竿魂   作:カイバーマン。

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大分後になってしまいましたが、ようやく彼女が初登場です


第六十六層 からくり仕掛けのロリ娘

万事屋銀ちゃんにて、一番起床時間が早いのは意外にも桐ケ谷和人である。

 

「……朝か」

 

早いと言っても起きる次回は毎回午前10時ちょっと、徹夜でEDOをプレイしていた時は昼過ぎだ。一応仕事がある日は時間通りに起床するが、仕事なんてロクにないので基本的にはこの時間帯に体が起きるようになっている。

 

つまりここにいる二人の同居人は、長年ニートとして堕落した生活習慣を生きていた彼をも凌ぐお寝坊さんなのである。

 

「歯磨き粉切れかけてんな……今日買い出しに行くか、あれ? 燃えるゴミ出す日って今日だっけ?」

 

寝床にしている居間のソファを片付けると、いつものように洗面台で鏡と睨めっこしながら歯磨きして顔を洗う。

 

これが彼の平穏なる日常、自宅にいた時は色々と言われ放題だったが今は違う、何故なら自分よりグータラな奴が二人もここにいるのだから、つまり気が楽になった。

 

グータラと言ってもユウキはまだマシかもしれない、彼女は和人よりも若干遅めに起きるぐらいで、それに目覚めた瞬間すぐに切り替えスイッチを入れてハキハキと動ける。

 

問題は銀時の方だ、彼はほおっておくと昼過ぎどころか、たまに夕方に起きたりすることがある。おまけに起きてしばらく経ってもスイッチが入らずずっとボーっとしている、しかもやや機嫌が悪くなったりする時もあるのでめんどくさい。

 

「おかげで毎日起こされ役になってるこっちの身にもなって欲しいもんだ……」

 

居間に戻ると銀時の私室は相変わらず閉まっている、昨日大分遅めに帰って来たみたいだし、コレは今日も起きるのは遅い時間だろう。

 

「いつも俺の事バカにしてるけど、ぶっちゃけあの人の方が俺よりニートしてるんじゃないか?」

 

鬼が寝てる間にそんな愚痴をボソッとこぼしながら、とりあえずテレビでも見るかと和人はソファの方へと移動する。

 

だがその時

 

「ん?」

 

足下にコツンと何か当たる感触が、結構大きめなモノを軽く蹴った感触を覚えて和人が見下ろしてみるとそこには

 

「う~ん、いきなり魔法少女になろうと言われても困るんだけどボク……もうそんな年でも無いし……」

 

「うぇ!」

 

なんと冷たい床の上で寝間着姿のユウキがゴロンと転がって横になっていた。

 

おまけにしかめっ面を浮かべて変な寝言を呟いている。

 

いつもは押し入れの中、もしくは銀時と一緒に寝ている事が多い彼女がどうして床で……

 

「おいユウキ起きろ、朝だぞ」

「え? 25才なのに現役で魔法少女やってる人もいる? いやそれはもういい加減誰かが言って辞めさせてあげるべきじゃ……あ、キリトおはよう」

 

和人が軽く体を揺すってやるとユウキはすぐにパチッと目を覚ました。相変わらず目覚めからの覚醒が異常なほど早いので、和人は頬を引きつらせながら軽く挨拶。

 

「おはよう、なんださっきの寝言、お前一体どんな夢見てたんだ……」

「夢? あ~そういえばついさっき見てたような……でも思い出せないや、なんか白い変な生き物がいたような気はするけど……あれ?」

 

起きる直前まで見ていた夢の内容が思い出そうと、半身を起こしながら頭を捻っている途中でふとユウキは気付く。

 

自分が床の上に座っている事に

 

「……なんでボク、床の上にいるの?」

「お前、少なくとも俺が起きた時からここで寝てたぞ」

「え? どういう事?」

「それはこっちが聞きたいんだが?」

 

キョトンとした様子で床を手でなぞりながら疑問を呟く彼女に、和人はジト目で見下ろしながら返事する。

 

「お前、昨日どこで寝てたんだ?」

 

「んー最初は押し入れの中で寝てて、その後銀時が寝たタイミングを見計らって彼と一緒の布団で寝たよ?」

 

「当たり前のようにあの人と一緒に寝てるんだな……」

 

