自分の作品の為に書いて貰えるなんて私は本当に幸せ者です、至極感謝します
【挿絵表示】
特撮の『仮面ライダーエグゼイド』より『EXCITE/三浦大知』をモチーフに描かれたみたいです。
全員、様々なゲームのキャラクターのコスプレをしています(本編未登場キャラもアリ)
長谷川さんは早くハローワーク行って下さい……
だだっ拾いボスフロアの中で様々な騒音が行き交う中。
双頭の巨人・ギルトシュタインが雄叫びを上げながら迫りくる
二つの顔で左右それぞれを視界に入れながら器用に戦い、向こうの動きに不審な点があったら即座に引いて態勢を整えるその姿から、今までの力任せで戦うだけのボスとはワケが違う。
根本的に戦い方が今までとは全く違う事に気付かず、ただ攻撃を当てれば勝てると思っているプレイヤー達はもう既にここにはいない。
何故ならそのようなプレイヤーは既に開始10分も立たずに全滅しているからである。
そう、ここは境界線・初心者プレイヤーが自ら壁を壊して新たな成長を遂げるキッカケとなる舞台。
生き残ってる数十人は、その域にいよいよ足を踏み入れようとしているという事。
しかし事はそう上手くはいかない、双頭の巨人はいよいよHPバーが残り一本にまで削り切られると、ここにきて本腰を上げたのか、背後に飾られていた巨大な大斧を両手に持ち構えたのだ。
プレイヤーからすればただの飾りのオブジェクトかと思っていたのだが、どうやら巨人のとっておきの切り札であったらしい。
辺りから聞こえるのは悲痛な叫びと落胆のため息
巨人による二つの斧によるド派手な振り下ろし攻撃による轟音
そして
ただ眼前の敵を倒さんと目を光らせながら颯爽と戦場を走り抜け。、手に持った得物で風を切り裂く音。
この世界では珍しい和風の衣装を着飾った銀髪の男が、右手に妙に長い刀を構えて単騎で巨人目掛けて真っ向から挑みだしたのだ。
それに釣られて他のプレイヤー達も共に後ろから援護に回ったり、外から奇襲魔法をかけて巨人の足止めにかかる。
巨人も気付いて二振りの斧を男に向かって振るう。しかし男は左へ右へと体を逸らし、当たる寸前で半歩下がるなど、当たるギリギリの手前で避け切っていく。
既に彼のHPは赤く染まり、一撃でも食らえば終わりだ。
そんな状況の中でも男は焦り一つ見えずに敵だけを見据えながら絶妙なタイミングで避け切っていく。
遂には巨人の目の前まで辿り着き、自分にかろうじて追いつくことが出来た数人のプレイヤーと共に
銀髪の男は地面を蹴って飛び、右手に持った刀を両手に持ち構える。
大木で作った丸太の様に太い巨人の腕に着地すると、そのまま一気にこちらにむかってやかましく吠える双頭の方へ昇り詰めて行き
銀髪の男は自慢の愛刀を高く振りかざし
刃を高速で震わせながら翆色に光らせ
双頭の境目に向けて勢いよくその一撃を叩き込むのであった。
それから数時間後
銀髪の男こと坂田銀時は
初心者枠から抜けた者達が入る事を許される二十六層にある村の飲み屋へと来ていた。
飲み屋の集会広場では、先程の第二十五層の振らおボス戦にもついて来てくれたユウキが
高々とジョッキに注がれたビールを掲げている。
「えーそれではーウチの銀時とクラインのギルド・風林火山が無事に最初の難関の二十五層を無事に突破出来たことを祝して~乾杯!」
「「「「「かんぱ~~~い!!!」」」」」
彼女の音頭を合図にプレイヤー達は陽気にジョッキをぶつけ合って互いを称え合った。
所狭しで和気藹々と騒ぎだす連中を眺めながら、カウンター席で座る銀時もグビッと一口飲む。
「……このビールアルコール入ってねぇんだけど」
「ったりめぇだろうが、現実世界じゃあるめぇし、まあ非合法の闇市で取引されるって聞いた事あるけどな」
飲むとすぐに違和感を覚えて不思議がる銀時に
隣に座って一緒に二十五層討伐に協力してくれたエギルが声を掛ける。
「つうか本物を飲みたかったら現実世界にあるウチの店に来いよ」
「なんだ俺を祝って奢ってくれるのか、いやー悪いねーお礼に効果が凄い育毛の方法教えてやるよ」
