竿魂   作:カイバーマン。

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空洞虚無様から頂いた竿魂の支援絵です


【挿絵表示】


ちっさい銀さんとアリスです、目の色(紅眼と碧眼)といい髪の色(銀髪と金髪)といい服装(東洋と西洋)といい対照的な組み合わせですね

幼い彼等の素敵なイラストを描いて下さりありがとうございました!


これには思わずユウキも苦笑い!


第四十八層 キミの目に映るのはいつも……

四十五層にある知る人ぞ知る小さなアイスクリーム屋

 

そこへ唐突に現れたアリスによって半ば誘拐された銀時が、ぐったりした様子で彼女と共に来ていた。

 

「はい、買って来ました」

「って長ぇェェェェェェェ!! 何段重ねだよそれッ!」

「十三段です、上から順に食べていけばより美味しく感じられる様、私が味をチョイスしてあげました」

「真顔で真面目に答えんな! なんなのそれ! てか絶妙なバランスで持っていられるお前もヤバい!」

 

ベンチに腰掛け休んでいた銀時にアリスが持って来たアイスクリームはまさかの十三段重ねで、持っている彼女の頭の上をも超える長さになっていた。

 

様々な色模様と味を持つアイスの玉が天高くそびえ、流石に甘党の銀時でさえも引いてる中、アリスは真顔で彼にそれを器用に持ったまま突き付ける。

 

「さあ食べるのです」

「え? そこは一つ一つスプーンですくって俺にくれるんじゃねぇの?」

「スプーンなどいりません、お前は口を開けていなさい、私が直接一気にぶち込みます」

「ちょ! 待て待て待て! それ全部一気に食わせる気!? ふざけんなそんなの物理的に一気に口に突っ込むなんざ絶対……うぐぅぅ!!!」

「良く味わって食べるのです」

 

シレッとした顔でまとめて食わせると聞いて慌てて止めようとする銀時だがアリスは話を聞かず

 

そのまま彼の口に向けて十三段アイスを剣の様に構えると、突きを行うかのようにそのまま口の中にホールインワン。

 

いきなりそんな長いモノを突っ込まれた銀時が血相変えてもがき苦しむ様を見ながら、アリスは表情一つ変えずに腕を組みながらうんうんと頷く。

 

「美味しそうに食べてくれて何よりです、私も考えて味をチョイスした甲斐がありました」

 

ベンチに座ったまま両手両足でジタバタと暴れる銀時を見て、喜んでいるリアクションだと思ったのか

 

この上ない満足感を得たかのようにアリスはそのままジッと彼が食べ終えるのを待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

そしてアリスが銀時で楽しんでる頃

 

二人から離れた場所でコッソリ建物の影から覗く者達が

 

「くっそ~あの女……なに銀時と仲良くデート満喫してるのさ~」

「なあキリトよ、アレって本当にデートなのか? 俺にはどう見ても拷問にしか見えないんだけど?」

「知らん、俺経験無いし……でもユウキの視点からだとあれがデートと呼ぶモノらしいぞ、という事で俺は今後一生デートなんてしたくない」

「いやするもしないも相手がいないだろお前は……」

 

銀時とアリスをヒヤヒヤした思いで覗いてるユウキの背後でクラインとキリトが耳打ちをしている中

 

彼等の方へ一際不機嫌そうな表情を浮かべたユウキがバッと振り返った。

 

「これはもうアレだね、アレしかないね、ボク等でどうにかしてあの女をアレしよう」

「いやそんなアレアレ言われてもこっちわかんねぇんだけど……アレってなに? 暗殺とか?」

「流石にボクもそこまで物騒じゃないよ、あの女が二度と銀時に近づかないよう永遠に残るトラウマをその身に刻んでやろうって事」

「十分物騒じゃねぇか! おいキリト! ユウキちゃんってこんなキャラだったっけ!?」

「お前は知らないだろうが結構コイツ重いぞ、まあここまでアクティブに動こうとするユウキは初めてだな……」

 

ジト目でどう料理してやろうかと殺気が漏れているユウキにすっかりビビるクライン

 

キリトもここまで嫉妬の炎を燃やす彼女を見るのは初めてだ。

 

「つうか妬く程か? お前はデートどころかあの人と一緒に住んでるんだぞ? 同棲してる時点で圧倒的にお前の方がポイント高いだろ、もっと余裕を持てよ」

「甘いねキリト、一緒にいる時間が長かろうが短かろうが関係ないんだよ、主人公の家の隣に住む世話焼き幼馴染ヒロインが、ぽっと出のミステリアスなクール転校生キャラに負ける事なんて極々ありふれた展開じゃん」

