堕天使総督始めました。   作:土岐宙

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アザゼルさんをこれ以上魔改造するにはどうするか迷った結果、問題児の世界に(一時的に)放り込めばいいじゃないか!
そういう思考になったため、今話から幾話か問題児の世界にクロスオーバーさせていただきます。
問題児の世界編がダメな方は、しばらくお待ちいただけたら幸いです。














問題児シリーズの世界へ
6話


ヴァーリが拾ってきたガキの戸籍偽造(つく)るために書類整理してたら机から一通の手紙が落ちたもんで、それを拾って手紙に目を通したらいきなり大空をスカイダイビングってぇのは、どういう脳ミソしてやがんだ!

まあ、俺ら人外は空飛べるから良いものを、俺の周囲にいるガキ三人なんざ最悪死ぬぞ!

 

【黒竜王】(アナイアレイションドラゴン)! 起きやがれ!」

 

『久々にバカ二匹から叩き起こされない安眠を貪ってたのに………』

 

「悪いが、そんなこと言ってる場合じゃねぇんだよ。さっさと【禁手】(バランス・ブレイク)すんぞ」

 

『わかったよぉ』

 

『「【禁手】(バランス・ブレイク)

  【黒龍王の九尾】(アナイアレイション・ナインズテイル)!」』

 

「おまけだ! 【原点の翼】(ウイング・オブ・オリジン)!」

 

ヤベェな。

下が泉でも落下開始点が高過ぎて全身の骨が粉微塵なんてどころか、内蔵までぶちまけちまうぞ。

 

「間に合いやがれ!」

 

「やっしゃ!」

 

両腕でガキ二人は確保したし、もう一人のガキは九尾で確保したから問題ねぇな。

後は着地だが、翼を態々20枚も出したんだ、着地時の衝撃なんざ微塵も感じ無かった筈だ。

 

「ガキに危ねぇ真似すんじゃねぇよ、クソッたれが!」

 

「ありがとう、感謝するわ」

 

「ありがとう」

 

「サンキューな」

 

何かして貰ったらちゃんと礼を言えるなんざ、良く育てられてんじゃねぇか。

とは言え、この様子じゃあ金髪のガキは助けなくても大丈夫だった見てぇだが、この際構わねぇか。

 

「構わねぇよ。

 俺は堕天使総督をしてるアザゼルだ」

 

「堕天使?」

 

「チキン南蛮?」

 

「アザゼルって言うと、あの有名なアザゼルか?」

 

一人だけネジ弾けてんじゃねぇか?

何だよ、チキン南蛮って。飯のことしか頭にねぇのか、この猫抱えた嬢ちゃんは?

 

「神話に描かれてるアザゼルのことを言うんならばそうじゃねぇか?

 チキン南蛮って………

 俺は鶏じゃなくて堕天使なんだが?」

 

「それにしては綺麗な翼持ってるじゃねぇか?」

 

着地してから【原点の翼】(ウイング・オブ・オリジン)解除してなかったな。これを全力で使うと寿命が億単位で消し飛ぶんだよなぁ。まあ、改善・改良してからはその百分の一迄抑えたが………。

 

「これは一種な第2形態ってやつだよ」

 

「ねえ、堕天使ってなにかしら?」

 

匂いから大体の予想ができてたんだが、やっぱりこいつらは別の時間軸、世界軸から飛ばせれてきてやがるな。

時間軸順で言うならば、春日部耀>>>>俺>逆廻十六夜>>久遠飛鳥 ってとこだろう。

逆廻は凡そ2010年代、春日部耀はわからねぇが、久遠飛鳥は戦後直後ってところだろう。

俺は20XX年だから、春日部耀は俺の時代にある匂いが微塵も感じねぇことから、2XXX年程度だと踏んでいる。

 

「欲望に因って天使という存在から堕ちた生き物だよ、お嬢様」

 

「お嬢様じゃないわ、飛鳥よ。久遠飛鳥。そっちの猫を抱いてる貴女は?」

 

「春日部耀」

 

「逆廻十六夜様だぜ」

 

