本作でのCV早見沙織とは仲良くやっていけるみたいです
ひょんな事で出会ったソウゴ、そして月夜の黒猫団と共に、神器の素材となる金木犀の樹の枝を探す事となった銀時。
辺り一面に積み重なった枝を一本一本調べて行きながら、当たりが出るまでひたすらそれを繰り返す。
そして30分後には
「飽きた」
同じ作業を繰り返し続けながら銀時が導き出した結論は
めんどいから諦める、だった
大広場の中心にそびえ立つ金木犀の樹に背を預けながら後頭部に両手を回し
銀時はまだ捜索中の黒猫団や、他の参加者達を退屈そうに眺めながら時間を潰す事にしてると
黒猫団の一人であるサチが様子見に彼の方へと歩み寄って来た。
「疲れちゃいました?」
「いんや諦めちゃいました。そもそも2年間誰も当たりを引いてねぇ時点でおかしいんだよ、コレきっと当たりとか入ってねぇよ絶対」
「まだ30分しか経ってないじゃないですか、確かこのクエストの達成を目指してるプレイヤーの中には仕事を辞めて一日15時間以上費やして作業を延々と繰り返してる人がいるらしいですよ」
「ただのアホじゃねぇか、その無駄な集中力を社会に活かそうと考えないのかねぇ」
俗に呼ばれている廃人プレイヤーという奴であろうか、よく見ればあちらこちらにより効率よく慣れた様子で、手早く枝を黙々と拾い続けてる者も結構いた。彼等がきっとそうなのであろう
あそこで和気藹々と作業を行っている黒猫団とはえらい違いだ。
「オメェも一緒に探さねぇのか?」
「私もちょっと休憩です、ここでしばらくみんなの事を見てます」
「そうかい、俺はこのまま仕事の時間までのんびり過ごす事にするわ、ここ結構居心地良いし」
大樹の周は木の枝で覆い尽くされているものの、銀時とサチのいる大樹の根元には座り心地抜群の柔らかい草葉が生えていた。
ちょっと横になればすぐに眠れそうな環境に、銀時は半目の状態で大きな欠伸をする。
「森の中は薄寒かったのにここは随分とあったけぇんだな、枝拾いをやる気はねぇが昼寝をしたい時にまたここに来るのも悪くねぇや」
「金木犀の樹は根から吸い上げた大地のエネルギーを栄養にしてここまで育ったって聞きました。きっとこの温もりもそのエネルギーの影響なのかもしれません」
「そんなのただのゲームの設定だろ」
自分達に日陰を作ってくれる大いなる大樹を見上げながら説明するサチに銀時はブスッとした顔で一言。
つまらなそうに呟く彼にサチは思わずフッと笑ってしまう。
「フフ、夢が無いですね銀時さん、言っておきますけどこの話を私に教えてくれた相手はランさんですよ?」
「情報源アイツかよ……そういやアイツ昔からそういうの好きだったな、空想の世界とか架空の物語とか。アイツが入院してた時はよくいろんな本を買いに行かされたもんだわ」
「へーそうだったんですか」
「おかげで行きつけの本屋の親父に俺がそういう本が好きな客だと思われたわ、俺が好きなのは今も昔も少年ジャンプだっての」
「ハハハ、本屋さんに顔覚えられるぐらいランさんの本を買ってたんですね」
しかめっ面を浮かべる銀時とは対照的にサチは可笑しそうに笑いながらふと尋ねてみた。
「あの、差支えなければで良いですけど、ランさんとのお話とか聞かせてもらっても良いですか? 実は私あの人に憧れていたんです、だからその、あの人がどんな人だったか恋人の銀時さんの視点でのお話が聞いてみたくて」
「いやいや憧れる相手はちゃんと選んだ方が良いって、アイツに憧れてたら将来ロクな大人になれないよ?」
隣に座りって意を決したかのようにお願いして来たサチに銀時は軽く手を横に振る。
「それに俺から聞かなくても前からアイツに直接聞いてたんだろ?」
「いえやっぱり銀時さんの話が聞いてみたいんです、恋人からしか見れない彼女の素顔とかあるじゃないですか」
「お前って見かけによらず結構グイグイ来るよなホント……」
