竿魂   作:カイバーマン。

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早いもんでハーメルンで執筆始めてからもう2年です……2年前はもうすぐ原作の銀魂終わるんだろうなとか思ってたけど、まさか今もなお続いているとは……


そして当作品に「Kaito」さんがイラストを描いて下さりました

二人の眼鏡

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眼鏡ライダーw

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フェミニスト

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眼鏡とフェミニストという、何故にそこをチョイスした!?と素直にツッコミたいですw

シュールな一発ネタイラストを描いて下さりホントにありがとうございました!

それと毎度お世話になっている春風駘蕩さんからもイラストを頂きました。

第三章のオカマ回のワンシーンのデフォルメ絵ですね


【挿絵表示】


崖っぷちに追いやられたキリ子をどう料理してやろうかと企んでいる明日菜の暗黒微笑が怖いです……w

描いて下さり本当にありがとうございました!

これからも3年目目指して頑張ります





第三十二層 フォースの覚醒

さらさらと細いペールブルーの髪は無造作なショート

 

くっきりとした眉の下に、猫科な雰囲気を漂わせる愛委の大きな瞳

 

サンドカラーのマフラーの下に開いてるジャケットの奥には僅かに膨らむ胸元を覆うシャツ

 

ユウキ程ではないが小柄な見た目のその少女は

 

気絶してぶっ倒れた銀時を呆然としながら見下ろす。

 

「い、いや確かにいきなり現れたのは悪いけど……まさか顔合わせていきなり気絶するなんて……」

「ああ大丈夫、俺達もアンタが悪いだなんて微塵も思っちゃいないから」

 

どうしたらいいのだろうと困惑している少女に、キリトはしゃがんで銀時の顔をペシペシと平手で叩きながらあっけらかんと答えた。

 

「このおっさんがビビりなだけだから別に気にすんな、ほら起きろ」

「う~頼むから成仏してくれよ~……お前が死んだ後も彼女とか作らないんで勘弁して下さ~い……」

「なんか死んだ姉ちゃんの幻影を見ながらうわ言を言ってるみたいだよ」

「マズいな、このままだとあっちの世界に連れて行かれそうだ。おら起きろまともに給料寄越さないクズ社長! ぶっほぉ!」

「誰がクズだ! クズはテメェだろうが!」

「あ、起きた」

 

 

苦しそうな表情で呻き声を上げて一向に起きようとしないのでつい日頃思っていた事を叫んでみたキリトであったが

 

その言葉に反応して彼にアッパーを決めながら銀時はムクリと上体を起こした。

 

「……あれ? 藍子どこ行った?」

「どこ行ったも何も、今銀時の方が姉ちゃんの方へ行こうとしてたんだよ、ボク等が起こして連れ戻してきたの」

「あーそうか良かったっておい、なんでキリト君まで倒れたんだ」

「それは銀時が殴ったから」

「あーそうか良かった」

「良くねぇよ!」

 

自分が殴った事に銀時は後頭部を掻き毟りながらあっさりと安心するだけなので

 

キリトもすぐにガバッと起き上がった。

 

「ったく本当にこのおっさんは……」

「つうかよ、ちょっと聞きたい事あんだけど」

 

悪態を突くキリトをよそに銀時は立ち上がりつつ、ふと目の前にいる人物を指差した。

 

「誰コイツ?」

「銀時を気絶させた人」

「あーそういや意識失う前にパッと一瞬見たような気がすんな……気絶させたって事は一体アイツは俺に何したんだ?」

「何もしてないよ、勝手に銀時がビビッて気絶しただけ」

「え、何それ? 嘘だよね? 頼むから嘘だと言って」

「ところがどっこい、現実です」

 

ユウキが至ってシンプルに答えてあげると、目の前の少女も腰に手を当てながら呆れた様子で銀時に目を向ける。

 

「全く、こっちの世界でもなんにも変わってないんだね銀さんって、まあそれはそれで安心だけど」

「なんだお前? その言い方だとまるで現実世界の俺の事を知ってるような口振りじゃねぇか、もしかして俺の知り合いか」

「あぁ、やっぱり私の事わからないか、無理も無いわね、こっちの世界だとかなりイメチェンしてるし」

 

