竿魂   作:カイバーマン。

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気が付いたら連載始まって1年経ってた……

他の作品はキチンと終わり所見つかってるけど、この作品だけは一向にゴールが見えない……

やりたい話は多すぎるしキャラ多いし風呂敷広げ過ぎだし……

もしかしたら私の中で過去最長の長編SSになると思います


第四十七層 二度目の敗北はもうごめんだ

ここはアインクラッドの第四十五層の工業エリア

 

そこで銀時達は待ち合わせに指定していた町で、何かと顔を合わせる機会の多いクラインと合流していたのである。

 

「へへ~どうだ俺の新武器! その名も結束の太刀! く~! ついに念願の刀武器ゲットしちゃったぜおい~!」

「うわ、EDOじゃ滅多に手に入らない刀系統じゃん」

 

合流して早々機嫌良さそうにクラインが見せびらかして来た武器は

 

EDOでは超が付くほどのレアな刀であった。

 

刀身からまばゆい光を放ちながら彼の右手に収まるその太刀を、ユウキは素直に驚きの声を上げる。

 

「神器ではないけど超レアだよ、どこで手に入れたのクライン」

「四十四層のフロアボスを倒した時にドロップしたんだよ、後で調べたら初見で倒した時のみ物凄ぇ低確率でコイツを落とす事があるんだとよ」

「そうなの? 今までそんな話聞かなかったし、ホントに低い確率なんだ、ラッキーじゃん」

「ハハハ、でもこれもう一生分の運を使い果たしちまったよ絶対……」

 

刀系武器はマエストロ級の腕の良い鍛冶師に作ってもらうとか、無理難題な高難易度クエストをクリア等入手方法は様々だが

 

まさか己の豪運のみで手に入れる者がいるというのは、EDO経験の長いユウキでも初めて聞いた話だ。

 

 

「せめてとびっきり可愛い娘と出会える運だけは残しておきたかったぜ……」

「嫁さんドロップできるのはいつになるんだろうね~」

「ほっとけ!」

 

未だに運命の女性との出逢いを夢見ているクラインにユウキがやや棘のある皮肉を浴びせていると

 

先程から黙ってクラインの話を聞いていたキリトが祝福するかのように笑みを浮かべながら手を差し伸べ

 

「そうかそうか、つまりお前は今まで散々世話になった俺への感謝のしるしとしてその刀を譲渡してくれるって訳か、ありがとうクライン、大切に使わせてもらうよ」

「いやお前さんはお前さんで何言ってんのキリの字? なんだよその手、絶対にあげねぇからな」

「とびっきり可愛い娘と出逢いたいんだろ? 今住んでる家の下にあるスナックで猫耳の子が働いてるから今度紹介してやるよ」

「え、マジで?」

 

コイツはいきなり何言い出すんだと、大事そうに刀を抱えながら後退するクラインにまだ諦めずに弱みを突いて交渉に入るキリト

 

しかしそこでユウキが会話に割り込んで来て

 

「ねぇキリト、それってあの猫耳という属性を活かしきれていない上に性格も口も悪い哀れなモンスターの事?」

「バカお前! サラッとバラすなよな!」

「聞いたぞキリの字! なにとんでもねぇモンを笑顔で俺に捧げようとしてんだお前! あっぶねぇユウキがいなかったらマジで揺らぐところだったぜ……」

「待てクライン、確かにアレは間違いなくモンスターだが、今なら大蛇丸とおんなじ声の店主も付けてやる」

「んな特典で誰が喜ぶかっつうの! なんだよ大蛇丸って! 想像しただけで怖ぇよ!」

 

ユウキのせいで交渉は上手くいかず、頑なに刀の譲渡を拒否するクライン

 

それに対して苦々しい表情でキリトが舌打ちしている中、ユウキはふとさっきからずっと話にも加わらずにそっぽを向いている銀時に気が付いた。

 

「ねぇところでさ、さっきからずっと黙ってるけどどうしたの銀時?」

「ああ? 今取り組み中だ後にしろ」

 

ユウキに尋ねられてもなおこちらに背を向けたまま何かをしている様子の銀時

 

話し掛けても冷たく返事されて彼女がムッとしていると、クラインが「ん~?」と首を傾げながら銀時の方へ目をやる。

 