体よく断ろうとするもサチは引かないどころか、逆に身を乗り上げてこちらに目を輝かせて顔を近付けて来た。
これには銀時も頬を引きつらせて苦笑してしまう。
「もしかしてそれもアイツの影響か? 駄目だよアイツの真似しちゃ、アイツも会ったばかりの頃からズケズケと他人のプライベートに土足で上がり込んで来る様な奴だったんだから」
「あー多分そうかもしれません……私はこのゲームやる前は人見知りであまり他人と上手く話せないタイプでしたから」
「良くも悪くもアイツは周りの人間を変えちまう性質だったからなー」
かつての自分がそうであったように、サチもまた彼女との出会いを機に内面の変化が生じたらしい。
そんな彼女を見てふとかつての恋人であったラン、藍子を思い出しながら銀時はフッと笑う。
「俺からアイツの話が聞きてぇなら、まずはオメェから見たアイツの話を教えてくれよ」
「私から見たランさんの話ですか?」
「考えてみりゃあ俺は現実でのアイツの事はずっと一緒だったが、こっちの世界でのアイツはなんも知らねぇんだよ」
ちょっと前に黒猫団のリーダーであるケイタの話を聞くからに、現実に比べて色々とやんちゃだったらしい彼女。
まだ色々と恥ずかしいエピソードがあるのかと危惧しつつも、ここでしか見せない彼女のもう一つの顔というのがどんなモンだったのか少し興味が湧いて来たのだ。
するとその話を聞きつけたかの様に、ザッザッと彼等の方へと歩み寄る音。
「俺も是非聞かせて欲しいねぇ、GGO型でありながら絶対無敵の刀使い・『絶刀』と称された女がどんな奴だったか」
「ソウゴさん!?」
静かに笑みを浮かべながら期待した様子でやって来たのはソウゴであった。
どうやら彼もこのクエストクリアを諦めたらしい。
「俺もそろそろ飽きてきた頃合いでね、しばらく必死こいて地べたはいずり回る連中を眺めてようと思ってたが、どうにも面白れぇ話が聞けそうだったのでこっち来やした」
「人の女の話なんか聞いて面白ぇのお前?」
「その旦那の女は旦那が思ってるよりもずっとスゲェ奴だったんですぜ。俺もいつかは斬り合いとは思ってたんですがねぇ……」
顎を指でさすりながらソウゴは惜しむような声で呟く。
「その剣の腕は滅茶苦茶で到底剣術とは呼べない代物だったらしいがデタラメに強かったと聞いてますぜ」
「はい確かにランさんはたまに変に遊ぶクセがありますがいざとなったら本当に強かったです」
「アイツがか? 全然想像つかねぇや……」
「確か銀時さんの剣の動きをずっと見てきたおかげで体得できたとか言ってましたね」
「俺の動き!? アイツもしかして俺の剣をずっと観察して! それをこっちの世界で実践してたってのかよ!」
「なるほどねぇ、絶刀の強さの秘訣は旦那の太刀筋か……」
確かに昔から何かとトラブルに見舞われていた銀時はその度に腰に差す得物を抜いて戦っていたが
よもやその動きをチェックして見様見真似でありながら完璧にコピーして
この世界で暴れ回っていたのかと聞いては驚きを隠せない。
ランの強さの根本に彼が絡んでいたと聞いて、ソウゴは納得したように頷く。
「こりゃあ今は亡き絶刀の意志を引き継いだ旦那に是非とも一戦申し込みてぇ所ですね、けど今の旦那じゃまだ満足出来ねぇ、こっちの世界にさっさと慣れて早く俺に斬られるに値する力を身に着けてくだせぇ」
「なんでお前に斬られる前提なんだよ、いつもユウキやキリト君には慣れろって言われてるけど、どうにも上手く体が動いてくれねぇんだよこの世界じゃ……」
「俺も最初はかなり苦労しましたが、その内わかってきまさぁこの世界での戦い方ってモンを」
「そんなモンなのかねぇ、ったくいっその事現実の体ごとこっちの世界に入れればな……」
「ゲームの世界よりも現実の世界の方が強いってなんだかおかしな話ですね……」
ソウゴと銀時の会話を聞いてサチは不思議そうに首を傾げた。
