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描いて下さったのは銀さんと魔法科高校の劣等生のメインヒロイン・司波深雪ととある事情で融合召喚されてしまった坂波銀雪というキャラクターです。
こういう支援絵を描いて下さったので、頃合いとして皆様に伝えておきますが
魔法科高校の劣等生で再びちょっとした小話でも書いておく予定でありますので、気長にお待ちください。
自分がイメージしたオリキャラ同然の人物を上手く描いて下さってありがとうございました!
ルーリッドの村から歩いてほんの数分後にあるポイント
そこには周りに同化しただポッカリ自然に開いてるかのような洞窟がひっそりとあった。
それを茂みの中から警戒する様に顔を出しているのは
急遽リズベットにユニークモンスターの討伐依頼をさせられる事になった銀時・ユウキ、そしてアリスの三人である。
「本当にここにいんのかソラチンタマ」
「あの村にいた教会のシスターから聞いたからいると思うよ、ソラチンタマ」
「しかし探知スキルには全く反応しませんよ、ソラチンタマ」
ガサゴソと音を微かに立てつつ、三人が口を揃えてソラチンタマという名を呟いていると、そこへ銀時が「つうかよ」と言って二人の方へ振り返り
「ソラチンタマって……なに?」
「え、もしかして銀時知らないのソラチンタマ? EDOでは結構有名なユニークモンスターだよ」
「いや俺モンスターの事なんかよく知らねぇし、オメェは知ってたかアリス?」
「当然です、男性の股の下にぶら下がっているモノです」
「それキンタマね、それなら俺だってもう持ってるから」
真顔で何言ってんだコイツと思いつつ銀時が小声でボソリとツッコんでいると、二人がソラチンタマの事を知らないとわかったユウキはやれやれと首を横に振る。
「二人共知らないの? 仕方ないなぁ、ならボクが教えてあげるよ」
「いいえそれは無用です、この男には私が教えます」
「いやアリスだって知らないでしょソラチンタマ」
「私があなたから聞いて、それをこの男に伝えます」
「な、なにそれ……キミが銀時に教える為にボクがキミに教えるってなんかもうわけわかんないんだけど……」
変な伝言ゲームをやろうとしているアリスにユウキが口をへの字にして首を傾げるもすぐにハッと気付く。
このまま彼女のペースに飲み込まれるのは危険だ
(危ない危ない、そうやってこの場をかき乱そうたってそうはいかないよアリス……今日のボクは余裕のある女、いかなる状況においても常に優雅たれ……)
ここに来る前にユウキはリズベットからちょっとした助力を貰っていた。
周りに翻弄されずに余裕を持った態度でデカく構えるべし、と
頭の中で彼女からの言葉を繰り返しながらユウキはふぅーと呼吸を整えた後、自分なりの「余裕を持った優雅な女」という顔を作り、アリスに向かってフッと微笑むと
「アリスは相変わらずおかしな事言うね~、まあ付き合ってあげても良いんだけど、今はソラチンタマがいつ出てくるかわかんない状況だから手短に説明しておきたいんだ、ごめんね」
「むぅ……」
過剰に叫ばずにただ優しく受け止めそのまま横へ流す
まるで自分の事を年下扱いしてるかのような口調で接して来たユウキに、アリスは何やら面白くなさそうな表情を一瞬浮かべたような気がした。
理由はわからないがユウキに子供扱いされるのが気に食わないらしい
反論もせずに押し黙ってしまった彼女を見てユウキは計算通りだと内心テンション上がりつつ、改めて彼女と銀時に向かってソラチンタマの話を始めた。
「ソラチンタマっていうのはねEDOでは有名な人前に滅多に現れないユニークモンスターなの、見た目は噂によるとゴリラみたいなんだって」
