【挿絵表示】
『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』の主題歌『B.A.T.T.L.E G.A.M.E/RIDER CHIPS & 仮面ライダーGIRL』をモチーフにした集合絵だということです。
私の作品に描いて下さる人達って、ひょっとしてライダー好きなのかな……
今回は現実世界での集合絵ですね、こういう色んなキャラがわちゃわちゃしてるのを見るだけでこっちも楽しくなってきますねー。
本編にはまだ出てないキャラもちらほらと……ちなみに長谷川さんの真下にいる猫は
私が原作で思いきり泣いた話だったので物凄く好きなキャラです。ちなみに一番泣いたのは犬とじーさんの話、動物系に弱いんです……
綺麗な色使いに沢山のキャラクター、何よりハチャメチャコメディーという特徴を上手く掴んで描いて下さり、ありがとうございました!!
ちなみに私がイラストの中で一番可愛いと思ったのは女装した和人だというのは内緒だよ!
第五十層、そこにはギガスシダーの大木がある森の近くに、ルーリッドという小さな村がある。
そこは沢山のプレイヤーがいるEDOの中でも屈指の過疎地帯であり
NPCしかいないこの村にはほぼ滅多にプレイヤーが足を踏み入れる事はほとんどない。
だが
「おいクソガキ、今ちょいとこういうモンスター探してるんだが知ってるか?」
そこにいたのは随分と裾がボロボロになった茶色コートを羽織る銀髪天然パーマのプレイヤー・坂田銀時だった。
どうやらここにいるNPC一人一人に同じ質問を繰り返しながら、討伐対象となるモンスターを探している様子。
鼻水垂らしたアホそうな子供からは有益な情報を貰えなかったのか、銀時は髪を掻き毟りながらまた別の村人を探し始めた。
「チッ、これじゃあまるで万事屋とやってる事同じじゃねぇか……ゲームで遊んでるのに仕事やってる気分になるぜ」
「無駄口叩いてるヒマはないですよ、さっさとここにいる村人全員から情報収集を行うのです」
仕事と遊びを混合している今の現況を嘆いていると、そんな銀時に話しかけてきたのNPCではない。
数匹の羊がいる囲いに背を預けながら、腕を組んでこちらに綺麗な目を二つ向けて来る金髪騎士・アリスである。
相も変わらず偉そうな態度だと思いながら、彼女に対して銀時は顔をしかめる。
「オメーの方はどうなんだよ、例のモンスターの出現フラグとか回収できたのか?」
「お前が指定した範囲の村人からはとっくに全員から話を聞いております、しかし大した情報はありませんでした、この村の近くにいるかもしれないという話までは聞きましたが」
「それぐらい俺だって確認済みだわ、俺達が知りてぇのは村の近くのどの辺にどのタイミングで現れるかって事だよ」
この村に来て早々、銀時は沢山いるNPC全員に話しかけるなら分担した方が良いと思い、それぞれ別れて情報収集を始めていた。
しかしどうやらアリスの方もまたたいした情報は得られなかったらしい
「ナイグル・バルボッサとかい富農の男からそれらしい話を聞ける機会があったのですが、下卑た笑み浮かべながらあまりにも莫大な金を要求して来たので、なら暴力的手段で聞き出そうと思ったのですが途中で泣きながら気絶してしまい無理でした」
「お前NPC相手にも容赦ねぇな、そこはアレじゃねぇの? その親父にお前の乳でも尻でも触らせてやれば上手く話を聞け……」
貴重な情報源に暴力で訴えるとは何考えてるのだと、頬を掻きながら呆れつつちょいとした冗談を言う銀時であったが
その言葉を言い終わる前にアリスが彼の両肩に手を置いて軽く首を後ろに傾けて……
「ぶッ!」
そこから真顔で思いきりヘッドバットをかます、どうやら銀時のセクハラが込められた冗談が気に食わなかったらしい
戦闘が出来ない村の中なのでダメージも発生しないし痛みだって無いのだが、脳が痺れたかのような感覚を覚えつつ銀時は頭突きされた箇所を擦る。
「おい……軽いジョークかましただけでいきなり頭突きはねぇだろ……」
