戦姫絶唱シンフォギア Tears to Tiara   作:リューイ

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 第一話です。 ここからクロスオーバーしていきます。

 


第1話 魔王の復活

 小日向未来は車に連れ込まれ誘拐されていた。

 

 車内で拘束された未来は睡眠薬を注射され眠りについてしまう。彼女が意識を取り戻したのは飛行機の中だった。

 

 睡眠薬が抜けきっていないのか朦朧とする意識を何とか繋ぎ止め未来は目を開く。彼女の前には機内にも関わらずサングラスをかけている顎鬚をはやした男がいた。

 

 その男は軍服の様な装いで高級そうな椅子に足を組み腰掛て自信に満ち溢れた表情で未来を見下ろしている。

 

 未来はいつもよりはるかに重く感じる体を何とか起こす。

 

 彼女が横たえられていたのはソファーの様で、そこでようやく彼女はここが普通の旅客機ではなくプライベートジェットの様なものだと分かった。

 

 「ここは何処なんですか?」

 

 「ここはバルベルデの大統領のプライベートジェットの中だよ。お嬢さん。」

 

 未来がサングラスの男に質問すると男は未来を馬鹿にしたように答える。

 

 「バルベルデの大統領が私に何の用なんですか? 私を如何するつもりなんですか?」

 

 未来は挫けそうな心を響の事を思い出し何とか奮い立たせてサングラスの男を睨みつける。

 

 「ハッハッハッ 大統領のプライベートジェットにのっているからと言って私は大統領ではないよ、短絡的思考なお嬢さんだ。」

 

 男は愉快そうに笑う。

 

 「だがあながち間違いとも言い切れない、なぜならばもうすぐそうなるからだ。 だがバルベルデの大統領などと言う矮小な存在にではないがね。」

 

 「そう、私は君を世界に破滅をもたらす魔王に生贄として捧げ、終わりゆく世界で人類最後の支配者となるのだ。」

 

 男は立ち上がり大仰な身振り手振りで未来に己の野望を聴かせる。

 

 未来はその男の芝居がかった動きから、男の自尊心を刺激してやり彼の妄想に合わせればもっと情報を聞き出せるし逃げる隙を見つけられるかもしれないと考えて、未来は響のもとへ帰りたいという強い思いで己を鼓舞し、男が望んでいるのであろうこれから生贄に捧げられる非劇のヒロインを演じてみせた。

 

 「どうして私を生贄に選んだんですか?」

 

 「いいだろう、バルベルデまでまだ時間はたっぷりとある。 教えてやろう。」

 

 男は自分の優秀さを語りたくて仕方がないのだろう、勿体ぶりながらも話し始める。

 

 「貴様は知らんだろうがレセプターチルドレンと言う特殊な遺伝子構造をもつ者たちがアメリカのFISと言う組織に集められていた。 理由は簡単だ、フィーネと呼ばれる異端技術をもつ者を復活させるためだ。FISが愚かなのはフィーネに騙され特殊な遺伝子構造をもつ者たちのすべてがフィーネの魂の受容体だと思ったことだ。実際は太古の魂を受容することができる器と言うだけだったのにな。」

 

 「そのことを始めからわかっていた私は魔王復活の生贄にふさわしい魂を持つ者をFISのレセプターチルドレンの中から探したが不運にも見つからなかった。だが私は諦めずフィーネ関連の資料からリディアン音楽院にたどり着き、生贄に相応しい古き魂の欠片をもった貴様を見つけたというわけだ。」

 

 未来は男のリディアンを調べたという趣旨の発言に気づき、それならばすぐにS.O.N.G.の人達が気づいてくれるはずだと思い至り、ならば自分がすべきなのは助けが来るまで時間を稼ぐことだと思い、どんな手を使っても一秒でも長く生きようと決意したのだった。

 

 

 

 

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 小日向未来誘拐の一報をイギリスで聞き、他のS.O.N.G.のメンバーに先んじてバルベルデ共和国に到着したシンフォギア奏者の風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イブ、そしてS.O.N.G.のエージェントにして現代を生きるNINJA、緒川慎二の三人の内の一人、翼が空港で他の奏者たちを待っていると発着ゲートからはやる気持ちを押さえられないのか響が真っ先にやってきた。

