竿魂   作:カイバーマン。

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空洞虚無さんから頂いた竿魂の挿絵です。元ネタは「ゾンビランドサガ」


【挿絵表示】


水色の髪の女の子(♂)はリリィこと6号ことマサオこと……とにかくゾンビのアイドルです

キリトを握り潰しかねない笑顔の巨人はその女の子(♂)のパピーです、星海坊主じゃありません。奴よりもずっと話が分かる相手なのでキリトもギリギリ助かってます

親子愛に溢れたイラストを描いて下さりありがとうございました!

キリトも親孝行しないとなぁ、いやその前に妹に孝行してやらなきゃダメか……


第六十層 原作者への愛を忘れずに

見れば見る程人生をナメ腐った表情をしているゴリラだ……

 

目の前で鼻をほじりながらこちらを気にも留めずにそっぽを向いているモンスター、ソラチンタマを見つめながらユウキはそんな印象を抱いていた。

 

「初めて見たけど本当にこんなモンスターがあの有名なソラチンタマなの……? なんか普通に倒せそうだけど」

 

「おいユウキ、こんなふざけた奴とっとと倒しちまおうぜ、幸い俺達今挟み撃ちの態勢だしよ」

 

「うんそうだね、全く逃げる気配も見せずに鼻ほじってる奴を倒すのは気が引けるけど……」

 

「哀れゴリラ、希少素材を手に入れる為の生け贄となって貰います。一斉に飛び掛かりましょう」

 

ソラチンタマの背後から既に銀時が二つ刃の得物、千封鬼を取り出し、アリスもまた愛刀である洞爺湖と彫られた木刀を掲げている。

 

前と後ろを固めて逃げ場がない今、ソラチンタマを倒せるチャンスだと踏んだらしい。

 

ユウキもその作戦にすぐに乗っかり、腰に差す剣を抜いて、三人でタイミングを合わせって一気に

 

「せいッ!」

 

一斉に地面を蹴ってソラチンタマ目掛けて得物で斬りかかる一同。

 

しかし三人の得物は同時に虚しく空を切り

 

「あ、あれ!?」

「おいゴリラが消えたぞ! あの野郎どこ行った!」

「上です!」

 

目の前でモンスターの姿が消え、代わりに三人で顔合わせしながら何処へ消えたのだと当たりを探してみると、すぐにアリスが頭上を指差し

 

「天井にしがみ付いてこちらに肛門を見せつけています!」

「へ!? いやぁぁぁぁぁ!! 無理無理ボク直視できない!」

 

アリスに釣られてユウキが顔を上げると、そこには天井に両手両足で張り付いたまま、こちらに向かってお尻を突き出すポーズをするソラチンタマの姿が

 

ゴリラとはいえそんなあられもない姿を直視出来ずにユウキは慌てて悲鳴を上げて顔を背ける。

 

「そういえばソラチンタマって女性プレイヤーから物凄く嫌われてるんだった! そりゃあんなの見せつけてくるんだから間違いなく女の敵だよ!」

 

「ケツのアナ程度で恥ずかしがってんじゃねぇ! こっちに向かってケツ突き出して挑発のつもりか!? このエテ公が、人間様をナメんじゃねぇ!!」

 

顔を両手で押さえて赤面させるユウキに喝を入れつつ、銀時は得物を振り回しながら、天井にしがみ付くソラチンタマ目掛けて高く飛び上がる。

 

すると

 

ソラチンタマのお尻から突然ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!と凄い音が鳴らしながらまさかの放屁が飛び出したのだ。

 

「ぶっへぇ!! コイツいきなり屁ぇコキやがった! くっさッ!」

「ゲホッゲホッ! うえッ! 呼吸も出来ない上に涙が出るぐらい臭いよぉ!!」

 

オナラは狭い洞窟内を充満する様に臭いを撒き散らし

 

痛覚は無くても嗅覚と味覚は現実とさほど変わらないこの世界では本当のオナラを直撃した時と同じぐらいに臭い。

 

強烈な臭いに耐え切れず、ユウキがその場に四つん這いになって吐きそうになっていると

 

