High School Fleet ~封鎖された学園都市で~ 作:Dr.JD
Dr.JDです。
今更ですが………お気に入り登録して下さった方々、ありがとうございます!
正直に言うと、これが初投稿になるので、つまらない作品にならないかどうか不安でありました(汗
これからも精進していきます!
そんな中の謝罪となって申し訳ありませんが、、そう言えば中嶋悟子さんを”さとちゃん”と呼んでいましたが、そうなると勝田さんと被ってしまいますね(汗
そこは脳内変換で”さとちゃん” → ”ナカジマさん”として下さい(白目
それでは、どうぞ。
[観光名所-ロッドデパート]
2012年、7月18日、15;09;34
高校1年生 陽炎型航洋艦五番艦「晴風」 艦長
岬 明乃(みさき あけの)
茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 中央区 巨大モール街”ロッドデパート”3階
人生初の飛行機初体験を経て、私達は今、巨大なモールへやって来ていた。
パンフレットによると、地下5階、地上13階建ての超巨大モールと書いてある。
新しい内装がされていて、大勢の客で賑わっていた。
その大勢の中には、私達も含まれていた。
前を歩いているももちゃんもしゅうちゃんは、かなりテンションが上がっていた。
青木 百々
「くぅ~!!やっぱりさっきの試乗体験、感動したっすねぇ!」
山下 秀子
「うんうん!あー、実際に飛んで見たかったな!」
かなりウキウキになっている。
かく言う私も、実は結構ハイテンションの熱に晒されたままだ。
硬い座席に座ったときの感触。
操縦桿を握った時の重み。
そして――――ヘルメットをして、ゴーグルを付けて。
機体の目の前に、巨大なスクリーンが設置されていたので、映像に写して実際に飛んでいるように体験できるそうだ。
飛んでいる際に、操縦桿を横に倒すと、その方向に機体も連動して傾いた。
うん、やっぱりあの感覚は忘れられそうにない。
込み上げてくる感覚を抑え、今はこのデパートに来ている。
ナカジマさんに一通り操縦方法を教えて貰ったお礼の品を、買いたいからだ。
岬 明乃
「ねぇ蘭ちゃん。ナカジマさんには何が良いかな?」
磯崎 蘭
「そうだねー、自動車部に所属してるって言ってたから………工具とか?」
岬 明乃
「さ、さすがに持ってるんじゃないかな-?自動車部、自動車部………タイヤとか?」
磯崎 蘭
「イヤイヤおかしいよ。お礼にタイヤって………」
岬 明乃
「あんまり嬉しくないね。うーん、悩むなぁ………ん?」
不意に、足が止まった。
視線の先には店内にあるテレビだった。
そこまで大きくない画面に、私は釘付けになっていた。
画面の端には、『山星学園テロリスト占拠事件』として、報道されていた。
テロリスト?
学校に今、テロリストに占拠されているってこと?
あまりにも現実離れした空気に、声が流れた。
アナウンサー
『それでは現場からの中継です』
レポーター
『はい!こちら現場です!ご覧下さいっ、山星学園には大勢の警官と自衛官が行き来しています!この校舎の中に未だに全校生徒560名の生徒が人質に取られています!』
そこには、校舎と思われる建物をバックに映し出される映像。
大勢の警官と、じえいかん?と呼ばれる人達が右往左往と動き回っていた。
緑色の隊服を着た人達を初めて見た。
だけど先程の単語が耳から離れなかった。
警官と自衛官。
560人の生徒が人質。
何が起ってるの?
レポーター
『テロが発生したのは本日午前9時頃。通報を受けた警官2名が校舎へ入ろうとした途端、テロリストが発砲。一時的に銃撃戦になりました。午前10時に本庁及び神奈川県警、陸上自衛隊による対テロ本部が設立されました。
きゃぁ!?』
アナウンサー
『ど、どうしました!?』
レポーター
『て、テロリストが銃で発砲してきました!幸いにも怪我人は出ておりませんが、現場はまさに内戦に等しい状態となっております!あっ、本事件の責任者である小田切俊郎がテントから出てきました!すみませんっ、ちょっと良いですか!?』
??????
『ん?なんだね君は。おい!レポーターを入れるなと言っただろう!』
警察官
『はっ!申し訳ありません!ささ、ここは危ないので避難して下さい』
レポーター
『お願いです!話を少し聞かせて貰えませんか!?』
??????