「どうしたんだ銀さんの奴? いつもならキリトの奴と一緒に俺の刀を奪い取って、売って金にしようぜとか言いそうなのによ」

「クラインも銀時の事よくわかってきたみたいだね、なんかさぁ、最近妙にそっけない時があるんだよね、こっちの世界にいるとたまにああして誰かとメール交換し合ってるみたいなんだよ」

「メール!? あの未だにメニュー画面の操作もおぼつかない銀さんが!?」

「そうそう、しかも誰と交換しているのかも、メールの内容も頑なに教えてくれてないんだよホント」

 

アイテム取り出す事でさえ時間をかけてやっと出来る程度でしかない程、今だこの世界の画面上での操作に慣れていない銀時がメールなどというのをやってる事自体驚きだが

 

ユウキが不満を露わにするのはそのメールを一体どこの誰に送っているかだ。

 

「ちょっと前からああしてメール出してるの……ホント一体誰なんだろう、もしかしてボクの知らない人?」

「ユウキが知らない人であの人とメール交換し合う程の仲の人か……う~ん」

 

銀時の背中にブツブツと垂れながら睨み付けているユウキの隣で、キリトは顎に手を当て考える仕草をしながら

 

ふと三十五層で銀時と共闘していた一人の少女を思い出していた。

 

「思い当たる節はあるといえばあるな……あの時も二人でえらい仲良さげな雰囲気あったし……」

「おいユウキ、キリトの奴が知ってるかもしれないんだとよ」

「っておいクライン! なに人の独り言を盗み聞きしてんだ!」

「いや盗み聞きされたくなかったら心の中で言えよ……」

「え? キリトは銀時と頻繁にメール交換してる相手を知ってるの?」

 

小声で呟いていたキリトに勘付いたクラインは

 

先程騙されそうになった事への仕返しなのか、ユウキに向かってすぐにキリトが勘付いていると話し出した。

 

するとユウキの首がぐるっと回ってすぐに彼等の方へ振り返り

 

「もし知っているなら是非教えて欲しいなぁ、最近ずっと気になっててボク眠れない時があるんだよ、ボクを安眠させる為に早く教えてキリト」

「い、いやぁそれはちょっと……あの人にも言うなって釘刺されてるし……」

「言うなってどういう事? ボクに隠さなきゃいけないって事? 銀時は一体ボクに何を隠してるの?」

「おいおい落ちつけって、そんな詰め寄られても困るというか……とにかく真顔のままジッと俺をみつめるのは止めてくれ、すっげぇ怖い……」

 

少しのブレも無くただ一点にこちらを凝視しながら何考えてるかわからない表情で問いかけて来るユウキ

 

これにはキリトも手を前に出して頬を引きつらせながら苦笑しつつ、どう誤魔化せばいいのかと困っていると

 

「はぁ~やっと送れたぜ、前に返信サボったらとんでもねぇ事になったからな」

 

無事にメールを送れたのか、疲れたようにため息を漏らしながら操作メニューを閉じて銀時がタイミングよく彼女達の方へ振り返って来た。

 

「おいこっちの用は済んだぞ、ってどうしたユウキ? キリト君の事を睨み付けて、あんまりイジメんなよ可哀想だろ」

「……ねぇ銀時」

「あ?」

 

どうやら外野の声も耳に届かない程操作に集中していた様子の銀時に

 

ユウキはムスッとした表情のままジト目を向けて彼へ単刀直入に聞き出す。

 

「前々からずっと聞いてるけどこの際本当の事言って欲しいんだけど、銀時がメールしてる相手って誰?」

「はぁ? まだお前そんな事気にしてたの? 別に誰だっていいだろ、最近仲良くなったただの友達だよ友達」

「ただの友達の割にはここん所頻繁に銀時にメール寄越してくるよね? どんな内容?」

「進行報告みてぇなモンだよ、オメェが気に掛ける事でもないし、つまんねぇ話しかしてねぇって」

「じゃあどうしてボクにはその相手の事を詳しく教えてくれないの?」

「身内同然のお前にいちいち自分のプライベートを話す必要ねぇだろ、仮にヅラや坂本の話とか聞いてお前面白い? 高杉と連れションした話とか全く面白くねぇだろ?」

 

