徐々に面白くなって一応最後まで観る事が出来ました。
ラストがレッドデッドリデンプション2のアーサー編みたいで良かったです。
結論・ウェイバーが生き残ってくれたからそれで満足!
第六十一層 SAN値ピンチ!SAN値ピンチ!
EDOは基本的に他の星でプレイしているプレイヤーと遭遇する事は無い。
EDOは地球で誕生した一人の天才が生み出した大人気ゲーム、遊んでいるプレイヤーは宇宙規模になると非常に多くとても運営側は全てのプレイヤーを管理する事は出来ない
故にそれぞれの星一つ一つに運営を築く事にし、それぞれの星でプレイヤーや仮想世界の運営を行う様になったのだ。
ただ稀に、他の星に住むプレイヤーとも交流する機会がある。
それはEDOの運営側が指定した日にのみ開催されるイベントであり、五十層以上攻略してる者達のみが参加する事を許される。
正式には他の星の者達と親密な関係を築く為の『異星交流会』と呼ばれ
他の星の連中をぶっ飛ばしてやりたいという血気盛んなプレイヤーからは『宇宙戦』と呼ばれている。
「はぁ~すっげぇ数だなオイ、そこら中に天人共がウジャウジャいやがる」
ここはイベント時にのみ転移可能となる特殊フィールド、『月』
そこにはあちらこちらに地球ではお目にかかれない天人のEDOプレイヤーが所狭しと騒ぎながら歩き回っている。
彼等を物珍しそうに見ながら、宇宙戦に初参加した銀時も同じように勝手にフラフラと歩いていた。
周りが星々が煌めく宇宙だというのもあって、茶色いローブに身を包んだ彼は一層ジェダイの騎士っぽかった。
「キリト君が言ってた事が確かなら、ここにいる連中全員を皆殺しにすりゃいいんだっけ?」
「そんな真似したら君も晴れて攘夷プレイヤーの仲間入りだよ、銀時」
こちらが地球人だと知ってジロジロと見て来る天人達を見渡しながら物騒な事を銀時が口走っていると
そこへ遅れて転移してやって来たユウキが急いで駆け寄って来た。
「ここは元々色んな星のプレイヤー達と交流を深める神聖な場所なんだよ、まあ建て前だけなんだけど、今じゃすっかり地球人VS他の星の天人って構図で戦争ばかり起こしてギスギスしっ放しなんだ」
「それで宇宙戦って呼ばれてんのか、時代は変わったな、俺達が若い頃は陸地で生身の身体で剣振り回してただけだってのに、今じゃ死んでもすぐ復活できる上に宇宙でどんちゃん騒ぎと来たモンだ」
「実際に戦争やらかすよりは平和的で良いじゃん、血を流すことなく戦争を体験できるんだからストレス溜まってる連中にはいい憂さ晴らしになるんじゃない?」
はぐれない様に彼にピッタリと寄り添いながらユウキは銀時を月の中心部にある街の方へと案内する。
その途中で談笑を交えながらふと彼女は、彼が着ている衣装と腰元に差す二つ刃のビームサーベルが目に移った。
「ここに来る前に神器が完成していれば良かったねぇ、それに防具の新調も間に合わなかったし」
「仕方ねぇだろあのピンク店主がまだ造り終えてねぇんだから、てか防具の新調ってなんだよ、まさかまた新しい服を買わなきゃいけねぇの?」
「そうだよ、だって前に新調したのは三十層辺りの時、銀時はもうすぐ六十層に到達じゃん」
銀時の装備は三十層辺りの頃からずっと同じままだ。
さほど防御力は高いわけではないが身軽さ重視の茶色のローブ、その内にサンドカラーの着物。
そして腰に差すのは相手の飛び道具を受けきる事を得意とする特殊ビームサーベルの千封鬼
銀時の現在攻略層はもう五十九。
異常なまでにめんどくさがりの銀時はずっと同じ装備で戦っていたが、ベテランのユウキはそろそろ変えておかないと厳しいと諭す。
「六十層になったらもうボクとキリトだけの三人体制じゃ勝てなくなる。そこからは最低でも十人はパーティーにいないとまずボスは倒せないんだ。だから銀時自身もそろそろ武器と防具のレベルアップをしないとね」