「まあ確かにそういう作品は滅茶苦茶あるな……むしろ最近じゃそれが当たり前だという風潮もあるし……家族として見られてる時点で義理の妹とかも勝率低いしな」

「でしょ? ここで幼馴染ポジとして正妻の余裕とかいう奴で驕っていたら、あっという間にあの転校生に主人公奪われちゃうよ」

 

自分と銀時、そしてアリスをマンガやアニメのお約束展開で例え終えると、物陰から隠れるのを止めてユウキは早速行動に移る。

 

「それにあの女には不思議と危ない気を感じるんだよね、今までにない危険性が彼女にはあるとボクの女の勘が囁いているの、という事で今からあのデート邪魔しに行ってくるね」

「いや確かにあの人もあの女には満更でも無さそうな態度を取ってはいるけども……っておいホントに行くのか!? 頼むから暴力沙汰にはするなよ! 俺巻き込まれたくないからな!」

 

スタスタと迷いのない歩き方で銀時とアリスの方へ直行するユウキに手を伸ばすキリトだが、彼女はもう脇目も振らずに行ってしまう。

 

「大丈夫かキリの字……?」

「俺が知るかよ……とにかく街中でトラブル起こさないよう祈るだけだ」

 

残されたクラインが心配そうに話しかけられると、キリトもまた仕方ないとユウキ達の動きをしばらく見守る事にした。

 

 

 

 

 

 

「ぶっへ……やっと全部腹の中に収まった……」

「おかわりはどうしますか?」

「いらねぇよ、どう見てもまだ食える状態じゃねぇだろ俺……その綺麗な目ん玉はただのビー玉か?」

 

視点は再び戻って銀時とアリスの方へ

 

なんとか彼女から受け取ったアイスを苦しそうにしながらも完食し終えた銀時は

 

ベンチの上でグッタリしながらちゃっかり隣に座るアリスに早速悪態をつく。

 

「お前さぁ、来るなら来るってちゃんと事前に報告しろよ、なんの為にメールしてんだよ。よりによってユウキといる時に出て来やがって……アイツにどう説明すりゃあいいんだよ」

「それなら私がお前の代わりに説明してあげます、きっと美味しい餌を食べさせて散歩させてあげればコロッと機嫌よくなりますよ」

「いや犬じゃねぇから」

 

ユウキの事をまだ同じ女としてではなく小動物程度にしか思ってないアリスに、銀時が疲れた様子でため息をついてツッコミを入れていると

 

「ボクをほったかしにしておいて、随分その金髪娘とのデートを楽しんでるみたいだね」

「ああ? コレのどこが楽しんでるって? ただ俺がコイツに振り回されてるだけ……うおぉユウキ!!」

 

ベンチの背もたれに身を預けながらけだるそうに返事しながらふと銀時は気付く

 

いつの間にか自分の目の前で苛立ちを募らせすっかりご機嫌斜めなユウキがいた事に

 

「さぞかし楽しいだろうねそんな綺麗な人と一緒に仲良く……ってわぁ!」

「良かったァァァァァァ!! お前が助けに来てくれて本当に良かったァァァァ!!」

 

だがネチネチと文句の一つや二つでも言おうかと彼女が口を開いたその瞬間

 

助けを求めるかの様に銀時が彼女の腰に抱きついたのだ。

 

「もういっそお前にコイツの事バレてもいいや! 俺が常日頃からほぼ毎日連絡とり合ってるアリスです! そして早くコイツから俺を解放して下さいユウキ様!」

「え、え~なにこの展開!? 全く予想出来てなくてちょっとパニくってるんだけどボク!?」

 

自分の華奢な腰にしがみ付いて泣き言で頼み込んで来る銀時に、さっきまで不機嫌だったユウキは予想外の事態にオロオロし始める。

 

「とりあえずその……銀時は彼女、え~と……アリスだっけ? アリスとはどんな関係なの?」

「前にダンジョンで一緒にボス攻略したのを機に、ちょくちょくお前に隠れて出会ったりしたり、そんで一緒に攻略したり飯食ったりしてる程度の間柄だ、お前が考えてるようなやましい関係じゃないから安心しろ」

「ボクに隠れて出会ってる時点で十分やましいよ……」

 

 

自分の腰に抱きつくのを止めて、その場に立ち上がりながら説明する銀時だが、ユウキは納得してない表情で顔をしかめる。

 