『ここは危険だ!早く避難しないか!!』
レポーター
『あっ、ちょっと!!』
レポーターとカメラマンの人は、警察官にその場から追い払われてしまった。
どうしよう、この事件が気になって目が離せない!
磯崎 蘭
「こ、怖いね。立てこもり事件だなんて」
岬 明乃
「蘭ちゃん、うん、そうだね………」
同じくテレビを見ていた蘭ちゃんも、眉間にしわを寄せている。
このご時世に、立てこもり事件なんて耳にしたことがない。
もしかして、この世界って結構犯罪率高めなのだろうか?
だとしたら、みんなには外へ出歩くときは注意するように言わなくちゃ。
青木 百々
「艦長!ナカジマさんにはこれなんてどうっすか?」
店内の奥から出てきたももちゃんが、可愛らしい車の絵が描かれているハンカチを持ってきた。
見ていたテレビが、まさかももちゃん達が居る店の前にあるとは。
岬 明乃
「へぇ、可愛らしいね。あー、どうせならどんな車が好きかって聞けば良かったね」
青木 百々
「そうっすねー、あっ、飛行機の柄のもあるんすよ!どっちがいいっすかねぇ?」
磯崎 蘭
「でしたら両方買って、送ってみるのも良いんじゃないですか?一つはお礼として、もう一つはこの町で出会った記念にって」
岬 明乃
「!!うんっ、それいい!ももちゃん、それ貸して!」
青木 百々
「はいっす」
ももちゃんからハンカチを受け取ると、急いでレジへ向かった。
もう、蘭ちゃんったらすごく良い考え出してくれて嬉しい!
ウキウキしながらレジに持って行く。
ラッキー!今は人が並んでない!
岬 明乃
「すみません、この2つ下さい!」
レジカウンター
「お預かりします………全部で1200円となります。こちらのレシートとくじ引き券を受け取り下さい」
岬 明乃
「くじ引き?」
カウンター
「はい。1000円以上の買い物をされたお客様全員に、このくじ引きを差し上げることになっているのです。なお、抽選は1階のエントランスで行われます」
岬 明乃
「へー、そうなんですか。ありがとうございます!」
カウンター
「またのご利用をお待ちしております」
私は渡されたくじ引きを見つめる。
ほうほう、本日限定のくじか………運試しに後で引いてみよう。
会計をさっさと済ませて戻ってくる。
蘭ちゃんとももちゃんが、隣の衣服店を見ながら談笑していた。
あれ、そう言えば………。
岬 明乃
「あれ、しゅうちゃんは?さっきまで居たよね?」
青木 百々
「さっきトイレに行ってたっすよ。でも遅いっすね、トイレはすぐ傍なのに」
私は嫌な予感がした。
さっきのテロリスト籠城事件が発生した矢先、この世界の犯罪率が高いのを分かっていたから。
焦る気持ちを抑えて、ももちゃんがトイレのある方を見てみると、すぐに気宇である事を知る。
しゅうちゃんはトイレの前で、一人の女性と話をしていた。
高身長で、ロングヘアの黒髪女性だった。
遠目に見ている私でさえ、すごくキレイな人だなと感じた。
磯崎 蘭
「山下さん!」
蘭ちゃんが大きな声で叫ぶと、しゅうちゃんと女性がこちらへ向いた。
近くで見てみると、先程の感想はより如実なモノへと変わっていった。
彼女が居るだけで、周囲が華やかに見える。
色艶が良くて、絹糸のように柔らかな黒髪が靡く。
ボリュームのあるまつげ、大きな瞳、高く通った鼻、桃色の薄い唇。
どこをとっても美しいパーツばかりを集めたような人だった。
でもただ集めただけでなく、これまた緻密なバランスで配置されていて、どこか日本人離れした美しい容姿を形成していた。
山下 秀子
「あっ、蘭ちゃん。それにみんなも」
岬 明乃
「しゅうちゃん、どうしたの?何か困りごと?」
??????
「あの、こちらの方達は?」
キレイな両目が私達を見つめていた。
や、やばい、こう言う時ってなんて言う?
山下 秀子
「こちらはクラスメイトの岬さんと、青木さん。そして、この町で知り合った」
磯崎 蘭
「磯崎蘭です。あなたは?」
??????