「奢りじゃねぇよちゃんと金払え、でも育毛の件については教えてくれれば一杯タダにしてやる」
「ワカメって知ってる?」
「やっぱタダ飲みはさせねぇ、現在進行形で俺がワカメどんだけ食ってると思ってんだコラ」
頭が薄く不安に駆られた者なら誰もが知っている基本知識をドヤ顔で持ち出きた銀時にエギルは首を横に振ってアルコールの入っていないビールを再び飲み始める。
すると彼等の方に群衆を掻き分けながら一人の男がすっかり上機嫌の様子で両手にビールを持ったまま歩み寄って来る。
「よ、景気よくパーッと飲んでるかお二人さん?」
「いや周りに野郎ばっかなのが不満だけど、美人なネェちゃん呼んでくんない?」
「ま―そう言うなよ、アンタにはユウキちゃんがいるだろ?」
「クライン、今日は何時にも増してやたらとテンション高ぇじゃねぇか」
「おいおいエギルの旦那、こんな時だからこそいつも以上にはしゃぐだろうよ?」
やって来たのは銀時と同じタイミングにEDOデビューしたクライン。
以外にも彼は攻略速度も銀時に引けを取らず、更には自分の仲間内で作り上げたギルド『風林火山』まで立ち上げて今ノリに乗っているプレイヤーとして評判になっている。
そんな彼がいつも以上に上機嫌で振る舞っている理由は
「ようやく初心者プレイヤーを卒業できたんだぜ! これで喜ばねぇ訳ねぇだろうよ! こっから更に飛躍して風林火山を血盟騎士団に並ぶ大型ギルドにしてやらぁ!」
「風林火山ねぇ、なんか天下目前で暗殺されそうな名前だな」
「そんで跡継ぎが調子乗ったせいで味方全員銃弾食らいまくって挙句に自分は切腹だな」
「止めてくんない!? せっかくこっちが野望を志そうとしてるのに不吉な事言うなよ!」
死んだ目で嫌な事を呟く銀時に悪ノリして言葉を付け足すエギルにツッコミながらクラインはビールを飲みつつ眉間にしわを寄せた。
「ていうかアンタももっと喜べよ銀さん、これでもうキリの字やユウキちゃんに初心者扱いされなくなるんだぞ?」
「何言ってんだアイツ等はまだまだここより上の階層にいるんだぞ、アイツ等が上にいる限りまだ俺はナメられっぱなしだ、いずれ追いついて更に追い抜いてやる」」
「なるほどねぇ、アンタはアンタでちゃんと目的があるって訳だ」
銀時としては未だ二十五層クリアでは満足できなかった。
目的はキリトとユウキのいる階層に追いつく事ただ一つ。
彼等と肩を並ぶまでに成長する事を当面の目標にしている事を、始めたばかりの事からずっと揺らいでいない銀時に、少々感心した様に頷くクライン
「けど聞いたぜ銀さん、アンタ誰もがクリアできなかった二十層の神器入手クエストをクリアしたんだってな?」
「そいつは俺も聞いたぞ、ったく現実と変わらず昔からお前は周りを驚かせるのが上手い野郎だ」
「まーたその話かよ、もう誰かに会う度その話だ。正直俺はねぇ、神器とかどーでもいいのよマジで」
アルコールの入ってないビールなんか飲んでられないとNPCの店員にいちご牛乳を注文しながら、銀時はけだるそうに髪を掻き毟る。
「武器なら俺はもう刀一本持ってるからたいして欲しくねぇんだよ」
「ああ、ランの刀な」
「周りの連中がその刀だけじゃ不便だから造れって言うから仕方なく神器を造れる腕のいい鍛冶屋って奴を探してるんだけど、これがまた全然見つからねぇし正直めんどくせぇんだよなホント」
「オメェあれはHPが半分以下に達しないと装備出来ねぇ代物だぞ? 本来切り札として持っていくモンで普段から使うモンじゃねぇんだよ」
「腹切れば装備できる条件なんざ簡単にクリア出来んだろ、現に今回も切腹して勝ったからね俺は」
「あのなぁ……悪いがこっから先はもうそんな無茶苦茶な戦法取れなくなってくるんだぞ」
ヘラヘラと笑いながらこれから先も物干し竿一本で十分だとのたまう銀時にエギルが難しい顔をする。
「悪い事言わねぇから普段装備出来る奴も持っておけよ、神器がまだ造れねぇなら武器屋で手頃な奴買って来い。メイン武器とサブ武器の両立ぐらい器用なオメェなら簡単だろ?」
「普段装備出来る武器ならちゃんと装備してるつーの、脇差しだけど」