本来ゲームだからこそ現実では出来ないような真似をすることが可能なのであって
逆に現実での動きが凄すぎてゲームだとそれが仇となって慣れるのに時間がかかるというのは奇妙な話だ。
「不思議な人ですね銀時さんって、ランさんが惹かれたのもわかる気がします、あの人も不思議な人でしたから」
「確かにアイツは何処か浮世離れした所あったな、掴み所が無いっつうか何考えてるのかよくわからねぇっつうか」
「旦那そっくりじゃないですかぃ」
「俺はアイツよりはよっぽどマシだろうが、少なくとも俺は死ぬ瀬戸際で恋人の前で死ぬ死ぬ詐欺なんてやらねぇ」
サチに遠回しに、ソウゴに直球にランと自分が似ている事を指摘されて銀時はキッパリと否定して首を横に振る。
「アイツはアレだぞ、現実じゃ本当にマジでなにやるかわかったモンじゃねぇぞ。俺が偶然居合わせた巨乳のナースを数分ガン見してただけでいきなり目潰しして来るような奴だぞ」
「いやそれは普通にわかると思うんですけど……恋人が別の女性に現を抜かしてたらそりゃあ怒りますよ」
「え、怒ってたのアレ? 確かに薄ら笑みを浮かべながらも目だけは笑ってなかったけど」
「……怒ると同時に殺意も芽生えていたんでしょうねきっと」
現実での体験談を腕を組みながら思い出す銀時にサチが冷ややかなツッコミを入れつつ、ふと彼女もある事を思い出した。
「そういえばランさんってよく言ってましたね「私は唯一あの人の隣に寄り添える女だからあの人に近づく女は徹底的に排除する事にしてるの」って笑顔で言ってました」
「いやそれ「そういえば」で思い出す事じゃないよね! いきなりなにすんごい爆弾投下してんの!?」
油断してる所で急にサチからの思いもよらぬランの本心を聞いて銀時は口を開けて叫ぶ。
「「無論妹も例外に漏れず、むしろより警戒していつも観察してるんだから」って眩しい笑顔で言い放ってました」
「そういえば俺とユウキが話してる時に毎回どこからともなくアイツが出てきたような気が……」
「「私が死んじゃったのをいい事にもしあの人が他にいい人を作ろうとするモンなら……地獄の底から蘇って祟り殺す」って最後の言葉の部分は目に光が宿ってない状態でおっしゃってました」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 怖い怖い怖い!!」
なんでサチがそこまで詳細に覚えてるのかと気になる所だが、ランがずっと胸に秘めていた闇を聞かされてそれどころではなかった。
両耳に両手を当てながら銀時は怯えたように首を左右に振り続ける。
「アイツそんな俺を束縛したがってたの!? テメーが死んだ後は恋人には幸せになって欲しいと思うモンだろ!」
「それ私も同じ事言ったんですけど「生憎私はそこまで心は広くないから、私が死んだらあの人には一生嫁も取らずに私だけを想い続けながらこっちに来て欲しいと願ってるわ」って今までで一番の良い笑顔で」
「まさかそこまでドス黒い事考えてやがったとは……もし俺が新しい女作っちまう真似でもしたら俺を黄泉の国に引きずり降ろすつもりか……?」
「今こうやって私と銀時さんがお喋りしてるじゃないですか? もしランさんがあの世から見てたら……」
「違います藍子さんこれはただ話してるだけで! 私めにはこれっぽっちもやましい心は持っていません!! だから化けて出てこないでお願いだから!! 頼むからあの世でジッとしてて下さい!」
天に向かって必死の形相で祈るように叫ぶ銀時に、ハハハとサチは小さな笑い声を上げた。
「ホントおかしな人ですね、でもこれから恋愛沙汰は大変になるでしょうね、ユウキもこれじゃあ……」
「おーいサチ! 手伝ってくれ!」
「え?」
サチが何か言おうとしたその時、ちょっと離れた所で枝拾い作業を行っていた黒猫団の四人が彼女に向かって大きく手を振る。
「なんか底の方に大きな木の枝が突き刺さってるんだ! もしかしたら当たりかもしれない! ちょっと引っこ抜くの手伝ってくれ!」
