竿魂   作:カイバーマン。

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感想数が598から593になった……他の作品でも度々あるんですけどなんかのバグですかねコレ……


第六十八層 その男は偉大で狂気で孤独で哀れな……

「茅場晶彦?」

「知らないのか? アンタが絶賛プレイしているEDOを造り上げた人だよ」

「へーコイツがねぇ……」

 

平賀源外がユウキの腕と首の修繕をやっている頃、和人は銀時に研究所に放置されていた一枚の写真を見せていた。

 

その写真に写るのは源外と共に複数の者達も映っており、その中に彼はいた。

 

「俺よりずっとガキの頃から、誰よりも早く地球にやって来た天人が持つ科学力を重要視し、そこから上手く吸収し組み込んだ最先端技術をいくつも発明した人として有名なんだ、名前ぐらい聞いた事あるだろ?」

 

「生憎、俺はコイツと違ってガキの頃は田舎暮らしの上にすぐに戦争三昧だったからな、科学だの発明だのそんなモン無縁だったわ」

 

やや熱が込もった感じで説明して見せる和人だが、銀時は全く興味無さそうな感じで彼から写真を奪ってまじまじと見つめる。

 

「冴えねえツラした野郎だぜ……おいジーさん」

「あん?」

 

ユウキの腕を溶接してる途中の源外に向かって銀時が話しかけると

 

源外は振り返らずに作業に集中したまま返事だけした。

 

「和人君が言うには、この写真に写ってるこの茅場とかいう奴ってすげぇ科学者みてぇだぞ」

 

「そんなもんお前さんに言われなくてもわかってらぁ」

 

「俺が聞きてぇのは、なんでそんな奴がアンタみたいな墓穴に片足突っ込んだ堅物ジジィなんかと仲良く一緒に写ってるのかって話だよ」

 

「うるせぇ! こちとらまだ墓穴なんざ掘ってもいねぇよ!」

 

失礼な物言いをする銀時にキレ気味に答えながら、源外はめんどくさそうに頭をポリポリと掻くとため息をつき

 

「さっきからお前達が何度か名前を言っているゲーム、俺は奴に誘われてそいつを作るのを協力してやったんだよ」

 

「ウソだろマジか!? アンタも茅場晶彦と一緒にEDOを作った一人だったのか!?」

 

銀時より先に和人が素っ頓狂な声を上げる、源外がEDOに深く関与していた人物だと知ったからだ。

 

「知らなかった……EDOに江戸一番のからくり技師の手が入っていたなんて……」

 

「なにそんな大したことじゃねぇさ、報酬金目当てにちょいと奴に手を貸してやっただけの事だ」

 

「ちなみにちょい手を貸したってどのぐらいのレベル?」

 

「そうさな、色々とやったが特に俺の技術が備わっている奴と言ったら、お前等があのゲームやる時に使うナーヴギア、アレ造ったの俺だ」

 

「それちょっとの関与じゃなくない!? やっぱパネェ平賀源外!」

 

「なに一人で興奮してんのお前?」

 

仮想世界にフルダイブする為に設計された画期的なヘルメット型デバイス・ナーヴギア。

 

それを造ったのが今目の前にいる男だと知って、一人で勝手に盛り上がっている和人に銀時は顔をしかめる。

 

「たかがゲームのコントローラー造った程度じゃねぇか、それぐらいで驚くな、」

 

「おい、アンタのその発言は俺達ゲーマーに対して全力で喧嘩を売っている事になるぞ?」

 

「なら俺の喧嘩買うかゲーマー君? 今ここでゲームオーバーにしてやってもいいけど?」

 

「すみません、せめてコンテニューが出来るぐらいは残機残してください……」

 

勢いよく胸倉を掴み上げながら無表情で脅してくる銀時に、こっちの世界では貧弱な和人は頬を引きつらせながらすぐに降参。

 

するとそこへアリスが歩み寄って行き

 

「侍が弱い者いじめしちゃダメでしょ、早く下ろしてあげなさい」

「ああ?」

 

両手を腰に当ててこちらを見上げながら注意してきたアリスに、銀時は口をへの字にして眉をひそめた後

 

パッと和人の胸倉から手を離す。

 