 

 「立花!!」

 

 翼が響の名を呼ぶと、響は翼の姿をすぐ見つけたのか駆け寄ってくる。

 

 「翼さん!! 未来が!!」

 

 「話は聞いている。 マリアと緒川さんが今、小日向が連れていかれそうな場所を調べている。」

 

 翼が響に状況を伝えているとクリスを始め、日本にいた奏者たちと弦十郎と彼の部下のエージェント数名が合流した。

 

 「このバカ!! 一人で先走るんじゃねぇよ。」

 

 「ごっごめん。 クリスちゃん。」

 

 クリスに叱られた響は素直に謝りみんなが集まるまで落ち着きなく待っていた。

 

 日本からきた全員が飛行機から降り集まってしばらくするとマリアと緒川も戻ってきた。

 

 「みなさんお待たせしました。 ですがその代わりに小日向さんの連れていかれた場所の目星をつけてきましたよ。」

 

 緒川の報告に響だけでなく他の装者たちも沸き立つ。

 

 そんな中、緒川の報告に沸く皆にマリアは「話は移動しながらにしましょう。移動の足は確保して来たわよ。」と車のキーを見せながら移動を促す。

 

 マリアの指示に従い、装者たちと弦十郎はマリアの運転する車に、他のエージェントたちは緒川の運転する車へと2台の車に分乗する。。

 

 移動を始めると早速、響がマリアに未来の居場所を聞いてくる。

 

 「それでマリアさん、未来は何処に連れていかれたんですか?」

 

 「落ち着きなさい。未来さんは此処から80㎞ぐらい離れた村の近くにある古代のカタコンベの遺跡に連れていかれたという情報が現地の諜報員から入ったわ。 どうやら軍の一部の部隊の独断の様なのだけど、そいつらが困ったことにどうやらアルカノイズを兵器として利用しているらしいわ。」

 

 マリアが告げた魔法少女事変の時に自分たちを苦しめたアルカノイズが兵器利用されていると言う事に皆驚く。

 

 「だから急ぎましょう。」

 

 マリアは説明を終えるとアクセルを踏み込み速度を上げる。

 

 「あの子にはフロンティア事変の時の償いも収監されていたときの差し入れのお礼もまだ何も出来ていないのだから。」

 

 最後にマリアはそう呟き未来の無事を祈りひたすら目的地に向かい車を走らせた。

 

 

 

 

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 弦十郎はカタコンベの近くまで来ると皆に作戦を伝達した。その作戦とは翼、クリスがカタコンベに攻め入り相手に隙を作らせ、その間に未来を緒川と響が救出するという作戦でほかの者はカタコンベの外で待機し、5人の脱出を支援するという内容だった。

 

 「ここまで来て助けにいけないなんて」

 

 「LiNKERがもっとあればデス。」

 

 ここまで来て直接助けにいけない切歌と調が悔しそうにしているとマリアが自らも悔しいのを押さえて2人を「直接助けにいけなくてもできることはあるわ」と励まして共に未来救出に向かう4人を見送る。

 

 マリアたちに見送られ出発した4人はすぐに響と緒川、翼とクリスに別れて響たちは静かに、翼たちは派手にカタコンベに侵入する。

 

 カタコンベの入口には警備替わりなのかアルカノイズが多数配置されていた。

 

 それを翼とマリアは聖詠を奏でそれぞれ天羽々斬とイチイバルのシンフォギアを纏う。

 

 「それじゃあ、ド派手なパーティーといきますか!!」

 

 クリスは翼にそう言うとその多彩なアームドデバイスの中からシンフォギアの腰部アーマーからミサイルポッドを展開し、それらを一斉に発射するMEGA DETH PARTYをぶちかます。

 

 「やりすぎて遺跡を崩すんじゃないぞ。雪音」

 

 「んっなこたぁ、わぁってるよ。 先輩!!」

 

