叙事詩の悪に私はなる!   作:小森朔

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You書いちゃいなyo的なコメントを頂いたので書きたい前フリだけ先に書きました。多分5章前のイベント特異点。


亜種特異点ネタ

幻想錯乱領域ハースティナプラ

 

 亜種特異点への人理定礎値 A

B.C.????

 

平行世界線で英雄になることを拒み消えた者と、取り戻さんとする英雄たちの物語。

 

――それはあり得ないはずだった神代の可能性。

それは、諸悪の根源として生まれ落ち、生き抜いた王の死後の戦場で起きた。

王の死を受け入れられないものが引き起こす惨禍。戦場は一瞬にして形勢逆転し、阿鼻叫喚地獄と化す。

死者であるはずの将軍の復活、水神の参戦に、世界は破滅の兆しを見せたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あ……」

 彼はすべてを見、崩折れた。それは、些細なきっかけ。献上され、手にした瞬間起動したそれは、彼の漠然と思い描くそれとは、大きく異なっていた。

「なぜ!なぜ救われないんだ!どうして、一人だけ救われない!皆が救われるのだろう!そのために、それに向けて皆戦うのだろう!?」

 血涙を流し、ふらりふらりと揺れつつその手を伸ばす。作り変えるはかの王の生きる道。たとえ死んでいても、生きるように。

「許さない!許してなるものか!神でも、人でも、そうでないものであっても!」

 曖昧な笑顔が浮かぶ。ああ、もう二度と会うことができないなど、考えたくもない。救われるのだろう。そうでないならば、

「それでも生きたいはずだ!私は、それを肯定するだけだ!」

 慟哭が響く。

 

 そうして、世界は変容する。

 

 

 

「あーかーりー!どこなのー!」

「所長、どうかされましたか?」

 八百坂を呼ぶオルガマリーと鉢合わせして、立香とマシュは尋ねた。何か異変があったことを察したからだ。

「燈がどこにも居ないの。もしかしたら、新しい特異点行ったのかもしれないわ」

 どれほど呼んでも居ない。そのことがあらわしている可能性が濃厚になってきていたのだ。

 それまでに特異点に召喚されたサーヴァントの例があったため、オルガマリーはその可能性に行き着いていた。そうでもなければ、どこかしらで見当たるはずである。

「そうかもしれません」

「管制室へ行こう、所長。ドクターが何か観測してるかも」

「ええ、そうね」

 立香の意見にオルガマリーも賛成し、三人は管制室へ向かう。その特異点が一体どのようなものであるか知らずに。

 

 

 

 

 

 薄暗い部屋は、だからといってひどい環境でない。とても恵まれている。でも、日の光から遠ざけられてしまえば、人間は弱るものだ。自由もないここは、ひどく虚しい。

「姉上、姉上。婚礼衣装はいかがですか」

 どこに嫁ぐというのだ。私は男でも女でもないのに。ましてや、両性でも無性でもないのに。

「素敵ですよ。きっと、あの王子も文句はつけられないでしょう」

 そんなことがあるわけがない。誰が、鎖の跡や枷の痣だらけの者を欲しがるというのだ。

「あなたはここにいればいいのです、姉上」

 嘘だ。私は異物でしかない。もう死んだ。そうでなくとも、居るだけで世界をおかしな事にしてしまった。

「それから、ずっと幸せに暮せばいいのです」

 そんなことできるはずがない。私は、私の心のままに生きたかった。それが私の幸せだったのだから。ここでは、私は幸せになれない。この国での私はただの機構に過ぎない。

「ねえ、そうでしょう?」

 弟たちは皆、幸せそうに笑っている。

 

 もう、やめてくれ。私が、私で無くなってしまう。




悪役、というか元凶は二、三人いるつもりでいます。

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