「これでいいだろ、お嬢様」

「よろしい、けど私からあなたにもう一つ言っておかなきゃいけない事があるの」

「まだあんのかよ、なに?」

 

意外にも彼女の注意に従ってあげた銀時だが、彼に対してアリスは更に話を続けた。

 

「さっきおじいちゃんが造ったナーヴギアなんて大した事無いって言ってたでしょ?」

 

「だからどうしたんだよ、大事なのはコントローラーじゃねぇだろ? ゲームの中身だ」

 

「言っておくけどアレはどんな技術者でも産み出すことが出来なかった偉大な傑作デバイスよ、茅場晶彦が求めた仮想世界のリンクをより忠実にリアルにする為に、おじいちゃんが頑張って設計して見事に組み立てた、正にプレイヤーをもう一つの世界へ案内する為の扉なの」

 

「はぁ、んで?」

 

「とどのつまり、そんな凄いのを発明したおじいちゃんもまたとっても凄いって……うわ!」

 

首を傾げながらめんどくさそうに話を聞いてあげている銀時の前で、自慢げに源外の凄さを証明して見せようとするアリスだが、その源外から突然後ろ襟を掴まれズルズルと引きずられて行ってしまう。

 

「サボってねぇでさっさと仕事に戻れコノヤロー、ったくからくりのクセにちょっと目を離すとすぐコレだ……」

 

「ちょっと待っておじいちゃん! 今私はおじいちゃんが凄いんだって事をあの人に説明している所で……!」

 

「余計なお世話だ、俺が凄い事なんて俺が一番よく知ってる、からくりはからくりらしく人間様の言う事に黙って従ってればいいんだよ」

 

「むぅ……」

 

後ろ襟を掴まれたままなおも抵抗しようとするアリスだが、源外に冷たく言われると渋々といった感じで大人しくなった。

 

そんな光景を見ていた銀時はふと気になった様子で

 

「なんだジーさん、随分とそのガキには手厳しいじゃねぇか。俺はからくりの事はさっぱりだが、そんな人間らしい動きや行動をするからくりは見た事ねぇぞ、そんなすげぇモンをそんな手荒くコキ使っていいのか?」

 

「ケッ、人間らしかろうがなかろうが、からくりはからくり、テメーの仕事をサボるなんざ百年早ぇんだよ」

 

彼の問いかけに、アリスを掴んだまま源外はぶっきらぼうにフンと鼻を鳴らす。

 

「からくりっつうのは人の役に立つ為だけに人が産み出したモノだ、そいつだけはからくり技師として忘れちゃならねぇと思ってる、だからこそ俺はアレを甘やかすつもりは毛頭ねぇ」

 

そう言い終えると、源外はアリスから手を離して彼女を仕事場に向かわせる。

 

退屈そうにメンテナンスが終わるのを待っているユウキの下へ、楽しげな様子で駆けていく彼女の後ろ姿を見つめながら、源外は嘆くようにため息をこぼす。

 

「そもそもアレは俺が造ったもんじゃねぇ、造ったのは俺と昔から反りが合わない発明家の林流山と、さっきお前等に話していた茅場晶彦って奴が共同制作して生まれた代物だ」

 

「茅場晶彦が?」

 

源外の言葉に銀時よりもまた先に和人が反応した。

 

そういえばアリス自身は源外の所にいるが、彼自身が造った者ではないと前にユウキから聞いた事があったのを思い出す。

 

「もしかして、自分の弟子とライバルが造ったからくりに……嫉妬して冷たく当たってるとかじゃないよな?」

 

「俺がそんな心の狭い男に見えるか? いや、見えるかもしれねぇな……」

 

「?」

 

直球で思ったことをつい口に出してしまう和人だが、源外は返事する途中でフッと小さく笑った。

 

「坊主、俺は別にアレを嫌ってる訳じゃねぇ、むしろいい話し相手だとも思っている、見ての通りベラベラと余計な事まで喋りたがるお節介な野郎だ、からくりのクセに」

 

「確かに普通のからくりにしちゃ……随分と人間みたいに会話出来るなとは不思議に思ってたな……」

 