「俺は言わなくても良いな。

 確認だが、ガキ共にも手紙が来てたんだな?」

 

「ええ、そうよ」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

ってぇと、あの茂みに隠れてやがる子ウサギに問い詰めるべきだろうが、何せ俺に届いた奴じゃねぇからなぁ。

ヴァーリが拾ってきたガキの曹操ってぇガキに届いたもんだったんだが、書類上は存在しねぇガキなのに手紙が届いたってぇんで内容を改めたら飛ばされたんで、おれら正規の招待客じゃねぇし、どうたもんかねぇ。

 

******

 

(今のところは問題なさそうですけが、どう見ても一人問題児としか言えない方がいらっしゃいますねえ。

 それにしても、黒ウサギが呼び出した方々に堕天使なんていなかった筈なのですが?)

 

湖に落ちてきた4人をずっと見ていた少女は、茂みに隠れながら溜息をついていた。

少女の名前は黒ウサギ。外見は扇情的なミニスカートとガーダーソックスを身に纏った可愛らしい少女だが、『箱庭の貴族』と呼ばれる強力な一族の末裔だ。何を隠そう、彼女こそが岸波達を箱庭に招いた張本人である

 

(多少の問題児様方でも目を瞑りましょう。

 我がコミュニティの為にもここまで来て引くわけにいきません!)

 

現在、黒ウサギが所属しているコミュニティはある事情から後の無い状況に追い込まれていた。

今回、彼女達が異世界からの召喚という思い切った手段に出たのも状況を打破できる人材を求めての行動だ。

 

(主催者ホストの話では、4人とも人類最高峰のギフト所持者との話をお聞きしましたし、黒ウサギたちのコミュニティもきっと救ってくださる筈です!

………御一人は人間ですらないような気がしますが、この際気にしません! 何故なら、黒ウサギは月の兎ですから!)

 

黒ウサギは半ば現実逃避をしていたが、何処までも現実は無慈悲で、無情なことばかりである。

何故なら………

 

「で、呼び出されたはいいけど何で誰もいねえんだよ。この場合、招待状に書かれた箱庭の事を説明する人間が現れるもんじゃねえのか?」

 

「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」

 

「………この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」

 

(全くです)

 

「若い者は大体アグレッシブなんだよ。こういう場合は大抵心の内じゃあ舞い上がってるもんさ」

 

「そんじゃ、そこでコソコソ隠れてるやつに聞こうぜ?」

 

「あら、貴方も気づいてたの?」

 

 ギクッ

 

「当然。かくれんぼは大の得意だぜ?」

 

「…風上に立たれたら嫌でもわかる」

 

「氣なんてもんを修得すると嫌でもわかるぜ」

 

ビクッビクッ!

 

理不尽な招集を受けた十六夜・飛鳥・耀の三人により、殺気の籠った冷ややかな視線を隠れている青髪ウサ耳の少女に向ける。また、幼い……とは言えないものの、まだ子供と言える者に対して危険な召集方法を選んだことにより怒気を孕んだ視線をアザゼルもウサッ娘に浴びせていた。

 

美しさと可愛さが合わさったような少女。赤いミニスカートと、黒いガーターソックスで美しい脚を扇情的に見せ、黒のベストのような服で、谷間を魅せる艶やかな身体。

そんな魅惑的な身体を持つ少女は怯えながら、彼らの前に現れた。

 

「や、やだなあ御四人様方。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んでしまいますよ?

 ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵で御座います。

 そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いて頂けたら嬉しいで御座いますヨ?」

 

「断る」

 

「却下」

 

「御断りします」

 

「仕方ねぇなぁ。今度やったら、てめぇを殺るからな」

 

「あっは、取り付くシマもないですね、と思ったら恐いですが優しい方がいた!」

 

バンザーイ、と降参のポーズを取りながらも少し安堵する青髪ウサ耳の少女―――黒ウサギ。

黒ウサギは考える。今後の対応次第では殺られるだろうと。しかし、このお方は子供にお優しい方であろうから、事情をお話しすれば協力してくださるのでわないかと…………

 


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