「これは申し遅れました。私は大河内葵(おおこうちあおい)と申します。この町には仲間と一緒に観光で来ています。よろしく」
ニッコリと微笑んだ女性、大河内さんはそのままの表情で手を差し出してきた。
慌てて手を出して握り返すと、すごく柔らかい感触が伝わってきた。
青木 百々
「うへぇ、すっごい美人さんっすね!あっ、口に出しちゃった………」
大河内 葵
「うふふ、ありがとう」
岬 明乃
「ところで、2人は何をしてたんですか?何か困りごとでも?」
大河内 葵
「ええ、実はこのモールに来ていた友達とはぐれてしまったの。この辺をウロウロしていた私に、山下さんが声を掛けてくれたの」
山下 秀子
「うん。困ってるみたいだったし、ほっとけなかったし」
磯崎 蘭
「あの、携帯電話を使って友達に連絡するのは?」
大河内 葵
「ごめんなさい、携帯電話は別荘に置き忘れてしまったの。だから連絡は取れないわ」
岬 明乃
「………」
どうしよう。
困ってる人を放置するなんて、心苦しい。
これ以上、この世界の人達と接触するのは危険だよ。
でも、蘭ちゃんとはもう友達だって思ってるし、なにより………私達はブルーマーメイドを目指してる!
なのに、困ってる人を放っておくなんて、そんなのはっ。
岬 明乃
「大河内さん。よければ、私達がそのお友達を探すのを手伝いますよ」
大河内 葵
「えっ、それは助かるけど、いいの?あなた達だって、観光に来たんでしょう?」
岬 明乃
「ですけど困ってる人を放っておいて、呑気に観光なんて出来ません。ねね、いいでしょ?」
青木 百々
「そういう事ならいいっすよ。これも人助けっす!」
山下 秀子
「うん!大河内さん、その人達が映ってる写真ってありますか?」
大河内 葵
「ええ、これよ」
取り出したスマートフォンには、5人の男女が映っていた。
校舎をバックに写しているのだろう、みんなが同じ制服を着ていて、女子生徒3人、男子生徒2人が映っている。
元気そうな女子3人組と、眼鏡を掛けたぽっちゃりした人と、気だるげな男子生徒が。
磯崎 蘭
「あの、でしたら迷子センターに寄ってみては?」
大河内 葵
「いえ、さすがにこの年齢になって迷子センターに駆け寄るのは、ね?」
岬 明乃
「あはは………でしたら探しましょうか。念のために私達の携帯の番号を教えますので、見つけたら互いに連絡するで、いいかな?」
4人
「「「「おーー!!」」」」
………こうして、私達は大河内さんの友達を探す事となった。
目的のお礼と記念品を買えたから、特に問題もなかった。
さて、この広いモールの中を、どうやって探したモノか。
磯崎 蘭
「大河内さん、どこまで友達とご一緒だったか覚えてますか?」
おっ、捜査の基本である、本人の行動の確認。
大河内 葵
「そうね、私達は今夜バーベキューにするつもりだったから、食材を買いに来たの。でも先に上の階から見たいって岩佐さんが言って」
岬 明乃
「岩佐さん?」
大河内 葵
「ああ、ごめんなさい。親友の一人で、岩佐美帆(いわさみほ)さん。私と同じ学校の子よ。写真で言うと、茶髪のボブカットの子ね」
写真に写っているこの一人を指した。
会ったことが無いからハッキリ言えないけど、雰囲気だとリンちゃんに似ているね。
どこかポヤポヤした空気がする。
磯崎 蘭
「なるほど………はぐれる前に見た最後のお店ってどこか分かりますか?」
大河内 葵
「この階の和服店よ。ほら、もうすぐ花火大会が開催されるでしょう?だから浴衣をレンタルできそうなお店を探していたの。確か、こっちよ」
大河内さんの案内で、その最後に見かけた和服店へと向かう。
そのお店の前までやって来た私達は、展示してある浴衣を見て、興奮した。
山下 秀子
「わぁ、キレイ!特にこの朝顔の浴衣!」
大河内 葵
「そうでしょう?本当はこれを借りようかと考えていたのだけれど、彼らとはぐれてしまったから、借りるのは後回しにしようかと」
磯崎 蘭
「でもこの浴衣、大河内さんにすごく似合うと思います!今のうちに予約しても良いんじゃないですか?みなさんには後で事情を説明していれば大丈夫だと思いますし」
大河内 葵
「ふふふ、ありがとう。でもやっぱり、私だけが先に予約を入れてしまうのは気が引けてしまうわ。今でもみんなが私を探しているかもしれないのに」