「ゴリラ?」
「うん、しかもかなりとぼけた顔をしていて、定期的に鼻をほじるクセがあるんだとか。見た感じ凄く弱そうなんだけど、逃げ足も速いし木登りも得意で、とにかく素早しっこくて倒すどころか攻撃を当てる事さえ難しいの」
「んだよそのはぐれメタルみたいなゴリラは、俺達はそんなアホみたいなはぐれゴリラを倒す為にわざわざこんな所に来たのかよ」
「あと、意外と汗っかきなんだって」
「その情報だけは本当にどうでもいいな」
「シャイで人前には滅多に出ないクセに、たまに突然プレイヤーの前に現れて、驚いてる隙に尻の穴を見せつけて来る行為を繰り返してるんだって」
「ただの変質者じゃねぇか! なんでシャイなのにテメーの肛門を他人に見せようとするんだよ! 設定が破綻してるだろ!」
人差し指立ててちょっと自慢げにソラチンタマについての解説をするユウキだが、それを聞いて銀時はツッコミを入れつつ地面に肘を突いて寝っ転がり始めた。
「なんかやる気失せたわ、そんな変態ゴリラなんざお前等二人で楽勝だろ? 俺はここでしばらく寝てるから後はよろしくやっといてくれや」
「うん別に良いよ、後はボクがやっておくから」
「お前に何言われようが俺はそんなゴリラ倒す気なんざ更々……え?」
いつもの様に突然やる気をなくしてけだるさ全開モードでソラチンタマの討伐を放棄しようとする銀時
しかしそれをユウキが全く動じていない様子なので彼はキョトンとした顔を浮かべる。
「あれ? どうしたのユウキさん? ここはやる気の出ない銀さんに怒るなりケツひっぱたくなりして無理矢理にでもゴリラ討伐に参加させるっていう展開とかじゃないの?」
「ボクにお尻ひっぱたかれたいの?」
「いや別に……そういう趣味も無いし……」
「ならいいじゃん、銀時がそこで休んである間、ボクがサクッと片付けてあげるから安心して」
「あ、あれぇ~……?」
いつもと反応が違うユウキの態度に銀時はすっかりペースを乱されてしまった。
横になるのを止めてその場に胡坐を掻き、こちらに笑顔を浮かべるユウキを見て、一体どうしたんだと頬を引きつらせている銀時。
そんな彼に笑いかけたままユウキの頭の中では
(フフフ、どうやら今までと違うこの余裕のあるボクを見て動揺しているみたいだね……)
こちらを丸い目で見つめながら困惑している様子の銀時を見て、彼が今の自分を見て戸惑いを覚えている事に気付く。
(「ガキっぽいから止めろ」とか「ちったぁ大人になれ」とか「見た目もガキで中身までガキ、コナン君を見習えバーロー」とか今まで散々な事を言ってくれていた銀時……だが姉ちゃんになった様なボクを見て、少しは見る目変えてくれたかな……)
今の余裕を持てる態度を崩さない優雅な女性スタイル、何を隠そうこれこそ銀時が関係を持った亡き姉が天然で所持していたスタイルだ。
銀時はギャーギャー騒がしい女よりも、実はこうしてどっしり構えて全く動じない女性が好みだと睨んだユウキはちょっと淡い期待を抱きながらチラリと背後にいる銀時の方へ視線を向ける。
しかし銀時はというとそんな彼女を見て顎に手を当て考察するかのように黙り込み
(あれ? 急にどうしたのコイツ? もしかして怒ってる? なんか俺悪い事した? ヤベェ、心当たりめっちゃあるけどどれが原因なのかちっともわからねぇ……)
ユウキの期待とは裏腹に、急な変化を遂げた彼女に対して銀時は只々怒ってるんじゃないかと勘違いしていた。
頭の中で数々の己が過去にしでかした事を振り返りながら、どれが原因なのか探り当てようとしていると