「どうしてボクに隠す必要があるのさ」

「そらお前、藍子の事もあるしよ、お前からすれば死んだ姉ちゃん裏切って別の女に現を抜かしてるーとか思われるのもイヤだと思って」

「あのねぇ、確かに銀時には姉ちゃんとの思い出は大切にして欲しいとは思ってるけども……だからといって銀時がいつまでも死んだ姉ちゃんの事を引きずって生きて欲しいなんて考えた事一度も無いから……ん?」

 

銀時なりに自分の姉の事を想ってアリスとの密会を秘密にしていたのだと聞いてユウキがガックリと肩を落としつつ

 

ふと何か一つ気になり始めた。

 

「待って、じゃあなに? 銀時はこのアリスと姉ちゃんみたいな関係になりたいとかそんなこと考えてる訳?」

「いやいや確かに見てくれは俺が今まで見て来た女の中で一番だと答えれるぐらいべっぴんだよ? けどコイツ何考えてるか読めねぇし、なんで初めて会った時からこんなに俺に懐いてるのかもコイツ自身も自覚がねぇらしいし」

 

恐る恐る尋ねて来たユウキにハッキリと手を横に振ってさっきからこっちをジッと見たまま何もしてこないアリスを指差す。

 

「つまりよくわかんねぇ奴なんだわ。だからそういう異性としての対象で見た事はねぇ」

「ふーんそうだったんだ……でもあの銀時がどうしてそんなわけの分からない人と頻繁に交流しているのか不思議なんだけど」

「いやそりゃあまあアレだよアレ、アレだから……」

「……アレって一体何?」

「要するに危なっかしくて目が離せないっつうか」

「……あ」

 

要するに彼女の事は世話を焼いているが異性としては見ていない、しかしそういうミステリアスな部分を見ている内に彼女にはちょっとした好奇心が芽生えているという事なのだろうか……

 

(うわ異性としては見てないって聞いた時は安心したけどコレはコレでもっとマズいな……昔、銀時が初めて姉ちゃんを意識し始めた時と同じ反応だよコレ……)

 

『ねぇねぇ、最近銀時よく姉ちゃんの方ばかり見てるけどどったの?』

『いや別に? アレだよアレ、アレなだけだから、アレとアレでアレなアレだと思ってるだけのアレだから』

『いやアレアレ言い過ぎて訳わからないんだけど』

『だからアレだよ、なんかおっとりしててどこか浮世離れしてるだろアイツ、だから目を離した隙にフラフラと巻き込まれて危ない目に遭うんじゃねぇかと思ってよ……』

『ふーん……』

 

かなり昔の出来事を思い出してユウキは眉をひそめて悩み始める。

 

そう言えばあの会話からしばらく経ってすぐに銀時と姉は深い間柄になってしまった。

 

あの時は自分の姉と想い人の両方が遠くに行ってしまったかのような孤独感に襲われたのを覚えている。

 

(あの頃は銀時の変化に気付かなかったせいで結局負けちゃったけど……今回はそうはいかないよ)

 

同じ過ちは二度も犯さないと、グッとこぶしを握って銀時を死守しようと心に決めるユウキ

 

しかしそんな事も露知らず、彼女が新たな脅威と定めた人物・アリスはただこっちを見つめながら首を傾げ

 

「彼女との話はもう済みましたか? ではもう一度私との行動に戻りますか、次はこの街に面白そうなクエストがあったのでそれを攻略しに行きましょう」

「待てってお前、悪いけどそれまた今度にしてくれや、誰かさんが俺の口に十三段アイスぶち込んだ暴挙のせいで気分悪いんだよ」

「次はこの街に面白そうなクエストがあったのでそれを攻略しに行きましょう」

「いやだから無理だって、行くなら勝手に一人で行けって、そもそも今日はユウキ達と行動する予定だって最初から決まってたんだよ」

「次はこの街に面白そうなクエストがあったのでそれを攻略しに行きましょう」

「え、なにコレ? 選択肢で「いいえ」を選択しても「はい」と選択するまで延々と質問をループさせていくRPGのお約束的な奴?」

 

何度断っても感情のこもってない同じ台詞を何度も言い続けるアリス

 

どうやらここで素直に退くつもりはないらしい、薄々それを予感していた銀時はどうしたもんかと髪を掻き毟っていると

 

「悪いねお嬢さん、ウチの人を横入りして掻っ攫おうだなんて無粋な真似は勘弁してくれないかな」

「?」

 

そこへユウキがツカツカと銀時の前に立ち塞がって両手を腰に当てて見上げながら、退こうとしないアリスに食って掛かったのだ。

 

