High School Fleet ~封鎖された学園都市で~ 作:Dr.JD
Dr.JDです。
早速ですが、2話目をどうぞ。
[異世界にて]
????年、??月??日、??:??:??
高校1年生 陽炎型航洋艦五番艦「晴風」 艦長
岬 明乃(みさき あけの)
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結局私達は話し合った結果、私を含めた6人でこの町で行動することになった。
保健委員の鏑木美波さん(通称、みなみさん)。
応急委員の青木百々さん(通称、モモちゃん)。
左舷航海官制員の山下秀子さん(通称、しゅうちゃん)。
水測員の万里小路楓さん(通称、まりこうじさん)。
砲術員の小笠原光さん(通称、ヒカリちゃん)。
この6名となった。
他のメンバーは、トラブルに見舞われた時のために待機してもらうことで、決定した。
晴風は、このボロボロのドッグで留まることになった。
トタン屋根は剥げ、柱も錆び付いていて、とても係留するにはお世辞にも好ましいとは思えない。
だけどそうも言ってられない。
右も左も分からないこの世界で、ここが恐らく拠点となるだろう。
その時のために、この土地の人達には申し訳ないけど、少しばかり借りるかもしれない。
だけどその心配も杞憂に終わりそうだった。
このドッグを出る時に、黄色いテープがいくつも貼られており、これを見たことがあったからだ。
鏑木 美波
「keep out………立ち入り禁止とあるな。ここで事件でも起きたのか?」
山下 秀子
「近くには誰も居ないし、晴風を隠すにはちょうど良いかもしれないよ?」
青木 百々
「それにしても、至る所に穴が空いてるっすね。薬莢も落ちてるし、まるで銃撃戦でもあったような………」
皆の言ったとおり、ここには誰も居なかった。
ドッグの周囲にも工場らしき建物がいくつも建てられていたのだが、ガラスは割れていて地面に残骸やら廃材やら散乱していた。
人々の営みが行われているようには見えなかった。
バシャッ。
岬 明乃
「うわぁ!?」
よそ見をしていた私は、地面が水浸しになっているのに気付かず、思いっきり水溜まりを踏んでしまい、スカートを少しだけ濡らしてしまったのだ。
万里小路 楓
「岬さん、大丈夫ですか?よろしければ、こちらをお使い下さい」
まりこうじさんからハンカチを出してくれた。
岬 明乃
「あ、ありがとう。洗って返すね?」
小笠原 光
「ねぇ、ここで火事があったみたいよ。ほら、目の前にある時計塔」
鏑木 美波
「本当だ………時計塔の頂上付近が炭で真っ黒になっているな」
釣られて見上げてみると、確かにてっぺん付近が黒く焦げていた。
その火を消火するために、ここはこんなにも水浸しになっているのだろうか?
そんな背景を目にしながら、廃工場の中へと突き進んでいった。
どこもかしこも同じような廃屋が連なっていて、不気味に思えた。
これが夜になったら………うぅ、今が昼間で良かった!
などと考えているうちに、しばらく時間が経ったころかな?
周囲を警戒しながら廃工場を出ると、舗装された道路に出られた。
鏑木 美波
「それでは艦長。手筈通り、ここからは二手に別れよう。そちらの方が多くの情報を入手できるからな」
青木 百々
「でも自分達の知らない世界で人を別けるのって、やっぱり不安っすよ。ここはやっぱりまとめて行動する方がいいんじゃ?」
万里小路 楓
「私も青木さんの意見に賛成ですわ。どんな危険が潜んでいるか、分かりませんもの」
山下 秀子
「でもでも、あのちょー早く飛んでいった物体の調査と、この町がいったいどこなのかも探るには、二手に別れた方が手っ取り早いよ?」
小笠原 光
「私は、艦長の意見に従います。それで、どうしますか?」
やっぱり皆もそれぞれ不安があるみたい。
早く情報を持ち帰って、皆に報告するのがいいか。
はたまた安全を第一にして時間は掛かるけど、一緒に行動するべきか。
私は――――
岬 明乃
「二手に別れよう。ぱぱっと終わらせて、ぱぱっと帰ってくれば全然怖くないから!」
鏑木 美波
「承知した」
山下 秀子
「了解!!」
青木 百々
「まぁ、艦長がそう言うなら………」
万里小路 楓
「分かりました。艦長の指示に従います」
小笠原 光
「それで、メンバーはどのように?」
岬 明乃
「みなみさんとまりこうじさん、ヒカリちゃんのチーム。私とももちゃん、しゅうちゃんと一緒のチームします。みなさん、危険だと思ったらすぐに携帯で連絡を取り合いましょう!」
5人
「「「「「了解!!」」」」」
気合いを入れるために、全員で右手を思いっきり振り上げた。
こうして私達は、見知らぬ世界で見知らぬ人達と遭遇していくことになる。
物語は、まだまだ始まったばかりだ――――
別行動を取ってから、どれくらい時間が経っただろう?