「長くからくりに関わった俺だからこそ、あいつらが造り出したモンがとんでもなくヤベェモンだってわかってんだ、だからこそアレとどう接っしていいのかよくわかってねぇのよ」

 

源外がそう答えると和人と銀時はふとアリスのほうへ目をやる。

 

人に近い感情を持つからくり……確かにどう扱っていいのやら全く見当がつかない。普通のからくりとしてコキ使うのか、人間の様にたまには自由にさせてあげるべきか……

 

「茅場の野郎がアイツをここに持ってきたのは随分前のことだ、年も年だしそろそろ俺には身の回りを助けてくれるモンが必要だろって、無理やり押し付けてきやがった」

 

「随分と師匠思いの弟子じゃねーか」

 

「アイツがそんな優しいタマかよ、奴はまずこの俺に最初に証明したかったのさ、江戸一番だのと言われている俺に、今までの常識をひっくり返す前代未聞の全く新しいからくりって奴をよ」

 

適当なことを言う銀時に源外は軽く首を横に振りながら

 

椅子に縛られた状態で暴れて抵抗しているユウキに、笑顔で高速回転するドリルを向けるアリスのほうへと目をやる。

 

「最初にアレを見つけたときは奴の思惑通り度肝を抜かれたぜ、なにせここまで人間に近い感性を持ったAIを持ったからくりなんざ、俺は到底不可能だとずっと確信していたからだ」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「は~い、痛くないですよ~~」

 

「あの、ちょっと待って、シリアスな雰囲気流してるところ悪いけど、ウチのユウキが今、あんたが度肝抜いたからくりに体くり抜かれそうそうになってんだけど?」

 

「そして俺はいざそいつが前に現れたと知った瞬間、いずれこのからくりの技術は、国だけでなく世界そのものにを大いなる過失と変革させるぐらいヤベェもんだとすぐに察したんだ」

 

「オイィィィィィィ!! たった今ここでそのからくりによって一人の命が過失して体を変革されかけてんだけど!?」

 

ドデカいドリルをユウキの口の中に突っ込もうとしているアリスを、慌てて銀時が叫びながら止めに駆け寄っていた。

 

それも無視して源外は一人残った和人のほうへと振り返る。

 

「ほぼ人間と変わりないからくりを造るってことは、それはつまり人間そのものを創り出すみてぇなモンだ、茅場の野郎が流山とやったことはつまり……人類に取って代わるやもしれん新たな存在を産み出したっつう事なんだよ」

 

「ハハ、随分と大袈裟だなぁ、確かにすごくリアルな動きや感情を持つ、俺たちとなんら変わらない思考をしたからくりだとは思うけど、人間にとって代わるってのは……」

 

「奴らには普通のからくりとは違って感情を持っている、いずれアレみたいなモンがどんどん作られていったら、いずれ俺達、人間に反抗する輩が表れても俺はおかしくねぇと思ってる」

 

「人に従うべき存在のからくりが人を襲う様になる、か……まるでよくあるSF映画だな、ドラ〇もんの映画でもあったし」

 

彼が言っていることはよくわかった、しかしそれは流石に考えすぎではないかと、和人は軽く笑い飛ばしながら答える。

 

からくりにだって限界はある、いくら高度で複雑な技術で造られたからといって所詮は人間が造りしモノ。

 

そんな存在が人間に反旗を翻すなんて現実じゃ到底ありえない。

 

しかし源外は冗談で言ったという感じは全く無かった。

 

 

「なあ坊主、アレに組み込まれているAIには、なにが搭載されていると思う?」

 

「は? また唐突だな……う~ん、人間に近い感情を表現できるんだし……やっぱ周りの人間の行動や思考を学習して学び続けるスポンジの様なモノかな?」

 

「悪くねぇ答えだ、だがそれじゃあ不正解だ」

 

中々筋の通った答えだとちょっと感心しながら和人に頷くと、源外は僅かに口を開いて小さく呟くとニヤリと笑った。

 

「まあコイツの答えはちとヤバ過ぎてガキのお前に聞かせるのはまだ早ぇ、知りたきゃテメー自身で探してみるこった」

 

「は!? いやここまで聞かせておいてそれは……!」

 

「だが最後に、コレだけはお前さんに言っておくぜ」

 