「ああ、言っておくけど小動物じゃなくてボクの名前はユウキ、銀時とはだいぶ前からの付き合いなんだ。今後彼と関わる時はボクとも交流があるかもしれないからよろしく」

「ユウキ……ユウキ……?」

「ん? どったの?」

「いえ何やらその名に不思議と聞き覚えが……何かとても大切な者の名だったような……」

 

自己紹介してくれたユウキに顎に手を当てしばし思慮深く見下ろした後、アリスは彼女の肩にポンと手を置く。

 

「いえ、いずれは思い出すでしょう。ユウキと言いましたか、お前を見ていると何かとても懐かしく思えます。私の名はアリス・シンセシス・サーティ、私からもよろしくお願いします」

「懐かしい? そういえばボクも君といると……気のせいかな? やっぱりどこかで見たような……」

「……」

 

こちらをジッと見下ろしながら名乗り出るアリスをユウキは見つめ返しながら、ふと彼女がどこかの誰かと雰囲気が似てるような気がした

 

見た目は全く違うのだが、どこか同じ匂いがするというか……

 

それは銀時も前々から気付いていたのか、ユウキの言葉にただ何も言わずに彼女の背後に立つ。

 

「見つめ合ってどうした? ひょっとして和解してくれた? そいつは良かった、女同士のピリピリとかもう男が出る幕ねぇしな」

「そりゃそうだよ、いきなり君を目の前で攫われたらこっちも黙ってられないでしょ」

 

ユウキとアリスがスムーズに挨拶出来た事に何故か安心している銀時にユウキがムッとした顔で振り返って返事をしていると

 

「おーいユウキ! 金髪のネェちゃんと仲直りできたのかー!?」

 

ふと少し離れた所からクラインが手を振ってやって来た。

 

キリトもまた一緒で、二人はずっとアリスとユウキの行く末を陰に隠れて見守っていたのだ。

 

「どうやら街中で女二人の取っ組み合いを拝まずに済んだのかな……」

「ねぇキリト、ボクだって流石に街中で暴れは……いやしたかもね、状況によっては」

「銀さん一体何があったんだよ? 後で詳しく教えてくれよ」

「酒の席を用意してくれたらいくらでも話してやるよ」

 

ユウキと銀時の方へ歩み寄って話を始めるキリトとクライン

 

するとそれを見ていたアリスがふと近づいて来て

 

「そちらの痛い黒づくめの厨二男はキリトという名でしたね確か」

「痛い黒づくめの厨二男ってなんだ! カッコいい黒づくめの厨二男と訂正しろ!」

「すみません私は嘘をつく事が出来ない性質なので、ではそっちのセンスの悪いバンダナを着けているのは?」

「セ、センスの悪いバンダナ……クラインです俺! 以後お見知りおきを金髪のお姉様!」

 

特徴の覚え方が酷いアリスにキリトが顔をしかめ、クラインが急いで名乗り出て深々と頭を下げるていると

 

ユウキはアリスに対して笑みを浮かべながら口を開く。

 

「コレが今ボク等のパーティーなんだけど、良かったら君もどう? 銀時だけを連れて行くのはダメだけど、アリスがこっちに来るなら構わないよ」

「私は別に構いませんよ、この男と一緒にいられるのであれば、お前達が隙を見せたら彼を捕まえて逃げればいいだけですし」

「ハハハ……やっぱり銀時を独占したいとは思ってる訳ね……」

 

もしかしたら仲良くなれるかもと、試しにパーティーに誘ってみると案外あっさりと乗っかって来たアリス

だがその目はやはり銀時をロックオンしており、隙あらば彼を連れて再び連れ去ろうという魂胆だ。

 

それを隠しもせずに堂々とぶっちゃけて来た彼女に苦笑しつつ、ユウキは隣にいた銀時の手をギュッと握る。

 

「今日一日ボクと一緒にいて、アリスから君を護るから」

「そいつは助かるな、俺としてはアイツと二人っきりにされるより、こうして他の奴等と行動してた方がアイツにとっても良い事だと思ってたしな」

「……ちょっと、護ってあげるボクよりも彼女の事を考える訳? やっぱり本当はアリスの事好きなんじゃないの?」

「だから俺はあんな電波女をそんな目で見て……うげ!」

「銀時!?」

 

手を握っていた銀時が突然苦しそうに舌を出すのを見てユウキが驚くのも束の間

 

彼の背後にいつの間にか立っていたアリスがまた彼の首根っこを掴み上げていたのだ。

 