「ホントに!? わかったすぐ行く!」
リーダーのケイタが嬉しそうに報告を伝えて来ると、銀時に一礼した後サチは急いで彼等の方へと駆け寄って行った。
残された銀時は彼等のそんな光景を眺めながらボリボリと頬を掻いてると、一緒にいたソウゴもスクッと立ち上がり
「旦那俺も行きまさぁ、アンタや絶刀の面白ぇ話聞けたから収穫は十分ですんで。あの娘っ子にも礼を言っておいてくだせぇ」
「お前は手伝いに行ってやんねぇのかよ」
「恐らくああして必死に引っこ抜いてる木の枝はハズレだと思いますぜ、この辺には地面に突き刺さるデカい枝なんざいくらでもあるんで」
彼等を指差しながらソウゴはあっけらかんと呟くと、「そんじゃ」と言い残してスタスタと歩いて行ってしまった。
一人取り残された銀時は金木犀の大樹に背を預けながら、フゥ~とため息を突いてガックリと項垂れる。
「まさか藍子がそこまで俺の事をねぇ……しかしこれから一生寂しく独り身で過ごすってのもなぁ……」
亡き恋人は自分が死んでもなお銀時には自分だけを想い続けて欲しいと胸に秘めていたと聞いて
どうしたモンかと胡坐を掻きながら頬杖を突いて悩んでいるポーズを取っていると
「ん?」
ふとすぐ隣に誰かがフラリと歩み寄ってきたような気配が
目の前には頑張って枝を引っこ抜こうとしてる黒猫団五人。そしてソウゴもまた帰り際に枝を適当に拾いながら歩いている。
彼等ではないとすれば誰が……銀時は膝に頬杖を突いたままゆっくりと隣の方へ振り返ると
「……」
そこにいた人物を見て銀時はちょっと驚いたかのように目を軽く見開いて見せた。
うららかな木漏れ日が生み出す幻であるかのように
全身を金色の光に彩られた少女
上半身と両腕を覆う華麗な鎧は眩いばかりの黄金造り
履いている長いスカートも純白の布地に金色の縫い取り
磨き上げた白皮のブーツまでもが降り注ぐ日差しを受けて無垢な光彩を振り撒いている。
背中に羽織る青いマントと、純金とも呼べるぐらい輝く腰近くまで伸びた金色の髪
その髪はまるで神々しい光の滝と表現できる程に美しかった。
そんな二つの碧眼を向けながらこちらを静かに見下ろす少女が
静かにこちらを見下ろしていたのだ。
この世界に来てから随分と様々な非現実的なモンを見て来た銀時だが
これ程までに現実から遠くかけ離れ、なおかつ綺麗な存在を見たのは初めてだと言った感じで、銀時はしばし呆然と口を開けたまま固まると
「……おたく誰?」
ふと我に返ったかのように彼女を見上げながら一つ尋ねてみた。しかし彼女は答えるそぶりも見せずただジッとこちらを見下ろすのみ
なんだコイツ、何考えてるのかさっぱりわかんねぇよ……と内心毒突きながら銀時はチラリとあるモノが視界に入った。
それは彼女が腰に差している得物だ。
外見はこれまたレア度の高そうな恰好をしている上に中身もこれまた誰もが美少女と言い切れるほどの逸材。
しかしそんな彼女の腰に差してるあるモノはとてもじゃないがお世辞にも似合わないモノであった。
それはみずぼらしい雰囲気を醸し出し、金色の鎧には全く不釣り合いな……
柄に『洞爺湖』と彫られた汚い木刀
「!」
銀時はその木刀を見て驚いた様子で目を大きく見開いた。
この木刀間違いない、どっからどう見ても銀時が現実世界で愛用していつも腰に差しているあの……
「おいお前! それを一体何処で……!」
どうして彼女がそれをこの仮想世界で所持しているのか、ずっと無言のままこちらを見下ろすだけの彼女に向かって銀時が問い詰めようと立ち上がろうとしたその時だ。
「ぶッ!」
突如銀時は大きく宙を飛んだ。
理由は至ってシンプル
立ち上がろうとした銀時に向かって、金髪の少女がなんの感情も無い表情で思いっきり右足で蹴り飛ばしたのだ。
いきなりどうして蹴られたのか訳も分からないまま、銀時は派手にぶっ飛ばされてしばらく宙を舞った後
