二十五層の攻略を終えて、晴れて初心者卒業という事で盛大な祝宴を開いていた銀時達
しかしそこに水を差してきたのは第一層の頃に会ったきりだったキバオウ。
彼に半ば無理矢理連れられて来た先にいたのは血盟騎士団のアスナと
小屋の中で灯りも付けずに椅子に座るディアベルだった。
彼の口から放たれる真実とは……
「数か月前から度々おかしな事が起こったんだ、突然前触れもなしに強制ログアウトされる事が」
「強制ログアウトってなに?」
「プレイヤーの意志関係なく強制的にこのゲームから追い出される事だよ」
静かに語り始めるディアベルだがやはり銀時は知らない単語に毎度の如く尋ねて来る。
それにいちいち答えてあげるのがキリト、今隣で彼の方へ顔を上げるユウキの役目となっていた。
「ゲームのマナーに反する様な過度なプレイを繰り返したりする様なプレイヤーを運営が定めてBANするんだ」
「あーキリト君みたいな?」
「いや俺はちゃんと敷かれたルールに乗っ取って合法的に天人を虐殺してるだけだから」
「虐殺してる時点でグレーゾーンだろ……」
ユウキの説明を聞いてすぐにこちらに振り返って来た銀時にしれっとした表情で返すキリト
背後からエギルがボソッとツッコミを入れてディアベルの方へ向き直る。
「強制ログアウトされたって事はお前が運営に反する行為を繰り返したって証拠じゃないのか?」
「いや俺は至って健全なプレイをやっていたに過ぎないよ、証明になるかわからないが俺の元仲間に聞いてみればいい、俺と一緒に行動していた頃の事を教えてくれる筈さ」
「元仲間?」
「……もうとっくにみんな俺の元から離れてしまったよ、でもそれは仕方ない事さ」
エギルの追及にディアベルは自虐的にフッと笑ってしまう。
「俺が強制的にログアウトされてしばらくログイン出来なくなってしまった時間の間、EDO内では妙な事が起きていたらしい、俺がまるで人が変わったかのように暴れ始め、更には暴走したモンスターを操って傷付けられたプレイヤーは現実世界にも影響が及んだと」
「おいおいそれってまさか……」
「ここ最近EDOで起きてる仮想世界の影響が現実世界にもリンクし始めてる不可思議な現象だ」
項垂れながらディアベルはそう吐露すると、銀時は片目を釣り上げた。
「オメェがこっちの世界に入れなかったのに、こっちの世界のオメェが暴れたってどういう事だ? もうちっとわかるように説明しろ、こちとらネットゲーム初心者なんだよ」
「恐らく……アカウント乗っ取りだ」
「乗っ取り?」
ディアベルの代わりに顎に手を当てながらキリトが答える。
「ディアベルのリアルを強制的に退場させて、残ったアカウントのディアベルにログインして成り代わった奴がいるって事だよ、つまりコイツは自分がやったんじゃなくて自分を装った別の奴がやったんだと言いたいんだ」
「その乗っ取り行為ってのは誰でも出来る事なのか?」
「無理だな、EDOでのアカウントは個人認証システムがかなりしっかりしてる、絶対に同一の人物じゃなきゃ同じアカウントにログインするのはまず不可能だ、ただ……」
キリトは眉をひそめてディアベルの方へ顔を上げた。
「公式の運営側の方からならそれは可能かもしれない、連中はこちらを強制的にログアウトさせたり永久アカウント停止も出来る、つまりこちらの個人情報をくまなくチェックできる立場にあるという訳だ」
「いやいや待て待て! それは流石に無いだろキリトよ! それってつまり運営側が俺達の個人情報を悪用してるって事になるだろ!」
唯一この状況を分かっていなかったクラインだが、彼等のここまでの話を聞いておおよそ理解は出来た。
そしてキリトが呟く一説に慌てて首を横に振る。
