堕天使総督始めました。   作:土岐宙

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今回からはアザゼルさん視点に戻ります。


10話

「ほほう。

 ではどこの"ノーネーム"様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

こっちが示すものがねぇってわかってて言ってやがる。さぁてと、どう料理してやろうかねぇ。

つっても、俺がなにかやるってぇのは不味いんだよなぁ。

本来なら曹操のガキが喚ばれる予定だったってぇのに来ちまったし………

てか、曹操をこっちに連れて来りゃ良いんじゃねぇか?

ちょうど【転移する指輪】(トランジション・リング)持ってるし、呼んじまおうか?

ん? なんかこっちに飛んでもねぇスピードで移動してくる奴がいるんだが…………

 

「その……あの……私達に、旗はありま「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ」きゃあ———————………!」

 

太陽神が何やってんだ!

いや、正確に言っちまえば太陽だけじゃねぇが、神が何やってんだよ!

今度ヤハウェにやって貰おうか………

 

「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

 

「やりません」

 

十六夜の奴何言ってやがんだよ!

少しはウサッ娘の心配をしてやれよ。

 

「し、白夜叉様⁉︎どうして貴女がこんな下層に⁉︎」

 

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!やっぱりウサギは触り心地が違うのう!ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 

「し、白夜叉様!ちょ、ちょっと離れてください!」

 

白夜叉ねぇ。

白夜の神格も持ってるってことか。

名前は重要なヒントになるが、流石に分かりやす過ぎる気がすんぞ。

ウサッ娘が此方にロリ投げてきやがった。

 

「ウサッ娘!

 見た目だけとはいえ、ガキを投げんじゃねぇよ! 危ねぇだろうが」

 

「す、すいません!」

 

「なんじゃと!

 私は仮にも太陽を治める者だぞ。もっと敬わんか!」

 

「俺より弱い癖に何言ってやがる。

 せめて俺に勝てるようになってから言いやがれ」

 

「宜しい、ならば決闘じゃ!」

 

「良いぜ、本気でかかってこいよ」

 

ウサッ娘が何やら呆けているが、関係ぇねぇ。

俺がやりたいようにやるだけだ。

白夜叉が拍手したと思ったら、世界が移ったが、問題ねぇ。

【黒竜王の剣尾】(アナイアレイション・ブレイドテイル)の【禁手】+【星光の双銃】(アースライト・ツインガン)の【禁手】+【原点の翼】(ウイング・オブ・オリジン)の5割で一発で仕留めて(消して)やるよ。

大人気ない?

知らねぇな。

俺に喧嘩売った方が悪ぃんだよ。

 

「な、なんじゃその姿は!」

 

「企業秘密だぜ」

 

俺が変化した後の見た目は、騎士甲冑に九本の鋭利な刃物で出来た蛇腹状の尻尾に、両手には星の生命力とも言える莫大なエネルギーを放出させた銃があり、背中には仄かな虹色の光で出来た20枚の翼が姿を見せている。

 

「悪いが、てめぇが勝てる相手じゃねぇよ。俺はな」

 

「ちょ! ストップ!」

 

「消し飛べ!」

 

ヤベェな。

この盤場ごと店員含めた全員消しちまったぜ♪

 

******

 

目の前に土下座する白夜叉が居るんだが、周りの通行人がとてつもなく冷たい視線を俺に浴びせてくる。

 

「私が悪かった!」

 

「良いから頭上げろ。

 俺を変質者に貶めるつもりか?」

 

俺の言葉を聞いて頭上げたは良いが、俺の言葉次第でまた土下座を繰り出すんじゃねぇか?

 

「今回のことは水に流してやる。

 その代わりにコミュニティの建て方と、俺たちのギフト鑑定を頼むわ」

 

「なっ!

 いきなり消し飛ばしたと思ったら、良くもまあそこまで大きなことを言えるものですね?」

 

「良い。

 意地の悪い性悪店員の詫びも含めてる。責任は私が取る」

 

「…………ですが!」

 

「良いと言っておる」

 

悪いことしちまったかねぇ。

とは言え、先に喧嘩売ってきたのはそっちな訳だし、勘弁してくれよ。

襖を開けてみりゃあ外が見える畳張りの和室に出たが、この和室から見れる景色は明らかに本物だ。

つまり、此処はさっきの店とは別の処だろう。

 

「生憎、暖簾は降ろしたのでな。

 私室で勘弁してもらいたい」

 

「良い香を焚いてんじゃねぇか」

 

「ふむ。趣味が合いそうじゃな。

 さて、改めて自己紹介をしようかの。

 私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えるコミュニティの幹部、白夜叉だ。

 以前から黒ウサギを弄っていたのでな。コミュニティ崩壊後も、ちょくちょく贔屓してくれる美少女と認識してくれ」

 

「ハイハイ。

 いつもお世話になってるのですよー」

 

ウサッ娘はウサッ娘で良い乳してるみてぇだが、白リも本来の姿に戻ったら、中々の美女になりそうだ。

そう考えると、白夜叉を隷属させてみっかねぇ?