「ではお前の代わりに私がソラチンタマを倒しましょう、ゴリラの一頭や二頭、私一人で討伐出来ますので」
首を傾げて思考を巡らせる銀時へ、ヒョイッと軽く手を挙げてアリスが単独でソラチンタマを狩る事に名乗り出て来た。
「ユウキもこの男と一緒に休んでて下さい、私一人で片づけますので」
「いやいや、ボクはまだまだ体力あり余ってるから心配ないよ、アリスの方こそ休んでよ」
「元よりこの場所を見つけられたのはあなたの功績があったこそ、ここは一つ、私に役割を与えという事で任せて欲しいのです、あなたはこの男と仲良くこの場で寝ていて下さい」
「……」
仏頂面のまま何故かユウキを銀時の傍に置かせて一緒にさせようとするアリス。
いつもなら是が是非にでも銀時と一緒にいたがる彼女がどうしてこんな行動をするのかと疑問を浮かべるユウキだが、その理由はすぐに推測できた。
(まさかアリスの奴、余裕ある女であるボクを真似して自分の立ち位置を優位にしようと企んでるんじゃ……ふーん、何も考えてない顔してしたたかな一面持ってるじゃん……)
あえて自分と同じように余裕綽々といった態度を演じて、再びマウントを取りに来ていると睨んだユウキ。
ここで負ける訳にはいかない
「功績なんて呼べるモンじゃないよ、たまたま出向いた所に情報を持つNPCがいただけなんだし。それでアリスが気にする必要なんてないから、だからほら、いつも望んでいる銀時との二人っきりのシチュエーションを楽しんでよ」
「いえ、別に楽しんでる訳ではありませんので、あなたこそこの男と一緒にいたいのでは?」
「冗談言わないでよ、誰がこんな収入の無い金欠パーマメントと四六時中ベッタリしておかないといけないのさ、ていうか素直になったら? キミが本当に願っているのは銀時と年中人目も気にせずイチャつく事でしょ?」
「私だってこんな締まりのない顔をしただらしない男などゴメンです、私がこの男と行動を共にしたいのはあくまで己の記憶を復活させるただそれだけの事であり、イチャつく気は微塵も持ってないのでここはあなたにお譲りします」
「いいっていいってそういうのは、ボクだってこんな甲斐性無しはいらないから、はい、ツンデレなアリスにパス」
「いりませんこんな男、即チェンジです。そして私は意地を張っているあなたに全力投球で返します」
「そんな素直になれない可愛いアリスに向かってバットで打ち返すよ」
「本音ではすぐにでも受け止めたいと思ってるあなたに向かってこちらもバットで打ち返します」
「ならまたボクもバットで……」
「それではまたまた私もバットで……」
互いに優位に立とうとして最終的にラリー合戦を始めてしまうユウキとアリス。
論点が徐々にズレ始めている事に気付かずに二人は静かに熱くなりながら火花をぶつけ合う。
しかし、互いに感情の読めない表情を作りながら目の前で自分を押し付け合っているのを見て
彼女達に色々言われている銀時はというと……
(あ、あれ? コレってもしかして怒られてるんじゃなくて……嫌われてる!? なんかもう傍にさえいたくないってぐらい汚物として見られてるの俺!?)
二人の真ん中に座ったまま、銀時は自分を押し付け合う彼女達を交互に見つめながら銀時はポタと顔から汗を流し始め焦り出した。
いかに他人からの評価を全く気にしない銀時であっても、付き合いの長いユウキと、ちょっとだけ気になっているアリスにこうも拒絶されると、流石にショックがデカかったみたいだ。
(なんなんだァァァァァァァ!? 俺は一体コイツ等に何をしたってんだァァァァァァ! わからない! どんだけ考えてもなにが原因なのかわからねぇぇぇぇぇぇぇ!! だってそれらしき原因だと該当するモンが多過ぎんだもん!!)