炎天下の中で、頭が少しずつボーッとし始めていた。
汗が額からポタポタと落ちてくる。
岬 明乃
「それにしても暑いねぇ。今は7月くらいかな?」
青木 百々
「うーん、近くにコンビニがあれば、新聞とかを読んで日付が分かるのに」
山下 秀子
「分かるのは時刻だけだからねぇ」
最後尾を歩いていたしゅうちゃんが、スマホを取り出して呟いていた。
幸いなことに、電話機能で残っているシロちゃん達と連絡のやり取りは出来るようだ。
メールもまた然り。
とりあえず、霧の影響はもう無いようだった。
青木 百々
「向こうのチーム、うまくやれてるっすかねぇ?」
山下 秀子
「大丈夫だと思うよ?鏑木さんがうまくこなせると思うし」
青木 百々
「何かあっても万里小路さんが手助けするって事っすか。今回の班分けうまくいきましたね」
山下 秀子
「なら、こっちもちゃんとやらなきゃね。艦長、私は適当に周囲の写真を撮ってるから、何かあったら教えてね。ももちゃんも」
岬 明乃
「うん、分かった」
青木 百々
「了解っす。なら私は、パンフレットとかあれば片っ端から貰って、情報収集するっすよ」
山下 秀子
「あ、それいいね!」
私達は、およそ遭難者らしくない空気で調査を行っていた。
まぁ、下手に不安や緊張を持ってるよりかは良いと思う。
青木 百々
「ん?あれ、なんすか?」
山下 秀子
「えっ?どれどれ?」
岬 明乃
「どうしたの?」
ももちゃんが指を指した方を見てみると、向こうの道路から円筒状の物体が私達に向かって、近付いてくるのだ。
上辺には丸い緑色のカメラが内蔵されているようだった。
とうとう私達の目の前にやって来た円筒は、目の前にあったペットボトルを、側面から出したアームで器用に掴み、円筒の中へ放り込んだ。
すると何事も無かったかのように、どこかへ去って行った。
青木 百々
「おおぉぉぉ、あれはゴミを自動的に検知して、掃除してくれる機械だったんすね!」
隣から、喧しいくらいの連写したシャッター音がした。
私達の世界じゃ、あんなの見た事なんて無かった。
ロボットって言うのかな?
山下 秀子
「艦長、これはいよいよ異世界へ来た感じがするよ。あんなの見たことないし」
岬 明乃
「そうだね。しゅうちゃん、出来るだけ多くの写真を撮って!」
山下 秀子
「もちのろん!」
私達はそれぞれ気合いを入れていると、シャッターを切る。
その視界の端に、コンビニが映っていた。
そうだ、あそこで情報を集めてみよう。
岬 明乃
「あそこのコンビニに行こう。そこには新聞も置いてあるから、今日が何日かは分かるはず」
青木 百々
「そうっすね。あ、ちょうど喉も渇いてきた頃だったから、何か適当なドリンクでも買うっすよ」
山下 秀子
「さんせーい」
中に入ると、冷蔵の利いた風が蒸し暑さを駆逐してくれる。
長く歩いていないけど、暑いモノはやはり暑い。
そう感じながら、入り口に置いてある新聞コーナーにある新聞を手に取り、広げる。
その間に2人は店内の奥へと消えていく。
岬 明乃
「えーっと、今日は2012年の7月18日。私達が来たのは――――うっ!」
ズキリッ。
記憶を掘り起こそうとして、突然、激しい頭痛に襲われる。
その際に、新聞を床へ落としてしまった。
ズキズキと痛むので、こめかみに指を当てるも、それで痛みが消えるわけではなかった。
新聞を拾おうとして、先にその新聞を拾われてしまった。
しゅうちゃんかももちゃんが戻ってきてきたのかと思ったけど、違っていた。
??????
