竿魂   作:カイバーマン。

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空洞虚無さんから頂いた支援絵です。


【挿絵表示】


タイトル名は「ナース服10点の娘は照橋心美になる」だそうです。

なんか色々とヤバい……ていうか色気が凄い、もはやエロい、これは銀さんもおぅふですね……

綺麗で素敵なイラストを描いていただき、いつもありがとうございます!

そして今回の話は、そんなおぅふした男が、彼女と意外な関係になっているのが判明します。


第五十二層 ホラを吹くなら身の丈に合ったホラを

リズベットは第四十八層のリンダースで店を構える鍛冶師のSAO型プレイヤーだ。

 

特徴的なピンク色の髪は友人からのアドバイスで染めていて、最初は気恥ずかしかったが最近では常連さんに可愛いと言われたりするので今では悪くないと思えるようになった。

 

立地の良い場所に店を構えられた上に可愛いと褒められる店主、これでリピーターが増えない筈ないのだが……

 

「ん~思ったより繁盛しないわねぇ……」

 

開店したばかりという事でお客さんはまだ来ておらず、その隙にリズベットは椅子に座って、ほぼ日課となっている店の売上と収益をメニューを開いてチェックしていたのだが

 

どうやら期待以上の成果が上げられずに悩んでいるらしい。

 

「自分で断言できるぐらい腕は確かだと思うんだけどなぁ……やっぱり値段が高いのがいけないのかな?」

 

別に全く売上が無いわけではない、ベテランプレイヤーの常連客も何人かいるし、他のプレイヤー達のお店の中でもそこそこ売れている方であろう

 

しかし常に依頼した客にはその客に似合う最優の武器を造る事を信条とするリズベットは、一切の妥協を許さず完璧な素材を集める必要があるので、当然かなりの出費が発生してしまう。

 

その為に客に提示する金額も他の鍛冶師に比べて目玉が飛び出る程高かったりするので、金額を提示した瞬間即逃げられるという事も珍しくないのだ。

 

「これはもうあの噂に賭けるしかないわね、自分で広めて最近徐々に周りに浸透されつつあるあの噂で客寄せを狙うしかないわ」

 

今はまだ黒字経営ではあるがそれがずっと続くとは限らない、流行の波に乗る事が出来ずに転覆すればたちまち店は廃れてしまう。

 

その為にリズベットはつい冗談半分でここ等近辺である噂を自ら流していたのだ。

 

リズベット武具店の店主はEDOでも激レア中の激レア武器・神器を造り上げる事が出来る程の腕前だと

 

「フ、我ながらナイスなアイディアだわ、神器の素材があれば神器そのものを造れる天才鍛冶師・リズベット……そんな凄いプレイヤーが店を開いてるともなれば興味本位でお客もわんさか来るに違いないっしょ」

 

誰もいないのを良い事に一人で悪戯っぽく笑いながらリズベットはメニューを閉じて椅子の背もたれに身を預ける。

 

少々ズルいかもしれないがこれぐらいでもしないと商売なんてとてもじゃないがやってられない。

 

商人とは常に合法と非合法の間スレスレを渡り抜いて利益を得てこそ一人前と呼べるのだ。

 

それにちょいとデカい口叩いた事ぐらい大目に見てくれてもいいであろう

 

「まあどうせ誰も分かりっこないだろうしね、私が神器が造れるかどうかなんて。神器の素材なんてそうそう手に入るもんじゃないし、仮に出て来たらその時はその時で考えれば良いし」

 

非常に楽観的な態度でグラグラと椅子を左右に揺らしながらのんびりくつろでいると

 

そんなリズベットの営む店に、ガチャリとドアを開ける音が響く。

 

「こんちわー」

「ああいらっしゃい、って初めて見るお客様ね」

 

店にやって来たのは活発そうな長い黒髪の少女・ユウキだった

 

リズベットはすぐに立ち上がって仕事モードに入る。

 

「よく来たわね、ウチはEDOの中でもトップの武具店よ。ちょいと高いかもしれないけど何がお望みかしら?」

「え、ボクはお客じゃないよ?」

「はぁ? じゃあ冷やかしかなんか? 悪いけどそういうのウチお断りだから、はい帰って、しっしっ」

「切り替え早いなー」

 

買わないのであれば用は無い、仕事モードから素面モードに切り替えてすぐに手を振って邪険に追い返そうとする仕草をしてくるリズベットにユウキは全く気にしてない様子でとぼけたように呟くと

