High School Fleet ~封鎖された学園都市で~ 作:Dr.JD
作者のDr.JDと申します。
いや-、ハイスクールフリート、面白かったですね。
軍事モノ筆頭と言えば、ガルパンや艦これ、ジパングなどがありますが、ハイスクールフリートも捨てがたいですよね!
1人1人の船における動作がリアルタイムで伝わってくるあの臨場感!砲雷撃戦!
ワクワクしますよね!
さて、今回手掛けるこの作品は、のちに投稿する予定の大長編小説の前日譚となります。
初投稿なので、色々と至らぬ点やツッコミどころがあると思いますが、感想などでご指摘して下さると幸いです。
それでは早速どうぞ――――
第1話 初航海
[初航海]
????年、??月??日、??:??:??
高校1年生 陽炎型航洋艦五番艦「晴風」 艦長
岬 明乃(みさき あけの)
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誰かが、私の肩を揺すっていた。
誰かの手の感触を感じた私は、ゆっくりと両目を開く。
まだ意識が覚醒しきれていないのか、視界はピントがずれているみたいだ。
頭も若干痛む。
岬 明乃
「う、うぅぅ………」
??????
「――――、起きて下さい!聞こえますか!?」
次第に相手の声、内容、そして切羽詰まる状況がヒシヒシと伝わってくる。
両目を開けたら、今まで見えていたモノが霧散して、現実世界へと引き付けられる。
なんだか長い間夢を見ていたように感じられる。
そしてここでようやく、私は相手の名前を出せた。
岬 明乃
「シロ、ちゃん?」
宗谷 ましろ
「そうですよ、宗谷ましろです。もう、なかなか起きないから心配しましたよ」
呆れながら答えてくれるのが、晴風の副艦長である宗谷ましろさんだ。
通称シロちゃん。
普段はクールで冷静だけど、どこか不幸な体質のせいか、自身の本領が発揮されない場面が多かなり多い。
あとなぜか猫が苦手らしい。
私はとりあえずゆっくり起き上がると、周囲を見渡す。
ここは………見覚えがある。
いつもみんなで指示を飛ばしていた、艦橋だ。
その艦橋で今、みんなが各々に動いている。
そんな中、私は無意識の内に外を見つめていた。
辺りは霧に包まれていて、ほとんど何も見えなかった。
??????
「とりあえず、これで全員が目を覚ましましたね。私は他の科が運航に支障が出ないか、確認してきます」
宗谷 ましろ
「ああ、頼む」
のんびりとした口調で話し、そばにある無線機で他の場所に連絡を取り合っているのが納紗幸子さん。
通称ココちゃん。
書記というポジションで、タブレットを操作しながらよく他の科の子達の状況と、船のスペックをいち早く知らせる子である。
趣味として任侠もののドラマが好きらしい。
??????
「でもさー、霧で何も見えないよ?さっきレーダーも通信も使えないって言ってたじゃん。今更何を確認する必要があるさ?」
水雷長である西崎芽依ちゃんが、壁に寄りかかる。
おちゃらけているようで、実は本番になるとかなり冷静である。
”人を見かけで判断してはいけない”という言葉を体現したような子である。
さらにトリガーハッピーな面も強いので、好戦家でもある。
トレードマークは、猫の柄のパーカー。
宗谷 ましろ
「ここがどこだか分からない以上、船に運航できるかどうかが重要なんだ。近くに島があればいいが、もしトラブルに見舞われて航行できなくなり、漂流なんてしてみろ、目も当てられなくなる。だから、逐一周囲の状況確認する必要がある」
??????
「ひっ!?そ、そうなったら家に帰れないよぅ………」
控えめな口調で言う彼女は、航海長である知床鈴ちゃんだ。
操舵を主に担当している彼女は、ビビり屋ですぐに逃げたがる彼女だが、ある一件により克服し、今ではすぐに逃げ出したりはしない。
………はずだ。
岬 明乃
「………ねぇ皆、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
遠目に彼女達を見ていた私だったけど、気になっていた事がある。
視線を外から中へ戻すと、静かな口調で話した。
宗谷 ましろ
「?何ですか?艦長」
岬 明乃
「私達って、何で”晴風”に乗ってるの?私、昨日は確か学生寮に居たはずなんだけど」
言葉の通り、私は昨日は学生寮に居たのだ。
夏休みに入った私達は、各々で満喫していたはずだ。
ところが私達は、突然海の上を走る航洋艦・晴風に乗船している理由が分からなかった。
だから確認のために、一応みんなに聞いてみることにしたのだ。
宗谷 ましろ
「何を寝ぼけたこと言ってるんですか。私達は学校からの要請で………あれ?」
呆れた口調で答えようとするも、シロちゃんも答えられずに首を傾げていた。
シロちゃんから視線を外すと、他の子を見る。
岬 明乃
「他の皆はどう?」
西崎 芽依
「言われてみればそうかも。あたしは確か、タマと一緒にゲーセンに行ってたんだよな?」
??????
