High School Fleet ~封鎖された学園都市で~ 作:Dr.JD
作者であります。
久しぶりの投稿ですね(笑
UA1000突破となりました!
読んで頂いた皆様、ありがとうございます!
そして登録して頂いた皆様もありがとうございます!
さて、今回から2日目となります。
2日目早々で申し訳ないのですが、正直に言って宇宙エレベーター内の構想については完全に私の解釈が入っております。
工学関連で詳しい方からツッコミを入れられましても、対処できない可能性が非常に大きいです。
どうかご了承下さいませ。
それではどうぞ。
[2日目]
2012年、7月19日、8;00;00
高校1年生 陽炎型航洋艦五番艦「晴風」 艦長
岬 明乃(みさき あけの)
茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 港町
岬 明乃
「わぁぁ!?」
部屋の一室に一人の叫び声が炸裂する。
ベッドから飛び起きたら、私の長い一日が始まる。
なんだか嫌な夢を見ていたような気がするけど、気のせいだよね?
額には汗がびっしょり掻いていて、ベッドに垂れている。
岬 明乃
「はぁ、はぁ、はぁ。な、なんだったんだろ?すごく怖い夢………でも、思い出せないって事は、別に大した内容じゃないよね?」
一息ついていると、立ち上がって着替え始める。
目覚ましも止めて思いっきり背伸びをすると、昨日の夜を思い出す。
部屋へ戻った私は、この町について色々調べた。
昨日蘭ちゃんが教えてくれた博物館やモール、公園などの配置。
他にも外部との交通網や、最近発生した事件なども調べた。
そしてこの町と同盟を結んだ”学園都市”についても、簡単にだけど調べた。
………でもこの場で説明するのは長くなるから、省略します。
すみません、やっぱり一言だけ言わせてっ。
あんなのありですか?
なんなのさ、超能力者開発って………。
まぁこれ以上言ったら切りがないので、この辺にさせて頂きます。
夜遅くまで調べ物をしていたせいで、少しだけ眠かったけど、楽しみで眠気が吹っ飛んでしまった。
今日は昨日知り合った子と、一緒にある場所へと見物する。
とても楽しみで仕方なかった。
さっさと着替えて、身支度を済ませる。
通路の途中で数人の生徒に挨拶すると、食堂に向かう。
青木 百々
「あっ、艦長。おはようございます!」
等松 美海
「おはようございます」
松永 理都子
「おはよ~ございま~す。お早いですねぇ」
岬 明乃
「おはようみんな。みんなは今日はどうするか決めたの?」
青木 百々
「私は昨日の足で拾った情報を元に、今度のコミケの作品作りをするっす!いやぁ、昨日からインスピレーションが沸きまくって、今用紙を買いに来てたんすよ」
松永 理都子
「その付き添いです~」
等松 美海
「んで、私は売店の担当をしてました。艦長はどうしますか?出掛ける前にスポーツドリンクは如何です?」
岬 明乃
「うーん、いや、いいかな。今から食堂に行ってくるから」
等松 美海
「ありゃ、そりゃ残念。またのご利用お待ちしておりまーす」
こんなやり取りをして、食堂へ入る。
テーブルで待っていると、料理が運ばれてきた。
杵崎 ほまれ
「?艦長、すごく機嫌良さそうだね。何かあるの?」
岬 明乃
「うん。今日もちょっと外へ出掛けるからね」
杵崎 あかね
「いいなぁ、私は今日もお留守番だよぉ~」
杵崎 ほまれ
「なに言ってるの。その分明日は外出できるでしょ」
杵崎 あかね
「それでもだよ!ねぇ艦長、お土産なんか買ってきて!」
岬 明乃
「えっ?あ、うん。いいよ。なにが良いの?食材?飾り?」
杵崎 あかね
「食材は明日私達が買いに行くから、艦長はなにか記念に買ってきて!」
杵崎 ほまれ
「ちょっと、それじゃあ艦長が困るでしょ。ねぇ艦長、あまりこの子の言うことを真に受けなくて良いからね?」
岬 明乃
「あはは………でも分かったよ、2人が気に入りそうなモノを買ってくるね!ごちそう様!」
両手を合わせて食器類を流しに入れる。
食堂を出て、通路を飛び出し、いざ外の世界へ!