「あの、大丈夫ですか?」
声の主を見てみると、茶髪の小柄の女の子が私を見つめていた。
少しぼさぼさした髪をした子で、心配そうに私の目を凝視している。
岬 明乃
「あ、ありがとう。ちょっと、頭が急に痛くなって………それより、新聞拾ってくれてありがとう」
??????
「いえ」
拾ってくれた新聞を受け取ろうとしたとき、少しだけ彼女の手に触れた。
やけに色白い、キレイな肌だった。
??????
「っ!!」
その瞬間、この子は突然手を引っ込めて、両目を見開いていた。
すごく驚いたような表情をして、私の顔を見つめていた。
もしかして、何か悪いことをしてしまったのかな?
岬 明乃
「あっ、ごめんね、指が少し触れちゃったみたいで」
??????
「あ、い、いえ………」
なんだか煮え切らない返事で、私はますます分からなくなってしまった。
この子は急にどうしたんだろう?
あ、そうだ。
せっかくだし、少しだけお話ししようかな。
岬 明乃
「ねぇ、君ってこの町の子?」
??????
「い、いいえ。私は旅行でこの町に来たんですけど」
少しだけ間が空いて、しどろもどろしながら答えてくれた。
よかった、変な人だなって思われなくて。
岬 明乃
「そうだったんだ。あっ、そうだ。私は岬明乃って言います!よろしくね」
??????
「えと、中学2年生の磯崎蘭(いそざきらん)と言います」
岬 明乃
「じゃあ私とは2つ年下だね。蘭ちゃんって呼んでも良いかな?」
磯崎 蘭
「いいですよ。じゃあ、私も明乃さんで」
岬 明乃
「それじゃあカタッ苦しいよ。うーんと、そうだねぇ」
磯崎 蘭
「じゃあ………ミケちゃんって呼んでも良いですか?」
ミケちゃん。
そのネームで呼ばれるのは、なんだか懐かしいような気がする。
誰かに呼ばれていた気がするんだけど………。
岬 明乃
「う、うん!それでオッケーだよ!!」
他人行儀があまり好まない私は、こうの呼び方が居心地がよかった。
知り合ってから5分も経っていない子にこんな事言えた義理はないけど。
磯崎 蘭
「でも良いと思いますよ。呼び方はその人の心を写すって言うし」
岬 明乃
「おぉ、良いこと言うねぇ………あれ?」
私、今の口に出して言ってったっけ?
心の中で呟いた気がするんだけどなぁ。
磯崎 蘭
「あっ、すみません。何となくそう思っただけなので」
岬 明乃
「ふーん、蘭ちゃんって結構感が鋭いんだね」
磯崎 蘭
「あ、あははは………」
岬 明乃
「そうだ、この町のことを少し聞きたいんだけど、良いかな?」
磯崎 蘭
「いいですよ。と言っても、私も来たばかりなのであまり知ってる事なんてありませんけど」
岬 明乃
「まずはね………あれは何?」
私はコンビニの外に広がる壮大な海の向こう側に、指を向ける。
遙か先に、天まで伸びる一本の線が、私は結構気になっている。
廃工場から外へ向かう際に見た、あの光景。
あれはいったい?
磯崎 蘭
「ああ、あれは港湾内に浮かぶ宇宙エレベーターですよ。すごいですよね、あれ一本で宇宙まで行けるんですから」
岬 明乃
「宇宙、エレベーター?」
初めて聞いた単語に、思わずオウム返しになってしまう。
それに、宇宙まで行けるって、どう言うことだろう?