「ところであの小動物はまだ戻ってこないんですか?」
「無視かよ……ユウキならこの村にある教会に行ってる筈だろ」
額が赤くなっている自分に何事も無かったかのように話しかけてくるアリスに少々ムカつきながらも
銀時は目を細めながらチラリと後ろに振り返る。
「あの辺に寂れた教会があるんだよ、アイツには中を調べて貰ってる。けどあそこ行ったきり全然戻って来ねぇな、何があったんだアイツ……」
「なるほど、彼女はまだ戻ってないんですか……それなら」
「へ?」
振り返った先には村に唯一ある大きな建物である教会がひっそりと建っていた。
そこにもう一人の同行者であるユウキがいる筈なのだが、まだ彼女は戻ってきていない。
そうとわかったアリスは、目をキランと光らせ、突然銀時の手をむんずと強く掴むと
「ではお邪魔虫が消えたという事で今から二人で行動しますか、この村は見る者は無いですがのどかな雰囲気とどこか懐かしい匂いが溢れていて私は好きです、二人で色々な所を散策しながら歩き回りましょう」
「ちょちょちょ! 人の手掴んで無理矢理引きずって行くんじゃねぇ! てか俺達の目的はお目当てのモンスターを見つける事だろ! オメェと仲良く村の中をブラつくつもりはねぇよこっちは!」
「お前には無くても私にはあるので、ほら行きますよ」
「わかった! わかったから引っ張るのは止めろ! ちゃんと付き合ってやるから!」
自分の手を取って村の中を二人で歩き回ろうと提案すると即座に自分を引きずりながら歩き始めるアリス
いつものパターンだ、こうなると絶対に自分の言う事を聞いてくれない。理由はまだ明白ではないが、彼女は自分と二人きりになる事を常に求めている、怖いぐらいに。
ズルズルと地面を擦りながら銀時は仕方なくそんな彼女に付き合ってやるかとため息突いていると
「何やってるのお二人さん? 二人仲良く手を繋いでどっか遊びにでも行く気?」
「げッ!」
そこへ不意に話しかけて来たのはNPCの村人では無かった。
正真正銘本物のプレイヤー、両手を腰に当ててこちらにジト目を向けるユウキがいつの間にかすぐ近くに立っていたのだ。
アリスに引っ張られながらも銀時は彼女の姿をハッキリと見てすぐにその場に踏み止まった。
「お、おう……やっと戻って来たのかお前、こっちは二人がかりで情報収集しようともう一度村の中を一周する所なんだけど……っておいこっちが話してる途中で引っ張るな!」
「やれやれ、アリスは相変わらず銀時に懐いてるねー」
「ア、アレ?」
ユウキに言い訳してる途中でも無表情でこちらを強く引っ張って行こうとするアリスに、銀時が必死に抵抗している中
意外にもユウキは軽く笑いながら余裕といった表情で肩をすくめるだけだった。
「どうしたお前……俺はてっきりまた怒り出すんじゃねぇかと思ってたんだけど……」
「なんでボクが怒る必要あるのさ? どうせアリスが君を無理矢理連れて行こうとしてるんでしょ、それぐらい好きにすればいいじゃん」
「お、おう……」
「……」
それはさながら「正妻の構え」でユウキは全く動じていなかった。
目の前でアリスに連れてかれようとする銀時に対しても声を荒げる様子もなく、勝手にすれば?という感じなので
急にどうしたのだろうかと銀時が不審に思ってる中、アリスもまた彼の手を引っ張るのを止めてジッと彼女の方に目をやる。
「なんなんですか? あなたはこのまま私が彼を連れて行っても良いと思ってるんですか?」
「うん、ウチの人好きに連れ回してもいいよ」
「……理由はわかりませんが、あなたのその余裕綽々といった態度が気に入りませんね、少々腹が立って来ます」
「え~ボクはただ連れて行きたいなら連れてけばって言っただけなのにな~」
余裕あり気な態度を取りながら軽くバカにした様子でアリスに笑いかけるユウキ。
こんな意地悪そうな彼女は今まで見た事が無い、銀時が困惑した様子で頬を引きつらせていると
逆にムッとした表情を浮かべるアリスは彼の手をパッと放して引っ張るのを止めた。