「それほとんど切腹用じゃねぇか! 武器としての役割こなしてるの見た事ねぇぞ俺!」
「モンスターよりも持ち主の血を吸っている脇差しって怖ぇなぁ……」
第一層で入手した脇差しを未だに腰に差している銀時。
彼が普段装備しているのはこの脇差しで、いざとなったらこれで腹を切って物干し竿を取り出すというのがお約束だ。(ちなみに脇差しは短剣として扱われているので、使おうと思えば銀時は短剣でも戦える)
二十五層まで来てもなおそのスタイルを崩そうとしない銀時にエギルがツッコんで、クラインは彼の腰にさしてある脇差しを見ながら軽く恐怖を覚えていると
「なになにーなんの話してんのー?」
「どうせ大の大人三人で固まってる所から察するに、なんかいかがわしい話でもしてるんだろ」
「おおユウキちゃんにキリの字! ちょっと銀さんの事で聞いてくれよ」
「だからそのキリの字って呼ぶの止めろって」
彼等の声を聞いて先程乾杯の音頭を取っていたユウキと、一人隅っこでくつろいでいたキリトがこちらに合流して来た。
二人がやって来るとすぐ様クラインが振り返って報告する。
「いやー銀さんの奴がここまでずっと頑なに物干し竿だけでプレイしてるからさ、ここらでいっちょ戦い方を変えてみたらどうだって話してるんだけどよ、一番付き合いの長いお二方はどう思う?」
「んーまあ確かに姉ちゃんの物干し竿は神器並みに攻撃力高いし性能も凄いけど、やっぱ装備するのに手間かかるしボクとしては普段から持ち歩ける剣とか腰にぶら下げた方が良いと思うねー」
「キリの字は?」
「二十五層まではなんとか順調に上手くいってこれたけど、この後からはギリギリ三十層ぐらいが限界だろうな。それと武器もそうだけど防具の方も正直もうキツイだろ、恋人からの贈り物とはいえ流石にそろそろ新調すべきだ」
二人共今のままの銀時の戦い方はもう通用しないだろうと判断する、キリトに至っては武器だけでなく防具、つまり着ている服も変えるべきなのでは主張した。
彼等の話を聞き終えると、クラインは銀時の方へと振り返り
「という事で銀さんは近い内に武器と防具を新調する事、はい決定」
「俺の許可なく勝手に俺の方針決めんなよ! なんだよ武器だけじゃなくて防具まで変えろって!」
NPCの店員が持ってきたいちご牛乳を一気に飲んでコップを乱暴にカウンターに置きながら
周りに勝手に自分のやり方を口出された事に腹が立ったのかすぐ様反論に出た。
「防具なんて適当でいいだろ! そもそも俺攻撃なんざ全部避ける前提だし! 避ければ防御力なんて必要ねぇから!」
「こっから先は敵のAIも更にレベルアップして攻撃頻度が上昇するんだよ、今までの様にはいかないだろうから用心して防御力上げるのは得策だろ?」
「いいって俺はこのままで! 着ている服装をコロコロ変えるのは主人公としては良くねぇの! ドラえもんを見習え!」
「ドラえもんは元々全裸だろ!」
ベテランであるキリトとしての意見は至極まっとうなアドバイスなのだが、銀時は聞く耳持たずにそっぽを向いてしまう。
その態度に何処か不審を覚えたキリトはユウキの方へ
「おい……なんであの人あんな頑なに防具変えようとしないんだ?」
「防具というか物干し竿も姉ちゃんからの貰い物でしょ? つまりそういうこと」
「おいおいあんな見た目で亡き恋人の事をまだ想い続けるって言うのか? 流石に一途すぎるだろ……」
「姉ちゃんも大概だったけど銀時もそこん所めんどくさいんだよねぇ」
「聞こえてんぞお前等! 誰が一途でめんどくさいだコラ!」
二人でコソコソと会話しているのをしっかりと聞いていた銀時が再び彼等の方へ振り返るのであった。
「もーいい加減にしてくれよ! 俺は俺なんだよ! 俺がこれでやりたいって言ってるのに横からギャーギャー口挟むんじゃねぇ! 武器は物干し竿! 防具はそのまま! コレで最後まで行くんでヨロシク!」
「あーあ、意地になっちゃって……だからそのままじゃボク等の所まで追いつくのは到底不可能だって言ってるのに」