「うい」
砲術長である立石志摩さんが首を振る。
無口だけど無感情って訳じゃなく、よくメイちゃんと遊んだりして笑顔を覗かせている。
カレーが超がつくほどの大好物。
納紗 幸子
「私も、友達とラインをやってた途中までは覚えてるんですけど、記憶がぷっつりと切れてますねー。そう言えば、今もタブレット使えなくて困ってたんです」
岬 明乃
「えっ?それって結構問題なんじゃ」
納紗 幸子
「ああ、いえ。正確には、電波が飛んでなくて外へ繋がらないってだけです。機能そのものは使えるんですが………」
手元にあるタブレットをこちらへ見せる。
だけど画面端にある電波は一本も立っておらず、圏外と表示されていた。
さらに確認のために、自分の携帯電話も開いてみるが――――
岬 明乃
「ダメ、私のも使えない。無線機もレーダーも使えないんじゃ………」
今現在、自分達の位置が把握できないのは、ある意味死活問題である。
このまま燃料が尽きれば、広大な海の中で漂流する羽目になる。
そうなっては、もう………
??????
『艦長、2時方向に灯台の光が見えます。距離は光源から見て、およそ2800』
見張員の野間マチコさんの声が、伝声管から聞こえた。
陸地が、すぐそこにある?
岬 明乃
「野間さん、他には何か見える?」
野間 まちこ
『いえ、何も見えません。先程言った灯台の光しか目視できません』
岬 明乃
「りんちゃん、灯台の方向に向かって舵を切って。方位20度、微速前進でお願い。野間さんも引き続き周囲の警戒をお願いします」
知床 鈴
「りょ、了解」
野間 マチコ
『了解です』
それぞれの返答を受けると、船はゆっくりと灯台の方へと艦首が回っていく。
そして、次の変化が起きた。
岬 明乃
「あっ、霧が!」
宗谷 ましろ
「!!晴れていくな。航海科は周囲の警戒を」
山下 秀子
「了解!」
内田 まゆみ
「はい!」
勝田 聡子
「任せるぞな!」
航海科の3人が元気よく返事する。
うん、3人の体調は特に問題はなさそうだね。
八木 鶫
『艦長!レーダー機能が回復したよ!………ええ!?』
電信員のつぐちゃんからの声が報告から一転して、悲鳴へと変わる。
何か、トラブルでも!?
岬 明乃
「どうしたの!?何かトラブルが!?」
八木 鶫
『ち、違う!こちらに向かってくる高速の物体をレーダーで捕らえました!時速は………うそでしょっ、時速270キロ!!』
岬 明乃
「………!?」
宗谷 ましろ
「まさか、撃たれた!?いや、砲弾の速度じゃないな。無人飛行艇でもこんなに高速には」
野間 マチコ
『上空から巨大な飛行物体を目視しました!真正面!』
次々と出てくる情報量で頭の処理速度でパンクしかけたけど、野間さんの言う真正面へ目を向ける。
双眼鏡で上空を見ると、言葉を失った。
西崎 芽依
「ちょっ、何あれ!?」
立石 志摩
「うぃ!?」
言葉を失っていた私の代わりに、2人が反応してくれた。
双眼鏡を通してみたモノ。
それは――――空中を舞う巨大な飛行物体だった。
私はブルーマーメイドが使用している無人機を見たことはあるが、それの何十倍もの巨大さを表していた。
丸い筒の両サイドに平べったい翼のような物体が生えている。
さらに、その翼の下に左右に2機ずつ巨大なエンジンを搭載していた。
灰色の巨体は、すぐに晴風上空を飛び去っていく。
船体は左右に揺れ、近くの物に捕まった。
嵐のように揺れた船体は、しばらくしたらもう落ち着いていた。
この間、僅か30秒程度。
岬 明乃
「………」
納紗 幸子
「………シロちゃん」
この長い静寂を破ったのは、意外にもココちゃんだった。
タブレットを持っている手がプルプルと震えている。
もしかして、怖がってる?