「またかよ、武器の方ならもうすぐ出来る神器があるけどよ、防具に関しちゃ全く当てがねぇぞ俺」
「大丈夫だよ銀時、防具の方はボクがなんとかするから」
「は?」
店に絶賛引き篭もり中のリズベット曰く、満足できる神器がそろそろ出来上がるとは言っていたが防具の事は全く考えていなかった銀時。
しかしユウキはなにやら考えがあるらしく、心配はないと自信を持って答える。
「銀時が神器を手に入れた時に用意するから、楽しみに待っててね」
「なんか企んでのかお前? そういやここ最近は更にコソコソと勝手にどっか行くことが増えたじゃねぇか」
「まあまあ、乙女には秘密の一つや二つあるモンなんだよ」
「乙女って年かよお前」
「男がいくつになっても少年の心を忘れないように、女だっていつまでも乙女のままなんだよ」
見た目だけなら十分乙女と言い切れるユウキだが、銀時は彼女の実年齢を知っているのでその台詞に苦い顔を浮かべるのみ。
しばらく二人そのまま歩いていると、周りがどんどん活気づき始め、いつの間にか多くの店が立ち並ぶ所へ来ていた。
「あ、ほら見て。町に向かう道中でこんなに店が並んでるよ、食べ歩きでもする?」
「おいおい、これじゃあ江戸と大して変わらねぇじゃねぇか」
さながら江戸で行われる夏祭りだろうか、人々が賑わいながら歩く道に所狭しと色々なモノが売られてる店がズラリと並んでいる光景を見て、銀時は目を細めて小首を傾げる。
「せめてもっと宇宙っぽいの出せよ、スターウォーズみてぇに異星人共が集まって喧嘩する酒場とかさ」
「はい銀時、クトゥルフ焼き」
「宇宙っぽいの来たァァァァァァァ!!」
すると立ち並ぶ店に文句を言っている銀時の下へ、いつの間にか買い物をして来たユウキが元気そうにタコ焼き?の様なモノを持って来た。
見た目はタコ焼きだがカリッと香ばしい匂いと共に中から狂気じみた呻き声が……
「大丈夫なのコレ!? 食っても狂気状態になるとかならない!?」
「大丈夫大丈夫、こうして食べても全然平気だから、ね、姉ちゃん」
「オイィィィィィィィ!!! 早速幻覚見えてんじゃねぇかァァァァァァァ!!」
目の前で爪楊枝で美味しそうに頬張りつつ、誰もいない隣に向かって笑顔で話しかけているユウキ
流石に洒落にならないと銀時は慌てて彼女が持っているクトゥルフ焼きをほおり捨てるのであった。
「ん?」
「どうしたの新八……シンさん?」
「いやなんかどっかで聞いた声がツッコミを叫んでるような気がしたんだが……気のせいか」
「相変わらずツッコミには敏感なんだね……」
一方銀時とユウキがいる所から少し離れた場所では
銀時と同じく宇宙戦に初めて参加した桐ケ谷直葉ことリーファ、志村新八ことシンがいた。
二人はついさっきやっと五十層を突破した事で、興味本位でここに足を踏み入れたのである。
「前にお兄ちゃんがよく言ってたの、俺は宇宙では天人共をぶった斬りまくるヒーローなんだぜってドヤ顔で。だからもしかしたらここで天人達を斬ろうとウロついてるかもしれないわ」
「ヒーローっつうかただの通り魔だろそれ……全く、何処の世界でも醜態を晒す気かアイツは……」
ここに来た目的は桐ケ谷和人ことキリトを探す事。
彼がどの辺まで攻略しているかは知らないが、このイベントでは攻略関係なく五十層以上のプレイヤーであればだれでも参加できる。
ずっと先を進んでいるであろうキリトを一目見ておこうと思っていたリーファは、新八を強引に連れてここへとやって来たのであった。
「こんな祭り事に参加せずともいずれアイツとは会えるだろ、本来なら俺達はこんな所で油売ってないで、更に上の層を目指すべきだというのに」
「いいでしょ別に、最近ずっと戦い続きで疲れちゃってんだから羽だって伸ばしたいわよ」
ここ最近攻略スピードを伸ばしたおかげでリーファは内心ヘトヘトだったのだ。