「もういいです……なんだかモヤモヤして来たので彼を連れて行くのは一旦止めます」
「あ、そう。それならさっき教会で手に入れた情報をここで話してもいい?」
「構いません、元より情報収集が最優先事項なんですから……」
今度はニッコリ笑いかけて来たユウキにアリスは言葉少なめにプイッと顔を背けてしまう。
ユウキに対してちょっと拗ねた態度を取っているアリス、これもまた初めて見るなと銀時が無言で驚いてる中
教会で情報を手に入れたと言って、ユウキが嬉しそうに軽く手を挙げるのであった。
「教会にいたシスター・アザリヤって人から聞いてわかったんだ、ボク等の目当てのモンスターの出現場所が」
「マジでか!? てかあそこにNPCいたのかよ!」
「なんか身寄りのない子供達をシスターが教会に住まわせて世話しているって設定だったね。結構いたから全員に話しかけるので結構時間掛かっちゃった」
「例のモンスターの出現場所がわかったんだから上出来だろ、よくやったなお前」
「いやいや、これぐらい大したことじゃないって」
どうやらユウキは教会にいた子供のNPC含めて片っ端に話しかけ、そしてその子供達を世話しているというシスターから非常に有益な情報を入手できたらしい。
そんな彼女に銀時が素直に頷いて褒めてあげていると、いつもの無表情でありながらもちょっと苛立ってるよう感じでアリスが口を開いた。
「……それで? そのモンスターは何処にいるのですか?」
「うん、なんでもこの村か少し離れた所に洞窟があるみたいでさ、そこからよく出て来てこの村の住人に迷惑行為を働いてるんだってさ」
「この村の周りに洞窟なんてありましたか?」
「村に来る前は気付かなかったけど、多分あのシスターに話を聞けばフラグが立って見つかる様になるんじゃないかな?」
普通なら見つける事が出来ない場所でも、なんらかの情報を手に入れる事がフラグとなり辿り着く事が出来る様になるという普通のRPGでもお馴染みの仕様。
そう推測したユウキは自信満々の様子で
「あっちの方に進めばその洞窟あるんだって、行ってみる?」
「まあ本当にあるのであれば行った方が良いのではありませんか……」
「なんなら銀時連れてこの村の中を散歩してても良いんだよ? モンスターならボクが倒しておいてあげるから」
「……いえ、私も同行します、お前も当然来ますよね」
「お、おう……」
やや挑発的な物言いをするユウキにカチンと来ながら自分も同行すると頷いて銀時にも確認を取るアリス。
いつも他人の事もお構いなしに自分勝手に行動する彼女が、あのユウキにリードされている……
しかし二人の間のギクシャクしたムードは変わってない、むしろ悪化しているような気さえするのだ。
「んじゃしゅっぱーつ」と意気揚々と洞窟があるらしい場所に向かって歩き出すユウキに面白くなさそうについていくアリス。
そんな二人を後ろから眺めながら、銀時は不安そうにため息をつきながら頭を掻き毟るのであった。
「ったく、大丈夫かよこのパーティーで……」
話は今から数時間前に遡る。
四十八層にあるリズベット武具店に、久しぶりに大勢の客が押し寄せていた。
最初は沖田が
次に銀時、ユウキ、キリトが揃って
そこへすぐにアスナが
そして今度はユージオとアリスが連続で来店して来たのだ。
「な、なんか急に人が沢山来たんだけどどういう事……」
「良かったじゃねぇか、店が繁盛して名を上げるのがお前の夢だったんだろ?」
「いやそうだけど……」
店主であるリズベットは神器を造れるというウソがばれて銀時に謝罪してる真っ最中だった。
しかしこのカオスな状況を前にして思わず立ち上がり、隣にいる沖田と共に店内を改めて見渡してみる。
「オメェがキリト君が言ってた青薔薇の剣っつう神器を持ってるユージオ君?」
「あ、そうです初めまして、あなたはもしかして……腕はいいけど性格が絶望的なほど捻くれている、万年金欠で主人公に相応しくないド腐れ天パ野郎とキリトが言っていたあの坂田銀時さんで……うわ!!」
「ぐえぇぇぇぇぇぇ!! ギブ! ギブ!」