「ってあぁ!! あの腐れゴリラ! 人に向かって屁ぇぶっ放しておいて逃げやがった!!」

「すぐに追いましょう、洞窟から逃げられたらますます捕まえにくくなります」

「うげー本当に吐きそう……あ、待って! ボクも行く!!」

 

こちらが臭いで苦しんでいると、ソラチンタマはスタッと地面に着地して、四本の手足を使ってかなり早い速度で洞窟から逃げ出して行ってしまう。

 

どうやらさっき放ったオナラは自分達を怯ませ、その隙に逃げようという魂胆だったらしい。

 

アホそうな見た目通りにお下品な逃走術を使って来たソラチンタマに向かって怒りを燃やしながら、銀時と一人だけ冷静なアリスがすぐに追いかけに行くので、ユウキも慌てて立ち上がって彼等の後を追う。

 

するとその時、アリスの後ろ姿を見ている彼の腰に差す得物がチラッと見えた。

 

「あ、あれ? その木刀ってもしかして……」

 

何処かで見たような得物、というかほとんど毎日見ていると言っても過言ではない木刀が今、アリスの腰元にしっかりと差してあるではないか。

 

「ちょっとアリスどういう事!? キミがどうして銀時の木刀を……!」

 

現実世界での銀時の愛刀をそっくりそのまま仮想世界に持ち込んで愛用しているアリスに、ユウキが慌ててその事について尋ねようとすると

 

「ああクソ! 洞窟から逃げる前に仕留めようと思ったのにもう出口か!」

 

その言葉を遮るように銀時が悔しそうに声を上げる。

 

ふと前を見ると明るい光が差し込められ、洞窟の出入口に着いてしまったのだ。

 

「だがまだそう遠くへは逃げてねぇ筈だ! 見失う前に急いで追いつくぞ!」

 

「お前に言われなくてもわかっています、見事に討ち取ってお前に褒められてそのまま二人で食事に行くのが私の役目です」

 

「いやそんな役目任せた覚えねぇから!!」

 

早く見つけて捕まえねばと銀時が更に足を速め、アリスもまた個人的な願望を叶える為に一目散に駆けだす。

 

そしてユウキもまた木刀の件を尋ねるのを一旦諦めて逃げるソラチンタマを優先しようと二人に並ぶぐらいの勢いで駆け出し、そのまま三人揃って同時に洞窟を抜け出すと……

 

 

 

 

 

「「「あ」」」

 

洞窟を抜けた先で出迎えていた者に思わず口をポカンと開けて固まる一同。

 

それは両手両足を地面に付きながら、こちらに向かって思いきりお尻を突き出した態勢でスタンバっているソラチンタマ……

 

 

 

 

再びブボボボボボォォォォォ!!!と強烈な発射音と共に黄色い煙のようなオナラが三人に直撃する。

 

「ぎゃぁぁぁ!!! コイツ俺達が洞窟から出るのを待ち伏せしやがったァァァァ!! しかもさっきの奴よりも更に臭ぇ!!」

「うえ! ボクもうなんか涙出て来た!! もはや毒ガスレベル!!」

 

この下品なモンスターを発案したEDO関係者を全力でぶん殴りに行きたい

 

ソラチンタマの尻から噴出されるオナラで目を潤わせ苦しそうに咳き込みながら、銀時とユウキは四つん這いの形で意識を失いかける。

 

「一体何を食えばこんな凄まじい臭気を放つ破壊兵器を体内にため込む事が出来るんだろ……」

 

「漫画家なんてモンは常に不安定な環境の中で生活を送り続ける事を余儀なくされる……その上締め切りというタイムリミットが迫る中では食事も外出もまともに出来やしねぇ……きっとそんな常人なら気が狂う世界を何十年も生き続けた結果が下であんな哀しいモンスターが生まれてしまったのさ……」

 

「誰目線? ていうか誰の事を言っているの銀時は? ソラチンタマにそんな設定があったなんてボク初耳なんだけど」

 

涙目になった状態で何故かソラチンタマに対して銀時がわかっているかの様にフッと笑っているので、膝を地面に付いたままユウキが「?」と怪訝な顔付きで首を傾げていると

 