 

「でもお客さんなら連れて来たよ、ボクはその人の付き添い」

「え、そうなの? だったらさっさと早く言いなさいよ、で? そのお客さんはどこ? 結構お金もってそうな感じ?」

「んーリアルでは超貧乏でこっちでもあんま金持ってないかなー、無駄遣いばかりしちゃうから」

「よし、じゃあ一緒に帰れ」

「その対応の早さは感心するけど客商売としてはどうかな?」

 

客がいると聞いてすぐにその相手の懐について尋ねて来るリズベットにユウキが正直に答えていると、ドアからゾロゾロと色んなプレイヤーが入り込んで来る。

 

ギルド内というより学生サークル的な集団・月夜の黒猫団である

 

「お邪魔しまーす!」

「またやって来ましたー!」

「ってアンタ達、ついさっき冷やかしにきた連中じゃないの……また追い出されに来たの?」

「いやいや今度はちゃんと依頼しに来ましたから」

 

次から次へと入って来た彼等にリズベットは顔をしかめる。

 

実は開店準備中に彼等が突然やって来て、神器を造れるのは本当かとしつこく尋ねて来たのだ。

 

それでリズベットはめんどくさそうに「神器の素材がありゃあいくらでも造ってやるわよ」と豪語すると彼等は店内で嬉しそうにはしゃぎ回り出したので、キレた彼女が無理矢理追い出したばかりなのだ。

 

しかし今回はただ質問をしてきた訳ではなく、キチンとした依頼を頼みに来たらしい。

 

「銀さん早く中に入って来いよ!」

「うるせぇな、お前等が先に入るもんだからドア塞がってたんだよ」

 

黒猫団の一人に誘われると、リズベットの店にフラリと銀髪の男が死んだ魚のような目をしたまま入って来る。

 

彼女の依頼をする張本人・坂田銀時だ。

 

 

「おたくが神器造ってくれるっつうこの店の主人か?」

「そ、そうだけど何よアンタ……言っておくけど神器といってもその素材を用意して貰わないと造れないからね私は……」

 

明らかに自分より年上だし無愛想な銀髪天然パーマ

 

そんな男に神器の事について尋ねられるとリズベットはちょっとビクつくもすぐに返答する。

 

「あるのだったらこの天才鍛冶師の腕をたっぷり披露してやってもいいわ、どうせ持ってないんでしょうけど」

「ほらよ」

「へ?」

 

両肩をすくめながらあるモノなら出してみろと言わんばかりのリズベットに

 

銀時はヒョイと手に持っていたモノをポイッと彼女の前のカウンターの上に置く。

 

カウンターの上には黄金色に染まる枝が、今まで見た事が無いぐらいとても美しい輝きを放っていた。

 

「こ、こ、こ、これってもしかして! え、ウソ!? マジ!? も、もしかして金木犀の枝!?」

「よく知ってるじゃねぇか、じゃあ頼むわ」

(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?)

 

あの鬼畜難易度として誰もがクリア不可能と言われていたクエスト『金木犀の枝探し』

 

まさかアレをクリアした人物が遂に現れてなおかつ、自分の下へとやって来たと言うのか。

 

もしかしたら偽物では?とも一瞬考えたがすぐにそれは違うと確信する

 

ただの枝でこれ程までの神秘的な光を放つモノなんてある筈がない、常にモノの輝きを人並み以上にチェックする鍛冶師のリズベットだからこそ、その辺は仕事人としてキチンとわかっている。

 

つまりこれは正真正銘本物の……

 

(本当に神器の素材来ちゃったぁぁぁぁ!!! どうしよコレぇぇぇぇぇぇ!!!!)

 

雷でも落ちたかのような強いショックを感じながらリズベットは内心焦りに焦りまくる。

 

何故なら神器を造れるというのはあくまで自分が店の宣伝の為に流布したでっち上げ。造れるどころか今まで神器の素材にすら触れた事さえないのだ。

 

(ヤバい! まさか本当にモノホンの素材持ってくるプレイヤーがやって来るなんて! どうすればいいの私!? 本当の事言っちゃっていいの!? いやそれは一番駄目でしょ! ホラ吹いてた事バレたら店の信用に傷付くだけじゃ済まないでしょ! 最悪店ごと潰れる可能性も!)