「オイ、俺が知らない所で随分と勝手な事言ってるみたいだなテメェ」
まず銀時が初対面のユージオと軽く挨拶を交わしていた、しかしその途中で銀時はそっと逃げ出そうとしたキリトの首を片手で鷲掴みにして、ギリギリと締め上げながら掲げる。
「そういや前にコイツから聞いたけど、おたくコイツが神器の素材を手に入れる時に手伝ってやったんだって? こんなクズト君に手を貸してやるなんて随分とお人好しだなお前」
「ええまあ……なんか凄く困ってそうだったんでつい……ていうかその、いい加減彼を放してあげたらどうですか?」
「今時無償でこんな野郎に協力してやろうと思う奴なんて滅多にいねぇよ、すげぇいい奴じゃん。あれ? もしかしてそっち側の主人公ってコイツじゃなくてユージオ君だった?」
「そんな訳ねぇだろ! 俺がずっと主人公……ぐえぇぇぇぇ!! 頼むからもう放して! 圧迫感がヤバい! 首への圧迫感が半端ないから!!」
「アハハ……」
キリトの首を締め上げながら何食わぬ顔で自分と会話する銀時に苦笑しながらユージオはすぐに思った。
この人を怒らせたらマズいなと……
ようやくキリトが銀時の首絞めから解き放たれて、ドサッと床に落とされていると
男三人組のちょっと離れた場所では、女三人組も固まって何やら話をしていた。
「君さ……いい加減ウチの銀時をストーカーするの止めてくれない? 迷惑なんだけど?」
「私はストーカーでもありませんし迷惑な真似もしていません、あの男との交流が今の私が最も優先すべき事なのです、例え小動物には理解されなくても、こればっかりはやめられない止められないのです」
「かっぱえびせんか! だからそれが迷惑なストーカー行為だって言ってんの! あとボクの事を小動物って呼ぶの止めてくんない!?」
「ユ、ユウキ……ちょっと落ち着いて……」
互いに顔を近くに寄せてメンチの切り合いを始めながら口論するユウキとアリス
そんな二人に状況が分からぬまま圧倒されつつも、アスナが急いで口を挟む。
「ねぇユウキ、この凄く綺麗な金髪の人は一体誰なの……? 同性の私でもうっとりするぐらい美人なんだけど……」
「アリスだよ、確かに凄い綺麗な人だけど、事あるごとに銀時に付き纏ってる変人なんだ」
「……なるほど、ユウキが彼女と揉めてる理由はなんとなくわかったわ、けど揉める原因があの人だっていうのがちょっと腑に落ちないわね……」
アスナから見ればユウキも凄く可愛らしいしアリスも凄く美人だ
しかしそんな二人が争う原因が銀時とかいうちゃらんぽらんの取り合い……
その事に関しては凄く微妙な表情を浮かべるアスナに対して、突然アリスの方から話しかけて来た。
「ところで小動物と親し気に話してるそこのあなたは誰ですか?」
「ああ、私はアスナ、血盟組の副長よ」
「なんでしょう……あなたを見ていると何か思い出せそうな……」
「え?」
「しばらくその顔を間近で拝見してもよろしいですか? 3時間ほど」
「は、はぁ!?」
アスナの顔をどこか不思議そうに見つめながら歩み寄ろうとするアリス。
いきなり何を言い出すんだとアスナが素っ頓狂な声を上げると、すぐ様、彼女を護るかのようにユウキが間にバッと入り込んで
「ちょっとアリス! 銀時だけじゃ飽き足らず今度はアスナにまで付き纏う気なの!? 男だけじゃなくて女もいけるって事!? 頼むからこれ以上僕の友達や大切な人達を変な目で見ないで!」
「ええ!? うーん、私も流石にそれはちょっと……」
「誤解されている可能性があるのでハッキリと言っておきますが、私は彼女の顔をもっと見たいと思っただけです、もし嫌だというのであれば礼金はあなたが望む額を渡しますが?」
「いやいや、お金が絡むと余計生々しくなるからお断りします……」
「そうやって銀時の事もお金で買ってたんだよね君……言っとくけどその件については君に言いたい事が山程あるんだからねボク……」
どうやらアリスは相手の望む額をそのまま払ってやれるぐらい、ほぼ無地蔵と考える程の資金を蓄えているらしい。