ソラチンタマは三人に特大の一発をぶっ放した事で満足したかのようにコクリと頷き、クルリとこちらに背を向けて再び走り出す。

 

「ああ! また逃げ出し……うえぇ本当にクッサ!」

 

「臭過ぎて立つ事さえ出来ねぇ……クソ! みすみす目の前であの野郎を見逃すしかねぇのか!」

 

タッタッタッとちょっと余裕あり気な小走りで逃げて行こうとするソラチンタマをすぐに追おうとする銀時とユウキだが、彼の放った悪臭が未だに鼻にこびりついて力が出ない。

 

このままだとまた雲に巻かれて最初からやり直し……

 

っと銀時達が思っていたその時

 

「「!?」」

 

突如へたり込んでいる二人の間にある僅かな隙間をビュン!と風を切る鋭い音と共にあるモノが通り抜けて行った。

 

そして次の瞬間、二人の間を通り抜けていき

 

 

 

 

 

逃げるソラチンタマの愉快に揺れるヒップを捉え、洞爺湖と彫られた木刀が深々と 

 

「「刺さったぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

急所に向かってクリティカルヒットを食らったらソラチンタマはそのまま白目を剥いてバッタリと銀時達の目の前で倒れる。

 

突然の出来事に二人は両手を地面に付いたまま倒れた彼を呆然と見つめていると

 

「倒しましたよ」

「アリス!? まさかお前が!」

「油断している所へ試しに得物を投げてみたら、案外簡単にコロッと殺れて何よりです」

 

後ろからスッと出てきたのはこの状況下でも顔色一つ変わらないアリス。

 

長い金髪を手でなびかせながら一仕事終えたかのようにふぅっと息を漏らしている。

 

あのソラチンタマをあっさりと片付けてしまった彼女に、倒れていた二人も慌てて立ち上がった。

 

「でかしたぞ金髪電波女! お礼にめっちゃ頭撫でてやる!」

 

「撫で回しなさい、私が満足するまで全力で私の頭をナデナデする義務がお前にあります」

 

「上から目線なのがちょっと腹立つけど……ここは素直に認めてあげるよアリス、よくあんな的確に木刀なんかを投げれたね、まるで銀時みたいに……」 

 

両手を腰に当てて偉そうに欲しいモノを要求するアリスだが、ここは素直に彼女を評価せざるを得ない銀時とユウキ

 

こっちがオナラの臭さで悶絶している中、彼女は冷静に逃げるソラチンタマを涼しげな顔で仕留めてしまったのだ、正に彼女の大手柄だ。

 

「いやーていうかお前凄いな、地面に倒れる程臭かったあの中で普通に攻撃できちまうなんて」

 

「ホントだよ、でもアレだけ臭かったのにどうしてアリスだけ平気だったんだろ?」

 

「お褒めの言葉は後で良いですからまずは私の頭をナデナデしなさい」

 

そして褒め称えてくれる二人に向かってさっさと頭を撫でろと銀時の方に命令するアリス、すると次の瞬間

 

「さあ早くするのデボラァァァァァァァァァ!!!」

「ギャァァァァァァァァ!!!」

「吐いたァァァァァァァ!!!」

 

 

台詞の途中で流れる様に彼女の口の中から吐瀉物が吐き出される。

 

モザイクの塊を放ってきた彼女に銀時とユウキは一緒にのけ反ってそれをなんとか避けた。

 

「もしかしてアレか? 平気なツラしてやっぱり臭かったとか……」

 

「オロロロロロロロロロ!!!!」

 

「表面上は余裕あり気な態度取っておきながら……本当はずっと我慢してたんだねアリス……」

 

「オロロオロロロロロロロ!!!!!」

 

「ていうか出過ぎだろ! 大丈夫かお前!」

 

誰から見ても絶世の美女だと言い切れる金髪碧眼の女騎士が

 

目の前で地面に向かって頭を垂れながら盛大に口から吐瀉物を撒き散らしている。

 

過剰なまでに吐いているのはよっぽど臭くて仕方なかったのだろう。

 

最初のオナラ攻撃からずっと平気な顔を装っていたが、本当は銀時やユウキの様にその場を転がり回りたかったのかもしれない

 