男女が一緒の布団の中で寝るという時点で、それはもうそういう仲だと公言しても良いじゃなかろうかと思いつつも、とりあえずなぜ彼女が床の上で寝ているのか起きたばかりの頭で和人は推理し始める。

 

「ま、一番確率高いのは寝ぼけたあの人に廊下につまみ出されたって所だ」

 

「あーそれよくある、銀時の眠りが浅い時に部屋に行っちゃうと追い出されるんだよね」

 

「めげないなお前も……じゃあ今回もそうかもしれないな」

 

まあ大方銀時が彼女をここに寝かせたのだろうと即決で推理を終わらせると

 

本人に聞けばすぐわかるだろと和人は銀時の寝ている私室へと歩み寄って襖を手で掴む。

 

「おいもう朝だぞ、今日は決野アナが朝から出演するんだろ? それとアンタ、もうちょっとユウキには優しくしてやっても……」

 

まだちょっと眠たそうにしながらも和人はスッと襖を開けてこの家の家主を起こしにかかった。

 

しかし

「………………………………………え?」

 

彼の私室を開けた直後に

 

眠りたそうな彼の脳は完全に目覚め、その目は大きく見開かれた。

 

まるで朝から”とてつもなくヤバい光景”を目撃してしまったかのように

 

「どったの?」

「!?」

 

不意に後ろからユウキに話しかけられた瞬間、和人は反射的にピシャリと襖を閉めた。

 

首筋から嫌な汗が流れ落ちるのを感じる、頭の中が完全にパニックになっているのも……

 

後ろで「?」と首を傾げるユウキの方へ、和人は必死に平常心を装いながらゆっくりと振り返る。

 

「わ、悪いユウキ……そういえば歯磨き粉切れかけてるからちょっと薬局行って来てくれないか? トイレットペーパーの予備も買わなきゃだし……」

 

「それは別にお安い御用だけどさ、で? なんか焦ってるみたいだけど銀時になんかあったの?」

 

「あ、焦ってねぇし! 別に部屋の中も特におかしい事無かったし!」

 

「いやいやさっきから物凄い動揺した感じで汗が流れ落ちてるからね?」

 

尋常じゃない程汗を流している和人を見れば誰でも何かあったのかぐらい容易にわかる。

 

「ちょっと銀時見せてよ、なに? まさかいきなり天パからストパーにフォルムチェンジしてたとか?」

 

「ダメだ! お前だけには絶対に見せられない!」

 

「えーなんでボクにだけ見せられないのさ」

 

「どうしても無理! お前にだけは! お前にだけはこんな真実を見て欲しくないんだ!」

 

だったら自分で確認しようと立ち上がって歩み寄って来たユウキに、和人は銀時の私室の前で背を向けて通せんぼ。頑なに部屋の中を見せようとしない和人にますますユウキは怪しむ様に目を細める。

 

「大丈夫だって、銀時との付き合いは長いんだよボク、例え彼がストパーになっていてもそれを受け入れられる自信があるから」

 

「いいからユウキは買い物に行ってくれよ! ほら! 歯磨き粉とトイレットペーパー! 人類において最も大切なモノがこの家から二つも無くなりかけてる危機なんだ! ユウキも無かったら困るだろ!?」

 

「からくり仕掛けのボクには両方とも必要ないモノだけど?」

 

断固部屋の前から動こうとしない和人を手で押しのけると、ユウキは遂に強引に襖を開けようとし始めた。

 

「だからボクはちっぽけな事じゃ動揺しないって、いいから開けて見せてよ」

「や~め~ろ~や~! この部屋の奥でどんだけ恐ろしい光景があると思ってんだ!」

「いいからいいから」

 

そう言って非力な和人を無理矢理脇に押しやると、ユウキは両手でバッと勢い良く襖を開けた、否、開けてしまった。

 

「銀時ー朝だよー、ストパーになってもボクは全然平気だからさっさと起き……」

「………………………………………」

 

銀時の部屋を開けた瞬間、ユウキは襖を開けたポーズのまま無言で固まった。

 

それを見て和人は頭を抱えて「あちゃー……」と呟きつつ、そっと彼女と共に部屋の中を覗き込む。

 

そこにある光景は……

 

 

 

 

 

布団の中で涎垂らして熟睡してる銀時と

 

 

 

 

 