「いくらなんでもそれはあり得ないって! もしそんなのが公に知られたら間違いなく大問題になる! 宇宙中でやられてる超大規模ネットゲームでそんな真似したら! 下手すれば国際問題だぜ! そこまでのリスク背負ってまでアカウントの乗っ取りなんてするかよ普通!」
「当然普通はそう考えるさ、俺もあくまでこういう可能性があるかもと言っただけだって、アカウントの乗っ取りなら公式運営じゃなくても、名の知れた有名なハッカーとかでも可能かもしれないし」
クラインの言ってる事もごもっともだ、しかし今このゲームで起こり続ける非現実的な現象の数々を知る内に
この世界はもはや自分達にとっての普通からズレ始めているのではとキリトは推測している。
「まあ少なくともディアベルの話が本当なら、いずれは大変な事になり得るのは確かだ。アカウント乗っ取りと現実世界にリンクする痛み、これらが世に知られたらプレイヤー達に恐怖が感染するに違いない、現に今も少しずつ知られているんだ、下手すれば公式が危険と判断してEDOの世界事態消失する事態に発展するかもしれない」
「消失、この世界が……」
キリトの言葉に思わず怯えた目つきをして銀時の裾をギュッと握るユウキ。
そんな彼女に銀時は無言でその肩にポンと手を置く。
「らしくねぇツラすんな、ここはお前と藍子にとって唯一自由に駆け回れた世界だ。何よりアイツが生きた証が残っているここを消させる真似、俺がさせるわけねぇだろ」
「でもどうしたら……」
「決まってんだろ」
心配する彼女の肩に手を置いたまま、銀時は静かに呟いた。
「この世界にいる黒幕をぶっ倒せばいい、そいつを暴き出して洗いざらい吐かせて公に公開すればこの世界の危機は去る、そうすりゃこの世界をまるっと消す必要もねぇってこった」
「オメェは相変わらず発想が単純だな……だがそれしかねぇのも確かか」
銀時の結論にエギルは苦笑しつつ縦に頷く。
「と言ってもディアベルの言ってる事が本当かどうかはまだわかんねぇけどな、実際はコイツ自身の狂言って可能性もまだちゃんと残ってるだろ?」
「コイツが言ってる事は本当だろうよ」
「ほう、根拠は?」
「匂いだ」
短くそう言うと銀時はエギルの方へ振り返る。
「会った時のコイツとダンジョンの中でいきなり変貌した時のコイツとはまるで匂いが違う。あの時ユウキを怯えさせた時のアイツは、どす黒くネバネバした無性にムカつく悪臭だった。今のコイツにはそれが感じられねぇ」
「やれやれお前のお得意の勘って奴か……確かに昔はお前のそれのおかげで何度も命救われたっけな」
(命を救われた……?)
ついエギルが口から漏らした言葉にキリトはふと疑問に思ってどういう事かと聞こうとするが
それを遮って銀時が口を開く。
「あれほどの悪臭だ、その辺嗅ぎ回ればすぐに匂いを辿れるかもしれねぇ。あの野郎には俺の女に嫌な思いさせた借りがあるんでね、この手でいっちょシメてやらねぇとずっと思ってた所だ」
「ハハハ、銀時ってたまにカッコよく見えるから不思議だよねー」
「たまにでいいんだよ、普段はけだるく生きてたまにビシッと決めてやるのが良い男の条件ってもんだ」
「う~んそうかもねー……」
普段から死んだ目をしながらも時折キラリと目を光らせる銀時にユウキが「アハハ」と苦笑しながら内心自分の為にここまで怒ってくれてる事にちょっと嬉しく思ってると
ディアベルが小さく笑みを浮かべながら彼の方へ顔を上げた。
「君は俺の話を信じるのかい? こんな俺の話を」
「勘違いすんな全部信じてる訳じゃねぇさ、そうだろキリト君?」
「まあな、けど黒幕がどっかにいるって言うアンタの案は、個人的に俺も乗っかりたいと思ってるし」
この世界を裏で操ろうとしてる闇を暴く、それはそれで面白いかもしれないなと思いながらキリトは頷く。
「ディアベル、アンタが俺達にこの事を話したのは自分の代わりにその黒幕を暴いて欲しいと思ったからだろ」