そんな彼女に銀時は哀れみの目を向けながら、無言でスッと彼女の背中を撫でてやる。

 

「いやまあその……よく頑張ったなお前……」

「ハァハァ……! 違います、お前が撫でるのは背中でなく頭ブロロロロロロロロ!!!」

「この期に及んでまだそれ言うんかい! もういいから喋らずに大人しくしろコラ!!」

「く……! どうしてこんな事に……おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

銀時にさすられた状態のままアリスはまだボトボトと地面に向かって吐き続ける。

 

よく見ると目の下からちょっぴり涙が出ているが、アレはきっと苦しいからではなく銀時に見られながら吐かざるを得ないという己の状況に恥じて泣いているのかもしれないとユウキは思った

 

想い人に見守られながら吐瀉物を吐き散らす、自分もそんな体験はゴメンだ……とアリスを見つめてふと思いながら

 

 

 

「見栄を張って余裕持った態度を取ってもロクな事にならないんだな……やっぱり自分に素直に生きよう、うん」

 

どれだけ見繕っても結局はボロが出ると悟り、また一つ女として成長するのであった。

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして

 

銀時達はリズベット武具店へと戻って来ていた。

 

「クッサッ! うぇ! アンタ達ヤバいわよ! よくそんな状態で町の中歩けたわね!! 歩く災害よアンタ達!」

「仕方ねぇだろ、臭いがこびりついてんだよこっちは」

「そういう事を言われるとボクだって素直に傷付くんだから止めて欲しいんだけど」

 

カウンターの上で頬杖を突いて座っているリズベットに迎えられながら、銀時とユウキは不機嫌そうな表情で彼女を睨み付ける。

 

「テメェが依頼した素材を取って来てやったぞ、コレで良いんだろ」

 

「早かったわね、まさかあの誰もが相手にするのを嫌がるソラチンタマを倒してくるなんて」

 

「おい、まさかゴリラが倒されたケースが少ないのは……」

 

「そりゃまあ下品な攻撃ばかり繰り出すゴリラなんて相手したくないわよフツー」

 

「そんな相手を担当させられる事になったボク等が、どれだけ苦労したかわかってるよね……」

 

「ちょ、ちょっと待って二人共睨まないでよ! 悪いなとは思ってたけどどうしても必要だったのよ!」

 

未だ体に染みついているオナラの臭いを放ってくる銀時とユウキに、我慢できずにリズベットが鼻をつまみながら慌てて答える。

 

「そうだユウキ! 私からのアドバイスちゃんと試してみた!? 効果あったでしょ!?」

 

「あったよ確かに、おかげでこれからは見栄なんか張らずに自分に素直に生きようと悟ったよ」

 

「あれぇ……? もしかしてあんま上手くいかなかった的なパターン?」

 

話題を逸らすようにしてユウキに向かって話しかけるリズベットだが、ふくれっ面の彼女の反応を見て失敗したのだとなんとなく悟るのであった。

 

「ま、まあ私はそういうのは疎いけど、そう簡単に成就したらそれこそ詰まらないって西郷さんも言ってたしね、これからも頑張ってユウキちゃん! うん!」

 

「……それより約束の希少素材持って来たんだけど」

 

「ああはいはい! ソラチンタマから取れた希少素材をちゃんと持って来てくれたのね! ありがとう!」

 

ジト目でしばしリズベットを睨み付けると、ユウキはとりあえず約束の素材を手に入れたことを報告。

 

それに反応してリズベットが無理矢理な感じで嬉しそうな声を上げると、銀時の方がガサゴソと懐からあるモノを取り出し

 

「はいコレ、ソラチンタマのキンタマ」

 

「ってうぎゃぁぁぁぁぁぁ!!! なんつうモンを私の店のカウンターに置いてのよ!! てかこれもクサい! 直視するだけでなんか涙出て来た!」

 

「うるせぇ! アリスが倒した時にドロップしたのがコレだったんだよ!」

 

カウンターの上にゴトッと落としたのは二つの丸い形をしたモザイクの塊、現れた途端すぐに店の中に悪臭が充満していくのを感じながらリズベットは悲鳴を上げた。

 

