要ないのだよ!」

 

大の男、ましてや鬼の副長である土方を引きずって行きながら妙に独特的な喋り方で窘めつつ

 

吠える土方を連れて女性はスキップしながら自分達の前で姿を消して行ってしまうのであった。

 

「……え? 今のなに? どゆこと? さっきの子はトシとどんな関係? ひょっとしたら噂の彼女と思ったけど、トシの反応を見る限り違うっぽいし……」

 

「すみません私も絶賛困惑中です……目の前にいきなり綺麗な女性が現れてその人が十四郎さんを無理矢理連れてどこかへ……あ、ダメだ、やっぱり頭の中で整理しても訳が分からない……」

 

その場で呆然と立ちすくみながら途方に暮れている近藤と明日奈、今から追えば間に合うのかもしれないが、一体あの二人にどこから聞けばいいのかさえわからず、ただただ困惑するのみ。

 

すると部屋でずっと横になって目を瞑っていた沖田がパチリと目を覚ますと

 

 

 

 

「なんでぃ、随分と面白れぇ事になってんじゃねぇか」

 

そう呟きながら一人天井に向かってニヤリと笑みを浮かべるのであった。

 

土方十四郎が一体どこで誰と何をしているのか

 

現段階では未だ不明の状態

 

わかる事はただ一つ

 

彼は近藤達には言えないなんらかの事情を抱え、その為にとある者達と関わっている事だけである。

 

 

 

 

一方その頃、そんな事も露知れず、真撰組屯所の入り口では

 

多くの真撰組隊士を倒し尽くした神楽が一人膝から崩れ落ちて地面を拳で叩いていた。

 

「ちくしょうぉ! アスナ姐のクッキー取られたぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

猛者揃いである彼等を倒し続けて明日奈のクッキーを護り続けていた神楽が悔しそうに叫んでいる前で

 

「……」

 

三番隊隊長・斎藤終が黙々と彼女から奪ったクッキーを食べていたのであった。

 

 

 

 




銀さんには銀さんの物語がある様に

彼にもまた別の物語があるんです


もっともその物語を書くかは未定ですけど……

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