ワクワクする衝動を抑えきれず、思わず飛び出してしまった。
宗谷 ましろ
「あっ、艦長。待ちましたよ、支度にどれだけ時間が掛かってるんですか?」
万里小路 楓
「まぁまぁ。時間もまだありますし、慌てずに参りましょう」
晴風から降りた場所に、シロちゃんと万里小路さんが待っていた。
実は昨日の報告会の後、今日一緒に出掛ける約束をしていた私は、待ち合わせ時間と場所を決めていた。
場所は晴風船体の前なのは良かったんだけど、時間がちょっと遅れてしまったみたいだ。
時計の針は30分を回ったところだった。
岬 明乃
「ごめんね!ちょっとワクワクしちゃってて」
宗谷 ましろ
「はぁ、行きますよ。待ち合わせにはまだ時間があるとは言え、遅れたらまずい。急ぎましょう」
岬 明乃
「うん!」
ウキウキ気分は最高潮に達していた。
その証拠に、どうやって廃工場から出て、今こうして公道に出ているのか思い出せない。
宗谷 ましろ
「ところで艦長。チケットは持っていますか?あれがないと入れないんですよね?」
岬 明乃
「ちゃんとあるよ。もう、そんなに心配しなくてもちゃんと入れるからさ」
宗谷 ましろ
「なっ、ち、違いますよ!そ、そうですっ、私は異世界の未知の技術がこの身で体感できるかどうかの心配をしてたんですよ!そこは勘違いしないように!」
万里小路 楓
「ふふふ、なんだかワクワクしてしまいますね。どのような物語が私達を待ち受けているのでしょうか」
慌ただしく否定するシロちゃんと、優雅な姿勢で空を見上げる万里小路さんのマイペースさに、思わずクスリと笑ってしまう。
ちょっと気掛かりでもあったんだ。
無理矢理誘うようにしちゃったから、嫌じゃないかって不安だった。
でもあながち満更でもなかったようだから、今日も良い思い出が出来そうだった。
宗谷 ましろ
「それで艦長」
岬 明乃
「もう、外に出ているときくらいは名前で呼んでよ。蘭ちゃん達に怪しまれちゃうよ?艦長なんて呼んだら」
宗谷 ましろ
「………岬さん。待ち合わせ場所は、中央ターミナルの大きな時計の前で合っていますか?」
相変わらず名字で呼んでいるのが気になるけど、まぁいいっか。
そのうち名前で呼んでくれるように待ってるよ。
岬 明乃
「うん。そこで9時の待ち合わせで、その待ち合わせ場所が今日のツアー開始地点なんだって」
宗谷 ましろ
「………それにしても、まさか私達が異世界へやって来たなんて、あまり実感沸かないですね」
万里小路 楓
「ですが、これも何かの力が動いているように感じられます。岬さんはこれをどうお考えでしょうか?」
岬 明乃
「うーん、正直に言ってまだ結論が出せないね。映画や小説とかなら聞いたことあるんだけど、主人公達って大体は元の世界へ帰れずに、その世界に平穏に暮らすパターンがほとんどなんだよねぇ」
宗谷 ましろ
「ちょ、艦長!不吉なこと言わないで下さい!もしそうなったらどうするんですか!!」
岬 明乃
「ごめんごめん!不安になるようなこと言って。ただ、これはフィクションに過ぎないから、そこまで深刻に受け止めないで」
宗谷 ましろ
「全くもう」
………ああは言ったけど、実のところ私にも不安があった。
私は、元の世界へ帰れる活路を見出せるのか。
本当に元の世界へ戻れるのか。
私自身、この異世界へ来たのは何かしらの理由があると考えている。
ただの偶然でも考えられる。
だけど今は、答えなんて出せなかった。
――――そんなこんなで、私達は集合場所へ到着していた。
ここへは初めて来る場所だった。
大勢の人々が行き交い、めまぐるしい速度で、まるで荒波のように動き回っていた。
外部を繋ぐ唯一の鉄道網、それがここ、中央ターミナルであった。
正規ルートであるこの鉄道を使わない限り、外部の人間はこの町へは入って来れない。
町の周囲には巨大な壁によって阻まれており、簡単には進入できない。