厳しく尋問してくるユウキに対して銀時はめんどくさそうに小指で鼻をほじりながら、上手く彼女の追及から逃れようとする。

 

そんなピリピリとした雰囲気を放つ銀時とユウキを離れた所で見ていたクラインとキリトは困惑の表情を浮かべていた。

 

「おいキリの字よ、ユウキには言わないでおくから本当の事言えよ、銀さん絶対怪しいだろ……」

「典型的な浮気を疑う彼女にあくまでシラを切ろうとする彼氏って図だな……」

「もしかして二股かけてんのあの天パのオッサン?」

「いや二股じゃないだろ、あの人から見ればユウキは妹みたいなモンだし付き合ってる訳でもないし……メールの相手も恐らくそういう間柄の関係にはなってない筈だ、まだな……」

「お前さん、やたらとメールの相手の事について詳しいじゃねぇか」

「確証はないけど思い当たる人が一人いるんだよ、三十五層での話なんだけどな……」

 

顔を合わせてヒソヒソとクラインとキリトが会話をしている中で

 

さっきからユウキにジト目で睨まれっぱなしの銀時はやれやれと首を横に振り

 

「ったくよ~どうでもいいだろそんな事、それより飯食いに行こうぜ飯、お前この世界で飯食うの好きだろ? 現実じゃまともに食う事すら出来ないんだし」

「誤魔化そうという魂胆が見え見えだよ銀時、今回ばかりは絶対に相手の事を突き止めてやる」

「まあそう睨むなって、ほらこの層に丁度美味そうなアイスクリーム屋見つけたんだよ、色んな種類のアイスをコーンにトッピングして乗せて食うって奴、お前そういうの好きだろ?」

「え? いやまあ確かに好きだけどさ……」

 

ボリボリと後頭部を掻きながら銀時が提案した店を聞いてユウキの表情が若干強張る。

 

現実ではガソリンぐらいしか飲む事の出来ない体であるユウキにとって、色々な味を堪能できるアイスクリームというのは中々に魅力的なモノであった。

 

すると銀時は畳みかける様にポンと彼女の肩に手を置いて薄ら笑みを浮かべ

 

「俺も甘いモンには目がねぇしよ。モノホンのアイスじゃねぇのがちと残念だが、日頃一緒に食えねぇお前と味の感想を言い合える事が出来るっつうのも悪くねぇや」

「う~んまあ……銀時と一緒に食事するのはこの世界でのボクの楽しみの一つでもあるし……」

「決まりだな、こっからすぐ近くにあるみてぇだし行ってみようぜ」

「そ、そうだね、アイスかぁ、何段重ねにしようかな……」

 

既にブレ始めてるちょろい彼女の肩に手を置いたままアイス屋にエスコートし始める

 

メールの相手が気にはなるが、彼と食事をするという楽しみを堪能したいという欲求に負けたユウキは、そのまま彼に引っ張られるかのように歩き出してしまう。

 

そして銀時の方は彼女の首に腕を回しつつ、背後にいるキリトとクラインの方へ振り返って

 

 

 

 

明らかにしてやったりの表情を浮かべてドヤ顔でこちらに親指を立てて見せて来たのだ。

 

再び前の方に向き直ってユウキと他愛のない談笑をしながら行ってしまう彼を見送りながら

 

二人は唖然とした様子でその場で立ち尽くしてしまう。

 

「やべぇ、マジでパネェは銀さん……正真正銘のドクズだぜ、俺なんか絶対真似できねぇ」

「最低だな、あれもういつか絶対刺されるパターンだ、ユウキって案外重い所あるからマジで刺してくるぞ」

「流石はお前さんの兄貴分なだけあるぜ」

「いつあの人が俺の兄貴分になったんだよ、てか俺はあそこまで酷くねぇから、お前が今も持ってるその刀をどうやって穏便に頂こうか企んでるぐらいだから」

「お前も大概だなキリの字……」

 

まだ自分の刀を奪い取ろうとしていたのかとクラインは急いで手に入れたばかりの刀を腰の鞘に納めて、獲物を見る狩人みたいな目をしているキリトから距離を置いた。

 