「ああ、君達はあの事件の中で一番活躍したとキバオウ君に聞いていたからね」
「アイツが……?」
意外と自分達の事を評価していたのかと、キリトはいつも悪態を突いて来るキバオウを想像してしかめっ面を浮かべていたらディアベルが椅子に座ったままこちらに首を垂れる。
「どうかこの世界を頼む……この世界を救ってくれ」
「おいおいまるで俺達に全て投げっぱなしにしようとする言い草だな、アンタだって少しは調べてもらわないと困るぞ? 被害者の一人なんだし」
「……いや」
必死に頼み込んで来るディアベルにキリトがジト目で全部こっちに丸投げするなとツッコむと彼は力なく笑って
「俺はこれから血盟騎士団の本部へ行ってさっきの事をより詳しく団長に話すつもりだ。そしてその後は潔く腹を切ろうと思っているんだ」
「腹を切る?」
「ディアベルというアカウントを消滅させて、このゲームから永久離脱する」
「!」
腹を切るという事はそういう事か、自らアカウントを消滅させてEDOに二度とログインしないという事。
それはつまり今まで築き上げたこの世界での様々な体験や思い出をを自らの手で捨て去るという事だ
かつてはこの世界だけが全てであったキリトにとっては、それは聞くだけで身も凍る行為だ。
「元はと言えば俺が何度もアカウントを乗っ取られている事を公式に言わずに黙ったままにしたから事件が起こったんだ、俺は怖かったんだよ、公式に言ってもし自分のアカウントに異常があると判断されて処断される事が……」
「……」
「こうなってしまったのも俺の罪だ、血盟騎士団に全てを話し、潔くこの世界と別れようと思う」
「やったのはアンタじゃないんだろ、だったらアンタがそこまでして……!」
「いややるべきだ、このアカウントがまた乗っ取られる可能性もまだあるんだ、また『ディアベル』がみんなを危険に巻き込むなんて、絶対にあって欲しくないんだ」
仮想世界との断絶、揺るがない決心を着けてディアベルはずっと座っていた椅子からゆっくりと立ち上がった。
「今日は俺の話を聞いてくれてありがとう、これからもこの世界を俺の分まで楽しんでくれ」
彼が再びこちらに対して丁寧にお辞儀すると、タイミング良く小屋のドアが開いて血盟騎士団の副団長であるアスナが入って来た。
「話はもう終わったみたいね、それではディアベルさん、出頭お願いします」
「ああ、君にも礼を言うよ副団長殿、俺なんかに付き合わせてしまって」
「これも副長の務めですから、それにあなたがこの世界を本気で護りたいって気持ちは、私にもわかるんで……」
「……ありがとう」
仕事としては割り切ってるものの、このまま彼を断罪して良いモノなのかどうか迷っているのが窺えるアスナの顔を見てディアベルはもう一度礼を言うと、彼女の下へと歩み寄っていく。
そして銀時達の横を無言で通り過ぎようとすると
「なぁ、ディアベルさんよ。コイツ等が言うには今の俺の装備じゃこっから先は到底攻略不可能らしい」
銀時の真横まで来たところで、不意に彼の方から話しかけられ思わずディアベルは足を止めた。
「なんかいい装備とかない? 俺はGGO型なんだが出来れば近接の武器とか使いんだけど、それとあんま重くない防具」
「そうだな……」
互いに目を合わせずに会話をしながら、ディアベルは真面目にしばらく考えた後
「そういえば最近三十層のGGO占有地区の店に面白い近接武器と防具が入ったみたいだ、結構値が張る上に飛び道具が主流のGGO型にはあまり合わないから売れてないらしいが、近接で戦いたい君なら使いこなせるかもしれないね」
そう言ってディアベルは自分のメニューを開くと手際よく操作しながらある物を画面から取り出す。
「ほら、今俺が持ってる全財産だ。これだけあれば買えると思う」
「……」