「このままだとホントに三十層あたりで詰むだろうな、神器もまだ手に入れる手筈も整ってないし、これはどうにかして別の武器と、新たな防具を作ってもらわないと俺達の方が困るんだぞ?」
「しつけぇなもういいだろ! はいはいこの話は終わり!」
フンと鼻を鳴らしながら店員に「おかわりお願いしやす!」と叫ぶ銀時を見つめながらユウキとキリトがどう説得すれば彼が装備を一新して貰えるのかどうか途方に暮れていると
満員の飲み屋の中に一人の男がフラッと中へと入って来た。
そしてそのまま銀時達を見かけるとすぐ様彼等の下へ
「おいお前等、第一層攻略の時にいた奴等やろ?」
「ん? お前はあの時いた……」
やって来た人物にいち早く気付いたのはエギルだった。
ツンツン頭の関西弁、喧嘩腰で話しかけてくるこの態度を見てすぐに思い出した。
「確かキバオウとかいう大層な名前の奴だったな」
「あ、ホントだ」
「何しに来たんだお前、また俺達にたかろうとか考えてるのか?」
「え、俺は知らないんだけどみんな知ってるの?」
唯一一緒に第一層攻略に参加していなかったクライン以外はすぐ様気付く。
キバオウ、第一層フロアボス攻略作戦にてなんだかんだで活躍したベテラン組の一人である。
あの事件以降、行方をくらましたと聞いたがまさかこんな所で顔を合わせると思っていなかったキリトは
早速怪しむ様に彼を見つめる。
「あの一件以来姿を見せなかったけど今まで何してたんだアンタ?」
「おう、それを今からお前等に教えてやろうと思ってここに来たんや、銀髪パーマの男もおるか?」
「銀時ならそこにいるよ、いちご牛乳飲んでる」
なんだかえらく真面目な態度で尋ねて来るのでキリトが内心驚いていると、ユウキが指さした方向でまだいちご牛乳を飲んでいる銀時がキバオウの方へと振り返った。
「あぁ? 誰かと思ったらいつぞやのサボテンダーじゃねぇか、会わなくなったからてっきりメキシコに移住でもしたのかと思ってたわ」
「誰がそないな場所に行くか! それにワイの名前はキバオウやってもう何べん言わせんねんコラ!」
コップに入ったいちご牛乳を左右に揺らしながら相変わらずふざけた態度を取って来る銀時に叫んだ後、ふぅ~とため息を突いてキバオウは改まった様子で彼等の方へ顔を上げた。
「お前等今から時間あるか? 会わせてやりたい人がおるんや」
「は?」
「ここは人が多いから話せん、ちょっと歩くがまずはそこに移動するで」
無粋にそれだけ言ってキバオウはこちらに背を向き店の出口へと向かって行った。
彼の背中を見送りながら銀時達は互いに視線を合わせると
「じゃあそろそろつまみも追加するか、はい何か頼むか人ー」
「ボク枝豆ー」
「俺はなんか辛い系でいいわ」
「じゃあ俺は……ひじき煮の黒豆で」
「おいクライン……今俺の顔見て注文しただろ」
「はよついて来んかいボケコラカスゥ!!」
再び飲み会を始めようとワイワイと騒ぎだす。
すると先程店から出て行ったばかりのキバオウが駆け足で戻って来るのであった。
半ば無理矢理な形でキバオウに宴会から連れ去られた銀時達一行
彼等は今キバオウを先頭に村の外れにある人気の少ない林の中を進んでいた。
「おいツンツン頭、こんな周りに人もいない怪しい場所に連れ込んでなに企んでんだ」
「ああ? なんも企んでへんわ、ええから大人しくついてこんかい」
どこに連れて行くのかさえ言わずにさっきから黙々と進むキバオウにそろそろ銀時も眠たそうに欠伸を掻いていた。
「勘弁してくれよ、俺今日徹夜だぞ? 朝から仕事でどこぞの大手企業の社長が不倫してるかどうか調査しに行かなきゃならねぇだよ」
「それボクもついて行っていい?」
「ダメだ、家で大人しくしてるか外で遊んでろ、それと首落とし遊びはもう止めろよ、何回もやってると外れやすくなるからな」
「ちぇー」
万事屋の仕事に参加したそうな目で後ろから訴えてるユウキに冷たく銀時があしらっていると
キバオウの前に小さな小屋が現れた。
前にアルゴが隠れ拠点として使っていた様な、人気の無い場所にこじんまりと置かれた家だ。
そしてその家のドアの前に突っ立っているのは