キリトに会うというのは実はただの建て前で、たまには攻略も忘れてゆっくりイベントを楽しみたいというのが彼女の本音。
そんな思惑も長い付き合いの中で容易にわかっている新八と、リーファは一緒に楽しもうと徹底的に付き合ってもらう事にした。
「はいシンさん、コレ買って来たから食べて」
「え……なに、それ……」
「ニャルラトホテプの串焼き」
「食えるかァァァァァァァ!!!」
串に貫かれた触手の様なモノがニュルニュル蠢いているのを笑顔で差し出してきたリーファに新八は先程叫び声同様大きく声を上げて拒否する。
「ニャルラトホテプの串焼きってなんだよ! 邪神をこんがり焼いた上に串刺しにするとか100パー呪われるわ!!」
「なにビビってんのよ別に本物の邪神を焼いた訳じゃ無いのに、安心して食べてよシンさん、さっき私は食べ終えたけど別に異常は無かったから、ね、尾美一お兄ちゃん」
「異常しかねぇじゃねぇか! 見えるんか!? そこに一兄がいるんか!?」
外なる神の串焼きを既に一本平らげていたリーファは誰もいない隣に向かって気さくに話しかけている。
新八は慌ててツッコミながら彼女の両肩を掴んで「早く正気に戻れぇぇぇぇぇぇ!!」とひたすら叫ぶしかなった。
「ん?」
「どうしたの神楽ちゃん?」
「いや今なんかやかましいツッコミが聞こえた気が……まあどうでもいいか」
リーファと新八から少し後方にて、血盟騎士団の客人である神楽が小首を傾げていた。
副団長であるアスナと共にイベントを満喫してる中でやかましい声が聞こえたと目を細めるが、すぐに気にするのを止めてまた彼女と一緒に歩き出す。
「しかしここは相変わらず人が多くて歩きづらいわ、いっその事目の前の連中を片っ端にぶっ飛ばしていきながら進んでみる?」
「この世界の秩序を守る使命を持つ血盟組の副長によく言えたわね……そんな真似したら親友のあなただって牢獄にぶち込むわよ」
「冗談よ、でも歩きづらくてイライラしてるのは本当だから食べ歩きしていい?」
「それぐらいなら構わないけど……今はパトロール中だってのを忘れないでよ」
アスナと神楽は現在このイベントが無事に終わる為にフィールド内で何か異常が無いか巡回してるみたいだ。
ここ最近天人に喧嘩を売って戦争へと発展させようとしてる攘夷プレイヤーによって、天人との衝突は日増しに激化している。
だからこそ運営側からEDOの治安を護るべしと任命されている公式ギルド・血盟騎士団は抑止力の為にこうして常に目を光らせて辺りを伺っているのだ。
当然、副団長のアスナだけでなく、このフィールドには彼女以外のメンバーが一人見廻りに来てくれている。
それは血盟騎士団を率いるトップの……
「局長もやっと重い腰を上げてここに足を運んでくれたし、いよいよ犯罪者の一斉取り締まりになりそうだから神楽ちゃんも気合入れてよ」
「局長じゃなくて団長でしょ」
「私がそう呼んでるんだからいいのよ、ていうか神楽ちゃん、口の中でなにクチャクチャしてるの?」
「ああ、コレ?」
血盟騎士団を血盟組、自らを副長と名乗り、そしてトップの事は局長と呼ぶという完全に現実世界にある真撰組を意識した呼称を頑なに用いるアスナに神楽が呆れながら呟きつつも、彼女の口の中では何か得体の知れないモノを噛む音が……
アスナが思い切って尋ねると神楽は手に持っていた丸い食べ物を取り出して
「ゴル=ゴロス饅頭」
「……ゴル=ゴロスってクトゥルフ神話に出てくるヒキガエルみたいな邪神の事……?」
「クトゥ……何それ? ひょっとしてアスナがたまに平日の昼間からパソコンで観てる動画の奴?」
「ああうんそれ、TRPGやってみたいんだけどやる人いないから他人がやってるのをよく観て……じゃなくて! そんなモンをなに平然と食べてるのよ! お腹壊すレベルじゃ済まないわよ!」