必死に考えながら二人に嫌われた理由がなんなのか思い出そうとするもやはりわからない。
マズい、このまま二人が自分を押し付け合っているのを見ていると心が折れそうだ、ていうか泣きそう……
そう感じた銀時は、身体が勝手に動いたかのようにその場にスクッと立ち上がると
「よしわかった、わかったから……なんならもう俺一人で行くから、俺一人でそのゴリラ倒しに行くから……ていうかもう、俺の事なんざほっといていいから」
「え、ちょ! きゅ、急にどうしたの銀時!?」
「目からうっすらとウルウルしてますがどうしました?」
「うるせぇよ! こっちはもうどっちが自分と男女一組作らなきゃいけないかで揉めてる女子二人を静かに見つめる男子の気分なんだよ!」
急に自分一人でやると言い張る銀時にどうしたのかと思わず「余裕の女」というキャラを忘れて慌てて立ち上がるユウキ
一緒に立ち上がったアリスがふと彼の目が赤くなっている事に気付くと、銀時は涙目で振り返って叫ぶ。
「「アンタがコイツと組みなさいよ!」「嫌よアンタこそコイツと組みなさい!」と言い合っている女子二人の間に挟まれて! どうしていいのかわからない気持ちで立ちすくすしかない孤独な男子なんだよ俺は!!」
「い、いや別にそんな風に銀時をないがしろにしていた訳じゃ……」
「さっきから何度も俺の事をバットで打ち返してたじゃねぇか! ああいいよもう! バットで打ち返すんなら俺はもうお前等の前から消えてやる! 場外ホームランだ! 俺なんか球場の外でゲロ吐いてくたばってるオッサンに拾われるのがお似合いなんだよ!」
「待って待って! 言ってる事全然わからないけどとにかくボクの話聞いて! 銀時の事を嫌いになんてなっていから!! 変に誤解されちゃったみたいだけどキミをボクが嫌いになる訳……!」
訳の分からない事を喚きながら茂みから出て行った銀時は、勝手にソラチンタマの根城だと思われる洞窟の方へと行ってしまう。
マズい、アリス相手にまたムキになった挙句に調子乗り過ぎて彼を傷つけてしまった……
どうせしばらくほっとけばすぐに元に戻るのが坂田銀時という男なのだが、ここで彼と嫌な雰囲気になるのは流石に目覚めが悪い。
ユウキは慌てていつもの調子に戻ってなんとか誤解を解こうと歩み寄ろうとする。
だがしかし
「すみません、ユウキに対してつい柄にもなく対抗心を燃やして心にもない事を言ってしまいました。お前を傷つけてしまいましたね、反省しています」
「!?」
そこへ待ってましたと言わんばかりに、アリスがサッと一足早く銀時の方へ駆け寄って、彼の肩に手を置きながら静かに詫び始めたのだ。
銀時の方へ手を伸ばしかけていたユウキは思わずそのままピタリと止まった動けない。
「お前を突き放すような真似をしていましたがアレはちょっと生意気になってる彼女に対抗しようとしたまでの事です、”私は”別にもお前の事を嫌っている訳ではないので安心して下さい」
「ちょ!」
「ウソだ! そんな事言って本当は俺の事なんか嫌いなんだろ! みんな俺の事嫌いなんだ! もうほっといてくれ銀さんの事なんか!」
「先程までの”私の”発言は全て撤回します、あなたを傷つけてしまい本当に悪かった、そしてどうかコレから言う私の言葉だけでも信じて欲しい」
私、という部分をやたらと強調しながら、人間不信になりかけている銀時に優しく語りかけつつ、アリスは二つの曇りなき碧眼をジッと彼の顔に近づけ
「お前がどれだけ世界に嫌われ拒絶されようと、”私だけ”はずっとお前の傍にいてあげます」
「!」
「うえぇ!?」
一度は銀時に言ってみたいなと思っていた言葉を、目の前で丸々使われてしまった事にユウキが動揺する中
嘘偽りのないハッキリとした口調でそう約束するアリスに銀時は表情をハッとさせるとすぐに目元に手を押し当てて
「あれ、何だろう……急に視界がぼやけちまった……なんだか上手く前が見えねぇや……」
「ならば私が隣で肩を貸してあげましょう、さあ共にこの先を二人で歩むのです」
彼女の言葉につい感動してしまったのか、目元を手で押さえながら動けないでいる銀時
するとアリスは彼の腕を自分の首に巻かせて、寄り添う様な形で体を密着させながら洞窟の方へ歩き出しながら
一人置き去りにされて状況が上手く読めずに口を開けて困惑しているユウキの方へ
一瞬だけチラッと目配せした後、再び前に向き直って銀時と共に歩きだすのであった。
(あ、あの女ァァァァァァ!!! まさか! まさかボクをハメる為に一芝居売ってたのかァァァァァァ!!)