 クリスのミサイル攻撃のあと翼はクリスに建物を破壊しないよう注意するとギアから流れる伴奏に合わせ歌を唄いながら彼女のアームドギアである刀を構えアルカノイズに切り込んでいき、クリスも切り込んでいく翼に合わせて援護する。

 

 翼の歌が戦場に轟くなか、翼とクリスは息の合った動きで次々にアルカノイズを消滅させてゆく。

 

 その騒ぎを聞きつけたのか武装した兵士が出てくるがシンフォギア装者の前にはひとたまりもなく無力化される。

 

 目につく限りのアルカノイズと兵士を倒した翼とクリスはカタコンベに入っていった。

 

 「おくれるなよ 雪音!!」

 

 「ったりめぇだぜ、先輩!! あたしはパーティーには遅れたこたぁねぇ女だ!!」

 

 クリスのその言葉に翼は呼び方がまだ先輩であることに気づきクリスに「翼と呼んでくれていいんだぞ。」と言った。

 

 「なっなに藪から棒に頓狂なことを言ってやがる。」

 

 「私はもう学校は卒業しているし先輩ではなく翼と呼んでいいんだぞ、と言っている。」

 

 クリスは翼の突然のなまえをよんで発言になぜ今そんな話をするのか意味が分からず、困惑する。

 

 「今はそんな話してる場合じゃねぇだろが!!」

 

 「確かにそうだな。この話は小日向を取り戻してから彼女も交えて話し合おう。」

 

 「なんでそこであの子が出てくんだよ。」

 

 「雪音はなんのかんのと言いつつ小日向には弱いからな。」

 

 翼がそう言ってクリスに微笑む。

 

 翼の微笑みにクリスは少し肩が軽くなった気がした。そのことでようやくクリスは少し気負いすぎて力が入っていたことに気づき、そして同時に翼がそんなクリスに少し力を抜かせようと道化を演じてくれたことに気づく。

 

 クリスはその翼の気遣いに心があったかくなった。

 

 「つっ翼なんてぜってぇ呼んでやらねぇんだからな、先輩!!」

 

 クリスは赤くなった顔を見られないように走る速度をあげた。

 

 「今はそれで満足しておこう。」

 

 速度を上げたクリスに続き翼も遺跡を進んでいった。 

 

 未来を救うために。

 

 

 

 

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 翼とクリスが陽動をかけている時、未来をさらったものたちは遺跡の最奥、大広間で彼女に足かせをつけて逃げられないようにしてから復活の大釜を囲み魔王復活の儀式を行っていた。それ以外にも荘厳な棺とそれを見ているサングラスの男と彼を守っている兵士もいた。

 

 「外が騒がしいようだが魔王が復活すれば全てが終わる。儀式を続けろ。」

 

 未来に魔王復活のたくらみを語っていたサングラスの男が大釜を囲んでいるローブの男たちに儀式を急かしている。

 

 その様子を物陰から2人の人物が慎重に覗いていた。

 

 その2人とは響と緒川であった。

 

 2人はなんと翼とクリスが派手に陽動を仕掛けているわずかな隙に遺跡の最奥部までたどり着いていたのである。

 

 「緒川さん、未来を助けに行きましょう。」

 

 「待ってください、響さん。 未来さんと敵の位置が近すぎます。それにここから出れば遮る物の何もないこの場所ではすぐ見つかってしまいます。」

 

 すぐにでも未来を助けに飛び出していきそうな響を緒川が何とか制止しているとサングラスの男が未来に近寄り腰のホルスターから拳銃を抜き未来に突き付けた。

 

「出てこい!! 外の騒ぎが陽動であることぐらい分かり切っていることだ!! 出てこないならこの娘を撃つ。」

 

 未来は銃を突きつけられて思わず心が萎れ、すくんでしまった。以前ノイズに襲われた時や高層タワーから落下しかけた時、共に命の危険があったのに未来は今ほどすくんで動けなくなったことはない。

 

 それは銃と言う無機質な殺傷道具の向こう側、それを使う人間の異常性が感じられるからなのかもしれない。

 

 未来は恐怖のあまり目をつむり祈る様に己の手を握っている。

 