いまいちわかってない様子の銀時に少女は肩をすくめながらフッと笑った。

 

「朝田詩乃って名前知ってる?」

「ラーメン屋でバイトしてるガキだろ」

「そう、そしてそれが私」

 

そう言って少女は自分を親指で指す。

 

「こっちの世界では『シノン』って名前なんだ、よろしく」

「……嘘だな」

「……え?」

 

シノンと名乗るこの少女こそリアルでは北斗八軒のバイト娘・朝田詩乃であった。

 

と名乗る彼女に向かって銀時は鋭く目を光らせる。

 

「俺が知ってる名前出せばすぐ信じ込むと思ったのか? テメェがアイツな訳ねぇだろうが、一体誰だテメェ、正体現せ」

「はぁ!? いや確かにちょっと変わってるけど! よく見ればすぐわかるじゃん! 詩乃だよ詩乃! ほらユウキはわかるでしょ!」

「……君、誰? 詩乃の名前使ってなに企んでんの?」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

ユウキならば信じてくれるとシノンはすぐに尋ねるが、彼女もまた胡散臭いモンを見る様な目を向けてくる。

 

「ボクが知ってる詩乃は二つレンズが付いて両端にフレームが付いてるんだよ、君とは全く姿形が違うよ」

「そうだよな、アイツはもうちょっと手の平サイズに収まる大きさだったよ」

「それただの眼鏡でしょうが! なんで眼鏡単体が朝田詩乃になってんのよ! 本体は掛けてる方だから!」

「え? あの眼鏡掛け器の方が本体なの? うっそだー」

「お前もうちょっと現実的に考えた方が良いんじゃないの? ただの眼鏡掛け器が本当のアイツだったとかあり得ねぇだろ」

「アンタ達が現実を直視しなさいよ! どう考えても眼鏡の方が本体と考える方が非現実的でしょ!」

 

どうやら二人共眼鏡の方が本体だとずっと思い込んでいたらしく、そんなユウキと銀時にひどくショックを受けながらもシノンは今度はキリトの方へ振り返る。

 

「君も銀さんと一緒に店来てたよね! そんでその時私の事ちゃんと見たよね! 覚えてるでしょ!」

「ん? 確かにラーメン屋に入ったな、けどそこで働いてたのは姉御肌の綺麗な人と、新八だけだった気がするんだけど」

「新八って誰!?」

「新八は新八だよ、二つレンズが付いて両端にフレームが付いてて……」

「だからそれ眼鏡ぇ!! もしかしてその新八って人も眼鏡掛けてるの!? あなたには眼鏡掛けてる人=新八という判断基準な訳!?」

 

もはや自分の事をまるっきり別の人物に捉えているキリト、もはや自分を知ってるとか知らないとかそれ以前の問題である。

 

「ちょっといい加減にしてよ! 私は眼鏡でも新八って人でもないから! 朝田詩乃っていうあなた達と同じく人類だから!」

「銀時、なんかこの人自分の事を詩乃だと思い込んでるみたいだよ」

「怖ぇな~、ちょっと関わらない方がいいなこりゃ」

「あ~も~!! なんでわかってくれないのかなこのアンポンタン達! いいから私の話を聞いて!」

 

全く信じてくれない彼等に業を煮やしてシノンは両手で頭を掻き毟った後

 

それから少しばかりの時間を費やしてなんとか自分が朝田詩乃だと強く主張するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、いつになったら私の事わかってくれるの? むしろさっきから頑なに信じようとしない根拠がわからないんだけど……」

「そりゃお前アレだろ、本名が詩乃でアバター名がシノンって、情報流失で問題になってる昨今でそんな安直な名前を扱う馬鹿がどこにいんだよ」

「そうだそうだー」

「いやユウキとギンにだけは絶対に言われたくない! てかユウキに関してはまるまる本名使用してんじゃん!」

 

シノンは現在、今もなお信じてくれない銀時とユウキにツッコミを入れながら

 

先程銀時達が前でずっと足踏みしていた暗いトンネルの中を先行していた。

 

