情熱大陸を吹いた日から一週間。今日は、入部の日だ。1年生、総勢23名。上級生も含めて72名の大人数が音楽室に集まっている。
わいわいと、賑やかな教室。この一週間の体験入部で気心も知れたのだろう、上級生と会話している一年生も少なくない。
そんな折、部長が黒板前の壇上に立って手を鳴らす。
「さて、吹奏楽部へようこそ、一年生たち!初めまして、の人はいないと思うけど、改めて。部長の三月彩那です」
ハキハキとした聞きやすい声だ。んー、カリスマあるなあ。格好いい。
「えーと、うちの吹部は全国大会出場を目標としています。そのため、練習は厳しいですし、楽器も好きなものを必ず選べるというわけではありません。そして、吹奏楽コンクールに出場できるのは50人までです。このメンバーは完全に実力順で選ばれます。1年生でも出れる可能性はあるし、3年生でも出れないかもしれない。悔しい思いもきっとするでしょう。周りのみんながライバルに見えてくるでしょう。でも、私たちは南中吹奏楽部です。みんなで全国に行くために、協力して、教えあって、頑張っていきましょう!」
堂々とした部長の演説に、まだざわついていた部員たちが静かになって聞き入る。特に一年生たちはきらきらした目で部長を見つめている。私もそのうちの一人だろう。背も高い部長は、本当に大人っぽくて格好いい。2歳しか変わらないなんて信じられない。私もあの人のようになりたいな。
そう思いながら部長を見つめていると、部長は壇上から降りて、先生からもどうぞ、と壇の横に立っている先生に話を促した。
「ふふ、部長に色々話してもらったので、私からは簡単に諸注意などをお話しましょう。顧問の佐伯です。この一年、指導をしていきますのでよろしくお願いしますね。さて、今日から一週間は楽器の選択となります。部長からもありましたが、好きな楽器を必ずしも担当できるというものではありません。希望の多い楽器は、その楽器を所有している人と経験者を優先します。未経験者が多数の場合は、来週に試奏していただいて、上手く演奏できた人を決定します。用紙をお配りするので、希望の楽器を第三希望まで選んでください。第一希望が漏れても、第二、第三希望には入れると思います。ただし、例年希望が多いフルート、トランペット、サクソフォンは第一希望にのみ選んでください。第二第三に選んでも入れることは無いでしょう。楽器決定後は……25日から28日まで一年生はオリエンテーション合宿がありますし、ゴールデンウィークもありますので、5月9日から本格的に練習に入ります。その一ヶ月後、6月上旬にはコンクールメンバーを選ぶオーディションを行いますので、みなさん練習に励んでくださいね。土日とゴールデンウィークに練習したい人は私か部長、副部長に連絡をくださいね。誰かがいれば学校を開けます。お家で練習をしたいときは楽器も貸し出せますのでご相談くださいね。それでは、今年一年、頑張っていきましょう」
穏やかな風貌で穏やかに話す佐伯先生。ゆっくりと話していて凄く優しそうに見えるが、この先生アレだ。めちゃくちゃ厳しい人だ。わかる。こういう人が身近にいるからすごくわかる。一年生に向けて話しているのに、上級生が先生から目を離さないで真面目に聞いていることからもよくわかる。
一方の一年生は話半分に聞いている子が多い。ああ、怒られませんように。ニコニコ笑ってる佐伯先生が怖い。
「先生ありがとうございました。はーい、じゃあ楽器の紹介を始めまーす。各パートリーダーは前に出てきてー!」
がやがやと、音楽室に喧騒が戻る。
これから、どんな一年になるんだろう。
どんな学校生活を送れるのだろう。
ふと、隣に立っているみぞれと目が合う。
仄かに笑んだ彼女の顔を見て、みぞれもこれからが楽しみなんだなと、そう感じて。
ああ、楽しいな。もっと楽しくなるかな。
私達の一年が、ここから始まる。
色々書いてましたけどプロローグが終わらないのでバッサリカット
さて、これからは書きたいものを色々書いていきます
かなで以外の視点もかなり増えていきます
北中メンバーのも書いていきます
北宇治二年生編、新キャラの名前と被って戦慄してる作者がいます…
……かなで18歳編書くことあったらネタにしよ