「おいどうした店主さん、さっきから凄い汗流れてるぞ」

「!?」

 

必死に平静を装いながらも内心心臓バクバクで頭の中パニックになっているリズベットに

 

不意にいつの間にか銀時の隣に立っていた黒服のプレイヤーが鋭い視線を向けながら尋ね始めた。

 

銀時とユウキ、黒猫団に紛れて店の中へと入って来たキリトである。

 

「なぁ、アンタ神器造れるのか本当に?」

「バ、バカ言うんじゃないわよ! リズベット武具店の看板を持つ私に造れない武器なんて存在しないのよ!」

「そうだよ、初対面の相手になに失礼な事言ってんだよキリト君、コイツ本人が自分で造れるって言ってんだから間違いないんだよ」

 

ジト目を向けながら明らかに疑って来ているキリトに気付いてリズベットはムキになった様子でつい叫んでしまうと

 

それに神器の素材を持って来た張本人の銀時もうんうんと頷き

 

「だがもし、あり得ないとは思うがもしコイツの言葉が嘘で塗りたくられたタダのでっち上げだった場合、騙された俺達は全力でこの店の悪い噂を流しまくって絶対に潰す、だから早く造れ、店潰されたくなかったら嘘じゃないと証明する為に死ぬ気で神器造って見ろ」

(ってこっちもおもくそ疑ってるぅぅぅ!! しかも店潰すって言った! コレもう完全に出来ないと言っちゃったら終わりじゃない!」

 

死んだ目を僅かに光らせてこちらをジーッと見つめて来る銀時を前にリズベットは「アハハ……」と頬を引きつらせながら苦笑する。

 

 

キリトと同じく銀時も彼女を疑っているみたいだった、幸いにも黒猫団のメンツやユウキは特に何も不審に思っていない様だが

 

こうなったら素直に謝るのはもう無理だ、ならば……

 

「わ、分かり切った事言うんじゃないわよお客さん……神器なんてちょちょいのチョイで造ってあげるわよ」

「ほーん、じゃあさっさと造ってくれや」

「あーもうこれだから素人は困るわ~、確かに私は神器の造れるマエストロ級の鍛冶師だけども、神器の素材があるからといってもそれだけじゃまだ足りないのがわからないのかしら_」

「あ?」

「時間、そしてもちろん私に造って貰う為の契約金よ」

 

でっち上げがバレずにやんわりとこのまま店を続ける方法

 

それはお客の方がこちらの店で造って貰うのを諦めてくれればいいのだ

 

口をへの字にして顔をしかめる銀時に、リズベットは得意げに語り始めた。

 

「こっちもプロよ、お客様が満足してただける武器を造るのは鍛冶師として何よりのモットー。だからこそ私達は一つの武器を造るのに多くの時間をかけるのも厭わないと思っているの、妥協は一切しない、神器なら尚更ね」

「っつう事はコイツをお前に預けちまったら、俺の元に戻って来るのは相当の時間がかかるって事か?」

「そうよ、かなり時間を掛けさせてもらうわ、生半可な神器を渡すなんて絶対に出来ないわ、そんな真似するならそれこそ自分で店を畳むわよ」

 

両手を腰に当てリズベットはちょっと誇らしげにそう言ってのける。

 

多少のホラは拭くものの彼女だって立派な鍛冶師だ。客に嘘はついても己の腕にだけは絶対に嘘は付きたくない

 

それが職人という道を選んだリズベットが持つ唯一のプライドだった。

 

「それともう一つ大事なのが当然お金よ、こっちも骨身を削ってアンタの武器造りに協力してあげるんだからそれなりの対価を払ってもらう必要があるわ、つまり契約金ね」

「チッ、やっぱ金掛かるのかよ……仕方ねぇないくらだ? パフェ1杯分ぐらいか?」

「プロナメてんのアンタ? 今計算してあげるから待ってなさい」

 

そう言うとリズベットはカウンターの引き出しから電卓を取り出すと

 

ピッピッと音を鳴らしながら数字を打ち込んでいき

 

「貴重な神器という事で武器代もかなりの額になる上にこちらで用意する材料代、加工費に遠征費、人を使う事になるだろうし人件費とその他諸々……ザッと見積もりこれぐらいね」

 

 

銀時の前にサッと電卓に表示された金額を見せると、銀時ではなく黒猫団の方がギョッと目を見開き驚き出す。

 