銀時が必死にユウキからドリルを持つアリスを引き剥がそうと奮闘している所へ歩み寄りながら

 

源外はまだ話を聞きたがっている和人の方へ振り返り

 

 

 

 

 

「茅場晶彦って奴は紛れもなく天才だ、しかしそれと同時に奴は」

 

 

 

 

 

 

「それ以上に大バカ野郎だ」

 

 

 

 

 

 

 

ユウキのメンテナンスが終わったのは、すっかり夜になった頃であった。

 

背中でグッタリした様子でいるユウキを背負いながら、銀時は和人を連れて研究所から出る。

 

「ったくドリルだのレーザーだの危なっかしいモンでこいつの体を弄りやがって、嫁入り前の娘になんて真似してんだこのマッドサイエンティスト」

 

「知るか、テメェが貰えば済む話だろそんなの、俺はただからくりを修理してやっただけだ、金の方はいつも通り倉橋から請求しておくぜ」

 

「ついでに倉橋さんに言っておいてくれ、メンテナンスの担当を替えてくれって」

 

「誰が言うか、テメェ等は俺の貴重な金ヅルなんだからな、これからも頼むぜ」

 

研究所の前でそんな悪態を言い合う銀時と源外、するとそこへアリスがやってきて銀時の服を小さな手で掴み

 

「また遊びに来てね」

「はいはい、気が向いたらな」

「もーあやふやに答えないで!」

「ぐふ! パンチ重ッ!」

 

両手が塞がって無防備になっている銀時のお腹にアリスが理不尽な腹パン。

 

じゃあなんて答えりゃいいんだよ……と舌打ちしつつ、銀時は隣にいる和人の方へ目を向け

 

「次からはお前がコイツの相手してくれ」

「いやこの子が懐いてるのは明らかにアンタの方だろ? 俺には荷が重すぎる」

「あなたもまた来てね!」

「ぐっは! なぜに俺にまで腹パン!?」

「なんとなく!」

「理不尽!」

 

急に寄ってきたアリスから突然の腹パンをモロに食らい、銀時以上のダメージを受けてフラつく和人。

 

なにも言ってないのになんで……と腹を押さえながらそう思う和人にアリスはニッコリ笑って答えるのであった。

 

「もし来なかったから、またこっちから家にお邪魔しに行くから!」

 

「それだけは勘弁してく上げてくれ、またご近所さんから家に幼女連れ込んでると思われちゃうからな、この人が」

 

「なんで俺だけ疑われるハメになるんだよ、ふざけんなお前も道連れだ」

 

「いやロリコンの称号はアンタ一人で背負ってくれ」

 

アリスを前に銀時と和人がそんな不毛な口論を続けていると、源外の方がポツリと彼らに話し始めた。

 

「そういえばお前達、EDOで遊んでるんだってな、なんか困ってたことがあったら金さえ払えば色々やってもいいぜ」

 

「ジジィが今時のゲームでやれる事なんてあんのかよ? 言っておくけどワープ土管なんてモンはねぇぞ」

 

「オメェもう忘れたのか、俺はあのゲームの製作に取り掛かってんだぞ。手始めに己の分身であるアバターの容姿・年齢・性別、自由に変更させてやろうか?」

 

「え? そんな事出来んの?」

 

「データをちょこっと改竄してやれば簡単に出来るぜ」

 

EDOで操作するアバターの設定を自分本来の姿から全く別人に変更出来ると言い出す源外に銀時は軽く驚く。

 

そういえば随分前に出会ったあのキバオウとかいう男も、現実と仮想では見た目が全く違うように改造していると言っていたが……

 

「現実の姿を捨て去り、向こうの世界で仮初の別人として振る舞いたいって連中が、俺の噂を聞いてよくやって来んだよ」

 

「マジでか、じゃあ俺も小〇旬とかになれんの?」

 

「ああ、そいつは現実の壁を越え更にそのまた現実を越えねぇと無理だな、せいぜい大泉〇だ」

 

「大〇洋はいけんのかよ!」

 

源外の話を聞いて早速興味を持つ銀時だが、残念な事にあっさりと断られてしまう。

 

そして二人のそんな会話を聞いていた和人は、恐る恐るといった感じで源外にポツリと尋ねる。

 