「どっはぁ!!!」
大量の木の枝が積み重ねれた場所に背中から落下。
目の前に広がる大空を前にパチクリと瞬きすると、何が起こったのだと考える前に
「テメェいきなりなにしやがんだコラァァァァァァァ!!!」
いきなり蹴りを入れられたことに怒りを覚えて銀時は即座にその場から立ち上がりながら怒鳴った。
しかし
「……ってあり?」
先程まで彼女がいた大樹の傍を指差したのだが、指の先にはもう誰一人いなかった。
いきなり現れ、いきなり蹴って、いきなり消えた
何がどうなってやがんだと眉間にしわを寄せながら銀時は苦々しく舌打ちしていると
「……ん?」
ふと下半身の部分に違和感が
それもちょっと前にコレと全く同じ違和感を体験した記憶が……
銀時は恐る恐る右手を後ろに回してみると
「アァァァァァァァァァーッ!!」
彼女に蹴られた結果からのまさかの悲劇、銀時は積み重なった木の枝の上に吹っ飛ばされた衝撃で
「木の枝がケツに突き刺さったァァァァァァァァ!!!」
見事にずっぽりと尻に木の枝を突き刺してしまったのだ。
「抜いてぇぇぇぇぇぇぇ!!! 誰でもいいから抜いてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「はぁ~結局ハズレだった……って何してんですか銀時さん!?」
頑張って引き抜いた枝がハズレだった事にガッカリしていたケイタが、自分達と少し離れた所で何やら一人で騒いでる銀時を見てビックリ。
慌てて一同が駆け寄ってみると
信じられない光景が彼等の前に映った。
なんと銀時のケツに刺さっている剣ぐらいの長さの木の枝が
今まで見た事がない程眩しく金色に光り輝いているではないか
「ぎ、ぎ、銀時さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!! その枝! お尻に刺さってるその枝って!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉマジかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! アンタどんだけ幸運なんだよ!!」
「あの輝きの仕方は間違いない……! 2年間誰も達成できなかったクエストが経った今を持ってクリアされた……」
「ていうか当たりの枝を尻で引き抜くってのも地味に凄いな……」
「凄い! やりましたね銀時さん! 神器の素材ゲットですよ!!」
「いやそれはいいから早く抜いてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
銀時の尻で光り輝くその枝を見て一同は確信した。
これぞ2年間誰もが手に入れようと躍起になっていた幻のレアアイテム
神器の素材となる、『金木犀の枝』だ。
「おいおいどういうことでぃこりゃあ、アンタどんだけ俺に関心持たせれば気が済むんですかい」
帰路につく途中であったソウゴも彼等の歓声を耳にしてすぐ様ひょっこりと戻って来た。
そして銀時が悶絶しながら抜いてくれと叫んでいる中で、彼の尻にズッボリと奥まで刺さっている金色の枝を見てニヤリと笑みを浮かべた。
「まさかアッサリと当たりを引いちまうたぁ流石に驚きだ、ウチの小娘に報告したらさぞ悔しがるでしょうね」
「抜いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「でもソウゴさん、これはあくまで神器の素材ですから……本物の神器にするとなるとかなり鍛冶スキルの高い人に手伝っててもらわないと……」
「そういやそうだったな、旦那、まずは神器を造れる腕前を持つ鍛冶屋を探してみましょうや」
「早く抜いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