「俺達だって持ち帰るの嫌だったけど我慢して持って来たんだぞ! 有難く思えや!」

 

「あれ? ていうかその倒したアリスはどこにいるのよ、見た感じアンタ達と一緒じゃないみたいだけど」

 

「アイツはそのアレだよ……一人になりたい時だって誰でもあんだろ……」

 

「何があったのあの子に!?」

 

ふとここにいるのが銀時とユウキだけだという事にやっと気付いたリズベット

 

しかしそこについて尋ねてみると銀時は顔を曇らせて詳しくは語ろうとしない。

 

「いくらアリスでも一人の女だし、落ち込むのも仕方ないよ、人前であんな姿晒しちゃ……」

「落ち込む? まあ色々と大変だったみたいねアンタ達も……とりあえず希少素材は受け取っておくわ、ご苦労様」

 

ユウキの方も哀れんでいるような表情を浮かべているのでますます気になってしまうが

 

どうせ教えてくれないだろうと思いリズベットはすぐに仕事の話に切り替えつつ、銀時が取り出したソラチンタマの睾丸をゴム手袋で掴んで自分のアイテム欄にしまった。

 

「まあコレからもちょくちょくアンタ達に希少素材の依頼を頼むかもしれないから、そん時はよろしく」

 

「はぁ!? まだ集めんのかよ! いつになったら神器造れんだよ!」

 

「あのね、私はリズベット武具店の名に相応しい自慢の一本を造り上げようとしてるの、神器の素材に負けない希少素材をかき集めて、選りすぐり、そして相性を組み合わせてそこから形作りに入って行くのよ。まだ時間はかかるだろうけど絶対に完成させてあげるから待っていなさい」

 

「この野郎、ホントに造る気あんのかよ……」

 

どうやらまだ神器の完成まではまだ遠いらしい、何故ならリズベットが行っているのはまだ素材集めの段階。まだどんな武器になるのかすらわかっていないのだ。

 

鍛冶師の達人は金も労力も時間すらも惜しまない、ただ自らの腕で過去に無い最高の武器を造ろうとする、それだけが望みなのだ。

 

もっともリズベットはそれだけでなくちゃっかり地位や名声も強く欲しているのだが

 

沖田が彼女と意外に親しげなのは、そういう己の欲望に忠実な野心を垣間見て楽しんでるのかもしれない。

 

「まあまあ、騙した事は本当に悪いと思ってるからこれ以上お金を請求しようとかはしないわよ。だからドンと私に任せない、この世に二つとない最高の神器を仕上げてみせるから」

 

「胡散臭いんだよお前の口調……」

 

こんな奴に任せて大丈夫なのだろうかという心配をよそにリズベットは自信満々に自分の胸を叩く。

 

すると銀時はますます怪しむ様にしかめっ面のままふとある少年の事を尋ね始めた。

 

「つうかキリト君はまだ戻って来てねぇの?」

 

「ああ、キリトならアスナともう一人の男の子の、ユージオって子と一緒に希少素材を探しに出掛けているわ」

 

「アイツ等まだ探してんのか、ったく先輩面してるクセに仕事遅すぎだろ」

 

「そう言わないでよ、多分もっと時間掛かると思うわよ、なにせ相手が相手だし」

 

「どんなモンスター倒しに行ったんだアイツ等?」

 

キリトやアスナ、それにあのユージオという少年もまだ素材探しの真っ最中らしい。

 

ユージオの力量は知らないが、他の二人の実力なら大抵のモンスターは楽勝で倒せるだろうと思っていたのだが、リズベット曰くいかにあの二人でも苦戦を強いられてるに違いないらしい。

 

一体どれ程の強さを持ったモンスターと戦っているのだと銀時がけだるそうに尋ねると

 

リズベットは「ああ」とあっさりとした感じで答えるのであった。

 

「GGO型第二占有地区である第六十層のダンジョンの隠し扉に潜んでいる」

 

 

 

 

 

 

「ソード・ブリキ・カワハーラっていうロボットの化け物よ」

 

 

 

 

 

ここは第六十層目にあるダンジョン

 