しかしアスナは金さえ払えば何でも言う事を聞いてくれると思われるのも嫌なので、やんわりとそれを断ると
ユウキもまたアスナが見た事が無いぐらい物凄い不機嫌そうな様子でアリスを睨み付けるのであった。
「マズいわね、なんだか人間関係が入り乱れてちょっとおかしな事になってるわ……コレどうやってまとめたら良いんだろ……」
「けどずっとお前が望んでいた腕の良さそうな連中が揃ってるじゃねぇか、知らねぇ奴も二人いるが、旦那達と交流できてるって事はそれなりに使える人材って事なんじゃねぇの?」
男三人と女三人
それぞれのグループに目をやっていたリズベットがどうしたもんかと頭を抱えていると、一緒に同じ光景を眺めていた沖田が面白そうに口を開いて彼女の方へ振り向く。
「丁度いい、旦那やあの黒髪のガキだって元はと言えばテメーの武器をお前に造ってもらおうとしてたんだ、ならお前が困っているって言えばちったぁ手伝ってくれんだろ」
「まあ確かに……これだけいれば希少素材の一つや二つ、神器を造るためならって取って来てくれるかも……」
使える人材は使っておけ、ニヤリと笑いながら割と的確なアドバイスをしてくれた沖田にリズベットは不安そうな顔を浮かべつつも縦に頷くと
すぐに両手をパンパン!と強く叩いて、雑談タイムに興じている六人の男女の注意をこちらに向けさせる。
「はいちゅうも~~~く!! アンタ達ちょっといいかしら~!!!」
「なんだよ詐欺師、焼けた鉄板の上で土下座する準備は出来たのか?」
「違うわよ! ちょっと私の話を聞いて頼むから!!」
死んだ魚のような目をこちらに向けながら恐ろしい事を言い出す銀時に恐怖を覚えつつも
リズベットはコホンと軽く咳払いして早速本題に入った。
「神器を造った事があるっていうのは確かに私のでっち上げよ、その点については認めるし謝るわ」
「ええ、僕、あなたが神器の扱いが出来るってキリトから聞いたから青薔薇の剣持って来たんだけど……」
「マジで!? え、マジモンの神器持って来たの!? うわ初めて見た!! ってそうじゃなくて!」
残念そうにユージオが取り出した青薔薇の剣を見て、本物の神器だと若干興奮しつつもすぐにリズベットは我に返る。
「私は神器を造った事が無いわ、けどだからといって造れないとは言っていないの。神器の素材をベースにしてEDOにおける複数の希少素材を掛け合わせれば、私の腕なら造り上げる事が出来ると保証するわ」
「やれやれ、ガセ言って店を繁盛させようとしてたクセに、また随分とデカい口叩きだしたな」
自信満々に材料さえあれば絶対に造れると言いのけるリズベットに、キリトは皮肉たっぷりに軽く笑い飛ばす。
「もし出来なかったら今度はどう責任取ってくれるんだ? 言っておくけどもう土下座じゃ済まないぜ?」
「その時は私の事を煮るなり焼くなりしても構わないわよ、あなた達の要求になんだって応えてあげる、そうされても文句は言えないし」
要するに神器を造る為に手を貸してくれ、それでも出来なかったら自分の身を代わりに提供するという事。
それを聞いてすぐにアスナは顔をしかめてキリトの方へ指を差して
「リズ、コイツにそんな事言っちゃダメよ、きっと凄くエッチな事を要求するわよ」
「しねぇよ!」
「まあ神器が造れなかったら……そういう事されるのも覚悟しておくわ」
「マジで!?」
「アンタねぇ……」
最初はしないと言っておきながらリズベットがそれもまた仕方ないと言った瞬間すぐに鼻息荒くする年頃の少年であるキリト
そんな彼を心底見下げ果てた野郎だとアスナが睨み付けていると、リズベットの隣で腕を組んでいる沖田が代わりに話しを続ける。
「旦那やキリト君もテメーの神器が欲しいんでしょ? だったらお二方もここはコイツに協力してやりましょうや、出来なかったら出来なかったでコイツを好き勝手弄んでいいみたいですし」
「いや、俺ガキには興味ねぇんだけど……てか手ぇ出したら捕まるし」
「何言ってんでさぁ、いつもそのちっこい小娘を連れ回してるじゃないですかぃ」
「だからコイツはガキじゃねぇって、俺と大して年が変わらない立派な女だっつうの」