「あら、あなた達も来てたのね」
「お前は……!」
腕を組んで家に背を預けて佇んでいたのはまさかの血盟騎士団のアスナであった。
自分達を見るや否やすぐに顔をしかめて嫌そうにすると、銀時を掻き分けてキリトがバッと彼女の前に躍り出る。
「待った、アンタがどうしてここに現れるんだ、まさかキバオウを使って俺達をここに誘導して闇討ちでも企んでるのか?」
「攘夷プレイヤーじゃあるまいしそんな卑怯な手を使う訳ないでしょ、私もここに呼ばれてきたのよ」
「いやアンタ前に似た様な事やってただろ……てかアンタも呼ばれたのか?」
「まあ私の場合はあくまで仕事として来てるんだけどね」
どうやら自分達だけでなくアスナも呼ばれた方だったらしい。
一体キバオウは誰に会せようとしているのか、キリトが不思議に思っていると当人はフンと鼻を鳴らす。
「生憎血盟騎士団の手先に成り下がる程落ちぶれとらんわ、ワイはあくまであの人の為にやったんや、お前等をここに連れて来て欲しいと頼まれての、一人例外がおるがの」
そう言ってクラインをチラリと目配せするキバオウ
一人だけお呼びではない状態だった彼だが、「いやー」と言いながらヘラヘラ笑って誤魔化す。
「だって俺だけおいてけぼりにされるのも寂しいだろ? なんか面白そうだからついて来ちまったけど、何もしねぇからさ」
「まあ一人ぐらい別にええか……そんじゃあ入れ」
そう言ってキバオウは小屋のドアをキィッと静かに開けた。
言われるがままに銀時はとりあえず誰がいるのか見てみるかと最初にドアを潜って入ってみると
薄暗い部屋の中に一人だけいる人物を見て銀時は即座に警戒する様に目を細める。
「おいおいおい、こりゃあ驚いた。まさかとんでもねぇお人からのお呼び出しを食らってたとはよ」
「そこに誰がいたんだ? ってお前は……!」
すぐ様彼に続いて中へと入って来たキリトは
家の中に一つだけポツンと置かれている椅子に座る人物を見て目を大きく見開く。
あの事件の後からずっと行方をくらましていた人物
現在、EDO内でお尋ね者呼ばわりされているあの……
「ディアベル!!」
思わず背中に差す剣の柄を握ろうとするキリトに対し、かつてベテランとして数々の初心者を救済し続けて来た頼もしい先輩肌のプレイヤー・ディアベルは力なく笑った。
「いきなりこんな所に呼びつけてすまない、実は君達にどうしても話しておきたい事があったんだ……」
「……今早弁明か? あれだけの真似をしておいて、あの事件をきっかけに心に傷を負ったプレイヤーが何人もいるんだぞ」
「弁明……確かにそうかもしれないな、だけどそう思われても俺は構わない、あの事件が生まれた理由は紛れもなく俺の責任なんだからな」
第一層でフロアボスが突然の凶暴化、更にはその攻撃に対してプレイヤー達が痛みを覚えるという未知の現象が発生。
自分もまたあの時は本気で死ぬのではと激しい恐怖を感じた事を今でもはっきりと覚えている。
その時にディアベルが行っていた不審な行動と突然行方をくらました事により、彼が何かしらこのゲームに細工を施したのだとキリトはずっと推理していたのだ。
しかしあの事件の黒幕であろうと予想していたそのディアベルは
今はすっかり憔悴しきった様子で椅子に座りながら力なく肩を落としている。
「ただこれだけはどうしても君達に教えておきたかったんだ、その後はいくらでも罵倒するなり斬り付けるなりしてくれ」」
「……わかった、一体俺達に何を伝えたいんだ」
「とても信じられないよう話だが、全て俺が身を持って体験した事実さ」
イケメンと呼ばれてファンクラブまで設立される程のカリスマを持っていたディアベルが今はもう見る影もなく項垂れている。
そんな彼に何も聞かずに斬り捨てるのは無粋だろうと思ったキリトはとにかく柄から手を離して話を聞く態勢を取ると
ディアベルはゆっくりと顔を彼等の方にあげた。
「あの日、いやその前から度々俺の身に起こっていた不可思議な現象を、ここで君達に話そう」
力ない表情だったディアベルの眼が一瞬だけ強く光った。
全ては真実を彼等に伝える為に