 その姿を目にした響は緒川が止める間もなく出て行ってしまった。

 

「未来!!」

 

 響の声を聴いた未来は先ほどまでの恐怖が嘘のように消え、思わず捕らわれているのも銃を突きつけられているのも忘れ、響の所へ行こうとする。

 

「響!」

 

「おっと逃がすわけにはいかんな。」

 

 サングラスの男は逃げようとする未来の髪を掴み地面に引き倒す。

 

「小娘一人でここまで来たわけではないだろう。残りの奴は何処だ!!」

 

 サングラスの男が未来に銃を向けながらそう言うと思わず響は一瞬、緒川の方を向いてしまう。

 

「そこか。 早く出てこい。」

 

 緒川もいることを見破られては出て行かないわけにはいかず、姿を現した。

 

「装者の娘はギアをその場に置いてこちらへ来い。」

 未来が人質に取られている状態では従うしかなく響はギアを地面に置くとゆっくりサングラスの男の方へと向かった。

 

 男は響が十分に自分の方へ近づくと己の懐から小さなクリスタルの様なものを取り出して響とギアの間へと投げる。

 

 そのクリスタルの様なものは地面にぶつかると割れて中から赤く発光する小さい球体が出てきて地面へと吸い込まれる。すると地面に発行する幾何学模様が現れ、その中からアルカノイズが生成された。

 

 その所為でギアを纏わぬ響や未来では逃げることが難しくなり、また緒川も迂闊に動けなくなった。

 

 響が未来のもとに着くと二人は抱き合い互いに怪我がないことを喜んだが状況は好転したのではなくむしろ悪化してしまっており二人はサングラスの男を睨むことぐらいしかできなかった。

 

 丁度そのころ儀式が完了し、魔王の復活と言うには似合わぬ美しい光が遺跡にあふれた。

 

 

 

 

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 深淵の中、まどろみながら繰り返し、繰り返し、考えていた。

 

 どれほどの時が流れたのかも定かでないぐらい。

 

 そしてそれは、考えることに疲れ果て、深い眠りが意識をのみ込むまで続けられるのが常だった。

 

 だが……今回は少し違っていた。

 

 深い眠りが、ゆっくりと意識を奪っていく前に、アロウンは、懐かしい顔ぶれが目の前で笑いかけているのに気づいた。

 

「お前たちを忘れたことなどないが夢の中とはいえこうして顔を合わせるのはいつぶりだろうか。」

 

 アロウンはまどろみの中懐かしい者達を思い出し感慨にふける。夢の中の彼らは何も言わないがアロウンは目覚めが近いことを感じる。

 

 アロウンは夢の中懐かしさに浸り、まるで楽園にいるような心地でいる中、不躾な欲望にまみれた下卑た言葉の塊で目覚めさせられた。

 

「時はきた!! 魔王よ!! この世に終焉をもたらす、血と灰と屍の王国をすべる王よ!! 今、目覚めて世界に破壊と殺戮をもたらすのだ!!」

 

 アロウンはその以前にも聞いたようなセリフに辟易していたがそんなことはおくびにも出さず悠然と棺を出た。

 

 その姿は在りし日のまま変わらず、新月の夜を表しているかのような漆黒の衣に灰色の髪、そして何より目を引くのはその瞳の色と同じ深紅の襟飾りだ、そのような姿のアロウンが腰にまるで血を固めて作ったかのような赤い剣をおびて出てきたのだからその場の者達は一様にひどく驚いている様だった。

 

 そんな様子の皆をアロウンは一通り見回す

 

 するとそこにはこれまた以前にもあったような光景、愚物と生贄の娘、そして生贄の娘を助けようとしている青年という光景があった。。

 

「常名の者よ、地を這う虫けらよ…… いと高き玉座にあった私を何故起こした? 古き闇を褥とし、温かな炎の夢を見ながら今しばらくはまどろんでおられたものを……」

 

 あまりに定型的な光景にアロウンは状況を一瞬とかからず理解し、愚物……サングラスの男が良く踊るように男が好みそうな言葉を投げかけてやる。

 