宇宙空間という異質な場所だからといって売って良いモノと悪いモノがあると、アスナは慌てて邪神印の饅頭を彼女から取り上げようとするが、神楽はヒョイとそれを避けながら口をモグモグさせつつ懐から新しい饅頭を取り出す。
「欲しいならちゃんと言いなさいよ、ほら、アンタの分も買ってきてあげてるんだから、勘違いしないでよね、別に何時も頑張ってるアンタの事を思って奢ってあげたとかじゃないんだから」
「えぇ~そこでツンデレになられると食べなきゃいけない感じになるじゃないの……大丈夫なのコレ本当に?」
「美味しいとは言えないけどクセになる味ね、グチュグチュしてる食感も嫌いじゃないわ、マミーもそう言ってるし」
「マミー!? 神楽ちゃんのお母さんってずっと昔に星になったとか言ってなかった!? そこにいるの神楽ちゃん!? 神楽ちゃんのマミーはそこで一緒にゴル=ゴロスいっちゃってるの!?」
「え、なにアルかマミー? ぶふぅ! それ言っちゃアスナ姐が可哀想アルよプププ!」
「なんなの私の悪口でも言ってるのマミー!? 喧嘩なら買いますけどマミー!」
神楽の母はずっと前に亡くなった彼女の父から聞かされた事があったのだが……
誰もいない空間と会話しながらこちらをチラ見しながらニヤニヤし始める神楽にアスナがムカッとしつつ、彼女から貰った饅頭をどうしたもんかと見つめる。。
「邪神の名を借りてるだけあって明らかにヤバいモン含まれてるでしょコレ……直接店に出向いて取り締まる必要があるわね……きゃ!」
「あ、悪い」
こうして見つめていると中から不気味な歌が流れているような気がすると、アスナが更に怪しむ様に確認を取ってる途中で
後ろから勢いよくドンと押されながらも、軽い感じで謝って来た男の声にどこか聞き覚えがあった
アスナはすぐに後ろに振り返ってみると
「「あ」」
そこにいたのは黒髪、黒コートの厨二剣士
アスナにとっては宿敵と言っても過言ではない黒夜叉ことキリトであった。
互いにぶつかった相手の顔を見て誰なのかわかった様子でいると、いち早くキリトの方がクルリと彼女に背を向け
「おつかれっした~!」
「待ちなさいよコラァァァァァァァ!!」
よりにもよってこの天人達が集う場所に攘夷プレイヤーである彼がノコノコとやって来るとは
人込みを掻き分けて颯爽と逃げ出すキリトを、アスナもまた神楽をその場に置いて一目散に追いかけ始める。
「ホント何度も顔合わせるわね! でもこれでもう終わりよ! 神妙にお縄に付きなさいこの犯罪プレイヤー!」
「人聞きの悪い事言うなよ! 俺はまだ何もやってねぇ! ただイベント観光に来ただけの無実のプレイヤーを捕まえるとかそれが血盟騎士団のやり方なのか!?」
「どうせいずれやるんでしょ! だったら今の内にちゃっちゃっと牢屋にぶち込まれなさい!」
「ふざけんな! そんな横暴が許されるとか思ってんのかコンチクショー! 俺はただ連れ二人と合流する途中なだけだっつうの!」
どうやらキリトは今回はただ純粋にイベントに参加するつもりだった様だ。
銀時は初参加だしいきなり戦争をおっ始めるのは早いだろと、今回だけは普通に街中で食べ歩きでもしようかなとか一人のプレイヤーとして楽しむことが目的だったのだ。
しかし色々と前科持ちである彼がそう言って簡単に信じるアスナではない。
目の前の天人達を乱暴に押し飛ばし、既に彼女の目は逃げるキリトの背中しか見えなくなっていたのだ。
「大人しく捕まりなさい!! これ以上の狼藉は血盟組の副長である私が許さないわ!」
「誰が捕まるか! てか天人達に乱暴してるのは現在進行形でお前の方だからな! さっきから俺を追う為に何人もの天人を圧し飛ばして踏んづけてるぞ!」
「検挙の為の必要な犠牲よ!」
「それでいいのか正義の味方!」
追うアスナと逃げるキリト
周りのプレイヤーに迷惑を掛けたことによって目撃者から通報される事も知らずに