磯崎 蘭
「私も原理までは知りませんけど、中にあるエレベーターを使って、地上と宇宙空間の両方を行き来するみたいです」
岬 明乃
「へ、へぇ、そうなんだ」
試しにスマフォで、”宇宙エレベーター”と検索エンジンに打ち込んだ。
するとニュースで新たに建造された、宇宙エレベーターに関する情報がびっしりと記載されていた。
これは後で皆に報告するとしよう。
磯崎 蘭
「………でも今までロケットを使って宇宙を旅してたのに、今ではエレベーターで行ける時代まで来たんですから、人類の進歩も凄まじいですね」
またしても知らない単語が出てきたので、メモ帳に記録っと。
岬 明乃
「そうだねぇ。あっ、そうだ。ちょっと変な質問をして良いかな?」
磯崎 蘭
「はい?」
岬 明乃
「えっとね、ここって何県かな?」
磯崎 蘭
「ここは茨城県ですよ。それでこの町は阿尾嵯町(あおさまち)と言って、最近出来た巨大な港町なんです」
えっと、私の記憶が正しければ、茨城県の土地は海中へ半分くらい沈んだはず。
私はてっきり、ここは町が大きいから横須賀だと思っていた。
磯崎 蘭
「横須賀には何かあるんですか?」
岬 明乃
「私達が通ってる学校があるんだ………って、また先読みされちゃったね」
磯崎 蘭
「あっ、ごめんなさい。ちょっと癖になっちゃって」
岬 明乃
「ううん。蘭ちゃんってとっても面白いね!」
磯崎 蘭
「あははは………そうだ、折角ですから私でよければ町を案内しますよ」
岬 明乃
「えっ!?いいの?」
磯崎 蘭
「はい。景色が綺麗な所や、美味しいお店を紹介しますよ」
岬 明乃
「わぁ、嬉しい!でもいいの?折角の旅行なのに」
磯崎 蘭
「いいんです。みんな、用事とかで今は別行動を取っていまして………」
岬 明乃
「そっか、うん、分かった。でもちょっと待っててね。連れが2人ほど来ててね――――」
山下 秀子
「おーい、艦長!」
青木 百々
「お待たせしたっすー」
すると別の方向からしゅうちゃんとモモちゃんが駆け寄ってきた。
岬 明乃
「あっ、ももちゃん、しゅうちゃん!」
青木 百々
「いやぁ、トイレが意外と混んでて遅れちゃったっす」
山下 秀子
「それで艦長、この子は?」
岬 明乃
「さっき知り合った子で、これから町を案内してくれるって」
磯崎 蘭
「磯崎蘭です。もしよろしければ、私と一緒に観光でもしませんか?」
先程の蘭ちゃんの会話を、2人にも説明する。
だけど2人は、すぐに言葉を返さずに、私に耳打ちをする。
山下 秀子
「艦長、何考えてるの?ここの世界の人達とあまり接点は持たない方が良いって話しじゃなかったの?」
青木 百々
「でも情報収集のためには仕方なしとも言ってたっすよ。この際、もうこの子にお願いしてもいいんじゃないっすか?」
話している傍で、チラッと蘭ちゃんの方を見た。
胸元をギュッとしながら、こちらを見守っていた。
――――あっ、今この子、もしかして余計なことしちゃったかなって思ってるのかな?
岬 明乃
「い、いや、大丈夫だと思うよ?ほら、私達ってこの町に初めて来たから、さすがに出会ったばかりの子に案内させちゃうのは気が引けるだろうと思うから………」
蘭ちゃんの気を悪くしないように必死に弁明する。
いくらなんでも、目の前でひそひそ話されたら誰だって不快になるよね。
磯崎 蘭
「って、気を使わせちゃったかなって事、口に出しませんでしたよね?」
岬 明乃
「ふふ、やっと蘭ちゃんの先を越せた。ずっとやられっぱなしは悔しいから」
そう言って、私は胸を張った。
こっちが笑ったからか、蘭ちゃんも自然と笑顔になった。
なんだかこの子と一緒にいると、自然と楽しく感じる。
青木 百々
「艦長、さっきの話しっすけど、その子に町の案内をお願いするっすよ」
山下 秀子
「せっかくだし、お願いしても良いかな?」
磯崎 蘭
「はい!えと、まずはですね――――」
そこからは、楽しい時間を過ごすことが出来たと思う。
細かい念写とかは言えないけど、これだけは言える。
この世界に来て最初に出会った子が、この子で良かったと。
如何だったでしょうか?
突っ込みや感想がありましたら、ぜひぜひ書いて下さいませ。
参考にさせて頂きます。