「え……」
沖田に指摘されて銀時の口から立派な女だと言われたユウキは内心ドキッと反応している中
キリトの方は床を見つめながらブツブツと呟き始め
「神器が造れるか女の子を好き勝手に出来るか……つまりどっちに転んでも俺としては得しかないじゃないか! よしやろう! ゲーマーとしての夢と男の夢のどちらかを叶えるこのチャンスに俺も協力してやる!!」
「コイツは本当にいずれ私の手で抹殺しないと気が済まないわ……」
明らかにリズベットの協力に参加する気満々のキリト、ハァハァ言いながら物凄く興奮している様子の彼に、アスナは奥歯を噛みしめながら女の敵だと殺意を滾らせる。
「いいわ、神器があなたのモノになるのは癪だけど、親友のリズがあなたなんかに好き勝手されたくないから手を貸してあげるわよ」
「あ、別にいいよ、俺お前の事嫌いだし、希少素材位一人で取りに行けるから」
「私だってアンタの事なんか殺したいぐらい大嫌いよ! けど仕方ないでしょ! リズを護る為なら私だってなんとか助けになりたいのよ!」
仕方ないと言った感じで彼に手を貸そうとするアスナだが、キリトは似合わない爽やかな笑顔浮かべてそれを拒否しようとする。
怒りのボルテージがMAX状態だと自覚しつつも、ここは親友の事を思って彼に協力する事を選ぶしかなったアスナであった。
そしてその様子を見ていたリズベットは「なるほどねぇ」とコクリと頷き
「じゃあキリトとアスナ、それともう一人メンバー追加して三人でパーティー組んで頂戴、希少素材を持つモンスターを討伐してもらうから」
「はぁ!? なんで俺がコイツとパーティー組まなきゃいけないんだよ!」
「ちょっとリズ! 私もそれは流石に受け入れられないわ! どうして血盟組の副長たる私が! 攘夷プレイヤーの黒夜叉なんかと!!」
「だってアンタ達組ませたらなんか面白そうだし」
「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
色々な思惑があって自分達を汲ませたと思ったら、単に組み合わせが面白そうだからと言ってのけるリズベット。
そして案の定ギャーギャーと文句を言い出す二人をスルーして、今度は銀時の方へ
「アンタも悪いけど手伝ってね」
「ったくよ~、依頼主にまで造るのに協力しろとかあり得るか普通?」
「まあまあ良いじゃん、希少素材って事はレアモンスターやユニークモンスターを倒しに行けばいいんでしょ? あ、それとも滅多に足を踏み入れる事の出来ない秘境に隠されているとか?」
「今回アンタ達に依頼するのは、うーん、モンスターの方で良いかな? アンタ達腕っぷし強そうだし」
銀時の方は顔をしかめて嫌そうにしているが、ユウキは何やら楽しげな様子で少し張り切っている。
彼女の言う通り希少素材というのは神器の素材に次いでレア度の高い代物だ。当然そう簡単に手に入るモノでもない。
既にユウキは銀時と組む気満々の様子なので、リズベットは二人に有名かつ滅多に姿を見る事ができないユニークモンスターの討伐を依頼しようとする。
だが
「お前が行くのであれば私も行きます、異論は認めません」
「言うと思ったよ……別に良いけど俺を引っ張り回すのだけは勘弁してくれよ」
「善処しません」
「善処しろよ!」
「……」
そこへすかさず挙手しながらやってきたのは案の定、アリス。
元々ここに来た目的は銀時を探す為だった彼女にとっては、神器云々関係なく彼と行動出来ればそれでいいのだ。
銀時の方もため息をつきつつ面倒臭そうな反応をするものの、彼女の同行をあっさりと承諾してしまう。
それに対して当然面白くなそうな表情でユウキが無言でムッと横目を向けていると
「あれ? ひょっとしてアンタ達三人って、そういう関係?」
「……なにが?」
「三角関係って事」
そんな三人組を見て薄々察し始めていたリズベット。顎に手を当て「ははーん」と言いながらニヤリと笑うと、彼女はすぐに不機嫌そうな顔をしているユウキの方へしゃがみ込む。