「それにこうして疑いを晴らす為に、わざわざ私が先導して銀さんの探してる店を案内してるんだよ? 詩乃の名前を驕ってみんなを陥れようとしてるなら、こんな親切な事しないでしょ?」

 

暗い道を慣れた感じで歩きながら、シノンは信頼獲得の為に銀時達が探しているという店まで案内している。

 

この辺は彼女にとってすっかり行き慣れたマップなので、道案内など容易い事であった。

 

「私の後をついて行けばすぐ着くから、もうこの辺に来ればもうすぐだし」

「そう言って俺達をこんな暗くて気味の悪いトンネルに誘い込んで、仲間を伏せてた場所に来たら闇討ちしてくるって手筈なんだぜきっと」

「よくある狡猾な手だね、そうかコレは孔明の罠か」

「いや孔明じゃなくてシノンだし、仲間とか伏せてないし……」

「へ、俺に策を見抜かれちまうとは滑稽だな」

「いや今のあなたには負けるから……」

 

シノンの背中を疑いの目つきで睨みながら、銀時はユウキの左手をギュッと強く握りながら言い放つも

 

正直彼女にとってはさっきからずっとビビッてユウキの手を離そうとしない銀時の方が滑稽である。

 

「あのさ、いい加減ユウキの手を離したら? 仮に闇討ちなんてされた時にその状態のままだったらすぐ蜂の巣にされるわよ?」

「あ? ちげーよコレはユウキを安心させる為に仕方なく手を繋いでるだけだよ。ほらキリト君、俺の左手空いてるから手を繋ごうぜ、みんなで横一列に歩けばもう何も怖くないから」

「嫌だわそんなシュールな光景」

 

銀時とユウキの前を歩き、シノンの隣を並行して歩いているキリトは振り返りながら嫌そうな顔で拒否すると

 

チラリとシノンの方へ横目を向ける。

 

「でも本当にこの道で合ってるのか? 俺はアンタが別に詩乃だろうが新八だろうがどうでもいいけど。確かにここは闇討ちするには絶好のポイントだし」

「いや新八としてだけは認められたくないんだけど……この道で問題ないわよ、もし変なトラブルでも起きたら躊躇なく私を斬っても構わないから」

 

キリトはキリトで自分の事を新八とかいう全く知らない人物の名でたまに呼んでくるので、これはこれで腹が立つなと思いつつシノンは

 

遂に薄暗いトンネルを半分ほど歩いた先にチカチカと点滅した電灯の下に置かれた、いかにも怪しげな店を見つけた。

 

「ほら着いた、ここが銀さん達が探してたお店でしょ?」

「は? ここが店? ただのゴミ溜めじゃねぇの?」

「『地球防衛基地』だって、名前だけは立派だね」

「ジャンク品があちらこちらに散らばってるな……胡散臭い」

 

シノンが指さした方向に目をやりながら歩み寄ってみると

 

表にはGGO型だけでなくALO型やSAO型の装備やらアイテムでごっちゃになったまま放置状態で晒され

 

入口の上に設置されている看板には『地球防衛基地』というあまり店に似つかわしくない名前が書かれていた。

 

よくよく見ればリサイクルショップにも見えなくもないその店に、銀時はしばし固まって見つめた後、すぐにシノンの方へ疑いの目つきを向け

 

「お前ホントにここで合ってるのか? 俺が欲しいのはここ最近入ったとかいう最新型の装備だぞ? こんな古臭い骨董品売り場で取り扱ってるモンじゃねぇだろ」

「いやでも、GGO型では滅多に扱われない近接特化型武器を取り扱う店なんてここぐらいのモンだよ」

「マジでか、こんなボロッちい店にしか売ってないの?」

「普通の店でナイフぐらいなら打ってるけど、基本的にGGO型は銃や重火器しか扱わないから需要無いんだよ」

 

そう言ってシノンが自ら店の中へと入っていくので、銀時もようやくユウキの手を離して渋々彼女の後を追って入ってみた。

 