ありったけの硬貨が入れられた布製の袋を手に持って、それを躊躇なく銀時の前に差し出す。
銀時はしばしそれを見つめて受け取るのに躊躇した後、スッと右手で受け取った。
「ありがたく使わせてもらうわ、ありがとよ先輩」
「先輩、ね……そうだな、これが俺の、ディアベルの最後の後輩へのアドバイスか……」
ぶっきらぼうに礼を言って来る銀時にフッと笑いながらディアベルは目を瞑る。
「最後の最後に先輩らしい事が出来て良かったよ、ありがとう」
こちらに振り返り嬉しそうに笑いかけるディアベルに、銀時は何も言わずに軽く笑みを返す。
その反応に満足そうにまた笑いながら、ディアベルはドアを出てアスナと共にその場を後にするのであった。
「……ディアベルの為にあんな事言ったの?」
彼等が見えなくなったのを確認した後、結城がボソリと銀時に問いかけると
彼はスッとディアベルから受け取った布袋を掲げる。
「ちょっと聞きたいと思ったから質問しただけだ、このままだとお前等にずっと言われそうだから新調しようかなとも思ってたし、そしたら金までくれて万々歳よ」
そう言って銀時はその袋を自分のメニューウィンドウに突っ込むと、自分の所持金に加える。
「あーあ、どうせ止めるんなら装備もアイテムも全部寄越せって言っとくべきだったぜ」
「強欲だな銀さんは……ま、とにかくこれでアンタも装備を整える決心が着いたって訳だ」
「ディアベルのおかげでな、しかしコイツに全財産託すなんてな……」
メニューを閉じて残念そうにぼやく銀時にクラインとエギルが呆れていると
ディアベルの座っていた椅子に座りながらキリトが口を開く。
「ま、良いんじゃないか。アイツも最後嬉しそうな顔してたし、アンタもちゃんとアドバイス通り買うモン買っとけよ」
「わ~ってるよ、最後の最後に色々託されたんだ、そらこっちもワガママ通す訳にもいくめぇ」
めんどくさそうに髪を掻き毟りながら、銀時ははぁ~と深いため息を突く。
「背中が重てぇや……」
それからしばらくして銀時達は祝宴を開いていた村へと戻り再び参加した。
もう少しで夜が明けるというの、プレイヤー達はまだ騒いでいた。
しかし先程ディアベルからとんでもない話を聞かされたので皆心の底から盛り上がる事は出来ず
銀時もまた一人噴水広場で何かを考えてるかのようにボーっと日が昇りかけてる空を眺めていた。
「おう、ディアベルはんの話、ちゃんと全部聞いたみたいな」
「あん?」
突然自分の隣にドカッと座り込んで来たのはまさかのキバオウであった事に軽く驚きつつ
銀時が空を見上げるのを止めて振り返ると彼はズイッと銀時の前に一本の中身の入った瓶を差し出した。
「特別に一本やるわい、どこぞの闇商人が作ったらしい現実により近く再現された”酒”や」
「は? おいおいマジかよ、飲んで大丈夫なのかコレ?」
「心配あらへんわ、わいなんかしょっちゅう飲んどる」
そう言ってガラス製のコップをこちらにポイッと投げて来たので、それを受け取って銀時は早速貰った酒を注いで飲んでみる。
その途端クラッと来る酔いに近い感覚が銀時を襲った。
「キッツイねぇ……だが悪くねぇ、おたくこんなのどこで仕入れたんだ?」
「それだけは教えられへん、お前もちょっとアウトローな場所を転々としてれば、悪い遊びや仕組みも覚えておくもんや。酒もその中の一つに過ぎへん」
またコップに並々と酒を注ぎながら尋ねて来る銀時に、キバオウは腕を組みながら仏頂面で答える。
「実はの、ワイのアバターのこの顔や声は全部ワイのリアルとは全く別のモンなんや、ちょっとした発明家に金渡して作ってもらった、いわゆる仮の姿やねん」
「それって完全におてんと様に怒られる事だろ」
「怒られるどころか垢BAN確定や、けどワイにだってちゃんとした事情があるねん、本当の顔でプレイするとリアルの身内にバレる可能性もあるし……せやからこの見た目で我慢しとんねん」