「なんだよこの金額! いくらなんでも高過ぎるだろ!」

「ぼったくりじゃないのかコレ!?」

「六十一層の高級地区で庭付きの家を買える金額じゃねぇか!」

「私、武器一つでこんなに金額掛かるなんて初めて知った……」

「すみません銀さん、僕等がカンパしても到底足りません……」

 

 

彼女が提示した金額はかつて見た事のない程の金額であった。

 

ズラリと並ぶ数字に黒猫団達が一斉に叫んでる中、リズベットは内心してやったりの表情で

 

(フフフどうよこの金額……目ん玉飛び出る程驚いたでしょ、でも素人にはわからないけど、神器となればコレ位かかるのが妥当なのよ、まあちょっと色付けちゃってはいるけども……)

 

到底払う事が出来ないぐらいの金額を見せつけて諦めさせる、それが彼女の狙いだった。

 

銀時のパートナーであるユウキとキリトもこの額を見て眉をひそめている

 

「ひゃーコレちょっとマズいなー、今の銀時じゃ逆立ちしようが内臓全部売ろうが足りないよ」

「いやでも確かに神器ならコレ位掛かっても不思議じゃないさ、まあ多少色付いてるような気がするけどな」

(だからコイツはなんでさっきから一々鋭く突いて来るのよ! 名探偵気取りか! コナンの犯人みたいな黒ずくめのクセに!)

 

 

素直に「おおー」と呟くユウキに対しキリトの方はまだ怪しむかのようにこちらに視線を向けて来る。

 

色付けた事さえ勘付くなんてどれだけ鋭いんだとリズベットは反射的に彼から目を逸らしながら苦笑して誤魔化すしかなかった

 

(けどコレだけの金額を出せばもう向こうも払う気なんて起きないでしょ、このいかにもザ・貧乏って感じの金にトコトン縁の無さそうなツラしてる男がこんな大金払える訳……)

 

一流の商売人は相手が金を持っているかどうかぐらい一目で察する事など容易い

 

そしてこの銀時は間違いなく金があれば使うという思考の貯金なんて出来ないタイプだ。

 

こんな金額到底払えまいと、リズベットは心の中で勝ち誇りガッツポーズを取っていると

 

仏頂面のまま銀時はおもむろに自分のメニューを開いて指でなぞって操作を始めると

 

 

 

 

「ほらよ丁度同じ金額だ、これで足りんだろ」

「「「「「……え?」」」」」

 

カウンターに突然ズン!と重々しい響きと共に巨大な袋が現れた。

 

大量の金貨やら札束が入っているその袋を見て思わず銀時以外の一同が声を揃えて真顔になってしまうと

 

リズベットは恐る恐るその袋に手を伸ばして中に収納されている金額をチェックする為にタッチしてみる。

 

すると彼女の前に表示された金額は……

 

「……ジャストじゃん」

「えぇぇぇぇぇ! 銀時どういう事ぉぉぉぉぉぉ!?」

「ア、アンタいつの間にこんな大金隠し持ってたんだよ!!」

 

足りると信じられない様子で呟くリズベットの反応を見てすかさずユウキとキリトが銀時の方に慌てて駆け寄るも

 

当人は小指で鼻をほじりながらけだるそうに

 

「いやまあ、お前等には言えなかったけど実は会う度に毎回お小遣いとして大金渡してくれる奴がいるんだよ、今後はより大変になるだろうから資金はキチンと持っていた方が良いって」

「なにそれ! もしかしてスポンサーって奴!? ボク等が知らない所でそんな人から資金提供されてたの!」

「どこのどいつだよ! こんなオッサンに使いきれない程の大金を惜しげもなく渡す奴って!」

「あー……」

 

彼の口から放たれた新事実にユウキとキリトがどよめいていると

 

銀時はちょっと言い辛そうにしながらも、まあいいかとため息を突いて彼女達に向かって

 

「アリス」

「……え?」

「なんか毎回会う度に金くれるんだよ、お小遣いだからって」

「それって……」

「最近じゃ俺が帰ろうとする度に金出して「延長お願いします」とか言って来るな、おかげでこっちの世界の金には不自由ないけど、貰うんならリアルで使える金が欲しいぜ全く」

 

キリトのが徐々に顔を強張らせながらなそっと隣に目をやると

 

そこにいたユウキの目が細くなり、悪びれも無く白状する銀時に向かって彼女はボソリと

 