「おいおいおい……見た目もヤベェけど中身はもっとヤベェじゃねぇか……」

「あ、アレって違法改造されてる銃じゃん、でも「故障品」って書いてあるね」

「ずっと昔にGGO型の中で流行ってたアサルトライフルが新品のまま保存されてるな……昔はコレによく追いかけ回されたもんだよ俺も」

 

中に入ってみるとこれまたゴチャゴチャした品々が所狭しと置かれていて、歩く事さえままならない。

 

銀時、ユウキ、キリトの順で奥へと進んでいくと、一番奥でシノンがカウンターと思われる場所の前で突っ立っていた。

 

そしてカウンターに座っているのはキセルを咥えた妙に艶のある女性

 

「この人がこの店の店主、NPCじゃなくてちゃんとしたプレイヤーだよ」

「いらっしゃい……ようこそ地球防衛基地へ。こんなに人が来たら本当に久しぶりだね」

 

シノンに紹介された店主の女性は、キセルから口を離してフゥーと煙を吹くと、口元に小さく笑みを浮かべながら銀時の方へ目を向ける。

 

「ご覧の通りウチは普通の店じゃ扱ってないモンを売る所さ、他では手に入らないというだけあって当然値も貼るが、アンタ金はちゃんと持って来てるんだろうね? ウチは冷やかしはごめんだよ」

「金ならたんと持ってるさ、頼もしい先輩からありったけの金をプレゼントされたんでね」

「そうかい、それならお客さんとして歓迎してあげるよ」

 

ディアベルが引退する直後で全財産を全て銀時に譲渡したので、彼は今かなりのコルを所持している。

 

金はあると自信ありげに言う銀時に店主は笑みを浮かべたままカウンターに肘を突く。

 

「で、何が欲しいんだい?」

「ここ最近入った近接武器、それと着ても重くねぇ防具だな」

「ああ、アレの事かい、お客さんGGO型のクセに変わってるね、ま、ウチの店ではアンタみたいな輩もそう珍しい事ではないんだけど」

 

そう言って店主はカウンターの下に潜ってゴソゴソと音を立てると、カウンターの上に両端に穴の開いた銀色の円筒を置いた。

 

見た感じとても武器とは思えないその形状に銀時は目を細めて首を傾げる

 

「コイツは……」

「『仙封鬼≪せんぷうき≫』、ちょいと前に売られていた『カゲミツG4』を二つ使って、とある武器職人が無理矢理一つにくっつけたとかいうイカレた武器だよ」

「あ、カゲミツG4って確か姉ちゃんがメインで使ってた武器だ」

「アイツが?」

「うん、たまにそれでお腹切ってHP削って、物干し竿に切り替えるとかやってたね」

 

どうやら二つの武器を強引にくっ付けたかなりの色物武器らしい

 

しかも片方のカゲミツG4は生前ランが使っていたメインウェポンだったとか

 

それを聞いて銀時は興味を持ったかのようにその得物を手に取る。

 

「なんだコレ、すっげぇ軽いなオイ。こんなんで戦えるのか?」

「そいつは高熱波のビームをサーベル状に変えて剣の様に扱う武器、斬れ味抜群のビームを刃にしてるだけあって重さは必要ないのさ」

「ふーん、俺が最初に使ってた光棒刀とはちょっと仕様が違うのか」

 

銀時が開始直後に使った武器・光棒刀は円柱になってる部分に熱エネルギーを纏わせるという、簡単に言えば木刀に熱ダメージを付加させるだけの初期武器であった。

 

しかしこの仙封鬼というのは、その熱エネルギーそのものが刃と化すぐらいの高出力で展開させた

 

まるで有名なSF映画に出てくるビームサーベルにより似せた設計で作られた物らしい。

 

おまけにそんなビームサーベルが二つくっついているのだ、威力は申し分ないであろう。

 

「ちょいと試しに使わせてもらうぜ」

 

そう言って銀時は円筒に付いている小さく付いているボタンを押してみると

 

「うお!」

 

次の瞬間、ブゥンという音を立てて円筒の先から緑色のビームが長い刀状になって一瞬で生えて来た。

 