そんな彼と寄り添うように同じ布団で幸せそうに寝ている金髪のロリっ娘の姿があったのだ。

 

「……」

 

オッサンが幼女と添い寝してる状況、そんな光景を前にしてユウキの思考は停止し完全にフリーズしてしまった。

 

すると彼女達の気配に気づいて銀時の方が、ゆっくりと目蓋を開けてやっと起きた。

 

「……あ? 朝っぱらからどうしたお前等?」

「……」

 

 

まだ寝ぼけてる様子でポリポリと頭を掻きながら、半身を起こしてこちらに死んだ目を向ける銀時。

 

だがそんな彼を見つめる今のユウキは彼以上に目が死んでいる。

 

返事をせずにただ黙って見つめて来る彼女に銀時は違和感を覚えるとふと自分の布団を見下ろしてみると

 

「スゥー……」

「……え?」

 

隣りで安らかな寝息を立てて眠っている洋風の恰好をした、小さな金髪の女の子がいる事にやっと気付く銀時であった。

 

 

 

 

 

 

そしてそれから数分後

 

「腐ってる……」

「……」

 

居間で坂田家緊急会議が始まった。

 

和人とユウキが同じソファに座り、起きたばかりの銀時は向かいに座っている状態。

 

そんな中で最初に口を開いたのはやはり和人であった。

 

「前々からいつかやるだろうとは思っていたけど……まさかあんな小さな子に手を出すなんて……アンタ本当に最低のクソ野郎だな、あっさりと底値更新だよ、おめでとう」

 

「いや待てって……頼むから俺にもちょっと考える時間をくれよ、本当に何も覚えてないんだって……」

 

「ただでさえ合法ロリのユウキとセットの時は怪しい絵面だったのに……まあ薄々はわかってたよ、アンタがロリコンだって事ぐらい、いやもはやペド野郎だな……」

 

「だから違うんだって!」

 

心底幻滅した表情で汚物を見る様な目を向けて来る和人に、遂に銀時が声を大きくして真ん中にあるテーブルを強く叩いた。

 

「覚えてねぇんだよ本当に! 昨日の晩はちょっくら街で呑んでから帰った! けどそん時にこんなガキをテイクアウトした覚えなんかねぇんだよ!!」

 

「朝からそんな大きな声で怒鳴っちゃダメよ、休日ならもっと心をリラックスしてゆっくりしなさい、はいお茶」

 

「あ、どうも」

 

必死に自分はあんな幼子を連れて帰った覚えはないと主張する銀時をよそに

 

金髪碧眼の白いフリルを付けた上掛けに青色のスカートを付けた少女が、優しげな声をしながら彼の前に置かれたテーブルの上にコトッとお茶を出す。

 

「記憶が無いとかそんなの理由にならないだろ、アンタは現にここに、俺やユウキが住んでいるこの家で堂々とあの金髪ロリっ娘と添い寝してたじゃねぇか、もうその時点で人として終わってるよ」

 

「もう、その金髪ロリっ娘って呼び方止めて欲しいんだけど、これでも私は一人前のレディなんですからね?」

 

「あ、すみません」

 

つい本人が横にいるのに失言してしまい、思わず平謝りする和人。

 

「とりあえずアレだな、自首しようぜ」

 

「いやなに軽いノリで人に自首進めてんのお前!? どうしてそんな早く結論出したがるかなーお前!」

 

「どうせ前科持ってんだろ、金髪ロリの吸血鬼とか瞬間移動できるツインテ娘とかと仲良くしてたんだろ?」

 

「それ別の世界の銀さんだろうが! あんな中学生ばかりはべらかしてるクズ共と一緒にするな! この世界の銀さんは至ってまともだ!」

 

「そもそも原作自体、14歳の娘をヒロインにして同居生活を送っているという時点で危ないんだよ」

 

「それは銀さん悪くねぇだろ! 悪いのは原作描いてるゴリラだろうが!」

 

こればっかりはもう援護のしようがない、よもやこんな小さな幼子を家に連れて帰り自分の部屋で一緒に寝るとは……もはや立派な犯罪である、言い逃れは許されないのだ。

 

金髪少女が自分と銀時の間に立っている中で、ソファにもたれながら和人ははぁ~と重いため息をつく。

 

「ったく、なんて事をしてくれたんだよアンタ……主人公として以前に人としての道を踏み外すなんて……」

 