いきなり何を言い出すんだと銀時が酒を飲みながらキョトンとしていると、彼は不満そうに噴水の池に浮かぶ自分の顔を見つめてしかめる。
「ホントのワイはそら中々の色男なんやで、なのにあのジジィ、作るんならせめて反町隆史似にしろっちゅうねん」
「反町隆史とか望み高過ぎんだよ、だったら俺だって小栗旬にして欲しいよ」
「アホかお前こそ高望みし過ぎじゃ! その天パじゃ精々大泉洋や!」
だるそうに呟い来る銀時にキバオウは正論を言い放った後、フゥ~とため息をこぼす。
「なんでやろうな、ワイみたいな公に出来ん事ばかりやってる悪党が普通にこの世界を謳歌出来んのに、多くの奴を導いていった善人のディアベルはんは、もう二度とこんな風にこの世界で夜明けを見る事が出来んとはホンマ世の中おかしいわ……」
「……お前もアイツから話聞いてたのか?」
「ああ、必死に探してやっと見つけた時に教えてくれたわ、そらショックやったで」
頭を手で押さえながらキバオウはガックリと肩を落とす。
「わいも初心者の頃に何度もディアベルはんの世話になったんや、いつか借りを返そうと思うとったのに結局返せずじまいじゃ」
「アイツはアイツでケジメ着けるために腹切る事を望んだんだろう、だったらもう残った俺達がアイツの意志引き継ぐしかあるめぇよ」
「はん、なんやお前、随分とらしくない事言うやないか」
「お前が持ってきた酒のせいで酔っぱらって来たんだよ、ほらよ」
ふと小さく呟く銀時にキバオウがニヤリと笑うと、鼻を鳴らしながら銀時は手に持っていた酒の入ったコップを彼に突き出す。
「こんな濃いの全部飲めるか、お前にもやるよ」
「なんや情けない奴やな、まあええわ、飲んでやるわい」
突き出されたコップを受け取るとすぐに一口で飲み干してしまうキバオウ。
ものの数秒で空になったコップに銀時が瓶を片手で持って酒を注いであげる中、キバオウはふと空いてる方の手で自分の頭を撫でる。
「7の借りを作ったら3返す、3借りたら7、それがワイの中の黄金比率や、この世は七三分けで成り立っとる」
そう言って銀時が注いだ酒を再び一気に飲み終えた後、両手で七三分けをするかのようにトゲトゲ頭を掻き分ける。
「ディアベルはんには返せへんかったが、とりあえずお前にだけは返せて良かったわ」
「俺はお前に借りなんざ作った覚えはねぇよ」
「ディアベルはんの話、ちゃんと信じてくれたやないか」
「お前……」
小さくポツリとそれだけ呟くと、キバオウはコップを銀時に返して立ち上がった。
「ほなワイはもう用が済んだんでリアルに帰るわ、また会う時があったらよろしく頼むで」
「ああ、達者でな、”キバオウ”さんよ」
「なんやちゃんと名前覚えてるやんけ……ほんに腹の立つ男や」
最後の最後に名前で呼んで来た銀時に苦々しい表情を浮かべた後、クルリと首を戻してメニューを操作してログアウトボタンを押すキバオウ。
あっという間に彼の姿は消えて、残された銀時はまた一人になり、ようやく昇った日を拝みながらコップに入った酒を飲む。
「最初はこんな世界ただのゲームで作った紛い物かと思ってたが……」
藍子の死をキッカケにEDOをやり始めてから、ここに至るまで随分と色々な人物とこの世界で出会った。
きっと彼女がここまで自分を導いてくれたのだろう、現実にいるだけじゃ手に入らなかった多くの仲間達に出会える為の縁を彼女が最期に作ってくれたのだ。
そしてこれからもずっとこの世界で様々な新体験が待っているのであろうと思いを馳せつつ
「案外悪くねぇな、この世界の日が昇った空も」
一人フッと笑って満更でもない様子で
天に輝く太陽を拝みながら呟くのであった。
次回、銀さんとユウキのデート回
最近彼女がヒロインだというのを忘れるからこういう話も書いとこうと思いまして