二人はそのまま中心部にある街の方へと走り去るのであった。
そしてその頃、キリトが追われてるのも知らずに銀時とユウキはというと
「へぇ~ここが月の街か、五十層にあった街よりもでっけぇな」
「プレイヤーの人数が半端ないからね、たくさん人が入れるよう街も大きいんだよ」
そこは圧巻と言えば圧巻とも言える広い街であった、街というよりもう立派な都市だ。
月の中とは思えないまるで江戸にいるかのような光景に銀時が見取れてしまっていると、隣にいたユウキは説明しながらふと後ろに振り返る。
「そうだよね姉ちゃん」
「おい、まだ藍子見えてんのかよ」
「うん、今はもう三十人ぐらいの姉ちゃんがゾロゾロとボク等の後を付いて来てるよ」
「影分身してんじゃねーか! いい加減正気に戻れ300コルあげるから!」
未だ幻覚作用が収まっていない上に時間が経つごとに悪化までしてるユウキに、銀時が立ち止まって本気で心配になって来ていると
「うん?」
「あ、すみません、ってあー!」
こちらが急に立ち止まったせいで背中に誰かがぶつかったみたいだ。
ドンと背中に軽く当たったのと同時に謝られたので、銀時が後ろに振り返ってみると
そこには青色のノースリーブベストと赤い鉢巻きという奇抜な恰好をした男が自分の足下でしゃがみ込んでいた。
「ぶつかった拍子に落としてしまったでござる! アレが無いと僕は!」
「あ? なんか落としたのかアンタ、ん?」
自分とぶつかった時に何か大事なモノを下に落としてしまったのか、慌てて探し始める男を銀時が見下ろしているとふと、彼の丁度真後ろになにか変な人形が転がっているのに気付いた。
「おいオタクっぽい奴、そこにあるのお前の落としモンか?」
「え? あぁー! 僕の大切なYUNAちゃんフィギュア!」
白髪の女の子の可愛らしい人形を銀時が指差して呟くと、男はすぐに振り返ってそれを慌てて拾う。
「危ない危ない、この一流職人が造り上げた高クオリティの完成度を誇るYUNAちゃんフィギュアを失ってしまったら、僕はもう生きる気力を失い絶望する所だった」
「人形一つでそこまで慌てるなんて変な野郎だな、そんなに大事なのかそれ?」
「勿論、コレは僕がこの世界で必死な目に遭いながらお金を貯め続け、周りに無駄遣いするなと罵られながらもようやく手に入れた自慢のコレクションで……」
大事そうにフィギュアを抱えながら愛おしそうに見つめると、男はこちらに立ち上がって初めて銀時と顔を合わせる。
銀髪天然パーマの死んだ魚の様な目をした男と
瞳孔を開いたVの字ラインの前髪をした黒髪の男が
「「あ」」
何処かで見たVの字ラインに銀時はハッとその顔をどこかで見たような気がした。
ちょっと前に現実世界のとあるラーメン屋で、こんな顔付きをしたふてぶてしい男が警察の恰好をして現れた様な……
そう、名前は確か土……
「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ちょ! 待てお前! 前にどっかで会わなかったか!?」
「ひ、人違いでござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
互いの顔を見てしばしの間を置くと、男の方は急に顔を汗だくにして必死の形相でダッシュで逃げ始める。
大事な人形を抱えながら猛スピードで
銀時が慌てて手を伸ばして叫ぶも、男は人ごみの中を突っ切って行ってしまった。
「なんだったんだ今の……つうかアイツもしかして、あの小娘と知り合いのVの字頭の……」
逃げる男のダサいファッションセンスを見つめながら、もしかしたらと特定の人物を想像していると
そんな銀時に後ろからポンと肩を叩く人物が
「君、ちょっといいかな?」
「あぁ?」
急に誰だと銀時が振り返ってみると
そこには全く知らない中年の男性がにこやかに微笑みながら立っていた。