「すっげぇ! あ~でも俺としては普通の刀の方が良いなやっぱ、けどこっちはこっちで悪くねぇかもなぁ、ランも使ってたって言うし……」

「ねぇねぇ銀時」

「あん?」

 

しげしげと輝く刃を眺めながら銀時が呟いていると、ユウキがある事に気付いてふと指さした。

 

「反対方向からもビーム飛び出てるよ、 今銀時の股間を貫いてる」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なんでこっちからも出てんだぁぁぁぁぁ!!!」

 

よく見ると上からだけでなく反対の下方向からも同じように緑色のビームが伸びていた。

 

それは銀時が気付かない間に彼の股間の部分を突き抜けて

 

いつの間にか銀時のHPをガンガン削っていた。

 

「な、なんじゃこりゃあ!? 両端から同時にビームサーベル出てくるとか逆に使いにくいじゃねぇか!」

「だから言っただろイカれた武器だって、まともな感覚じゃそんなの扱おうともしないよ」

「片方だけ出るとかそういう調整もねぇのかよ……まあ使い様によっては使えるかもしれねぇな……とりあえず保留にするわ」

 

仙封鬼の感想を述べて銀時はボタンをもう一度押してビームをフッと消すと、カウンターの上に戻す。

 

するとずっと見ていたキリトはカウンターに置かれたそれをまじまじと見つめながら

 

「ヤベェ超カッコいい……!」

「あ、キリトの厨二病が発動した」

「嘘だろコイツ……両端に刃付いてるだけで目ぇ輝かせやがった……」

 

二刀流をたしなむキリトにとって、二つ刃のビームサーベルにはとても魅力的に惹かれたようだった。

 

残念ながら仙封鬼はGGO型専用なので、SAO型のキリトは装備出来ないが……

 

「これ絶対買いだろ! こんなの見た事無いしカッコいいし洒落乙だし!」

「落ち着け厨二病、買うかどうかは俺が決める。店主、防具の方も見せてくれや」

「はいよ」

 

はしゃぐキリトの頭を抑えながら銀時は店主に防具の方も紹介してくれと頼むと

 

彼女は席から立ち上がると奥の方へと引っ込んでしまった。

 

「しかしアレだな、コレ見る限りマジでこの店だったんだな、お前ちゃんと道案内してくれてたんだ」

「だからずっと言ってたでしょ、それに随分前の話だけど、三十層辺りまで昇って来たら手伝ってあげるって言ってたじゃない」

「それを約束したのは詩乃だ、お前じゃねぇ」

「だから私が詩乃だっての!」

 

おもむろに話し掛けて来た銀時に、何か使える者が無いかと一人店内を物色していたシノンが半ばうんざりした様子で一喝していると、店主が両手に何かを抱えてすぐに戻って来た。

 

「どうだい? 当店自慢のGGO型の中でも滅多に出回らない和服衣装とその上に羽織るローブさ」

「おお……ってコレ、どっから見てもアレですよね……あのSF映画のビームサーベル振るう剣士が着てるあの……」

 

店主がカウンターに置いたのは一見どこかで見た事のある様な衣装だった。

 

サンドカラーのちょっと長めの上着と、黒茶のズボン、腰に巻く用の黒い帯、履き心地良さそうな黒いブーツ

 

そして極めつけは茶色を少し明るくしたかのような色に染まった大き目のローブ。

 

明らかにあの大ヒットした映画に出てくる伝説の戦士達が着ていた恰好である。

 

 

「一級品の良い素材で作った布を使用してるから見た目に比べて防御力も結構あるよ、それに軽いし回避性能は凄く上昇する、その代わりローブがヒラヒラしてたまにうっとおしいかもしれないけど、まあ慣れれば大した事ないよ」

「いや大丈夫なのコレ! ただでさえビームサーベルもあるのにこれ着たらもう完全にアレだよね!? 訴えられないコレ!? ただでさえあそこネズミの国と結託してるのに!」

「でも回避性能が上がるって言うなら銀時には凄くベストな防具なんじゃない?」

 

キチンと防具の性能を教えてくれる店主だが流石に銀時も困惑の色を浮かべる。

 

しかしユウキは大きめのローブを手に取って確かめながら、銀時のプレイスタイルには丁度良いのではと考える。

 