これは不法入国やテロリストを簡単に中へ入らせないための措置だそうだ。
昨日ざっくり調べたところ、ここは鉄道だけでなく空港や地下鉄も兼ねている大型公共施設だった。
昨日寄ったモールほどではないが、ちょっとしたデパートやホテルなども完備されている。
万里小路 楓
「わぁ、随分と大きい建物でございますね。人もたくさん………」
宗谷 ましろ
「それにしても、すごい施設の規模と充実性が高いですね。うちの海上都市と同じくらいの規模だ」
岬 明乃
「こっちの世界だと日本の土地は水没してないから、海上都市の技術がそのまま地上で使われてるんだね」
宗谷 ましろ
「地震大国日本に、こんな巨大な構造物ばかり建てて、耐震強度は問題ないんでしょうか?やはりそこは気になりますね」
岬 明乃
「うーん、やっぱり自然現象には逆らえないね。どう向き合うかが問題だけど………」
などと話している内に、後ろから声が掛かってきた。
昨日の内にたくさん聞いた、私の好きな声。
磯崎 蘭
「なになに?何の話をしていたの?」
可愛らしい女の子の声。
振り返ってみると、白いワンピースを着た蘭ちゃんがちょうど歩いてくるところだった。
岬 明乃
「ふふ、蘭ちゃんが可愛いって話をしてたんだよ。ね?シロちゃん?」
宗谷 ましろ
「えっ?そうだったんですか?でも確かに可愛いな………」
磯崎 蘭
「ありがとうございます!そっか、可愛いか。えへへ」
??????
「蘭、あんまり調子に乗ったらダメよ?蘭より可愛いこの名波翠(なはみどり)は如何ですか?」
万里小路 楓
「まぁ、お二方とも、とても可愛らしいですわ。まるでおとぎ話から出てきたかのよう」
??????
「良かったな、2人とも」
宗谷 ましろ
「2人ともとても可愛らしいよ。服装もよく似合ってるし。それで艦長、彼女が?」
岬 明乃
「そうだよ。昨日私達を案内してくれた、磯崎蘭ちゃん!」
磯崎 蘭
「初めましてっ、磯崎蘭です!昨日はお世話になりました!それでこっちが」
磯崎 凛
「兄の磯崎凛(いそざきりん)です。話しは蘭から聞いているよ、昨日蘭が世話になったようだね。ありがとう」
後ろに控えていた大柄な男性、磯崎凜さんが前へ出てきた。
凜さん………うちの知床鈴ちゃんと同じ名前だなぁ。
でも男の人だし、言ったら怒られそうだ。
それにしても、すごく強そうである。
アロハシャツの上から筋力がものすごく目立っていて、相当鍛えられている。
おっと、そうだ、呑気に観察してる場合じゃなかった。
岬 明乃
「こちらこそ楽しませて頂きました!ところで、蘭ちゃんの後ろに居るのって」
??????
「あっ、すみません。綾瀬留衣(あやせるい)と言います。蘭の」
名波 翠
「彼氏です」
岬 明乃
「へぇ、彼氏さんね………ん?」
磯崎 蘭
「ちょっ、翠!!」
あまり聞き慣れない単語で思わずスルーするところだったけど、彼氏?
最近の女の子は男の子と付き合うのが早いね。
羨ましいなぁ、誰かと付き合っているのって。
………私も将来、男の子と付き合って、幸せな家庭を築きたいなぁ、えへへへ。
名波 翠
「そう思いますよね?」
磯崎 蘭
「ちょ、ミケちゃん違うからね!留衣とは、その、まだ恋人になったわけじゃ………」
万里小路 楓
「ですが、とてもお似合いです。町中で見かけたら、大半の方々が羨望の眼差しを向けられるかと」
綾瀬 留衣
「っ………」
磯崎 蘭
「え、えへへ。お似合いですか、そうですか………」
万里小路さんに微笑まれると、蘭ちゃんと留衣君は顔を赤くして互いに明後日の方を向く。
うん、なんだか若くて良いなぁ。
私も充分に若いけど。
万里小路 楓
「申し遅れました。私は岬さんと同じクラスメイトの万里小路楓と申します。以後お見知りおきを」
宗谷 ましろ
「副長の宗谷ましろだ、よろしく」
磯崎 凛
「ん?副長?船舶階級の?」
宗谷 ましろ
「えっ、あ、いや!」
ちょ、シロちゃん!