まっすぐな視線を見せて来ただけのアリスだが、その行動ですぐにユウキは気付いてしまった。
自分はまんまと彼女の手の平で踊らされていたという事に
(余裕を見せるボクに乗っかったフリを演じつつ! 銀時が落ち込むのも予測済みで! そこへ一足先に銀時に駆け寄って優しく慰めて好感度を上げる! 最初からそれが狙いだったの!?)
アリス、恐ろしい子……!
リズベットから聞いた話を鵜呑みにして、そのまま偽りの自分を演じていただけの自分とは正に格が違う。
銀時は日頃から彼女の事はドが付く程の天然で訳の分からない事ばかり言う電波女と称している。
しかしユウキは気付いてしまった、彼女は確かに天然な部分はあるが、時に他人を欺く為に狡猾な手段を持ち合わせる腹黒さも兼ね備えている、とんでもない女狐であると
それはまるで、かつて自分をおしとやかでか弱い小娘だと欺きつつ、的確にライバルであるこちらを牽制しながら、釣れるタイミングを見極め見事に一人の男を一本釣りする事に成功した亡き姉の様に……
「ヤバいヤバいヤバい!! もう余裕のある女なんて言ってられないよ! 余裕なんてどこにもないじゃん! 急いで追わないと!!」
もはやリズベットからの助言を真に受けて余裕を保ってなんていられない、むしろそれが仇となってこうなってしまったんのだ。
余計な助言をしてくれた彼女を恨みつつユウキは慌てて銀時とアリスを追う為に
「ま、待ってー! ボクも! ボクも銀時に伝えたい事がー!」
なりふり構わずに必死に洞窟の方へと駆け出すのであった。
再び想い人が女狐の魅力に虜にされる前に……
入口はこじんまりとした洞窟であったのに、内部の通路は長くそして暗かった。
一度足を踏み入れたらそこは、灯り一つさえない暗闇……全く見えない状況下でユウキは壁伝いで進みながらなんとか銀時とアリスの足音がする方へとついて行く。
「ね、ねぇ銀時……さっきからずっとこんな暗い場所をズンズン進んでるみたいだけど大丈夫なの……?」
「ああ、俺暗視のスキル持ってるから、暗い所だろうがちゃんと見えるんだよ」
「え、暗視スキルって……そんなスキルいつ取ってたの?」
「前にアリスに連れられて、暗視スキルが取れるクエストをクリアしたんだよ、な?」
「お前の腕なら容易に攻略出来ると信じていました」
「……」
暗視スキル……平たく言えば暗いダンジョンでも真昼と変わらずハッキリと視認出来るようになるスキル……
そんな便利なモンをいつの間にかアリスと一緒に取っていたなんて……
銀時とアリスの声を頼りにして進みながらユウキは無言で悔しそうに奥歯を噛みしめた。
「ところで銀時、さっきの話なんだけどさ……ボクもアリスと同じだからね、アレはただちょっと悪乗りし過ぎただけだから……一時のテンションに身を任せた結果だからただの……」
「そうかい、ま、俺は信じねぇけど」
「ふぁ!?」
暗がりの中をおっかなびっくりの状態で進みながら、ユウキは先程の一件で弁明しようとする
だが前方にいるであろう銀時からの返事はまさかの拒絶
「いいよもう、俺の事なんか嫌ってんだろお前、表面上は仲良くしておいて裏ではクラスメイトのみんなで俺の悪口言い合ってたんだろ、だからもう信じねぇ、誰も信じねぇ、俺が信じるのはアリスだけだ」
「その通りです、お前も少しはわかって来ましたね。そう、お前の真の仲間は私一人だけです、故に私のみを信じ私だけに興味を示し、私だけを見るのです」
「ワカリマシタアリス様、銀時ハモウ、アナタ以外ノ存在ニ興味持チマセン」
「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉ!!! ほんの少し目を離した隙にどこまで洗脳させてんのアリス!! なんか片言になってるんだけど!? キャサリンみたいな口調になってるよ銀時!」
この暗闇の中を彷徨い続ける間に何があったのかは、ユウキにはわからないが、どうやら銀時はもうアリスだけを信用し、それ以外は拒絶するという所にまで調教済みらしい。