大河内さん、キレイだけじゃなくて優しいんだなぁ。
まさに理想的な女性だね。
こんな美人さんと付き合える男の子は、ラッキーだね。
磯崎 蘭
「あはは………それで、最後にあったのは何分前ですか?時間が経ってなければ、そう遠くには行ってないと思いますけど」
大河内 葵
「30分くらい前かしら。かなり時間が経っているから、もう居ないかもね」
岬 明乃
「それなら、ここから手分けして探そうか。その方が早いだろうし」
………さて、チーム分けはどうしようか。
私を含めると、全員で5人。
分けるなら3人と2人のチームに別れる。
でも、さっさと決めた方が早く見つかるから………。
岬 明乃
「それなら私と大河内さんのチームと、蘭ちゃんしゅうちゃんももちゃんのチームでどうかな?」
これならバランスが良い。
それに………大河内さんに聞きたいことがあるし。
山下 秀子
「意義なーし」
磯崎 蘭
「問題ありません」
青木 百々
「いいっすよー」
大河内 葵
「それじゃあよろしくね。岬さん」
岬 明乃
「それじゃあ見つかり次第、連絡し合おうね」
一旦、友達を探すために別れた私と大河内さんは、同じフロアを探しているところだった。
このフロアは衣服店を集めた階となっていて、洋服やら和服やら、しまいには一昔前の服まで用意されていた。
探しながら店内を見て回ると、大河内さんから声を掛けてきた。
大河内 葵
「あなた達、随分と仲が良いのね」
岬 明乃
「えっ?」
大河内 葵
「さっきの子達よ。みんなあなたを信頼してるって顔に書いてあったから、私達と似ているなって思ったの」
岬 明乃
「あ、ああ、あの子達は私の大事な家族ですから」
大河内 葵
「家族………家族、ね。そう言えば貴方達は修学旅行でこの町に観光へ来てるのかしら?」
岬 明乃
「え?観光?」
大河内 葵
「だって、わざわざこんな暑い中、制服で来てるって事は、修学旅行で今は自由行動中ってところかしら?」
岬 明乃
「あ、いや、えと………」
やばい。
そう言えば異世界へ来てから、気が動転していて、服装について一切考えてなかった!
だけどうまく答えられない。
それにとっさの質問だったから、すぐに返せなかった。
岬 明乃
「そうなんですよ!今は他の子達とは自由行動中でしてっ」
かなり焦った口調になってしまった事を後悔するが、もう言い切っては仕方ない。
それに………寂しいけど、これくらいの嘘を言っても、気に留めもしないだろう。
だって私達は異世界から来た人間。
元の世界へ帰ってしまったら、もう二度と、会う事なんてないだろうから。
大河内 葵
「そうなの………ん?」
岬 明乃
「?大河内さん、どうしました?」
背後を振り返った彼女が、黙り込む。
私も釣られて後ろを見る。
多くのお客さんで賑わっていたり、忙しそうに定員さんや警備員さんが動き回っているしか見えなかった。
どこもおかしい箇所はなかった。
でも彼女は、両目を一点に集中して見つめていた。
大河内 葵
「………岬さん、走るわよ」
岬 明乃
「えっ?」
そう告げた途端、大河内さんは私の手を引いて走り出した。
突然の出来事に対処が遅れそうになり、何度か転びそうになるが、何とか追いつこうとする。
たくさんの人が居たから、何度もぶつかりそうになるけど、ギリギリ交わしていく。
み、見た目に似合わず運動神経もいいんだねっ。
岬 明乃
「ちょっ、ちょっと大河内さん!?どうしたんですか!?」
大河内 葵
「いいから付いてきて!」
岬 明乃
「うわぁ!?」
訳も分からず、私は大河内さんに言われるがままだった。
別のフロアを行ったり来たり、通路の角を曲がったり………。
どれくらい走ったのか分からなくなった頃、ようやく大河内さんの足が止まった。
大河内 葵
「はぁ、はぁ、はぁ………ふぅ。ようやく撒いたわね」
岬 明乃
「はぁ、はぁ、えっ?撒いたって?」
階段の踊り場までやって来て、ようやく一息付けた。
あまり使われていないからか、ここには誰も居ないようだ。
それよりも………。
岬 明乃
「ようやく撒いたって、どう言うことですか?あっ、まさかストーカー!?」
そうだ、すっかり失念していたけど、大河内さんは控えめに言っても、超絶美人さんだ。
それなら当然、付きまとわれる男の数なんて………!