役職はなしだって言ったじゃない!
やばい、シロちゃんがかなーり慌てだした。
昨日充分に慌てたからか、私はさほど慌てたりはせずに、一呼吸置く。
岬 明乃
「クラスの副委員長の宗谷ましろさんです。今は多くの初対面の人を見て、慌てて副委員長を副長って呼んじゃったんです。ね?シロちゃん」
宗谷 ましろ
「そ、そうなんです!いやはやお恥ずかしい、あはは………」
磯崎 凛
「ああ、そういう事ね」
磯崎 蘭
「もう、お兄ちゃんったら」
一同があははははと笑って、どうにか誤魔化せることに成功し、ホッとした。
磯崎 凛
「もうそろそろ移動するか?列に並ばないと、後で込むからなぁ」
名波 翠
「さすが凜さん!お供しますわ!」
ものすごくウキウキになっている翠ちゃんは、凜さんの隣に付いていった。
私達もそれに続いて集合場所へと向かう。
お淑やかなのか、テンションが高いのか分からない子だった。
磯崎 蘭
「ミケちゃんもそう思うよね?普通の人だったら、翠が猫被ってるだなんて、思わないよ」
綾瀬 留衣
「蘭、それは言い過ぎだよ」
岬 明乃
「あ、あははは………ところでさ、私は2人の馴れ初めを聞きたいな」
磯崎 蘭
「うえぇ!?ちょっ、馴れ初めって!」
万里小路 楓
「まぁ、私も興味がありますわ!是非お聞かせ下さいませ!」
磯崎 蘭
「え、えと、その………留衣~」
綾瀬 留衣
「僕も話すのは、恥ずかしいね………」
宗谷 ましろ
「こら2人とも、磯崎さんが困ってるじゃないか。磯崎さん、無理して話さなくても良いからね?」
岬 明乃
「えー、シロちゃんは恋愛とかに興味ないの~?」
宗谷 ましろ
「まぁないと言えば嘘になりますけど、無理してまで聞きたいことでは」
??????
「本日の宇宙エレベーター見学のお客様は、こちらに一列で並んで下さい!」
話しに夢中になっていた私達の頭上から、女性の大きな声が聞こえた。
周囲には私達と同じ、見学会に参加する人々でごった返していた。
大した時間は経っていないのに、もう目的の場所へ着いたのかと感じながら、合わせて並んでいく。
そして一列に並び終えて、ようやく先頭が見えてきた。
先程の呼びかけは、どうやらあのツアーガイドさんが発したらしい。
ツアーガイド
「ご協力ありがとうございます!私は本日、皆様の案内を担当させて頂きます、ツアーガイドでございます!よろしくお願い致します!」
蘭&明乃
「「よろしくお願いしまーす!!」」
周りの子供達もテンションが高いのか、呼応するように元気よく挨拶する。
でもそれは小学生の子供だけで、私達のような中高生の参加者でこんなことするのは私達だけのようだ。
周囲からは少々辱めな目で見られてしまい、萎縮してしまう。
磯崎 蘭
「うぅ、恥ずかしいよぅ」
岬 明乃
「わ、私も………」
子供みたいなテンションではしゃいでしまった………。
見事に私と蘭ちゃんの顔は真っ赤に染まってしまった。
傍に居る万里小路さんは口元を押さえて苦笑しており、シロちゃんに至っては額を押さえて呆れかえっている。
凜さんや留衣君、翠ちゃんもそれぞれ視線を外していて、どう声を掛けようか迷っているようだった。
お願い、あまり哀れみの目を向けないでっ。
ツアーガイド
「はい!元気な返事ですね!これから皆様には、宇宙エレベーターへご案内致します。これからアースポートへ向かうために、海底トンネルを使用します。このトンネル内にある列車をご利用頂きます」
ツアーガイドさんの背後にある巨大な扉が、開いていく。
左右スライド方式の扉は、奥へと続く通路に繋がっていた。
ツアーガイド
「それではご移動をお願いします!なお、左右には動く歩道がありますので、そちらをご利用頂いても結構です」
天井のライトが照射されて、窓もいつの間にかシャッターが開いていて、随分と明るくなった。
幅はかなりの広さを持っていて、普通に自動車やトレーラーも通れるのではないか?