GGOの第二占有地区があるだけあってここもまたかなりSFチックに仕上がっており。

 

ジェダイの恰好をしている銀時なら違和感なくこの銀色がひしめく世界を堪能して歩けるであろう。

 

そしてそこに

 

奴はいた

 

 

幾度もある自動扉を抜けた先にある大きな広場にて

 

 

 

 

 

ソード・ブリキ・カワハーラは現れた三人の刺客を蹂躙せんが為に大暴れの真っ最中であった。

 

「ギャァァァァァァァァァァ!」

「大丈夫キリト!?」

「大丈夫だったら悲鳴なんて上げてねぇ!」

 

鋼鉄の四角い拳がキリト目掛けて振り下ろされた。

 

前に向かってジャンプし、間一髪で避けたキリトに青薔薇の剣を持ったユージオが慌てて駆け寄る。

 

「ていうかコイツ本当に倒せるの!? 僕等の攻撃は一応通ってるみたいだけど!! HPバーをいくら削ってもまだまだ倒れないんだど!」

 

キリトに手と伸ばして立たせてあげながら、ユージオは視線を思いきり上に掲げて、目の前にある巨大なナニかを改めて見上げてみた。

 

巨大ブリキロボット・ソード・ブリキ・カワハーラ

 

全身が四角の形で統一されており、手、足、体、顔、そして掛けている眼鏡までもが四角系のロボット。

 

見た目だけはおもちゃ屋で見かけるブリキのロボット、という感じなのだが、問題はその8メートル近くはある大きさと異常なまでの耐久値である。

 

「俺が今までコイツとの戦闘を避けてきたのはな! EDOの中でも屈指のめんどくさいモンスターなんだよ! どんだけ攻撃しても倒れない! おまけに倒れないどころかこのまま削り切っても第二形態とかに変形するんだぞコイツ!!」

 

「第二形態!? ゴメンそれはちょっと見てみたいんだけど僕!」

 

「俺だって見てみたいよ! けど第二形態のアクセル・ブリキ・カワハーラは半端ないぞ! 時間を早めてるんじゃないかぐらい俊敏性が半端なく上がるんだよ! 加速した世界に取り残される感覚になるんだよ!」

 

ロボットの変形とかそういうの大好きな年相応の少年達が盛り上がってる中

 

そんな事に微塵も興味を持たない少女・アスナが颯爽と彼等の所へ現れる。

 

「こんな状態でもよくもまあお喋りできるわねあなた達!」

「あ、すみませんアスナさん……」

「お喋りじゃなくて攻略談義だっつうの、アンタだってこのモンスターの生態系とかよく知らないんだろ? さっきから逃げ回ってばっかだし」

「それはあなたも同じでしょう、が!!」

 

キリトに言い返す途中でアスナは慌てて彼等と一緒に横に飛ぶ。

 

カワハーラの繰り出踏みつけす攻撃が開始されたのだ、こうなっては動作時間が終わるまで執拗に足元にいる自分達を狙い続ける様になる。

 

「いつも威勢の事言ってるクセにビビってんじゃないわよ! あんなのただのロボでしょ! 男見せなさい!」

「ビビってねぇーし! お前こそさっきから持ってる剣が震えてるぞ! お前こそ怖がってんじゃねぇの!?」

「二人とも走りながらよく喧嘩出来るね!」

 

四角い鉄板のような足が何度もこちらの頭上目掛けて振り下ろされる。

 

しかし三人の俊敏性は一般のプレイヤーよりも高くなっている為か、逃げ回りながら口論まで始める彼等を捉える事が出来ないでいた。

 

「二刀流はどうしたのよ二刀流は! あなたが持ってる数少ない取り得でしょ! 出し惜しみしないでさっさとやりなさい!」

 

「生憎二刀流スキルを持つ剣は前にコイツに折られてんだよ! だから今の俺はただの片手剣持ちだ!」

 

「え? このユージオ君にあなた剣折られて二刀流を失ったの? よくやったわユージオ君、今度マヨネーズオゴってあげるから」

 

「アハハ……」

 