「けどここで部外者の俺達が横やりを刺すってのも無粋だしな、ここはいずれ銀さんが痛い目に遭うのを気長に待っていようぜ」

「話が分かるなクライン、俺も同じ事を思ってた、いずれあのゲスの極みに不幸が訪れる事を俺は今か今かとずっと期待しているんだ」

「あぁ、こちとらロクにモテないってのに二股なんざ掛けてる野郎なんかどうなろうと構わねぇ、なんなら早く股が裂ける所を是非見させてもらいてぇや」

「お前はいい奴だなクライン、前から思ってたけど本当にいい奴だ」

「へ、よせよ照れ臭ぇ、まだ日は高いが今日はトコトン飲んで愚痴を言い合おうぜ相棒」

 

こっちはこっちで他人の不幸は蜜の味と、不思議な共感を覚えて友情が芽生え始めているキリトとクライン。

 

そして銀時とユウキをほっといてどこかで愚痴を肴に飲みまくろうとしたその時であった。

 

二人の背後からスッと真横を通り過ぎて

 

青色のドレスの上に金色の鎧に身を包んだ人物が

 

長い金髪を風になびかせ颯爽と銀時達の方へと歩いていくのが見えたのだ。

 

「お! 見たかキリト! さっき通り過ぎたネーちゃんすげぇ綺麗だったぞ! あんなに美人なプレイヤーは現実でも拝んだことがねぇ!」

「……」

「あれ? どうした急に固まって?」

「……なあクライン」

 

後ろ姿だけでも一目で美しいとわかるその姿にクラインがやや興奮した面持ちで叫んでいるが

 

キリトはその背中を見た途端背筋からゾクッと恐ろしい感覚に襲われ動けなくなってしまう。

 

そして何のことかわかってない様子でキョトンとしているクラインの方へ振り返ると

 

「どうやら俺達がさっき願っていた事が……たった今起きるらしいぞ」

「ん? 一体そりゃあどういう意味……」

 

 

意味深なキリトの発言にクラインが詳しく聞こうと尋ねようとしたその瞬間

 

「ぐっへぇ!!!」

「銀時!」

「!?」

 

突如、前方から聞き慣れた声の悲鳴が飛んで来た

 

慌ててクラインが振り返るとそこには

 

 

 

 

 

「おま! なんで!? さっきまだ下の層にいるってメールで言ってたじゃねぇか!!」

「ええそうです、けどお前がこっちの層にいると返事を貰ったので、急いでフロアボスを倒してここへと昇って来ました」

「いや俺がメール返したのほんの5分前なんだけど!? 5分で四十四層のボス倒したのお前!?」

「偶然出くわしたGGO型の腕のいい連中と共闘できたので思いの外容易に勝てました、一人だけSAO型のヘタレがいましたが」

 

 

まんまとユウキを騙くらかしてアイスクリーム屋に行こうとしていた銀時の首を掴んで

 

先程見かけたばかりの金髪の少女が、やや高圧的な口調で彼を天高く掲げていたのだ。

 

一転も曇りのない眼でジッと見つめられ、首根っこを掴まれてもがいている銀時はすっかり冷静さを失った様子でパニックに陥っている。

 

そして目の前のそんな光景を見てしばし呆然としていたユウキはやっと我に返って

 

「ちょ! ちょっと何してるのかな君! ウチの人になんか用なの!?」

「お前は……」

「え、な、なに……? ていうかアレ? 前に君どっかで会った様な……」

 

急いで銀時を取り返そうと彼女の方へ駆け寄って、ふとどこか見覚えのある様な気がしていると

 

少女はスッとユウキの頭に空いてる方の手を伸ばして

 

「よしよし」

「……は?」

「可愛らしい小動物ですね、お前は子供に懐かれやすいのですか?」

「い、いやそいつガキじゃねぇから……」

「しょ! 小動物ぅ!?」

 

自分の頭を無表情で撫でるとすぐに銀時の方へ振り返って会話を始める少女に

 

ユウキは憤慨した様子ですぐに顔を赤くする。

 

「ボクは子供じゃないよ! ていうかいつまで銀時の首掴んでるの! さっさと放してよ!」

「そういえばこの層に評判の良いアイスクリーム屋があると、先程共闘したフカ左衛門とかそんな名前の者に教えてもらいました、お前は甘い物が好きなんですよね、行ってみますか」