天井もそれなりの高さがあり、巨大なクリスマスツリーも展示できるのではないかと思うくらいだ。
磯崎 蘭
「っ、と、とにかくミケちゃん!行こ!」
岬 明乃
「う、うん!ごめんみんな、先に行ってるね!」
磯崎 凛
「あんまり遠くには行くなよー」
とうとう吹っ切れたのか、蘭ちゃんが先へ駆けて行った。
私も後に続く。
………さて、今はどう過ごそうかな。
移動用列車に到着するにはまだ時間が掛かりそうだ。
私は周囲の様子を見ながら歩き始める。
蘭ちゃんと留衣君はツアーガイドさんから渡されたマップを見ながら、左右をキョロキョロしている。
凜さんと万里小路さん、翠の組み合わせで談笑しているようだった。
シロちゃんは、動く歩道に乗りながら、外の景色を楽しんでいた。
みんなそれぞれが楽しそうにしているのを遠目で見て、ホッコリする。
磯崎 蘭
「もうミケちゃん、なに一人で黄昏れてるのさ!せっかく来たんだから、一緒に見学を楽しもうよ!」
と、ボーッと観察している私に、蘭ちゃんは駆け寄ってくれた。
私の手を取り、引っ張ってくれる。
岬 明乃
「うわっとと!」
躓きそうになるも、踏ん張って前へ踊り出る。
そして――――アースポートへ向かう列車があるステーションへ到着した。
真っ白な車体の色をしていて、編成数は10両くらいかな?
列車と言っても、モノレールだった。
上から伸びているレールの下に、ちょうど車体があるようなタイプのようだ。
ツアーガイド
「さて皆様!こちらにあるモノレールを使ってこれからアースポートへ向かいます!では皆様、ご搭乗をお願い致します!」
プシューッと扉がスライドすると、私達は中へ乗り込んだ。
ふむ、中は普通の電車と変わらないんだね。
車両の両サイドに座席があって、天井付近には吊革があって。
こう言う箇所はこっちの世界と同じなんだね。
磯崎 蘭
「そうだよねー、私もこの車両には未来のれっしゃーってのを想像してたんだけど、意外と普通だったよね」
綾瀬 留衣
「どんなのを想像してたのさ………」
岬 明乃
「私も私もー。もっとこう、どかーんってなって、ひえぇぇぇぇ!!って言うの想像してた!」
宗谷 ましろ
「意味が分からないですよ………」
それぞれの相方に突っ込まれると、なんだか笑えてきた。
プシューッと鳴ると、扉が閉められた。
そして徐々に速度を出していって、車両は出発した。
しばらくはトンネルに入るようで、外を見ても真っ暗だった。
磯崎 蘭
「へぇ、ほとんど揺れないで発車してるねぇ。普通の列車ならもっと揺れるよね?」
岬 明乃
「そうそう、ガタンゴトンって鳴らないし。静かだね」
ツアーガイド
「皆様、もう間もなく地上へ出られます。そこから出た絶景がとても美しいので、カメラの用意をしましょう!」
この一報を聞いた乗客達は、すぐさま窓際により、カメラやスマフォを出してセットし始めた。
おお、ここでは写真撮影はオッケーなんだ。
岬 明乃
「蘭ちゃん!折角だからみんなで撮ろう!シロちゃん、万里小路さん、来て来て!」
磯崎 蘭
「うん!ねぇねぇ、留衣達も早く早く!!」
宗谷 ましろ
「はぁ、いきますか」
名波 翠
「たまにはこう言うのも良いですね」
万里小路 楓
「まぁ!皆様で写真撮影ですか。私、初めてです!」
磯崎 凛
「はは、ならみんなのところへ行こう」
磯崎 蘭
「ガイドさーん!写真を撮って貰えませんかー?」
ツアーガイド
「はーい、今行きまーす!」
ちょうど窓をバックに出来る場所が空いていたので、そこで陣を構えることにした。
ツアーガイドさんがトテトテやって来る。
磯崎 蘭
「写真撮影をお願いします!」
ツアーガイド
「分かりました!あっ、もうそろそろトンネルから抜けて絶景が見れますよ!ほら!」
ツアーガイドさんの方を見てみると同時に、列車がトンネルから抜けた。
今気付いたんけど、この列車は天窓があってそこから真上を見上げられるのだ。
――――そこで見た景色は、一生の中でも忘れることはないだろう。
天窓から見る景色。
列車と併走するように飛び回るカモメ。
快晴がどこまでも続く高く青い空。
7色のレインボーカラーが映し出される虹。
そして、空より天高く伸びる宇宙エレベーター。
これらが皆、一つの景色として表現されている。
徐々に近付いていく宇宙エレベーターの壮大さを、改めて実感する瞬間であった。
パパラッチ
「うおぉ!すげぇ、やっぱ間近で見ると全然迫力が違うぜ!」
軍人っぽい乗客
「なに言ってんだよこのパパラッチ!こいつは冗談抜きですげぇぞ!」
チョビ髭
「素晴らしい!これぞまさしく愛の参☆観」
側近?