「なあそれ……運営側からすれば思い切り違反行為なんだけど……バレたら利用者じゃなくてアンタ自身もヤバいぞ……」

 

「細けぇ事は気にすんな、別にアバターを強化したりしてる訳じゃねぇ、見た目を替えるぐらい大したことねぇだろうが」

 

「いや大したことあると思うんだが……」

 

当然の事だがデータの不正改竄はEDOの運営側から厳しく止められている。もし改竄がバレればそのプレイヤーは即座に永久垢BAN、仮想世界の引退を余儀なくされる。

 

それを知った上でそんな危ない商売をしているのかこの男……もしかしてEDOを造った茅場に対する嫌がらせのつもりなんだろうか……

 

「悪いが遠慮しておくよ、もうすっかり今のアバターに馴染んでるし、今更他の体になるのもちょっとな……」

 

「容姿だけじゃねぇぞ、性別だって変える事だって出来る、女の体に興味ねぇか?」

 

「興味は年相応にあるが、生憎自分が女体になっても全く嬉しくないんで……」

 

リアルで女装してオカマとして働いた事はあるが、流石に己自身の身体が女性になるというのはいささか抵抗感があるので、和人は源外の誘いをやんわりと断った。

 

「まあ、アバターの改竄については遠慮しておくけど、たまにEDO内で困った時に相談にやって来るよ」

 

「あばよジーさん、今度ユウキの身体を診る時ははもうちょっとデリケートに頼むぜ」

 

「そいつはその小娘次第だな、自分の体を手荒く使わなければ軽いチューニングだけで終わらせてやるよ」

 

「じゃあねみんな!」

 

銀時の背中で、意識はあるモノのぐったりとした感じで声を出すのも辛そうな顔色を浮かべるユウキ。

 

こりゃあ今日一日使いモノにならないなと思いつつ、銀時はユウキを背負ったまま、源外とこちらに手を振るアリスに一瞥して帰宅するのであった。

 

それに続いて和人も彼の後を追おうとする。

 

「それじゃあ俺も行くわ、あ、それとアンタが話してた茅場の話、また機会があったら話して欲しいんだけど?」

 

「そいつは俺の気分次第だな、あいつの話なんざ聞いて面白いか?」

 

「まあ個人的に尊敬してる男だし興味があるんだよ」

 

「アイツを尊敬か……」

 

銀時の後を追う和人の背中をしばし見つめた後、源外はクルリと振り返って研究所に戻る。

 

「よし、戻るぞクソガキ、飯の支度と風呂の準備忘れんじゃねぇぞ」

「うん!」

 

アリスを連れて研究所へと戻る源外

 

だがその時ふと目の前を先導して歩くアリスの背中に目をやると

 

「茅場よ、コイツを俺に預けた本当の目的はなんなんだ……」

 

彼がなぜ自分にこのからくりを預けに来たのかはまだよくわかっていない。

 

和人には自慢する為だとか言っておいたが、あの男の事だろうから単に自慢したかった訳ではないなろうとわかっている。

 

「コイツには色々なモンが搭載されている、世界そのものを変えちまうヤベェモンだ、故に俺はそれを活かしてオメェの最高傑作に度々ちょっかいをかけている、まさかそいつがオメェのお望みだってぇのか?」

 

「おじいちゃん早く! 家の前でブツブツ独り言してたら遂にボケたかってご近所さんに誤解されちゃうよ!」

 

「うるせぇ! まだボケてねぇよクソったれ! いいからさっさと風呂沸せ風呂!」

 

早く来いと元気一杯に叫んでくるアリスを怒鳴り散らしながら、源外はやれやれと首を横に振りながらようやく研究所へと戻るのであった。

 

「ったく、持ってくるんならもっと大人しいからくりにしろってんだバカヤロー……」

 

 

 

 

 

「一体どんな”オリジナル”を選びやがったんだか……」

 

平賀源外、彼はアリスがどの様にして生まれたのかはすべて把握している。

 

唯一彼が知らないのは

 

彼女が生まれる為に使われた”種”であった。

 

 

 

 




次回はリズベット武具店からスタート。

長らくお待たせしました……40話以上引っ張りましたからね……

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