当たり前のように子供を抱え、当たり前のように部屋に入ってくる白銀の髪を持つ美女。
名前はヴァーリ・ルシファー。
初代ルシファーの曾孫と予測される
大戦終結から、約400年後に冥界で拾った子供。
それから凡そ570年が過ぎ去った。
「ヴァーリ。ちょっと此方来いや」
「何かミスでもしたかしら? ちゃんと報告書に全部書いてある筈だけど」
「ア゙ア゙? てめぇの報告書にゃ生存者無しって書いてあんだろが!」
「帰り道で拾ったのよ」
「んじゃあ。そのガキが着てる血だらけの服はナンだ!? おちょくってんのか?」
「帰り道で拾ったのよ」
「さっきも聞いたわボケが!
まあいい。風呂に入れてやれ。着替えは俺が何とかしてやるからよ、てめぇもガキと一緒に汚れや疲れを落としてこいよ」
「いつになく気が利くじゃない?」
「おめぇが連れてきた時点で、そいつが神器持ちっつうのはわかってんだよ。
で。今度は何だ?
「そんなとこよ」
ヴァーリめ、書類上は生存者無しって処理したってぇことは、生存してると不味い存在ってことだよな。
つまり、
そんなことは後で考えりゃあ良いが、入浴時間は限られてんだよなぁ。
つうわけで、コカビエル呼ぶか。
「コカビエル、居るか?」
「此処に」
「ヴァーリの分と小さいガキ用の服を脱衣場に用意してくれ。あと、今夜酌してくれ」
「はい!!」
部下とのコミュニケートは適度にしねぇと、前世で有ったように簡単に他社へ引き抜かれちまうんだよなぁ。
ヘッドハンティング何て、小せぇ頃は信じてなかったが、大人に成ってみると以外に良く有ることなんだよなぁ。
特に優秀な奴ほど会社や上司、給料や休暇なんかに不満あっても溜め込んじまうから、適度にガス抜きさせねぇと
そういう面を円滑に回すにゃあ酒が一番だよなぁ。
酒は人生の潤滑油・飲むものにゃ薬飲まぬものにゃ毒薬。
様々なことを唱えられているんだが、俺は酒に対して思うことは一つだけだ。
愉しく飲めりゃあそれで良い。
それに、やっぱり酒はワインじゃなくて日本……
「あ、アザゼル! こ、今夜くらい一緒にお酒飲んであげても良いわよ?」
「ルシファー。お前、毎回そう言って酒飲み始めてから五分でダウンしてんじゃねぇか」
「だ、大丈夫よ!
ノンアルコールって知ってる? 最近麓の都市で開発されたお酒みたいなんだけど、度数が限りなく零に近いから酔わないのよ!!」
「………ルシファー。ノンアルコールは十年前から市販されてんぞ」
おいおい。
明らかに『ガビーン!』って背景が目視できるんだが、態とやってんのか?
もしそうなら、滅びの魔力が可哀想なんだが………。
「ま、まあいいわ! 今夜飲みまし………飲んであげてもいいわよ!」
「悪いが、先約が入ってんだわ」
「………………えっ。
………あざぜるぅ、一緒に飲もうよぉ」
「……わかったから泣くんじゃねぇよ。鬱陶しい」
「鬱陶しくないもん!」
こいつもアスモデウスも見た目だけは悪くはねぇんだよなぁ。
片方は腰位まで長さの朱色をした髪を一房に結った、眼鏡で巨乳の(見た目だけなら)美女だ。
片方は肩甲骨位の長さの抹茶色の髪を持つ掌サイズの胸を持つ(ガチ百合の趣味だが)美女だ。
どっちも見た目だけならばかなりマトモだが、性格や性癖を加味すると途端に残念な美女になってしまう。
特にルシファーは精神的に見ると諸ガキだ。
「子供って言うなぁ!」
「はいはい。わかったってぇの」
「絶対わかってない!」
「そんじゃあな。俺は行くぞ」
「ま、待ちなさい!」
俺が思うに、ルシファーはヤハウェに精神年齢の殆どを持ってかれたんじゃねぇかって予想している。
何故かってぇと、ヤハウェは何だかんだで達観してる所が(頑固なところも多々)あるが、ルシファーは寧ろ子供の様に我が儘言ってばっかのお子様としか思えねぇ。
恐らくだが、ルシファーも確りするところは確りするんだろうが………。
こう言うところから天使や悪魔の本質が生まれたんじゃねぇかと思ってる。
ミカエルも物腰柔らかな美女だが、その本質はお母さん大好きな頑固者だからなぁ。
サーゼクス達は人当たりが良いが、根底的な位置では自己中心的な考えが確固としてある。
俺たち堕天使はどうかってぇと、我欲に忠実な所は悪魔にそっくりだが、悪魔とは違い、他種との存続を願って堕天した連中だからなぁ。
まあ、簡単な話で言うと、共存と平穏を掲げて組織したのが堕天使勢力ってぇ訳だ。
つまり、悪魔との違いは自己中心的な根底か、そうでないかってだけで、我欲に忠実な堕落した勢力って訳だ。
俺だって神器の研究がしたいから堕天したわけだし、人のこと言える立場じゃあねぇよ。
まあ、酒も飲みたかったんだがよ。
……………って、迷走したな。
今夜は美女二人に囲まれて酒を煽るとしようじゃあねぇか!