「それ思いきり君との時間を金で買ってるって事だよね……そしてそれを甘んじて受け入れてるって事は、もうぶっちゃけ、君ってばアリスのヒモだよね?」

「はぁ!? 誰がヒモだコノヤロー! 俺は別に金があるとか無いとかで付き合ってやってる訳じゃねぇよ!」

「いやでもお金は受け取ってるんでしょ!? アリスから! ボクにバレないようコッソリと貰ってたんでしょ!」

「当たり前だろ、貰えるモンなら病気以外貰う主義だ」

「じゃあヒモじゃん! もしくはお客に貢がせてる悪いホスト! 万事屋止めて高天原に勤めたら!?」

「人聞きの悪い事言ってんじゃねぇよ! 確かに金は受け取ってるけど! それはあくまで今後役に立つ為に貰ってただけだって! 現に今役に立ってんだろ!」

 

彼女にヒモと呼ばれて強く反発する銀時、もしかしたら自分でも薄々そうなんじゃないかと度々思っていたのかもしれない。

 

アリスとの間に金銭が飛び交ってた事を知って、さっきまで機嫌良さそうにしていたユウキが一瞬にして不機嫌丸出しの表情で銀時を睨み付け、それに銀時もムキになった様子で必死に反論する。

 

自他共に認める程仲の良い二人だが、極稀にこうやって喧嘩を始めてしまう事もある。主なケースは銀時のちゃらんぽらんでいい加減な性格から起きる事が原因だ。

 

店内であるにも関わらず二人は周りの視線を気にせずに延々と論争を始め出すと、どうすればいいのかと困惑している黒猫団と、目の前に差し出された大金を見て呆然としているリズベットを尻目に

 

「まあまあ」と慣れた様子でキリトが二人の間に割り込む。

 

「とりあえずそういうのは二人きりの時にいくらでもやってくれよ、ここ店内だぞ? 周りに人が心配してるんだからそんな騒ぐなって」

「いやそうだけどさ……最近ってば銀時、ボクに隠し事多くない? そこがホント妙にイライラするんだよ」

「はん、わかってねぇなハニー、男ってのは女に言えない秘密の一つや二つあった方が磨きがかかるんだよ」

「そうやって勝新太郎みたいな事言ってすぐ誤魔化そうとするのが……」

「あーはいはいわかったわかった、さっき言っただろ、痴話喧嘩はよそでやれって、勝新太郎でも中村玉緒でもいいからここは大人しく言う事を聞いてくれ」

 

まだ言い争いを続けようとするユウキと銀時にめんどくさそうに両手を上げて制止させると、キリトはリズベットの方へ振り返り

 

「とりあえずその金があればこの人の神器造ってくれるんだろ、つまりコレで交渉成立だな」

「へ!? い、いや確かにお金はあるけど……」

「じゃあ完成したら受け取りに来るから、それまで精々頑張れよ」

「え、え~とその実は……」

 

急に銀時の代役で話を進め出すキリトにリズベットは口をゴニョゴニョさせながら何かを言いたそうな反応をするも、キリトはそれを見透かした上でさっと踵を返して

 

「それじゃあ後はこのマエストロ級の天才鍛冶師に任せようぜ、ほら撤収撤収」

「あ! ちょ!」

「ありがとうございますリズベットさん!」

「今度は俺達も客として来るんで!」

「いやその! あの!」

 

本当の事を告白したいと泣きそうな顔で手を伸ばしてくるリズベットを置いて

 

キリトは黒猫団を連れてさっさと店の中を後にするのであった。

 

銀時とユウキもまた未だ無言で睨み合いながら一緒に出て行く。

 

取り残されたのは大金を前に途方に暮れるリズベットと

 

神器の素材として上を目指すプレイヤーであれば喉から手が出るほど欲するであろう金木犀の枝

 

「どうしようコレ……」

 

徐々に湧き上がる不安とホラを吹いた事による激しい後悔と共に

 

リズベットは一人カウンターに肘を突きながら頭を抱えながら嘆くしかなったのであった。

 

「チクショウ……ホラなんて吹くんじゃなかった……」

 

 

 

 

 

 

 




リズベットに関してはかなり好き勝手に書きてました。こういうちょっとダメな所があるキャラは本当に書いてて楽しいです。私の書くキャラって基本的に欠陥だらけですが

まあダメな部分はあるけど腕は確かなので暖かい目で今後も見ていてやってください。

次回は銀さんとユウキのお話、二人は仲直りできるのだろうか……

そして途方に暮れるリズベットの店にまた新たな来客が……

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