 

「その外門って?」

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。

 数字が若いほど都市中心部に迫り、同時に強大な力をもつ者達が、本拠やコミュニティを構えているのです。

箱庭は外壁から数えて七桁・六桁を下層とし、五桁を中層、それ以降の数字の桁を上層と区別して強さを分けているのです。

四桁ともなれば修羅神仏が数多くいる化物の巣窟なのですよ。」

 

その言葉と共に紙を見せてくるが、それはどう見てもバームクーヘンにしか見えないモノだった。

 

「……巨大玉ねぎ?」

 

「いやバームクーヘンだろ。」

 

「そうね、バームクーヘンね。」

 

「バームクーヘン食うか?」

 

「「食べる!」」

 

俺は【格納する腕輪】(ストア・ブレスレット)から、ヤハウェが作ったバームクーヘンを取り出して耀と飛鳥に投げ渡すと、食べ溢しが無いことに驚く程の勢いで食べまくってやがった。

確か、こいつらはおれらと違って昼飯食ってたはずなんだが………。

 

「逆廻も食うか?」

 

「食うぞ」

 

「ヤハウェ特製のカロリー控えめのスタミナバームだ。

 味と栄養は保証するぜ」

 

「ありがとな」

 

ついでに俺も食うか。

やっぱり。ヤハウェ特製の抹茶バームはうめぇな。

そういや、白夜叉に渡してなかったな。

 

「ほれ。白夜叉には抹茶バームだ。

 ついでに、さっきの店員にもこの抹茶バーム渡しといてくれ。いきなり消し飛ばした詫びだ」

 

「うむ。ありがとのう。あやつにも確りと届けよう。

 さて、話を戻すぞ。

 さっきの例えでいくなら此処七桁の外門は一番薄い部分じゃ。

 一つ付け加えると、東西南北四つに別れており、ここは東側に当たる。その外側には世界の果てがあり、黒ウサギが持つ水樹の苗の持ち主もいる」

 

「なんだ?あいつの知り合いか?」

 

「そうだのう。そもそも奴に神格を与えたのは私だ。何百年前の話だったか忘れたがな。」

 

神格とは、生物に獲得するとその種が到達する最高ランクにまで種を底上げされるギフトだが、神格を授けられる者は限られている。

蛇は蛇神に。

精霊は神霊に。

鬼に与えれば鬼神と化す。

と、ウサッ娘が説明していたが、恐らくだが、俺も神格を授けられるんだが、言わなくても良いだろう。

 

「ってことはお前はあの蛇より強いのか?」

 

「当然だ。私は"東側階層支配者"。

 つまり東の四桁以下コミュニティ全ての頂点に立つ者だ。そんじょそこらの神と同レベルに考えてもらっては困る。

 とは言ってもさっきソコの神に倒されてしまたっがの」

 

無い胸を張り宣言する白夜叉。

 

"最強の支配者"

 

その言葉に眼を輝かせる、十六夜、耀、飛鳥。

 

「……そう。

 つまり貴女に勝てば実質私達が最強になるということかしら?」

 

「無論そうなるな」

 

「いいなそれ。手間が省けたぜ」

 

威勢が良いのは構わねぇんだが、白夜叉が俺に負けたせいで自分等でも勝てるかもって思ってんなら止めねぇとな。

今のコイツらじゃあ、逆立ちしてジャンプしても勝てやしねぇ。

 

「挑戦欲のある童たちだな。だが、面白い」

 

白夜叉もそれを受け入れるかのように逆廻たちを見回す。

それをウサッ娘が慌てて止めようとするんだが、それを俺が制す。

 

「あ、アザゼルさん!?」

 

「まあ、少し様子を見ようじゃねぇか。

 もし、危ねぇ様なら俺が止めるからよ」

 

「ですが!」

 

「若ぇ者にはこういう挫折が大切なんだよ。

 下手にできる奴ってのは、すぐ死ぬもんなんだ。逆に、挫折ばっかしてる奴は案外生き残るもんなんだよ。

 つまり、経験することは良いことだぜ。何事においてもな」

 

「………わかりました。

 ですが、危なくなったらお願いします」

 

「はいよ」

 

 

 


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