「姉ちゃんから貰った防具をいつまでも着てないでさ、やっぱそろそろ新調するべきだよね」

「お前はホント俺が姉ちゃんから貰ったモンを使い続ける事に文句言うよな……。まあこの先の事も考えたら頃合いなのかもしれねぇな……」

「コレ着て修行すればフォースも会得出来そうだしね」

「え、それって覚えていいモンなの? 頑張ればジェダイマスターとか名乗っちゃって言いわけ?」

「いや絶対ダメだと思うわよ……」

 

ユウキからローブを受け取りながら触り心地を確かめつつ、何やらそっち方面で強くなろうと思っている銀時にシノンがツッコミを入れていると

 

銀時が持っている新防具を見てキリトはごくりと生唾を飲み込んでいた。

 

「やっべぇ超かっけぇ……黒色verがあったらマジで俺も欲しい……!」

「あ、キリトがまた厨二病発動してる」

「まあビームサーベルといいこの衣装といい、厨二病にとってはこの上なく惹かれるモンだからな」

「おいそれ絶対に買うべきだろ! 買わなきゃ一生後悔するぞ! 黒じゃないのが残念だけど!」

「黒色だったら俺ダークサイドに墜ちるぞ、ダース・銀時になんぞ」

 

隠す気も無く堂々と厨二病全開になるキリトに呆れつつ、銀時は衣装を持ったまま店主の方へと振り返った。

 

「そんじゃコレ買っておくわ、あとあの変なビームサーベルもな、コレ買うならアレもセットで買わないとなんか勿体ない気がするし」

「毎度、防具フルセットと改造武器一つ、かなり値は張るけど大丈夫かい?」

「なんなら俺も少し出してやろうか?」

「なに急に優しくなってんだよお前、怖ぇよ……いいよディアベルの金があるし、これで足りるだろ」

 

衣装と武器を買う事にキリトが目を輝かせて身を乗り出してくるので、どんだけ買わせたいんだと思いながら銀時は彼からの提案を断って、店主に要求された金額を自分の懐から全部出した。

 

するとその直後……

 

「見つけたぞぉぉぉぉぉぉぉ地球防衛軍!」

「!?」

 

突如店の出入口から甲高い雄叫びが飛んで来た。

 

商品を受け取りながら銀時が振り返ると

 

そこには全身タイツを着た二人組を連れた、いかにも悪の組織のリーダーみたいな恰好をした男がこちらに銃口を突き付けているではないか。

 

「散々探し回ってとうとう追い詰めたぞ! 貴様等が隠し持っているあのアイテム! 今日こそ手に入れさせてもらうぞ!」

「おいおいなんだいきなり、こっちは買い物済ませたからさっさと帰ろうと思ってたのに」

「ていうか俺達まで地球防衛軍だと思われてないか?」

 

いきなりなんの伏線も無く出て来た連中に銀時とキリトが困惑していると

 

カウンターに立っていた店主がチッと軽く舌打ち

 

「アイツ等は私が売っている伝説の神器が隠された場所が記されている地図を狙っているのさ、神器の情報が書かれてるだけあって値段がとてつもなく高くしてるからね、この店を襲撃して無理矢理にでも奪おうって魂胆さ」

「神器!? それは一体どのような武器なのでありますか!?」

「キリト、食いつくの早過ぎ」

 

店主の口から神器という言葉を聞いた瞬間、すぐ様振り返って目を血走らせるキリト

 

 

そんな彼にユウキがボソッと呟いていると、店主は懐から一枚の紙を取り出し

 

「冥界の女神の名を持つ最強の対物狙撃銃『PGM・ウルティマラティオ・ヘカートⅡ』さ」

「なんだ銃かよ……てっきり剣だと思ったのに……」

「ヘカート……!」

 

狙撃銃と聞いてすぐにガックリと肩を落とすキリトとは対処的に、シノンはバッと大きく目を見開かせる。

 

しかしそんな事をしているのも束の間、神器の地図を奪いに来た連中が銃を片手に中へと入りこもうとした。

 