銀時に拒絶されるという事に耐えられないユウキは、慌てて声がする方向へヤケクソ気味に突っ走って、ドン!と強く何かにぶつかると、それをすぐに掴む。
「待って! 本当にお願いだから待って! 謝るから! 酷い事言ったの本当に謝るから! もうこの際なんでもするからボクを見捨てないで!」
「ったく……あーあ、まあこんぐらいでいいか。安心しろユウキ、俺がオメェを見捨てる訳ねぇだろ、前に言った事忘れたのか?」
「へ……?」
ガシッと背中らしき所を両手で掴みながら、ユウキが涙目で訴え始めると。ため息と共に銀時がいつものくだけた感じで返事した。
「藍子が死んで俺を拾い上げたのは他でもねぇオメェなんだぞ、そんなオメェに俺が愛想尽かす訳ねぇだろ」
「銀時!」
「いい年してるのに捨てられた子犬みてぇに鳴くんじゃねぇよ、ったくお前は本当に……」
呆れつつも笑っている銀時の声を聞いてユウキはパァッと顔を輝かせると、そんな彼女の方へ彼は笑いかけながら栗と後ろに振り返る。
だが
「……あの……え?」
「なんと、これは面妖な……」
「え、なになに銀時にアリス? なんか見つかったの?」
「まあ、な……」
「ちょっと待っていなさい、今……あなたにも見えるよう灯りをつけてあげます……」
突然言葉を詰まらせる銀時とアリスに、何かあったのかと目の前のモノを掴みながらユウキがキョトンとしていると
前方からカチッと何かの音がしたかと思えば、暗闇の中が急に明るくなった様になった。
「暗視スキルを妨害された時を考慮して万が一の為に強力点火灯を持ってました、コレであなたも暗視スキルを持った時と同じぐらいにハッキリ見えるでしょう」
「アリスそんなの持ってたの、だったら最初から使えばボクも……ってアレ? 確かに良く見える様になったけど、前方は相変わらず暗闇なんだけど」
アリスの事だから銀時と二人っきりになる為にあえて使わなかったのであろうと苦笑するユウキであったが、後方は確かにはっきりと見える様になったのに前方は相変わらず暗いままだと気付く。
しかし
「ん?」
ユウキはふと自分が両手で触っている何かに違和感を覚えた。
ふと自分の手の先を見ると、掴んでいるモノは銀時の着ているローブでも、アリスのマントでもない。
ゴワゴワした暗闇の中に唯一ハッキリと見える、黄色いTシャツのようなモノ……
「……」
ユウキはゆっくりとそのシャツから手を離して後方へと数歩下がる。
すると目の前の暗闇がやがてシルエット、そして黄色いTシャツを着た毛深い生き物だと見える様になった。
「よ、よぉユウキ、ちゃんと見えてるか……」
「驚きましたね、私の探知スキルにも反応しないとは」
その生き物の横から、自分よりちょっと距離が離れている銀時が頬を引きつらせながらヒョコッと出て来た。
続いてアリスも興味津々の様子で顔を覗かせながら生き物を見つめている。
銀時とアリスは自分よりも数歩分先を歩いていた。という事は今まで自分が掴んでいたモノは……
「……」
ユウキがそーっと顔を上げていくと、その生き物もまたこちらに気付いた様子でゆっくりとこちらに振り返って来た。
そして彼女は唖然とした表情を浮かべながら”彼”と対面する。
真ん中に『俺』と書かれた黄色いTシャツを着た
鼻水を垂らしたいかにもアホそうなゴリラと
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
いつの間にか自分達の真ん中を歩いていたのは
意外と汗っかきで恥ずかしがりやなゴリラでした
ソラチンタマ・出現
なんだかひたすら心理戦しているようなお話でしたね、一人一人のセリフの量が半端ない……
いよいよお出まし珍獣・ソラチンタマ、彼の底知れぬ力を前に銀時達は撃破する事が出来るのか……どこぞのゴリラさんごめんなさい
そしてその一方でキリト達が戦っている相手はなんと……
次回をお楽しみに