「誰だって道の一つや二つ外れて歩きたくなるモノよ、大事なのは外れてもなお元の道に戻れるかどうか、でしょ?」

 

「はぁ、そうっすね」

 

「おい待てよ和人君、さっきから人の事を散々ロリやらペドやらと非難するのは勝手だけどな、まだそうと決まった訳じゃねぇだろ、俺自身そんなのに興味無いって身の潔白をすればワンチャン残ってるだろ」

 

「今更言い逃れなんてするなんてあなたらしくないわ、隠し事をするから余計に怪しく見えるのよ、これからは日が差す明るい場所に出て堂々とみんなに言ってやればいいの」

 

「はぁ、そうっすねって言えるかァァァァァァァァ!!!」

 

和人と銀時の傍を行ったり来たりしてアドバイス的な事を送り始める金髪碧眼少女に、遂に銀時が立ち上がって指を突き付けた。

 

「つうかなんなんだよさっきからお前! なんで自然にこの家の中を歩き回りながらお茶まで出してんの!?」

 

「だってさっきからみんなイライラしてるじゃない、だから私が落ち着かせようとなだめてあげてるの」

 

「イライラしてるのは主にお前が元凶だからなんですけど!?」

 

見た目は完全に小さな女の子なのにかなり大人びた感じだ。今時の子はみんなこういう感じなのだろうか?

 

銀時に対しても負けずに言葉を突っ返す彼女を、和人はぼんやりと眺めながらそんな事を考えつつ

 

さっきからずっと自分の隣で黙り込んでいるユウキの方へ視線を向けた。

 

「だ、大丈夫かユウキ……いや大丈夫じゃないよな、信じた男がまさかの金髪娘をテイクアウトして来るなんて……」

 

「……いや、君が考えてるよりはショック受けてないよボク、君が考えてるよりは、だけど」

 

「え?」

 

彼女に言葉を投げかけると意外にもあっさりと返事した。そしてユウキはしかめっ面のまま銀時の方へ顔を上げ

 

「大丈夫だよ銀時、この子は多分酔った銀時が連れて帰ってきた訳じゃないと思うから、だって夜中に銀時の部屋に行った時、寝ていたのは君だけだったから」

 

「へ、本当に?」

 

「ていうか本人に直接尋ねればすぐわかると思うよ?」

 

「ああ、そういやそうか……」

 

機嫌が悪そうなのは相変わらずだが、自らこちらに話しかけてくれたユウキに銀時は若干嬉しそうな反応を見せつつ、すぐに少女の方へと振り返った。

 

「なあ小娘、ちょいとばか聞きてぇ事あんだけど?」

 

「ごめんなさい、今から洗濯物を干さないといけないの」

 

「お茶出した次は洗濯物!? いいからいいから! 俺がやっておくからとにかくこっち来て!」

 

いつの間にか勝手に家の洗濯物を干そうと小さな体で奮闘している少女に、慌てて銀時が呼び止めて自分の隣に座らせた。

 

「あのさ、つかぬ事をお聞きしますけど、自分がどうしてこの家にいるのかちゃんと覚えてます?」

 

「うん、私が自分から入って来たの」

 

「へ~……自分から!? いつ!?」

 

「今日の早朝よ、みんながぐっすり寝てる時に」

 

「はぁ!?」

 

ソファに座りながら床に着かない足をパタパタさせる少女があっさりと言った言葉に、銀時だけでなく和人も口を開けて言葉を失ってしまう。

 

「おいちょっと待て! 俺達みんなが寝てる時間帯にやって来たって! じゃあお前どうやってこの家の中入って来たんだ!? 戸締りはしっかりしてた筈だぞ!?」

 

「そうそう、あなたに言いたかったんだけど、今時戸締りが鍵一つだけって物騒だから危ないわよ? 戸の鍵なんて針金1本あればプロなら簡単に開けられちゃうんだから」

 

「開けられちゃうんだから、じゃねぇよ! 人の家にピッキングして入ってくんじゃねぇ! 普通に家宅侵入罪じゃねぇか!」

 

得意げにキラリと光る曲がりくねった針金を取り出して見せる少女に銀時はすぐにツッコミを入れる。

  

なんなんだこの少女、どうしてこの家に入り込んだんだ……

 