「遠目から見て気になったんだが、さっき逃げたプレイヤーは君と接触していた様に見えたが、もしかして彼になにかしたんじゃないのかね?」
「は? 何もしてねぇよ、向こうが勝手に逃げただけだ、つか誰だテメェ」
「ハハハ、申し訳ない、自己紹介を先に済ませとくべきだった」
赤い甲冑に白いマント、いかにも王道のRPGに出てくる騎士風の出で立ちをした男を胡散臭そうに銀時が目を細めていると、男は気にせずに笑い飛ばして真っ直ぐな目を彼に向ける。
「私は血盟騎士団の団長を務める、ヒースクリフという者だ。名前ぐらいはご存じないかい?」
「いや全然、血盟騎士団っつうのは前に何度か聞いた事あっけど」
「おっと、私もまだまだだな」
ヒースクリフと男は名乗るが銀時は全くその名前にも男の顔にも見覚えが無かった。
正直に答える彼にヒースクリフは後頭部を掻きながら苦笑して見せると、ふと銀時の隣にいたユウキが「?」と二人の会話に気付いて顔をこちらに向けて来た。
「あれ? 銀時、誰その人? 見た感じ血盟騎士団の人っぽいけど、アスナの知り合い?」
「アスナ? もしかして君達は彼女の、アスナ君のお知り合いかな?」
「まあ友達かな~、立場上あんまり仲良く出来ないけどたまに一緒になったりするよ」
「ほう……」
アスナの事を知ってる感じで尋ねて来たヒースクリフにユウキが頷きながら答えると、彼は興味深そうに銀時とユウキを見つめ始めた。
「もしかして以前彼女の報告書に書かれていた、黒夜叉と呼ばれる攘夷プレイヤーのお仲間かな?」
「黒夜叉ってキリトの事? 確かに仲間だけど、どうしてそんな事聞くの?」
「おいユウキ、コイツどうやら血盟騎士団って所の団長らしいぞ」
「へ? 血盟騎士団の団長? ひょっとしてあのヒースクリフ?」
「おお、どうやら彼女の方にはちゃんと名前を覚えて貰っていたみたいだ」
キリトの仲間かと尋ねて来るヒースクリフにユウキは怪しいと疑う目つきを彼に向けていると
隣りから銀時が彼の所属しているギルドと役職を教えるとすぐに目を見開いて驚いた様子を見せ始めた。
「超有名人じゃん、ボクもこんな近い距離で見るの初めてだよ」
「ハハハ、知られてるのは嬉しいが超有名人だと言われると素直に照れるな」
「有名? 俺はこんなオッサン知らねぇぞ」
「まあ銀時は基本的に他のプレイヤーの事なんか興味無いから仕方ないけど……彼の事はちゃんと覚えておいた方が良いよ」
こんな人の良さそうな男を見てなんでユウキがテンションを上げるのか銀時は全く分からなかった。
すると彼女はすぐに銀時の方へ顔を上げて
「ヒースクリフは血盟騎士団の団長にして最もEDOを知り尽くしているプレイヤーだって有名なんだ、しかも」
「GGO型最強のADAM・零と並び、SAO型最強のプレイヤーでもあるんだよ」
「はぁ!? このおっさんが最強!?」
「いやいや、恥ずかしいがそう呼ばれてはいるな、まあ私自身、そうであるという自覚も多少はある、多少だがね」
突然目の前に現れた中年男性がまさかのSAO型、つまりキリトやアスナと同じタイプの中で最も強いプレイヤーと称されていると知って、銀時も開いた口が塞がらない。
それに対して嘘偽りなくその通りだと断言しながら、ヒースクリフは微かに微笑みながら頷く。
「初めまして諸君、私がこの世界の頂に立つ三人の内の一人だ、よろしければ少し私に付き合ってくれないかな? 色々と話をしたいのでね」
銀時、天人が入り乱れる異星交流会にて最強と呼ばれる男、ヒースクリフと出会う。
彼との出会いは偶然かそれとも必然か……
10日に銀魂の新作投稿します。
そういやずっと銀魂クロス物で、銀魂単体のSS書いたこと一度も無いなと気付いたんで
十数話で終わらせる予定ですので、私の作品にしては比較的短い内容でお送りしようと思います。