やっぱり、朝風呂は最高だねぇ。しかも此処は温泉完備ときやがった。久々の女の姿で温泉入れるたぁ思わなかったよ。
「誰か居るのか?」
「俺だよ」
「はて。ヌシの気配は覚えがあるが、何処かで会ったことがあるか? ワシは覚えとらんのでな」
「おいおい。昨日の今日で忘れてんじゃねぇよ」
「冗談じゃよ」
この状況でその冗談は洒落にはならねぇだろ。
少なくとも今の俺は女になってんだから、わからねぇのは案外普通だってぇの。なのにその冗談とは、肝が太ぇのか、それとも暢気なのかわかりゃしねぇ。
「ヌシは女になれたんじゃな」
「俺が持ってる便利アイテムのお陰だよ。たまに使わねぇと、機能不全を起こしやがるもんだら一番負担かからねぇ性転換を毎回やってんだが、何回やっても慣れるようなもんじゃねぇよ」
俺と夜影とで今後の方針を、温泉に浸かりなら話していた。もちろん、俺の伸びた髪はお湯に浸からないようにタオルを頭に巻いているがな。
そんな風に朝風呂を満喫していたんだが、突然暴風が巻き起こった。
「何事じゃ!」
「おいおい、バカみてぇなエネルギ吐き出してんぞ。ヤベェぞ。なんだあの光球は…………」
神秘的な青の輝きを放つ光球が、暴風と共に突然現れやがった。有り得ねぇ。俺のセンサーにも、夜影のセンサーにも引っ掛からなかった存在。確実に俺らよりも強ぇだろう。
俺は此処に居る奴等を守れるか? いいや、やるしかねぇな。
「夜影。お前は此処に居るやつら全員連れて逃げろ」
「…………死ぬでないぞ」
奴さんが姿現すまでに少しばかり時間が掛かるらしい。なら、此方も最初からラストスパートといくか。
「覚悟決めろよ、【黒龍王】。俺ら諸とも消し飛ばせる奴が来たみてぇだからなぁ。星なんてちっぽけな規模じゃねぇ。宇宙規模の化け物がおでましだ」
『まあ、そこまで気張らなくても良いんじゃないかな?
とはいえ、死ぬ際は派手に逝こうかね』
「ああ、そうだな。
今回ばかりはマジで死ぬかもしれねぇが、死なねぇ範囲で死にに行くぞ」
『応ッ!』
覚悟は決めた。
宇宙規模の怪物が出てくるみてぇだが、そんなの知るかよ。やるときゃやるんだぜ。俺はよぉ。
暴風も止んだ。そろそろ、奴さんが出てくるかねぇ。
衣服を纏ってない青髪の子供が光球から出てきたと思ったら、温泉に頭から落ちやがった。
「は? おいおい、どうなってやがるんだ?」
何時まで経っても浮き上がってこねぇ。
って!
「大丈夫か!?」
温泉から引き上げたのは良いが、息をしてねぇぞ。
取り合えず、水吐かせねぇと死んじまう。
******
青髪の娘に見繕った着物を着せて布団に寝かせたが、コイツが纏ってる空気はなんだ? 莫大なエネルギー源になったり、只の空気に変換されたり、どうなってやがんだよ。
コイツが水中で息できなかったときも、この不可思議なモノがコイツに酸素供給してやがった。肺に水が入ってるにも関わらずに、だ。
そのお陰でコイツが助かったが、これは研究対象だな。
「俺だ。
至急用意してほしい物がある。それと、一端そっちに戻って機材一式を俺が作った空間に移すから、準備しておけ」
『今何処に居るんですか?』
「異世界だよ。正確には、箱庭だ。
此方に【神の子を見張る者】の支部を建てるから、お前らの中で移れる奴選出しとけ。あと、曹操は此方に必ず連れてこいよ」
『はぁ。わかりました。
あなたが突発的になにか起こすのは今に始まったことじゃありませんからね。ですが、無茶はしないでくださいよ』
「わかったよ。っても、既に死にかけてんだがな」
『はぁ。わかりました、死んでください。
では、程々にしてくださいね』
「あ、ああ。んじゃあな」
例えNo.2だとても、No.1に対して死んでくださいはねぇんじゃねぇか?
後は夜影達を呼ばねぇと……………
「君は何者だ?」
「起きたか。
簡単な説明をすれば、てめぇを助けた堕天使兼神様だよ。そういうお前は誰だ?」
「私か?
私はマザー。……………月を支配していた【
「おいおい。とんでもねぇのが出てきたな」
【
「お前の目的はなんだ? こんな処に出てきたんだ、なにか目的が有るんだろ」
「私は……………
そうだな、普通の生活と言うものをしてみたい。
ヒツギやエンガ、少し違うだろうが、ソラの様に普通の生活と言うものを体験してみたい。
復讐なんてモノを考えてはいたが、ソラの有り様を見て目が覚めたのだ」
そんで、そいつらへの復讐を考えたが、助けた者たちを見て考えを改めたってのが今現在での予想だが、それだとなんでこんな処にいきなり現れたのかが気になる。
全く情報がない中の予想は、助けてもらった奴らに何らかの危機が迫った。そんで、コイツの力を解放した末に消滅、若しくは転移したってのが有力だが、前者は無いだろう。コイツは今現在目の前に居る。
「わかった。俺が普通の生活ができるようにしよう。
その代わり、お前が纏ってる空気の正体を教えろ」
「わかった。私が纏っているのはフォトン粒子だ。
君にも使える才があるらしい。私が教えようか?」
「ありがとよ。
よし、これで契約は成立だ。お前は此れからこの屋敷に共に過ごしてもらう。此処に居る奴らはお前が出現するときに避難させたが、もうすぐ戻ってくる」
フォトン粒子ねぇ。聞いたことねぇ粒子だ。
とはいえ、コイツの口ぶりからすると一種の生体エネルギーみてぇなもんらしい。
それが使える奴と使えねぇ奴が居るらしいが、その違いはでかいだろう。
単純なエネルギーとしても使える上に、酸素として変換することで水中だろうと難なく活動できる。
他にも応用の幅がとんでもなく広いだろう。これは研究のやり甲斐があるぜ。