バカみてぇに広いくせに手が行き届いてる森ってぇのはどういうことだ?
魔王ってのは庭師でも雇ってんのかよ。今まで歩いてきたところに在った木々の全てが丁寧に切り整えられてたってのは魔王らしくねぇ。
まるで、日本庭園が有る屋敷の敷地内みてぇじゃねぇか。
つってもよぉ、何で油揚げが一定間隔で吊るされてんのかがマジでわからねぇんだが………
九尾の狐でも居んのか、それとも、九尾の狐を誘ってんのか、どっちにしろギフトゲームの主催者はマトモな思考をしてねぇのは確かだな。
森が開けたな。
適当に言った例えが当たるなんざ良い予感がしねぇな。
具体的に言えば死にかける気がするんだが、どうすっかねぇ。
「ワシはぬらりひょんじゃ。
名前は
「私は玉藻の前。九尾の狐であり、太陽神です。
今は
「………ボクは………鵺」
「俺は酒呑童子、名は一角だ。
そこの口が足らねぇ女は
「わたしは天狗の頭領をさせていただいている、
我らが【百鬼夜行】のリーダーは、夜影様です。夜影様は魔王と恐れられてはいますが、実際には質の悪いコミュニティを襲撃してただけなので、お優しいかたなのです。
此処に居るのが幹部全員ですので、私たちを奴属させられたら、私たち【百鬼夜行】が貴方の僕となります」
『ギフトゲーム名“百鬼を治める猛者”
プレイヤー側
アゼル=フォート
プレイヤー側の勝利報酬
【百鬼夜行】の所有権
・クリア条件
主催者側の参加者全てを隷属させる。
・敗北条件
1.プレイヤー側参加者の死亡。
死と滅亡と魔王の名の下にギフトゲームを開催します。
“百鬼夜行の魔王”印』
おいおいおい! ふざけんなよ。こっちが死ぬか、あっちに服従を認めさせるかってのはフェアプレーの精神に反するんじゃねぇか!?
つっても、こいつら全員魔王と名乗れるだけのモノを持ってると見て良いな。
百鬼夜行の魔王ってのは月下夜影って奴のことだろう。
ここで死ぬわけにゃいかねぇんだよ!
やってやるよクソッタレ!
******
目の前に片膝着いてる五人の大妖怪。
嗚呼、やり遂げたぞこの野郎。
各々が隷属の条件が在った。
夜影は支配力。
鏡華は愛。
一角は力。
薫は頭脳。
楓は速さ。
それの何れかを達成すれば、その時点で達成した項目の奴がこっちの味方として参戦する。
俺が達成した順番は、一人目は楓、二人目は鏡華、三人目は一角、四人目は薫、五人目は夜影。
夜影に至っては、他の四人を隷属させた時点で動きがとんでもねぇくれぇにヤバくなりやがった。そのせいで両腕と翼が12枚斬り飛ばされたぞ。三桁の実力だ? 確実に今の白夜叉よりもヤバかったってぇの。
しかも、ゲームの特性上隷属させなねぇと終わらねぇし、何回行動不能にしようとも、黒い羽が舞ったかと思えば傷が全て治っちまう。俺は死んでも、コイツらは無傷でゲームを終われるって寸法だ。
つまり、全員隷属させるしか生き残る術はねぇってことだった。
「とりあえず、治療頼むわ」
「心得た。カルタ、居るか?」
「此処に居ります、姐さん」
「新しい主が誕生した。そこに居るから治療してもらえぬか?」
「承りました」
病的に白い肌に、ほっそりした体。だが、出るところは出てる。なんというか、エロいな。見た目通り体が弱いみたいだが、戦えないわけではないらしい。掌には投擲によって出来た豆がある……………
「スゲェな。両腕と翼が治ってやがる。って、おい! お前らギフトゲームのときコイツの能力で回復してただろ!」
「そうだったかの?」
「ガハハハ! 細けぇこたぁ気にすんじゃねぇよ」
「………すいません」
「ッ! ………たく、構わねぇよ」
………そんな泣きそうな顔されたら許すしかねぇじゃねぇかよ。まあいい。
「すまねぇが、休ませてもらって良いか?」
「わたしでよろしければ、膝をお貸しますが?」
「頼むわ」
やっぱり、普通の枕よりも女の膝の方が寝心地が良いな。弾力があっても柔らかく、適度に暖かい。最高の枕だぜ。いや、最高の枕はヤハウェの膝だな。あれは魔性だ。一度味わえば2度と忘れられないブツだ。
心地好くて眠くなってきたぜ………
******
ワシの前で警戒もせずに眠るとは、余程のバカ者であろう。隷属させたとはいえ、先程まで殺し合いをしていたのだぞ? 何故そう安心できるんじゃ?
「皆の者。こやつに従って良いと思うとるのか?」
「俺は良いと思うぜ。
こいつとは中々気が合う。それに、コイツは裏切らねぇだろうよ。むしろ、此方が裏切ろうがまた仲間に招くだろう」
「私も賛成です。
この方は、口は悪くとも仲間を愛し、仲間に愛される方です。なにより、私はこの方が行った、仲間を守る戦いが好きです。例え殺し合ってたとしても、仲間になったらすぐに楓の周囲を視野に入れましたし、私が楓を殺しにいってもすぐにカバーしに行きました。だから、私はこの方なら付いて行っても良いと思います」
「…………ボクも………………賛成。
この……人…は、………仲間を守る…………ことも作戦の……なか…に入れてる。………だから、……………賛成」
「わたしも賛成です。
この人は、自分を蔑ろにすることはありますが、仲間を蔑ろにすることはしませんでした。その証拠が、貴女が本気を出した瞬間に即時に判断して力を解放してました。なにより、わたしたちを守りながら貴女を倒しました。わたしたちが求める絆は保証できるはずです。
貴女はどうなんですか?」
…………ワシか。
こやつは、仲間を見捨てればワシなんぞすぐに倒せたであろう。じゃが、こやつはワシが薫たちを執拗に狙おうが即座に防いでおった。
そのせいで、両腕と虹色に輝く20枚の翼のうち12枚をワシに斬り飛ばされておった。自らを盾にしてでも仲間を守るバカ者じゃが、ワシらが仕えるのも悪くわないじゃろう。
「そうじゃな。
ワシはこやつが主でも良いと思っておる。じゃが、こやつは仲間に対して何かしらのモノを抱いておる。それは恐怖に近いじゃろう。失うことを酷く恐れておる。じゃから、ワシらでこやつの心を守ろうではないか」
『応ッ!』
ワシらはお主に忠誠を誓おう。
お主の心を守ろう。ワシらが居る限り、お主が折れぬように支える接ぎ木となろう。
じゃから、ワシらを失望させるでないぞ。
17/9/3
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