「どうしてでしょう、お前がそうして彼女と手を繋いでるのを見ると胸がザワザワします、そして彼女からお前を引き離したくなります」

「た、助けてユウキィィィィィィ!! 痛みはないけど首の圧迫感半端ない!」

「ちょっとアリスさん!? ボクと銀時が手を繋いでるだけで嫉妬するとか恥ずかしくないの!?」

「別に嫉妬などしてません、この男は必ず私にとって重要な存在だという確信があるからです、故にお前は私とこの男の間に入って来てはいけないのです」

「だからそれが妬いてるっていうの! あーもう!」

 

銀時の首を片手で締め上げながら淡々とした口調で自分勝手な事を言うアリスに遂にユウキがキレた。

 

護ると誓った手前、このまま彼を彼女に好き勝手にされてたまるかとユウキは銀時から手を離すと飛び上がって

 

「銀時から手を離せぇ!」

 

アリスに蹴りをかまして銀時から引き離す。

 

「ホント油断も好きも無いな全く! 姉ちゃんとの姉妹喧嘩を思い出すよ!」

「おいどうしたユウキ、お前まさかまたアリスに嫉妬して遂に武力行使に……」

「ち、違うよ! ボクはただアリスの手から銀時を護っただけだよ! 嫉妬なんかしてないし!」

 

何が起きたのか気付いてなかったキリトは、振り返ると突然ユウキがアリスに飛び蹴りをかましているのを目撃し

 

いよいよ二人が修羅場をおっ始めるのだと思って後ずさりしていると、彼と一緒にいたクラインもまた「うへぇ」と声を漏らし

 

「和解したと思ったらまたこれかよ……仕方ない、銀さん、もういい加減選んじまえよ、どっちと付き合うか」

「ク、クライン何言ってるの!?」

「あぁ~2度も首絞められて最悪だわ……あ? なんか言ったか」

「だからおたくが一体誰と付き合いたいかって話、もうこの際サクッと選んで争いごともお終いにしようや」

 

このまま争い続けるならいっそこの場で選んじまえと言った感じで提案するクラインにユウキの顔がほんのりと紅く染め上がった。

 

それを聞いていたアリスも「ほう」と納得した様子で頷く。

 

「私は別にこの男とそういう間柄になるという希望はありませんが、どうしてもというのであれば仕方なく付き合ってあげてもいいですよ、子供は二人がいいです」

「仕方なくとか言ってるクセにちゃっかり子供の数まで希望してるじゃん! クラインも変な事言わないで! ぎ、銀時も答えなくていいから!」

「別に答えてやってもいいけど」

「!?」

 

こんなタイミングで銀時の答えなど聞きたくない、何より怖いとユウキはアリスにツッコミながら慌てて話を流そうとするが

 

銀時はあっけらかんとした感じで死んだ魚のような目を空に向けながらしばし考えた後

 

「誰と付き合いたいだって? そんなモン最初から決まってんだよ……俺が付き合いたい相手はただ一人……」

「「……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「結野アナに決まってんだろうがァァァァァァァァァ!!!! あべしぶれらッ!!」

 

その瞬間

 

ユウキとアリスの無言の飛び蹴りが同時に顔面に炸裂し

 

悲鳴を上げながら銀時は

 

綺麗な回転を描きながら町の空を華麗に舞った。

 

 

 

 

ユウキとアリス、二人の戦いは始まったばかりだ

 

 

 

 

 

 

 

 




私の書く銀魂SSのヒロインには処女作を除いてとある特徴が一つだけあります

それは基本的には銀時の事を名前で呼ばない事です。

「あなた」「アンタ」「お前」「キミ」等と滅多な事ではまず銀さんの事を名前で呼称する事は無いんです。

これは私のこっ恥ずかしい理由なんですが、ヒロイン視点から銀さんを見ていると、ヒロインに感情移入し過ぎて銀さんを名前で呼ぶのが恥ずかしくなるというしょーもない理由です。

故に本作ではやたらと強調して「銀時!」と銀さんの事を名前で呼ぶヒロインのユウキは私の中で異例中の異例だと思っていてください。

ちなみに本作でも銀さんの事を一度も名前を呼ばないキャラがいます

そう、その人物こそユウキに並ぶもう一人のヒロイン……




キリの字です(48話まで来て銀さんに対しての呼称はずっと「アンタ」)


そしてマザーズ・ロザリオVSプロジェクト・アリシゼーションは一旦終わり

次回は銀魂です、お楽しみに

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