「あんなふてぶてしいおっさんを取り合うって事には全く理解出来ないけど、恋のアドバイス位ならしてあげてもいいわよ」
「えぇ……いいよ別に、言っておくけどボク君より年上だと思うよ? 年下に恋愛云々の助言なんて貰いたくない」
「え、そうなの? 見た感じ私より年下に見えるのに……まあでも恋を語るのに年上も年下も関係ないんじゃない?」
「……なんか急にグイグイ来るね君……ひょっとして楽しんでる?」
他人の恋愛関係には首を突っ込みたくなるのが年頃の女子というモノ。
顔をしかめて嫌そうに断るユウキに対し、リズベットは楽しげな様子で勝手に話を続けた。
「あのね、じゃあこれだけは聞いておいて。好きな人が他人に奪われそうになっても、不機嫌になったり、焦って叫んだり、男に八つ当たりしたりするのは止めておきなさい」
「それめっちゃボクの事言ってるよね……」
「女はね、必死さを顔に出しちゃダメなのよ、常に余裕の構えを意識しておかなきゃ、私の男を奪えるモンなら奪ってみなさいってな感じで全く動じず慌てずに、余裕のある女を演じてみなさい」
「お、おう……な、なんか思ったより的確なアドバイスだね……」
うんうんと頷きながらなんだか結構しっかりしてるアドバイスをしてくれたリズベットに、ユウキは意外だとちょっと驚いて目を見開く。
「どこでそんな話聞いたの?」
「私、かぶき町にあるオカマが沢山いる店によく遊びに行ってるのよ、そこのオーナーから聞いたの」
「なんか急に胡散臭くなった! オカマのアドバイスに感心しちゃったのボク!?」
かぶき町にあるオカマの店のオーナーという事は、銀時とキリトが以前働いていたというかまっ娘倶楽部のオーナーでありかぶき町四天王の一人、マドモーゼル西郷に間違いない。
その店の常連という事はリズベットはもしかして結構自分達と近い場所に住んでいるのだろうかと、ユウキが考えながら微妙な反応をして見せると、「まあまあ」とリズベットがヘラヘラ笑いながら彼女の肩に手を置き
「騙されたと思って試しにやってみたら良いじゃん、案外上手くいくかもしれないよ」
「確かにアドバイスとしては凄く興味深いけど……まあちょっとだけ試しにやって見ようかな……?」
「そうこなくちゃ、ユニークモンスター探しの時にぜひ実践してみてね、あ、そうそう」
「ん?」
やるだけやってみようかなと、ユウキはその余裕な態度を見せつけるという案を実行してみようと考えていると
思惑通りとリズベットは満足げに頷きながら懐から一枚の紙きれを取り出す。
「コレ、今欲しい希少素材のリスト、チェック済みのサインがされているのは既に他のプレイヤーが取って来てくれた奴よ」
「どれどれ……うわ凄い沢山必要なんだね、神器一つ造るのにこれだけの希少素材が必要だったなんて……」
希少素材のモンスターや植物が記載されているそのリストを眺めながら、意外にも既に希少素材をいくつも入手していたのでちょっと驚いて見せた。
これだけ集めるのに一体どれだけ苦労したのだろうか……銀時の神器の為に取って来てくれたプレイヤー達に心の中で礼を言っていると、リズベットがまだチェックのサインがされていない所をスッと指差す。
「それでこの中から今一番欲しいのわね、五十層にいると噂されているとあるユニークモンスターからドロップできるモノなの」
「一体どんなモンスターなの?」
「それはね……」
「『ソラチンタマ』っていういつも鼻をほじってばかりで人見知りであまり人前に出なくて木登りが上手くて、そんで漢字で「俺」と書かれているシャツを常に着ている変なゴリラ型のモンスターよ」
「うわ、すんごい相手にしたくないモンスターを回されちゃった……」
銀時・ユウキ・アリス
神器を手に入れる為に
幻のユニークモンスター・ソラチンタマを討伐せよ
キャラが一気に集合すると文字数が激増するから書くの大変です……
次回は銀時パーティーが謎の珍獣ゴリラと遭遇、果たして無事に討伐できるのか……
そしてリズから頂戴した作戦を実行するユウキは、このまま上手くいけるのか……
それでは