「あの女が持っているものこそ間違いない! 伝説の銃の在り処が書かれた地図だ! 行くぞ! 今日こそアレを手に入れるのだァー!」

 

隊長格の男がそう言って「イーイー!」とか鳴いてる連中を引き連れて店の中へと殴り込んで来た

 

しかし

 

「へぇ、丁度いいや。こっちもおニューの武器手に入れてウキウキしてたからよ……」

「な、なんだ貴様!」

 

彼等が一歩足を踏み入れる前に、すかさず銀時が彼等の前に躍り出て

 

その右手に先程買ったばかりの仙封鬼がしっかりと握られていた。

 

そして

 

ダッと駆け出して、銃を持ってる彼等に真正面に突っ込む。

 

いきなりの出来事に連中は戸惑いつつもすぐに三人で銃を構えて

 

「馬鹿め! 銃も持たずに正面から突っ込んで来るとは正に愚策! 蜂の巣にしてやれ!」

「「イー!」」

 

一斉にこちらに銃口を突き付けて躊躇なく引き金を引く三人

 

だが銀時はニヤリと笑いながら右手に持った得物のボタンを親指で押すと

 

すぐさま銀色に輝く円筒から緑色のビームサーベルが両端から放たれる。

 

「撃てぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

見た事のない武器に戸惑いつつも、ただの近接武器であれば恐るに足らんと引き金を引く三人組

 

だがそれと同時に銀時は手に持った二枚刃をすぐに前に突き出すと

 

勢いよく円を描く様に片手でヒュンヒュンと回し始めた。

 

すると彼に向かって放たれた数十発の弾丸が

 

「な! なんだとぉ!」

 

高熱エネルギーで形成された光の刃で次々と弾かれていく。

 

そしてみるみる彼等と距離を縮めると銀時は手に入れたばかりの新武器・仙封鬼を振りかざし

 

「どっせいッ!」

 

ザンッ!と何かを焼き斬ったかのような音が一瞬聞こえたと同時に、目にも止まらぬ速さで彼等の真横を通り過ぎ

ていた。

 

 

すると三人組はゆっくりと自分達の真後ろに立っている銀時の方へ振り向こうとするも……

 

「ぐはッ! まさか地球防衛軍にこの様な手練れがいたとは……」

「「イー!」」

 

三人共体に綺麗に一本線を残したまま、バタリと同時に倒れてしまった。

 

「滅茶苦茶軽いなオイ、けどいざ使ってみたら案外悪くねぇじゃねぇか」

 

瞬殺

 

銃を持った三人組をあっさりと倒してしまった事を確認すると、銀時は新たに手に入れた得物をブンブンと試しに振り回して見せながらキリト達の方へ振り向いた。

 

「厨二病全開武器も中々捨てたモンじゃねぇな、キリト君よ」

「……おい」

「ん?」

 

得意げに片手でグルグルと回しながら銀時がドヤ顔を浮かべていると、何故かジト目を向けながらキリトがこちらを指差し

 

 

 

 

 

 

「頭、当たってるぞ」

「……え?」

 

銀時は店の前のすぐ傍にあった鏡で自分を眺めてみる。

 

丁度額の真ん中に、小さな穴がぽっかりと開いているではないか。どうやら全てはじき返したつもりが、気付かない間に一発貰ってしまっていたらしい

 

それを見て銀時はしばし呆然としたまま目をパチクリとさせた後……

 

 

 

 

 

 

バタン!と音を立てて地面に倒れ、倒れた彼の身体の上に『ゲームオーバー』と書かれた文字が浮かび上がるのであった。

 

「いやー惜しい所までは行ったんだけどねー……」

「とことんカッコよく決められねぇなあの人……」

「あの人らしいわ全く……」

 

最後はキチンとシメれなかったが、新しい装備と新しい防具を手に入れた銀時

 

新しい力を手に入れた彼は

 

ここからまた一つ、高く成長する。

 

 

 

 




銀さんの新しい服装は某SF映画のアレです。あの夢の国でやたらと高く売られているアレです。

銀さんの新武器も某SF映画のアレです、エピソード1のラスボスが使ってた奴です。



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