「は、はぁどういう事!? ボクをスルーした挙句に銀時をデートに誘うとか何考えてる訳!?」

「い、いや待て……せっかく会えたのに悪ぃけど、そこに行くのはお前とじゃなくてユウキと行く予定……」

 

珍しく明確に怒ってる様子を見せている自分をスルーしながらまさかのデートのお誘いを目の前で始める少女。

 

これにはユウキも顔を真っ赤にしたまま激しい憤りを見せるも、彼女は頬を引きつらせながら断ろうとする銀時の首を掴んだまま

 

「では善は急げです、早く二人で食べに行きましょう」

「うわ走るのめっちゃ速! って感心してる場合じゃない!」

 

大の大人一人掴んでいる状態で颯爽と走り出す彼女に一瞬呆気に取られるユウキ

 

すぐに彼女の跡を追いかけようとするも、華奢な体付きとは裏腹に恐ろしい俊敏力で少女は猛スピードで走り去ってしまう

 

「た、助けてユウキィィィィィ!! 俺このままだと絶対コイツにヤベェ目に遭わされるぅぅぅぅ!!!」

「銀時ィィィィィィィィ!!!」

 

少女に首を掴まれたままこちらに必死の形相で助けを求めて手を伸ばそうとする銀時に

 

慌ててユウキも手を伸ばすが届く事は無く、そのまま彼は連れ去られてしまった。

 

まるっきり主人公とヒロインの立ち位置が逆になっている中で、すっかり見えなくなってしまった銀時と少女。

 

ユウキは呼吸を整えながらギッと悔しそうに奥歯を噛みしめる。

 

「なんなのさあの女……一体どうして銀時を……」

「あーあ、やっぱり連れ去られたかあの人……」

「キリト?」

 

 

素性も知れない変な女におめおめと彼を奪われてしまうとはとユウキが反省していると

 

いつの間にか自分に追いついて来たキリトがヌッと隣に現れて少女が向かった方へと目をやって呟いていた。

 

「それにしても人一人抱えたまま走り去るなんて、相変わらずどんな化け物スペックしてんだよあの金髪娘」

「相変わらず? もしかしてキリト、君ってばあの女の事知ってるの?」

「う~ん、本人と顔合わせちまったし今更お前に隠す必要も無いか……」

 

有耶無耶にするのも彼女に悪いと思い、この際だから言っておくべきかとキリトは詰め寄って来るユウキの方へ振り返る。

 

「もう薄々勘付いてるかもしれないが、あの人が頻繁にメールを交換し合っている間柄だと俺が予測している相手、アリスだ」

「あの女が!? ていうかキリトはメール先の相手わかってたの!? どうして今まで黙ってたのさ!」

「だって、あの人にユウキにだけは言うなって口止めされてたし……」

「どうして銀時はボクには秘密にしようとしたの!」

「それはきっとユウキに後ろめたい気持ちとかあったからじゃないか? ほら、あの人ってお前の姉ちゃんと恋人だったんだろ?」

「それとこれと一体何の関係があんのさ!」

「その姉と妹のユウキにちょっと悪いなとか思ってたのかもしれないんだ、いや実を言うとな……あの人ってあの女に妙に入れ込んでるっぽい部分があったんだよ、初めて会ったその日から……」

 

 

 

 

 

 

「もしかしたらあの人、あのアリスって子にほんのちょっとでも気が合ったりするのかも……」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「おい落ち着けユウキ! あくまで俺がそう予測してるだけだって! それにさっきからお前もお前で取り乱し過ぎだぞ!」

「好きな男が別の女を好きになりかけてると聞いて取り乱さない女がいるかー!」

 

ボソリト呟いたキリトの言葉に、ユウキは今までに見た事が無いぐらい動揺した様子で叫び出す。

 

「こうしちゃいられない! ちょっと行って本人に直接聞いてみる!」

「あ、待てってオイ! まだそうと決まった訳じゃないから!」

 

まさか自分が知らぬ間に銀時に想い人が出来ていたとは……

 

思わぬライバルの出現に

 

ユウキはグッとこぶしを握って、銀時と行く予定であったアイスクリーム屋に急ぐのであった。

 

 

 

 

 

二度目の敗北なんてもうごめんだ

 

 

 

 

 