「おおぉ 魔王よ。 私が貴様を目覚めさせたのだ。 古の盟約に従い私は生贄を用意した、古代王国の者の魂を受け継いでいるであろう器だ。さぁ魔王!! 終焉の世界の支配者の座を私にもたらしてくれ。」

 

 男はまるで舞台役者の様に大げさな振る舞いで未来をアロウンに捧げようとする。

 

 アロウンはその言葉を聞きゆっくりと響と未来、サングラスの男の傍まで歩く。

 

 足かせをつけた未来はもとより未来を置いて行くなど考えもしい響はその場で未来をしっかり抱き寄せ動けずにいた。

 

 だが彼女たちの瞳には諦めの感情はなく、逆に絶対にあきらめない意思のようなものを感じさせた。

 

 アロウンはそれが心底愉快なのか少し口角をあげ微笑している。

 

 アロウンが未来たちに手を伸ばさずとも触れられるほどの距離に来るとサングラスの男はいよいよクライマックスだとばかりに叫ぶ。

 

「さぁ魔王よ!! 生贄を存分に引き裂き喰らうがよい。」

 

 その声に反応するかのようにアロウンは腕を振り上げる。

 

 それを見て響は先ほどより強く未来を庇い覆いかぶさるように彼女を抱きしめて目をつぶった。

 

 振り下ろされた手が空を切る音が聞こえ肉を引き裂く嫌な音が響く。

 

 だが一向に訪れぬ痛みに響は未来に何かあったのではと目を開くが自分と同じく未来にも怪我は無い。

 

 不思議に思い響はアロウンの方を見ると彼の腕は自分たちの方でなくサングラスの男の方に向かっていた。その彼の腕はまるで鋭利な刃物の様に男の胸に深々と突き刺さっていた。

 

「……なっ何故!?」

 

「さてな、手が滑ったか……」

 

「だが大魔王の復活を彩るにはお前のような愚か者の血の方が相応しかろう。」

 

 そう言うとアロウンは男の体から手お引き抜く。

 

「そんな理由でこの私を……」

 

 男は胸からとめどなく血を流し倒れて動かなくなった。

 

「悲劇にはもう飽きたのだよ……本当にな。」

 

 すでに息絶えた男に向かいアロウンは少し憐れむ様につぶやいた。

 

 男が死に大団円に向かうかに思われたが統率者が失われたアルカノイズが無秩序に暴れ始め、まず初めに儀式をしていたローブを着た者達が塵へと変えられる。

 

 やがてローブの者達を殺しつくしたアルカノイズの一体がアロウンたちの方へやってくる。

 

 それを見たアロウンは腰に佩いた赤い剣、己の愛剣エドラムを抜く。

 

 その刀身まで赤い剣、エドラムをアロウン が振りあげると今度こそ自分たちの番なのかと響と未来は身をすくませる。しかしアロウンのエドラムが切り裂いたのは未来の足かせにつながる鎖だった。

 

「俺の後ろに隠れていろ。」

 

 アロウンは響と未来に隠れるように言うと目と鼻の先まで迫っていたアルカノイズをエドラムで一刀のもと切り伏せる。

 

 切り伏せられたアルカノイズは塵となり崩れ去ってしまったがそれを見た響、未来、緒川の三人は大いに驚いた。

 

 何故ならば響たちの中ではノイズはシンフォギアでしかたおすことができないというのが共通の認識だったからである。

 

 アロウンが一体アルカノイズを倒したからかアロウンたちと緒川に気づいたアルカノイズたちは二方向に別れて進攻する。

 

 アロウンが迎え撃とうとエドラムを構えると、その時あまたの小型ミサイルとガトリング砲の砲弾が少女の声と共に飛んできた。

 

「どうやら、ラストダンスには間に合ったみたいだな。 一切合切あたしが相手にしてやるぜっ!!」

 

 イチイバルのシンフォギア装者、雪音クリスとアメノハバキリのシンフォギア装者、風鳴翼は皆が驚く中2人は大広間の入口で臨戦態勢到着していた。

 





読んでいただきありがとうございました。


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