逃げ惑いながらこちらに親指を立ててよくやったと笑いかけるアスナにユージオが苦笑していると、キリトが急いで彼女の隣へと駆け寄る。

 

「わかってるのかこの状況! 黒夜叉という俺が十八番の二刀流が使えないという事は戦力的にも大幅ダウンなんだぞ! 後は俺より弱いアンタと神器持ってる事しか取り柄が無いユージオ! 誰が見てもこんなパーティーじゃまともに勝てやしねぇよ!」

 

「ちょっと誰があなたより弱いですって! なんならここで決める!? もう一度私と勝負する!?」

 

「おう上等だかかってこいセレセブ! もう一度剣折って泣かしてやる!」

 

「私がいつ泣いたのよッ! 今から泣くのは私に負かされるあなたの方よ!」

 

「あの、いい加減に二人共その辺に……」

 

さっきから数えれきない程口喧嘩を始めてしまうキリトとアスナに内心呆れた様子でユージオが声を掛けようとするも……

 

「ん? ギャァァァァァァァァァ!!!」

「キリトが踏まれたァァァァァァ!!」

「フン、バカね油断しているからそんな目に……ふんごッ!」

「アスナさんまで!? アレ? もしかしてこの流れだと僕まで……うげッ!」

 

喋る事に気を取られ過ぎてうっかりカワハーラの一撃を食らってしまう三人なのであった。もうかれこれ何度目の事であろうか……ユージオに至っては半ば巻き添えである。

 

それから三人は暴れ回る巨大ロボの攻撃を回避し続け、口論し、隙を見てアタックを仕掛け、やっぱりまた口論して遂には殴り合いに発展する程揉めに揉め続け……

 

 

なんとか倒し切る事に成功したのは数時間後の事であったという

 

「いやー、まさか第二形態の次に第三形態があるとはなー、アクセル・ブリキ・カワハーラの次は、絶対ナル・ブリキ・カワハーラだったとは、まさかあそこから更に防御力と俊敏性の両方を強化して来るとは思いもしなかったぜ」

 

「僕、絶望的な状況だったけどちょっと胸が高鳴ったよ……ロボットって凄いんだね」

 

「ボロボロなのに楽しそうねあなた達……」

 

神器が完成するのは何時になる事やら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ゲロ吐いてこそ銀魂のヒロイン(格言)

いやー神器はまだ先になりそうですね、ですが次回はしばしの時が流れた後からのお話ですので、もしかしたらそう遠くないかもしれません。

次章はいよいよ、銀さんが数多の宇宙からやって来た天人達が集う舞台に現れる

更には彼を追うように厨二メガネ、妖精、竜使い、ゴリラ、サド、チャイナ、神器職人(笑)、オジコンスナイパーと色々と濃い連中が次々と集い始め。

更にはナヨナヨした変な奴とか、スピンオフ作品から出張してきた奴とかも登場

そしてそんな新キャラ揃いの中で最も重要な人物は

EDOの世界で最強と称されても過言では無い、数多の勝利を収めた絶対強者……

彼との出会いをきっかけに、銀時はまた一歩高みに上がる……かもしれない

他にも銀さんがまさかのお持ち帰り疑惑で和人に蔑みの視線で見つめられたり

江戸一番のからくり技師からとある人物の話を聞いたり

銀さんがようやく〇〇と、おニューの〇〇を手に入れて、またまた凄くなっちゃたりとイベント多数発生

波乱万丈編、お楽しみに

追伸

最近になってずっと食わず嫌いだったfate観始めました。理由はなんかネタにならないかなと思って

なんか思いの外沢山あったんでその時点で止めようかと思いましたが、これでいいやって感じでfatezeroって奴を観る事に

元はエロゲだと聞いてたんですけどアレですね、どうせ女の子ばっか出るんだろと思いきやオッサンばっか出てきますね、その点はすごく好き、もはやオッサンとショタだけでいい、大塚明夫ボイスのオッサンと浪川ボイスのショタの日常話だけ流してればそれでいい、

登場人物がロックスターゲーム並みに狂人揃いで(アレよりは大分マシですが)、コイツ等最後どうなるんだろうなと思いつつ最後まで観てみようと思います


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