大河内 葵
「ち、違うわ!ストーカーとかじゃないのっ、あれは、なんというか………」
岬 明乃
「?」
ストーカーでないことに安心はしたけど、どこか煮え切らないようだった。
どうしたんだろう?
??????
「あっ、大河内さん!やっと見つけた!」
頭上から大河内さんを呼ぶ声がした。
上の階へと続く踊り場に、ボブカットの女子が立っていた。
走るように降りてくると、大河内さんも彼女を出迎えた。
大河内 葵
「あら、岩佐さん。よかった、ようやく合流できて」
岬 明乃
「岩佐さん?ああ、この人が?」
大河内 葵
「そうよ」
岩佐 美帆
「あれ、なんで私の名前を?」
大河内 葵
「私がみんなとはぐれてしまった事を話したら、この子が一緒に探すって言ってくれたの。だから、その時の流れで」
岩佐 美帆
「ああ、そうだったんだ。ありがとうございました!大河内さんを助けてくれて!」
岬 明乃
「いえ、でもよかったです!すぐに再開できて!」
さっきのストーカーさんの事、聞きそびれちゃったけど、これで一安心かな?
でもちょっと、さっきの事で聞きたいことがあったから、口を開こうとしたけど。
大河内 葵
「そうだわ、みんなに合流できた事を電話してくれるかしら?岬さん」
岬 明乃
「あっ、はいっ、そうですね。向こうもきっとまだ探してると思いますし」
スマフォを取り出して、ももちゃんのスマフォに連絡を入れる。
仲間と無事に合流できたことを伝えると、見つかって良かったと安堵の声を漏らしていた。
もう合流できたのなら、このまま別の場所で探している仲間と合流するとも伝えた。
岩佐 美帆
「さ、大河内さん。戻ろうか?横須賀君も待ってるし」
大河内 葵
「そそ、そうね」
岬 明乃
「横須賀君?」
岩佐 美帆
「一緒に合宿に来た男の子だよ………ね?大河内さん?」
大河内 葵
「ええそうよ」
岩佐さんが、なぜか大河内さんをジト目で睨んでいる。
対する大河内さんはどこ吹く風で、明後日の方向に口笛を吹いている。
………女の勘が言っている。
これ以上言及してはいけないと。
岬 明乃
「あははは………なら、早くその人の元へ戻ってあげて下さい。きっと寂しがってると思うから」
大河内 葵
「そうね。彼はああ見えて、結構寂しがり屋なところがあるから」
岩佐 美帆
「………それじゃあね」
岬 明乃
「はい、お気を付けて」
2人の背中を見送ると、私は一息ついた。
なんだか嵐が過ぎ去ったみたい。
居ていて楽しかったけど。
岬 明乃
「あっ、そうだ。あの2人に聞きたいことがあったんだけど………まぁ、いいっか」
聞きたいこととは、そう。
この世界における一般的なルール。
例えテレビやニュース、ネットで大事件が発生していたら、すぐに得られるような情報ではなく。
所謂、一般常識だ。
今日の町で見かけたロボット。
宇宙まで一本で行ける宇宙エレベーター。
そして、私達がこの世界へやって来てすぐに遭遇した、飛行物体。
私達は、この世界へやって来てあまりにもこの常識を知らなさすぎた。
知らない情報があるのとないのとでは、この先の出来事に対処できないかもしれない。
いざという時に、決断が出来ないかもしれない。
何も出来ないうちに、全てが終わってしまうかもしれない。
そんな不安が、私に纏わり付いてくる。
岬 明乃
「………うまくやらなきゃ、私」
1人になった私は、誰も居ない踊り場で、そう呟いた。
ふぅ、ようやく書けた………。
やっと最新話を上げられました!感想や問題があったら、ご指摘下さいませ!