竿魂   作:カイバーマン。

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最近思うんだけど

銀さんってユウキよりキリトと一緒に行動する方が多くないですかね?



第四十二層 鬼の副長にも秘密あり

「いい加減にしてくれませんかねぇお嬢様、こっちはこっちで江戸の治安を護る為に汗水流して働いてんだよ。毎度世間知らずの小娘捜しなんぞやってる暇ねぇんだよ」

「すみません……」

 

かぶき町にある北斗心軒の前でしょんぼり首を垂れている結城明日菜に対し

 

真撰組の制服を着た一人の男・土方十四郎は口にタバコを咥えたまま不機嫌なトーンで説教をしていた。

 

「なんべん俺に同じ事言わせれば気が済むんだコラ、無闇に外でウロチョロすんなって言ってんだろうが」

「い、いやでも……」

「口答えすんな、ったくどうして俺がこんな真似しなきゃならねぇんだか……」

「……」

 

ウンザリした様子で頭を掻き毟りながらぼやく土方に、明日菜は更に落ち込んだ様子で無言で俯く。

 

 

 

 

 

真撰組の副長・土方十四郎は結城明日奈の従兄妹である。

 

彼の母親は明日菜の母親の実の姉であり

 

その姉が豪農として有名な土方家の当主と愛人となってひょっこり生まれたのが彼である。

 

妾の子という事でいわゆる隠し子的な存在であった彼は

 

周りから疎まれ孤独な幼少時代を過ごした。

 

後に母親の妹が結城家に嫁ぎ、名門と血縁上の繋がりを持つ事になるも

 

彼自身はやはり妾の子というのもあるという事で、その存在は表向きはほぼ抹消されている。

 

しかし結城家の当主、つまりは明日菜の父に当たる人物からは

 

過去に武州で我が子を彼が預かってくれた経験があるからか、不思議と信頼されていたりした。

 

逆に明日菜の母親、血の繋がりのある叔母とは物凄く仲が悪い。明日菜曰く「絶望的に反りが合わない…」らしい。

 

「と、とりあえずこの事は父さんと母さんには内密に……」

「却下だ、今のお前がそれ言える立場だと思ってんのか、ああ?」

「それもそうだけど……あ!」

 

こんな時間にかぶき町をほっつき歩いていたなどと両親に知られたらきっと実家に連れ戻されてしまう。

 

それを危惧した明日菜はどうにかして土方に内緒にして欲しいと懇願するが、彼は全く聞く耳持たない。

 

すると明日菜は突然何かを閃いたかのように手をポンと叩いて

 

「情報! 攘夷志士に関するとびっきりの情報提供するから両親への報告はしないってのはどう!?」

「テメェ、この期に及んで俺に取引を持ち掛けて来るだと……? ふざけるのも大概にしろ」

「わ、悪くない条件だと思うのですが……」

 

タバコの煙をこちらに吹きかけながら土方の目つきが一層鋭くなり、その目に睨まれた明日菜は思わず縮こまってしまう。

 

やはりというかなんというべきか、本人達が聞いたらすぐに否定するであろうが

 

こうやって口答えさえ許さないという態度で睨み下ろしてくる感じは、自分の母親と酷く似通っていると明日菜は前から思っているのだ。

 

「実は連続爆破テロの首謀者である桂小太郎がね、この店にしょっちゅう通っているっていう話を前に聞いた事あるるんです……」

「なに? 桂の野郎がここに……って待てコラ、どうしてお前がそんなネタを仕入れているんだ。出所はどこか正直に吐け」

「ここの近くにあるオカマさん達が経営してる店のオーナーに……」

「おま! そんないかがわしい店にまで足を運んでやがったのか……! チッ、とんだ親不孝の不良娘だなこりゃ」

 

 

まさかオカマが集ういかがわしい店にまで来店していたとは予想外だったのか

 

不用心極まりない行動を自ら露見してしまう明日菜に土方は最早呆れてものも言えない

 

「しかしそいつが正確なモンであれば確かに情報としては上出来だ、だがお前の素行の悪さはやはり真撰組として見過ごせん、お前は至急山崎に結城家の方へと送ってもらう」

「ええそんな! 情報はちゃんと提供したのに!」

「お前の取引に応じたなんて誰が言った? とりあえず一旦店の中へ戻るぞ、お迎えが来るまでな」

「……」

 