宗谷 ましろ
「?なんだ、今は話しなんてしてる場合じゃ」
納紗 幸子
「この勝負、私の勝ちですね!シロちゃん!」
と思ったけど、そうでなかったらしい。
両目がすごくキラキラしていて、いつものハイテンションな彼女に様変わり。
いつも通りで、なんか安心した。
宗谷 ましろ
「は、はぁ!?私がいつそんな勝負した!?」
納紗 幸子
「したじゃないですか!この世界には水素以外で飛ぶ飛行物体があるかないかって!私はあるって言いましたから、私の勝ちです!」
宗谷 ましろ
「ふざけるなぁ!そんな前の話なんて覚えてないし、今はそれどころじゃない!航海科っ、今の飛行物体の映像は撮ったか!?」
内田 まゆみ
「す、すみません。あまりにも驚きすぎて、映像とかは………」
山下 秀子
「こっちもです~」
勝田 聡子
「いやぁ、今の飛行物体、すっごい迫力だったぞなぁ!」
宗谷 ましろ
「ええい!今の飛行物体が、どこの所属かを調査する必要があったんだぞ!?もしかしたら、大陸国家が航空機の開発に成功したかもしれないんだ!」
納紗 幸子
「あっ、私ちょうどカメラモードにしてたので撮影してましたよ!あとで一緒に見てみましょう!!」
私が指示を出せない代わりに、シロちゃんが色々と指示を飛ばす。
でも幸運なことに、ちゃんと記録映像として残せているようだった。
岬 明乃
「みんな落ち着いて!とりあえず、灯台が近くにあるって事は陸地があるはず。まずは晴風を接舷出来る場所を目指します」
野間 マチコ
『艦長、前方に港町があります。人はあまり居なさそうなので、晴風を隠すには申し分ないかと』
岬 明乃
「ありがとう野間さん。リンちゃん、速度、進路このまま」
これから30分後、無事に港町へと船を停泊させることに成功した。
けれどもそこは、港町が放棄されてから随分と時間が経過しているようだった。
所謂、荒廃した町と表現するべきだろう。
私達は、そんな場所で停泊する。
因みに晴風は、巨大なドッグの様な場所へ錨を降ろしている。
天井はトタン屋根で覆われているから、外から見られる心配はない。
西崎 芽依
「それにしても、随分とボロい港だなぁ。晴風を隠せるほどのスペースがあるからいいけど、ホントにここに隠すの?」
宗谷 ましろ
「仕方ないだろう。燃料がまだ半分近くあるとは言え、無闇に航行なんて出来ない。それに」
シロちゃんは空を見上げて、一端間を置いた。
それからゆっくりと話した。
宗谷 ましろ
「先程の高速で飛んでいった飛行物体、あれは何なのかを突き止める必要がある。仮に我々がこの港町から脱出できたとしても、あれがある限り逃げ切れはしないだろう」
初めて見る飛行船を見て、私は内心ではかなり驚いていた。
あれ程の巨大な飛行物体をあれだけ高速に飛行しているのなら、誰だって動揺するだろう。
宗谷 ましろ
「では艦長、この町へ探索するためのメンバーを決めに一度、教室へ向かいましょう。具体的な方針はその後で決めよう」
岬 明乃
「うん。まずはこの町に関する情報収集からだね。それと先程の飛行物体についても、みんなの意見も聞いておきたいし」
ずれた帽子を被り直して、シロちゃんに続く。
この後の会議で話す内容を頭の中でまとめながら、歩いていた。
だけど私は思い知ることになる。
私達がこの世界に介入することで、世界的な騒乱戦に巻き込まれていくのを、この時の私は知る由もなかった。
そして………あんな事になるなんて。
あんな事になるのなら、私はいっそのこと――――
如何だったでしょうか?
正直言って、もっと詳しい念写を描けたらよかったんですが、深堀しすぎると読者の皆様方が飽きてしまうのではないかと思い、この分量に抑えさせて頂きました。
感想などをお待ちしております。