必死に叫ぶ銀時を華麗にスルーしてしゃがみ込みながらソウゴが話しかけていると。
「なあケイタ、NPCの鍛冶屋じゃ神器は造れないのか?」
「ああ、確かとびっきりの一流、鍛冶スキルをカンストしてるぐらいのプレイヤーじゃないと無理だって聞いた事がある、なにせ最強クラスの武器だからな、造るのも相当手間がかかる」
「抜いて!!!! 話してないでいいから抜いて!!!」
尻に刺さる金色の枝を左右にブンブン振りながらアピールするも、銀時の声はもう彼等の耳に届かない。
「基本的にプレイヤーは戦闘方面に特化するのが当たり前だからな、腕のいい鍛冶職人なんて探すとなると相当苦労するぞ」
「じゃあとりあえず私達で頑張って探してみようか、せっかく銀時さんが手に入れた神器の素材だし、ちゃんと武器にしてあげたいもの」
「まあ俺達は随分とランさんとユウキに助けてもらってたしな……恩返しのつもりでいっちょくまなく探してみるか」
「そうだな、ランさんには結局最後まで恩を返せなかった。なら俺達がランさんの代わりに銀時さんの神器入手を手伝ってやろうぜ!!」
「「「「「おおー!!!」」」」」
「いいから抜けつってんだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
仲良く拳を掲げ、勝手に盛り上がってる月夜の黒猫団に向かって
彼等の中心に立っている銀時は尻を光り輝かせながら怒鳴り上げるのであった。
かくして銀時はまさかの神器の素材を手に入れる事に成功する
自分の愛刀を持っていた金色の少女という謎を残して
とある密偵が記すEDOにおける設定と豆知識その5
みんな久しぶり、今回も俺が独自に調べ上げて情報をここらで紹介しておくよ。
え? 誰もそんなの望んでないし書かなくても良いって? おいおいそんな事言ってるのも今の内だぞ
今回紹介するのは、このEDOの世界でプレイヤーの誰もが欲しがるアレについてだ
『神器』
これほど高レアリティで強力な武器は他にあるだろうか……神の力を授かしり武器、それが神器
神器と呼んでも武器の形は皆バラバラで、剣や弓、槍などといったオーソドックスな形をしているモノばかりではなく
鞭や銃、魔法書などといった変わったモノや
はたまた武器という言葉では片付けられない程巨大な形をしたモノまで存在する。
そしてそれぞれ特有の個性を秘めており決して他の武器と被る事はない。
世界に一つだけしか存在しない伝説の武器、フ、冒険する者なら誰だってその言葉を聞いて欲しくなるのは当たり前さ
この神器と呼ばれる者には特徴的な共通点がいくつか存在する。
まず1つは圧倒的、桁違いな破壊力。でもぶっちゃけこの辺は普通の武器でもかなり頑張って鍛え上げれば同等、もしくはそれ以上の攻撃力にする事は出来る。
しかし神器の脅威はただ破壊力が凄いというだけではない。
2つ目はどのタイプでも装備することが出来る
SAO・ALO・GGO関係なく、神器はどんな形をしてようが全てのタイプが装備可能
つまりSAO型が銃の神器を装備したり
GGO型が魔法書の神器を装備する事も可能だ。
3つ目は根本的に違う武器の耐久システム
本来武器は使用し続けると次第に切れ味が落ちて行き、最終的に耐久値が0になると自壊してしまう。
そうなるのを防ぐ為に俺達は自分で研ぎ石を使って耐久値を回復させたり、冶屋に頼んで底上げしてもらったりする。
しかし神器にはそもそも耐久値というモノ自体が存在しない
いや、あるにはあるのだがそれは「天命」という名前で数えられて、普通の武器同様使う度にそれは減少していく。
だがこの天命、なんとアイテム欄に収めるだけで回復していくのだ。剣型の神器なら鞘に納めるだけで微量に回復していく。
俺達が普段ずっと気を使っている武器の耐久値も、神器であればしばらく使わないでいれば大丈夫、という事である。
……流石にズルくね?