ぶっきらぼうに厳しくそう言い放つと土方は口に咥えたタバコを携帯灰皿に戻しながら店の中へと入ってしまった。

 

損彼を恨めしそうにジト目で見つめた後、諦めたかのようにハァ~と深いため息を突き渋々彼に従って店ののれんを潜るのであった。

 

 

 

 

 

 

明日菜が店に戻ると、客である坂田銀時と桐ケ谷和人がカウンターに座りながら食事の真っ最中であった。

 

「おいこの唐揚げちゃんと二度揚げてるんだろうな、唐揚げは二度揚げるのが常識だってとんねるずの石橋貴明も言ってたぞ」

「いやそんなの私知らないし……」

「唐揚げの作り手としては常識だよ常識、石橋貴明が言ってるんだから間違いねぇって、ねぇ和人君?」

「いや俺、木梨憲武派なんで、てか石橋に対してなんでそんな強く信頼してんだよアンタ」

 

 

攘夷志士・桂小太郎と繋がりがあるやもしれぬ人物、この店の店員である朝田詩乃が出したのであろう油でギトギトな唐揚げを文句を垂れつつも食べていく銀時。

 

明日菜と土方が再び席に戻ると一緒に食事していた和人が早速彼女の方へ顔を上げる。

 

「ん? なんだお前また戻って来たのか、どこぞのお嬢様なのかは知らないがさっさと帰れよ」

「迎えが来たら嫌でも帰らせられるのよ……ていうかなにその油でギトギトな唐揚げ? ちゃんと二度揚げした? とんねるずの石橋さんが唐揚げは二度揚げるってテレビで言ってたわよ?」

「なんなのよ一体、いつの間に石橋貴明は唐揚げ作りの伝承者になったのよ」

 

和人の隣に座った明日菜は、彼が食べている唐揚げに対して酷評を言っていると

 

それにムッとした感じで作った本人の詩乃がしかめっ面を向ける。

 

「ギトギトで悪かったわねお嬢様、私まだ見習いだからこれぐらいしか作れないの」

「これでますます疑惑が深まったわね、見習いと言えど唐揚げぐらいまともに作れる筈だわ。さあ白状しなさい本当の事を! 実は桂小太郎と一緒にもっぱら爆破テロやってますとか! 鶏肉よりも天人を揚げる方が得意ですとか!」

「……ちょっと何言ってるのこの人?」

 

まだ疑いしか持たれてない彼女に向かって堂々と指を突き付けながら

 

自白を強要する明日菜に顔をしかめる詩乃

 

しかし

 

「そんなアホな尋問で素直に答える訳ねぇだろうが!!」

「へにゅッ!」

 

土方が彼女の後頭部をむんずと掴んでカウンターに叩き付けて無理矢理黙らせる。

 

そして彼女の頭を掴んだまま土方は顔を近づけると

 

「まだ証拠も何も出てねぇのにいきなり真正面から喧嘩吹っ掛けるとか何考えてんだテメェ……いいから黙ってろお前は、迂闊に動かずに相手がボロを出すのを待つ、こういうのは警察の俺に任せとけ」

「は、はい……」

 

キリッとした表情で自信満々にそう言う土方に、赤くなった額を手でさすりながら涙目で返事する明日菜。

 

するとそんな彼女を隣で眺めていた和人は不思議そうに目を細め

 

「お前、一体その人とどんな関係なんだ? さっきから店の外や中で騒いでるけど」

「従兄妹よ、だからこれ以上私に対してふざけた態度を取るのは止める事ね、さもないと十四郎さんがあなた達をすぐに痛い目に……」」

「だから黙ってろつってんだろうが!」

「おごッ!」

「痛い目遭ってるのお前じゃねぇか」

 

赤の他人に自分との関係をあっさりとバラして、しかもそれを脅しの道具にしようとする明日菜に、土方は再び怒鳴りながら彼女の頭に拳骨をお見舞い。

 

頭を両手で押さえながら悶絶する明日菜に、流石に和人も可哀想なモノを見る目に変わって、頬杖を突きながら彼女の顔を覗き込む様に

 