「ちょっと自重してくれませんかね………」
他の乗客の人達もこの絶景に感動しているようだった。
よし、なら!
岬 明乃
「これをバックに撮って下さい!」
ツアーガイド
「はいっ、お任せ下さい!それでは撮りますよ!3,2,1………はい!」
パシャリッ
みんなが並んでピースを決めて、ばっちり笑顔も見せる。
うん、完璧!
磯崎 蘭
「ありがとうございました!」
ツアーガイド
「はい、どうぞ!あっ!まもなくアースポートへ到着します。下車の際は、お忘れ物の無いようにお願い申し上げます」
なんと、もう到着したのか。
列車に乗ってからまだ20分も経っていないのに。
と思っていたけど、時計を見たら25分が経過していた。
ありゃ、楽しい時間はあっという間に過ぎるね。
プシュー
扉がスライドして、次々と乗客達が下車していく。
この情景は港のラッシュとかで見れるね。
ツアーガイド
「皆様、お忘れ物はありませんね?それではこれから、宇宙ステーションに向けて出発しますが、クライマーと呼ばれる上昇機を使ってステーションへ向かいます」
――――降車した私達を待っていたのは、こりゃまた広いスペースであった。
目の前には3機の扉の閉まったポッドがある。
だけど普通のサイズではなくて、何て言うのかな、長方形の円筒がそのままポッドになったと言えば良いのか。
宗谷 ましろ
「かなり大きいですね。マンションがそのままクライマーになっているような………」
そう、シロちゃんの言葉通り、そびえ立つマンションである。
小窓が縦に規則的に並んでいて、だけど扉は1箇所しかなくて。
ツアーガイド
「注意するべき点をこれから述べます。でもまぁ、これは実際にクライマーに乗ってからでも問題ありません。では早速搭乗願います!」
ありゃ、最初に言うものじゃないの?
ちょっと拍子抜けしていると、蘭ちゃんが肩をポンッと置く。
磯崎 蘭
「ふふ、いよいよだね!いよいよ宇宙に行けるんだね!」
岬 明乃
「うん!なんだかテンションが上がってきた!」
………正直に言うと、怖くもあった。
初めて行く宇宙には、人が住めない環境下にある世界へ行くのだ。
この後に何が起るかなんて、想像できないからだ。
でも同時に好奇心をくすぐられる自分も居るわけで。
そんな複雑な感情を抱きながら、みんなの元へ向かっていった。
言い訳タイム!
宇宙エレベーターのアース側(地球側)の念写が難しい………でもよく考えたら、宇宙ステーション側も描く必要もあるわけで………
結論:想像で書くしかない(白目
あと、話しのストックがなくなりましたので、次話をアップするのは時間が掛かりそうです。ご了承下さいませ。
ああ、あと別の作品も投稿しましたので、そちらもどうぞ。
時間軸としては、このハイフリのキャラ達の邂逅する1週間前の話です。
主人公はなんとあの方………見てのお楽しみで!
ではまたの機会に!