堕天使総督始めました。   作:土岐宙

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コラボと言うものをしてみたい、今日この頃なのですが……………
その前に、コミュニケーション回のアンケートを引き続き募集したいです。

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16話

嗚呼~。此れだよ。俺が求めてんのはこういう平穏なんだよ。

こういう、満月を眺めながら肴と酒を3:7で進めてくような、平穏で、それでも賑やかな世界ってのを待ってたんだよ。

今夜の肴は炙りゲソと烏賊軟骨、牛肉を濃い目に味付けしたものを乾燥させた干し肉だ。

ゲソはうめぇんだよなぁ。なにしろ、アレは噛めば噛むほどに塩気が滲み出てくる上に、丁度良い歯応えをしてやがるからなだ。次に、烏賊軟骨は、だが、今まで食べたことがなかったが、此れがまた癖になるんだよなぁ。なにせ、コリコリした食感に、正にボイルされたってな感じのクセのある香りか堪らねぇ。最後に、干し肉だが、これは言わなくてもわかるだろう? 酒の肴にコレが出たんだぜ、分からねぇ筈はないだろう。

でだ、本命の主賓は、【黄金乙女(こがねおとめ)】って酒だ。なんでも、鈴蒔から稲刈り、酒造迄を別嬪さんが作ってる上に、喉越し爽やかで度が高く、しかし、後味がさっぱりしてるっていう極上の美酒だ。

本来ならば黄金乙女はこんなとこで開ける酒じゃねぇが、どうしようもなく飲みたくなっちまったんだよ。

まあ、酒樽単位で契約執ってるから幾ら開けようが問題ねぇんだが、年に約20回くらい開く宴会で大体の酒を消費するもんだから、俺個人の酒蔵が一向に増えねぇんだよ。だから、自腹でたけぇ金払って酒造を増やしてんだが、月に何本かヴァーリに持ってかれるもんだから堪ったもんじゃねぇんだよ。

とはいえ、態々肴を持参してまで縁側にてプチ慰労会を開いてんだ、バカ娘の話なんざ今くらい離れても良い………わけないが、せめて総督としてじゃなく、アゼル=フォードとして、一市民として一杯洒落混もうじゃねぇか。

 

「となり、良いかの?」

 

「…………構わねぇよ。ったくよぉ、俺がひっそりと一人で細やかな酒宴を開いてんだから、ここは見逃すところだろうが。

 ほれ、黄金乙女だ。滅多なことじゃあ飲めねぇ高級品だぞ」

 

「ふむ。戴くとするかの」

 

「肴も有るぜ」

 

「………これは、随分とオヤジ臭い肴じゃな」

 

「うるせぇよ。此方はまだ三十路(〈ギリギリ十代〉)だってぇの」

 

文句があるんなら食わなくても良いんだぜ? 俺が全て摘まんじまうからな。とはいえ、コイツがなんの用もなしに俺の邪魔をするとは思えねぇ。つまり、何らかの用事があったと見て間違いねぇ。

 

「それで、何の用だ?」

 

「コレを見よ」

 

何々?

 

『“火龍誕生祭”へのご案内

 

火龍誕生祭とは、北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会および批評会に加え、様々な“主催者”がギフトゲームを開催する祭りです。メインは“階層支配者”が主催する大祭を予定しております』

 

まだ書類があるな。

 

『〈仕事依頼発注書〉

 

“火龍誕生祭”にて、魔王出現の兆しが伺われました。

貴殿方“【神を見張る者】(グレゴリ)箱庭支部”様方は、三桁、及び二桁の魔王を奴属させた実績や【五帝五竜王】を奴属させた実績などが認められましたので、正式な依頼を発注させていただきます。

 

          “サウザントアイ”印』

 

もう一枚は手紙かよ

 

『アザゼルよ。ワシからお主に頼みたいことと言うのは、【ノーネーム】が無茶をするようだったら止めることじゃ。【ノーネーム】にも、“火龍誕生祭”の招待状が届いておるのでな、十中八九、殆ど確実に魔王に巻き込まれるだろう。でだ、私が頼みたいのは、【ノーネーム】が無茶をするようだったら、魔王を倒してほしい。…………それだけじゃ』

 

白夜叉め、俺のことを都合の良い万屋だと思ってんじゃねぇだろうな?

……………まあ、俺だってウサッ娘に(間違いとはいえ)呼ばれた訳だから、逆廻の野郎や飛鳥や耀の嬢ちゃんを助けるのは吝かではねぇが、それにしたって魔王を行きなり宛がうなんざぁ、現実を見せるにゃ良いかも知れねぇが、そらぁ酷ってもんだろうよ。

 

「夜影。久しぶり? いや、初めての正式な仕事だ。非戦闘員のカルタ含めて、全員呼んでこい。初仕事前の宴会を開くぞ!」

 

「良いのか? おヌシだけの慰労であった筈じゃぞ」

 

「んなこたぁ構わねぇんだよ。俺がやりてぇから酒宴を開くんだ。お前らはこまけぇこたぁ気にせずに酒飲んで騒いで疲れを癒せば良いんだよ。……………それによ、俺個人の慰労なんざぁまた今度やりゃあ良い。今は自分のことよか、大事な仲間を選ぶぜ」

 

「…………そうか。少し待っておれ、ワシらが保存しておいた秘蔵酒樽を持ってきてやる。一角の奴が、昔持ってきたは良いが、度数が高くて誰も飲めなんだモノがある。じゃが、味は保証する。例え薄めようが、極上の美酒となろう」

 

「んなもんあるなら早く言いやがれってんだ。よっしゃあ! 今晩は浮き世の柵なんざ気にせずに騒ごうじゃねぇかぁ!!」

 

俺はこのとき嘗めて掛かってたんだ。

酒呑童子なんて異名を持つ鬼が呑めなかった酒ってのをよく考えて飲んでりゃあ、俺はあんな目に合わずに済んだであろうが、慰労会を邪魔されたせいでテンションが振り切れてたんだと、俺は思う。

…………まさか、ヤハウェとあんなことになるなんざ思ってもいなかったぜ。

 

 

 

 

 

 

 




今回は、“火龍誕生祭”までの繋ぎのひとつ?になります。なので、文字数が若干少ないですが、ご勘弁していただきたいです
グレゴリって店じゃないですよね? ってことで、18/9/5/22:37
支店→支部

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