「でもまあ基本的に上から目線で物言う偉そうなお前が、そうやって散々な目に遭うのは俺としてはざまぁみろと言いたい所なんだが……」

「……勝手に言ってればいいじゃないの」

「じゃあお言葉に甘えて……ざまぁみろ! 仮想世界じゃ好き勝手に人に説教しやがって! リアルの世界じゃお前が警察に頭抑えつけられて説教されてんじゃねぇか! これでわかっただろ! 血盟騎士団の副団長とか呼ばれてて舞い上がってたみたいだが! リアルじゃお前はてんでダメダメな世間知らずのクソガキだという事が!!」

「いやそれお前もだろうが」

「べぶらッ!」

 

ジト目で言いたい事があれば言ってみろと明日菜に言われると素直に和人は今まで溜まっていた鬱憤を晴らすかのように吐き出しながら最後に盛大に笑い声をあげる。

 

だが言ってる事が思いきり彼自身にも突き刺さるブーメランであり、彼の隣にいた銀時がめんどくさそうに彼の頭を掴んで、先程の明日菜と同じように思いきりカウンターに頭を叩きつけた。

 

「現実でのポンコツ度なら明らかお前の方が上じゃねぇか、あの伝説の攘夷志士であり歴戦最強の侍と称されている白夜叉の名から付けられた二つ名を持っているクセに、リアルじゃてんで使い物にならねぇゴミクズト君じゃねぇか」

「なんか白夜叉の話がえらく誇張されてる気がするんだけど気のせいですかね!?」

 

銀時に頭を叩き付けられてもな即座に起き上がってツッコミをするという、徐々にタフになって来ている和人の成長振りが見られる所で

 

土方は壁に掛けられている店のメニュー欄を眺めながらふと明日菜に尋ねる。

 

「おい、なんなんだこの騒がしくて貧乏くさい野郎共は、まさかお前の知り合いとかじゃねぇだろうな、もうちっと相手を選べよ」

「えと……知り合いと言えば知り合いだけど……ああでも心配しないで! 別に仲良くしてる訳じゃないから! 敵だからホントに! 特にこの黒髪の生意気な奴とか!」

 

彼の方から話しかけられた事に明日菜は一瞬顔をほころばせるも、すぐに和人を指差して叫ぶ。

 

「コイツがいちいち私にいちゃもん付けて来るんです! 十四郎さんからバシッと言って下さいコイツに!」

「ふざけんなガキ同士の喧嘩にお巡りさんはいらねぇんだよ、嫌いだったら相手にしなければいいだろうが」

 

フンと鼻を鳴らして年上っぽく冷静な助言を彼女にする土方。

 

するとそんな彼を反対側からジッと見ていた銀時が「おーおー」と茶化すように声を出しながら

 

「なぁにおたく? 俺達がそちらの娘さんに近づこうとする狼にでも見えたって訳? 怖い親父さんだねぇ、心配しなくても俺はガキには興味ねぇよ、ウチの和人君はわかんねぇけど」

 

いきなりそんな事を口走る銀時だが、和人は至って真面目な表情で

 

「いや俺も興味無いから、ホントマジで、神に誓って、原作に誓って」

「真顔でコイツ……!」

「勘違いすんな、俺は別にそういう事でテメェ等の事をコイツに聞いたんじゃねぇ」

 

嘘偽りない言葉で訂正する和人に明日菜が何故かイラッと来ていると

 

土方もまた目も向けずに懐からタバコを取り出しながら返事する。

 

「コイツの家は将軍家にも通じる名家だ、もしお前等みたいな貧乏人とその家の娘がつるんでる事を周りに知られたら、その家の名が落ちると警告してやっただけの事だ」

「え、お前将軍様……徳川家と繋がりがある程のお嬢様だったの?」

「そうよ、直に上様と会った事もあるわよ。常に民の事を想ってらっしゃる立派な御方だったわ、妹君のそよ姫様とも仲良くして頂いてるし」

「……」

 

取り出したタバコに火を点けながら呟いた彼の言葉に和人の表情が強張ると

 

明日菜はあっけらかんとした感じで将軍との繋がりがあると正直に話す。

 

ただの庶民である和人にとっては将軍など正に雲の上の存在、この国のトップとして幕府に君臨する王様とも呼べる御方である。

 

まさかそんな人物と顔を合わせる程までの地位を持つお嬢様だったとは……

 