1年経った記念にぶっちゃけ話

この作品、そもそも最初思いついた設定とは全然違っていました

銀魂とSAOの混合世界ではなく、別々の世界での話にしようとしてましたし

最初のプロットでは

1・最近江戸中で、死んだ人間と会って話す事が出来るゲームがあるという都市伝説が広まってると新八と神楽の会話からスタート

2・そこでリサイクルショップで売ってた古いファミコンを見つけて、懐かしのゲームでもやろうかと買って家に持って帰って来た銀さん


3・しかし既に差さっていたカセットが抜ける気配がなく、仕方なくなんのタイトルも書いてない謎のゲームをプレイしてみる銀さん

4・RPGゲームだったらしく、主人公の名前を書いて早速プレイ開始しようとするも、突然銀さんがテレビの中に吸い込まれてしまい、慌てる新八と神楽。

5・そしてゲームの世界に引きずり込まれた銀さんが見た事のないモンスターに襲われていると、そこへユウキという謎の少女が現れ助けてくれたのであった。

6・時同じくして別の世界でも、銀さん達の世界の様に同じような都市伝説が流れていた

7・喫茶店で店主のエギルから桐ケ谷和人は、半信半疑の様子でその話を聞く。

8・そして家へと帰ってみると、投函ポストに謎のカセットが差された古いゲーム機が雑に突っ込まれていた

9・誰が入れたのかと不気味に思いつつも、もしかしたらと思い試しに居間のテレビに繋げてプレイしてみると、銀さんと同様和人もテレビの中に呑み込まれてしまう、その瞬間を目撃した直葉が慌てて和人の恋人の明日奈に連絡。

10・ゲームの世界にとじ込まれた和人もまた、剣も無い状態で謎の敵に襲われピンチにい陥ったその時、あっという間に多数の敵を瞬殺してしまう謎の男が彼の前に現れる。

11・男は吉田松陽と名乗り、混乱している和人を連れて、彼が塾を開いている最寄りの村へと案内するのであった。

12・松陽がやっている塾の中にいた一人の少年を見て和人は目を見開いて言葉を失う

13・その少年はかつて共に幾度も困難を乗り越えた別の世界で出会い共に戦い、最期には散ってしまった親友・ユージオだったのだ


とまあこんな感じの構想を作って5話ぐらい書き終えていました。

銀さんサイドとキリトサイドの話を交互にやって行くような感じで二人が徐々に近づいていき、死者が集うとい謎のゲームを解き明かしていくっていうストーリーです。

そしてゲームにとじ込まれた彼等を助ける為に新八や神楽、真撰組面子、明日菜や直葉、ユイやその他大勢のキャラも自分達の世界で奮闘していく物語もあります。

やがて二つの世界は通信が可能となり、そこで二つの世界の者達が情報を交換し合って協力していく展開も考えていました。

銀魂世界ではたまが、SAO世界ではユイが協力してゲームの世界にいる銀さんとキリトと通話する事に成功する(ただしSAO世界側は銀さんと、銀魂世界側ではキリトとしか通話できないという仕様)とかいう話もありましたね


ちなみにその時から沖田がドS過ぎて明日奈に嫌われるという設定がありました、私の書く沖田は基本的にクロス作品先のメインヒロインとは超絶仲悪いのが基本みたいです。

とまあ色々な話や展開を構想していたんですが、残念ながら死者を主題にした話になるとシリアス多めになるとか、ミステリー部分もあるし色々と難解な話になりそうだから読んでる読者も疲れるだろうとか、その他諸々の事情でお蔵入りとなってしまいました。

ちなみにその時の作品のラスボスは鳳仙にしようとしてました、好きなんですあのジーさん

という事でそれからしばらく経って、一から構成を作り変えたり、一部の設定を引き継いでみたり、当時発売日前だったマリオの主題歌を聞いて「あ、こういう感じの話を書こう」と安易に決めてみたりと

最終的に生まれたのがこの「竿魂」だった訳です。

連載始めたばかりの時は正直コレでいいのかなぁと悩みに悩んでおりましたが

無事に1年を迎えられた今なら、竿魂にして良かったと心から思えます。

1年間読んでくださった読者の皆様、ありがとうございました

これからも引き続き、ロクでもない連中ばかりの珍道中をお楽しみください







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