4つ目はゲームバランスを崩壊しかねない持ち主だけが使用できる冷酷無比の超強力スキル。
一度使えば絶望的な不利な戦況でもあっという間に引っくり返せるスキルが神器には備わっている。
その名も『武装完全支配術』
神器に眠る記憶を目覚めさせて強化し、全開放して神器の真の力を発揮してやりたい放題、なんてことも出来てしまう。
しかし残念ながらこの辺の事は俺もよくわからない、聞いた所によると神器の力を発揮するのはプレイヤーのイメージが大事たとか前に団長から聞いた事あったけど……
イメージってなに? ひょっとして俺達が頭の中でこんな風にやりたい~なんて想像したらそれがこの世界で現実に出来るって事? 何それ怖いんですけど……いくらゲームの世界だからって人間の頭の中を覗く事なんて出来ないよね?
5つ目はズバリ! 物凄く! 果てしなく! 滅茶苦茶入手が困難な事!!
ここまで聞いたみんなは恐らく「うわ超便利じゃん神器、ちょっと探しに行ってみようぜ神器~」とか考える者も中にはいるであろう。
だが世の中そんなに甘くない、神器と言うのは最初に言った通り本当に、本当に! 本当に出ない!!
年に一回だけあるクエスト、毎日何度でも挑戦できるクエスト、情報屋に高い金出してやっとこさえ見つけられる秘蔵のクエスト、入手手段は様々あるのにほとんどの者がまずクリア達成まで行きつけない!
どれもこれも製作者がプレイヤーを虐める為に作ったとしか思えないぐらい難易度が高過ぎる……
今回特別にその中で神器を手に入れられるチャンスのあるクエストを一つだけ紹介しておこう
第五十五層には氷の洞窟で出来た特殊ダンジョンが年に一度だけ現れるというイベントがある……
入口は普通だが中身はかなり複雑な迷路となっており、更には即死トラップやボスクラスのモンスターがウジャウジャとそこら中に沸いて出てくる。
そしてやっとこさ最深部に辿り着いてみると、今度はその洞窟に潜むボスと呼ばれる白い竜の登場だ。
聞いた所によるとえげつない程強いらしい、戦ってる途中で「あ、完全に勝たす気ないなコイツ」と静かに悟るぐらい容赦ないらしい。
その竜を掻い潜って背後にあるこれまたとてつもなく耐久値の高いデカい氷の中に
神器『青薔薇の剣』が存在すると呼ばれているのだ。
青薔薇の剣とか……名前からして超カッコいいんですけどぉぉぉぉぉぉぉ!!!
うわ、こうやって書いてるとますます欲しくなってきた、だって神器だよ?
こんなの手に入れたらマジで俺最強だよ?
だって世界に一個しかない武器だもの
アスナちゃんも絶対自分の事の様に喜んでくれるよ
沖田隊長もやっと俺の事認めてくれるよ……
……いつか俺も攻略しに行ってみよ
神器入手編はこれにておしまいです
次回はいよいよあの男が主役に!?
EDOは派手な奴だけが輝ける訳ではない、その輝きの裏で地味で目立たない者もまた活躍しているのだ。しかし相手があの黒夜叉、おまけに何故かバーサク状態……
それではご感想を長くお待ちしております!