「よろしれけばお嬢様、お肩を揉みましょうか? それともお水のお一杯でも?」

「今更取り繕ってももう遅いわよ、別に上様に告げ口するつもりないからその気持ち悪い言葉遣い止めて」

 

慣れない敬語を使いながら急にキリッとした表情でご機嫌取りをしてくる和人に明日菜が呆れながらツッコんでいる中で

 

土方は銀時の方に向かって更に言葉を付け足す。

 

「能天気なコイツは全く自覚はねぇが、こいつの家はこの国にとって無くてはならない存在だ、だからその家の名を汚す可能性が少しでもあるとしたら、真撰組として全力で排除する事を肝に命じておけ」

「おっかねぇなホント、身分の高いお嬢様一人の為に警察組織総出で出動するってか? 小市民としてはその頑張りをもっとマシな事に注ぎ込んで欲しいねぇ全く」

「これも幕府の治安を護る為の大事な仕事だ、つうかお前さっきから妙に皮肉ばっか吐きやがるな、小市民の分際で警察に喧嘩売ってんのかコラ?」

「小市民の小言にいちいち角立たせるなよお巡りさん、ちょっとばかりデカい権力の傘下にいるだけで偉ぶってる税金泥棒に喧嘩売る程俺も暇じゃねぇよ」

「ああ? なんだとコラ、これ以上警察を侮辱すると本気でしょっぴくぞ」

 

土方の言葉に平然とした様子で悪態をついて来る銀時に、徐々に彼は苛立ちを募らせる。

 

何故だか知らないがこの男を最初見た時からずっと腹の底でムカムカしているのだ。

 

「なんだこの天然パーマ、何故だか知らんが無性に斬りたくて仕方ねぇ……」

「と、十四郎さん……さっき自分で言った事覚えてます? 気に食わない相手がいても相手にするなって……」

「それはお前が名家の生まれだからだ、俺は別だ、俺は全力でふざけた野郎は斬る」

「ええちょっと待って! 流石に抜刀まではしないで! そりゃ私も彼等の事は良く思ってないけどそこまでする必要ないから!」

 

さっきまでクールな感じであったのに、銀時に軽く噛みつかれるとすぐに腰に差す刀に手を置こうとする土方。

 

それに気付いて慌てて明日菜が両手を伸ばして止めようとしたその時……

 

 

 

 

 

 

 

『プリッキュア♪ プリッキュア♪ プ~リキュ~ア♪ プーリキュ~ア♪』

 

緊迫した緊張感漂う店内で

 

突然場違い間半端ない美少女アニメのポップなアニメソングが鳴り響いたのだ。

 

「……え? プリキュア? 何それ?」

「これ……携帯の着信音だよな……もしかしてお前、その年で……」

「ち、違うわよ! とっくに卒業してるわよプリキュアなんて! 誰がこんな歌を携帯音にする訳……」

 

その場にいた者が全員それをはっきりと聞いて、銀時は眉を顰め、和人が疑いの目つきをすぐに明日菜に向けるが彼女はすぐに否定する。

 

すると土方は真顔のまま懐のポケットに手を伸ばし

 

「……」

 

無言でピッとポケットの中から音を出すと、それと同時に子供向けアニメの音楽が止まった。

 

それに気付いてハッと彼の方へ振り返る一同

 

「おい、今プリキュア止めたのってまさか……」

「嘘よね、嘘よね十四郎さん……」

「ああ? 何言ってんだお前等、俺が携帯の着信音にプリキュアの歌なんか設定する訳……」

 

こちらを怪しむ和人と信じられないとショックを受ける明日菜を尻目に土方は至って冷静に否定しようとすると……

 

『プリッキュア♪ プリッキュア♪ プ~リキュ~ア♪ プーリキュ~ア♪ プ~リキュ~ア♪』

「おいまた鳴ったぞプリキュア、なんなんだプリキュアって? 流行ってんの?」

「おい今間違いなくこの人のポケットにある携帯から鳴ってんぞ!!」

「ととととと十四郎さん!?」

「チッ!」 

 

再びあの陽気で可愛らしい歌が店内に流れ始めた。

 

しかも今度は間違いなく今全員に注目されている土方の制服のポケットの中からだ。

 

プリキュアというモノがいまいち理解出来ていない銀時をよそに和人と明日菜はすぐに土方に詰め寄ろうとするが

 