「もしかしてお前、その年で人の家に盗みでも働いてんじゃねぇだろうな?」

「あ、ひっどーい! 私がそんな真似する訳ないでしょ! 私がこの家に来たのは!」

 

銀時に言われた事に気分を害したのか、頬を膨らませてちょっと怒った様子を見せながら、少女はビシッと向かいに座ってしかめっ面のまま睨んで来るユウキを指差す。

 

「最近全然メンテナンスに来ないから連れて来いっておじいちゃんに言われたからなの!」

 

「……」

 

「……は? メンテナンス?」

 

メンテナンス、おじいちゃん……その言葉を聞いて和人はピンと来た感じで目を見開く。

 

「あ、そういえば長い金髪の女の子……もしかして……!」

 

「そうだよ和人、ボクはこの子を前に会った事があるの、源外のじいちゃんの所でね」

 

「!」

 

居間より結構前な時期、和人がこの家に住む様になってからの時に一度だけユウキから聞いた事がある。

 

江戸一番の発明家・平賀源外の研究所には弟子から貰った不思議な家政婦ロボがいるという事を

 

つまり目の前にいるこの少女こそ……

 

「そうよ、私はからくり仕掛けの家政婦ロボ。人々のお手伝いをする為に造られただけの存在」

 

自分の正体をあっさりと笑いかけながら答える少女、それはどっからどう見てもからくりとは思えない自然な笑顔だった。

 

「アリス・ツーベルク、それが私を造ってくれた人が付けてくれた名前なんだ」

 

「ア、アリスゥ!?」

 

アリスと名乗る家政婦ロボに突然素っ頓狂な声を上げる銀時。

 

「お前まさか! EDOとかやってないよな!?」

 

「EDO?」

 

突然の質問にアリスは小首を傾げて考える仕草を取ると、すぐに首を戻して銀時の方へ顔を上げて

 

「EDOの事はおじいちゃんからたまに聞くし私もちょっとお手伝いしたりするけど、直接プレイした事は一度も無いわよ?」

 

「ああそうか……良かったぁ、てっきりあのアリスかと思ったぜ、同じ金髪碧眼だし妙に顔付きが似通ってるし……」

 

「いきなりどうしたの? 変な人、フフ」

 

目の前で安心したように胸を撫で下ろす銀時にアリスは無邪気に笑って見せた。

 

本当にからくりとは思えない精巧な動きだ。感情の表現も違和感なく人間とまるで大差ない

 

「あ、そうそう! 早く行きましょうユウキ! おじいちゃんをこれ以上待たせちゃダメでしょ!」

 

「……はぁ~、いや行けと言われれば大人しく行くけどさ、メンテが大事なのは確かだし……」

 

そしておもむろに思い出したかのようにバッと身を乗り上げてユウキに叫ぶアリス。

 

するとユウキの方は片目を釣り上げながら嫌そうな表情を浮かべて

 

「ところでアリス、一つ聞いていい? 今日どうして君、銀時と同じ布団で一緒に寝てたの?」

 

「この人があまりにも気持ちよさそうに寝てたもんだから、つい釣られて眠くなっちゃって一緒に眠っちゃったの」

 

「からくりの君がねぇ……それでさ、実は君が銀時と一緒に寝る前にボクも彼の布団の中にいたんだよ、それで朝起きたら今の床の上に転がっていたの、なんでかな?」

 

「知らない」

 

「……」

 

二つの質問に一つ目はあっさりと答え、二つ目は即答でわからないと回答。

 

ユウキはますます険しい表情を浮かべると、特に気にしていない様子でアリスはニッコリと笑ったまま

 

「それじゃあ、みんなで行きましょ、おじいちゃんの研究所に」

「は? 俺達も?」

「俺としては嬉しいけど……」

「いいのいいの、沢山お客さんが来てくれた方がおじいちゃん喜ぶから」

 

彼女に案内され三人はユウキのメンテナンスの為にすぐに研究所へ向かう事に

 

江戸一番のからくり技師・平賀源外の下で日々働く家政婦ロボのアリス・ツーベルク

 

ユウキが苦手とするもう一人のアリスである。

 




ゲームにかまけ過ぎると話のストックがゴリゴリ削られていくので、ぶっちゃけ今かなりの修羅場です。自業自得だけど週4本同時連載は流石にキツい……

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