彼は思いきり舌打ちするとすぐにまたポケットに手を突っ込んで着信音を止める。

 

「だから俺じゃねぇつってんだろ! なに勝手に人を犯人に仕立て上げてんだテメェ等! そういうのからイジメが生まれるんだぞ!」

「いやいや絶対アンタだったろ! プリキュアはアンタだったんだろ!?」

「おい! その言い方だとまるで俺自身がプリキュアみてぇじゃねぇか! 殺すぞクソガキ!」

「だ、大丈夫よ十四郎さん……私は十四郎さんがプリキュアでも絶対に幻滅しないから……」

「目を逸らすんじゃねぇ! 正面から俺を見ろ! 違うからね! これ絶対違うからね!?」

 

さっきまでとは一転してとち狂ったように土方はそう叫ぶと

 

ますます疑いの目つきを強くさせる和人と明日菜にすぐに言い訳を思いつこうとする、

 

だがやはりまたしても…… 

 

 

 

 

 

『プリッキュア♪ プリッキュア♪ プ~リキュ~ア♪ プーリキュ~ア♪ プ~リキュ~ア♪』

「あのアマァァァァァァァァ!!! 何度も掛け直して来やがってぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

遂に隠す事さえも諦めてプリキュアを鳴り響かせる自分の携帯を取り出しながら激昂する土方。

 

携帯に向かって怒鳴っている彼を見て和人はにへらと笑いながら

 

「ホントにプリキュア好きなんスね、ウチの妹も隠れて観てたりするんスよ、なんなら紹介しましょうか? 義理の弟が真撰組の副長にもなれば何かと便利そうだし」

「ゲスいこと企んでんじゃねぇ! 妹の事もっと大切にしろクソガキ!」

「ねぇ十四郎さん、アマってもしかして相手は女の人? も、もしかしてあの超硬派の十四郎さんが携帯で連絡する関係の女性が!?」

「お前はお前で変な所に食いついてんじぇねぇ! 妙な勘繰りはよせ! アイツとはそういう関係でもなんでもねぇ!!」

 

何度も電話を掛け直してくる相手が女性だと勘付いた明日菜はすぐに興味津々の様子で目を輝かせる。

 

日頃から女性に対して全く興味無さそうな彼も、そろそろいい年だしと心配していたのだが

 

まさか連絡を取り合う仲の女性がいつの間にか出来ていたなんて……

 

「十四郎さんすぐに電話に出ましょう! 何度も掛けて来るって事はきっと大切な用事とかよきっと! つまり告白かプロポーズかのどっちかしかないわ!!」

「どんだけ飛躍させんだオメェは! チッ! 急用を思い出した! お前は山崎が来るまでここで待ってろ!」

「あ、ちょっと!」

 

あからさまな誤魔化し方をしながら突如席から立ち上がった土方は、携帯片手に逃げる様に掛けて行って店から出て行ってしまう。

 

それに明日菜も勢いよく席から立ち上がって、無言で見ている和人達を尻目にバッと彼の後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

「仕事中に電話掛けるなって言っただろうが! ごめんなさいじゃねぇ! お前の謝罪は聞き飽きてんだよこっちは! また下らねぇ用事とかだったらすぐに切んぞコラァ!!」

「十四郎さん今電話してるの!? だったらそんなぶっきらぼうな口調は止めてもうちょっと優しく! 今時の女の子はオラオラ系よりも優しくして紳士的な人の方が好感持てるのよ! せっかく立てたフラグを自らへし折らないで十四郎さん!」

「なにオメェは普通に追いかけて来てんだ! いらんアドバイスは良いからさっさと店に戻れぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

街中で必死に追いかけてくる明日菜を振り切ろうと突っ走る土方だが

 

そのまま彼は明日菜と共に夜のかぶき町を走り回る。

 

 

 

 

 

 

「アイツ等何しに来たの?」

「さあ?」

「二度と来ないでほしいわね」

 

真撰組が常に追い続けている攘夷志士

 

桂小太郎と繋がっている可能性を秘めた”三人”を残して

 

 

 

 

 




下手すれば土方の話は1章丸ごと使いかねない程長いです。

銀さん達の話の裏側で彼は彼の話で動いていると思っていてください


次回はフェアリィ・ダンス

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