異能の少女は何を齎す   作:如月しらす

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4 ホグワーツと幼馴染

 

 

 

 

 

買い物に行った際に新しく購入した本や教科書を読んでいたらあっという間に9月1日になっていた。

 

時間が経つのはあっという間だなぁと感じながらも身だしなみを整え、持ち物の最終確認をする。

 

煙突飛行粉で行くから少しはゆっくりしていられるが、席を確保しておきたいのでなるべく早く行かなくてはならない。

 

学校に行く前にお祖母様に挨拶するのも忘れずにして、両親へのお祈りもして…ああもう、やることだらけだ。

 

考えることに没頭していると、横からガッチャガッチャと音がする事に気がついた。。

 

何事かと思って見やると、ペットとして連れていくヨーロッパコノハズクのソワレがひたすら跳ねているのだ。

 

 

「え?へ?なに、なになにソワレさん外に出たいの?」

 

 

私の言葉をわかっているのかわかっていないのかは知らないが、コクコクと頷くソワレをケージから出す。

 

ケージから出たソワレは部屋の時計のある場所まで飛び、着地する。

 

何事かと思って見守っていると、今度は時計の上で小さく跳ねている。

 

流れにつられて時計を見ると10時30分。

 

…………しまったーーー!!!!考え込みすぎたー!!!!ゆっくりしすぎたー!!ああああああああああああああああ!!!!!!!

 

シャルロットに時間の事が伝わったのを確認したソワレは満足気に鳴くと、自分のケージに入っていく。

 

 

「ありがとうソワレさん、助かったわ…!もう行かなくちゃ…暫くそこでも大丈夫?」

 

 

大丈夫だ、と言わんばかりにピッと鳴くソワレに、シャルロットはごめんねと言いながら検知不可能拡大呪文のかけてあるトランクに詰める。

 

ソワレは賢いから、困ったことがあれば恐らく自力で解決するだろう。

 

そのままトランクを抱えて慌てて部屋を出る。

 

広間に煙突飛行粉をかけ、9と4分の3番線へ向かった。

 

 

 

 

 

 

駅のホームは暫くの別れの挨拶に来る家族や、ホグワーツの生徒でごった返していた。

 

人にぶつからないように気をつけてホグワーツ特急へ近づく。

 

汽車へ乗り込むと、予想していたとおり殆どのコンパートメントが使用されていた。

 

 

「ん……困ったわね…コンパートメントの中でソワレさんを一旦出してあげたいからできれば空いてるところがいいのだけれど……」

 

 

そうして何個目かのコンパートメントの前を通り過ぎた時だ。

 

突然勢いよくドアが開いたものだから、シャルロットは驚いて反射的に振り向く。

 

 

「あ、貴女……シャルよね!?」

 

 

そこにはシャルロットと同じ長い金の髪に穏やかな翠の瞳をもった少女がいた。

 

シャルロットはこの少女に見覚えがあった。

 

 

「………ダフネ…?」

 

 

この少女__ダフネ・グリーングラスは外に出なかったシャルロットと唯一関わりを持っていた同級生なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃぁ……改めまして、ダフネ・グリーングラスよ」

 

「えと、シャルロット・フリンデル…で、す………なんというか、改めてっていうのも少し、その、照れるわね」

 

 

場所を移してここはダフネが確保していたコンパートメントの中だ。

 

ダフネとシャルロットは母親同士の仲が良かったこともあり、幼い頃から両面鏡でよく話をしていたのだ。

 

お父様をなくして沈んでいた私に、お母様が気を使ってくれたのだろう、ちょうどその時にダフネと知り合った。

 

今シャルロットがある程度コミュニケーションがとれるのは社交力のあるダフネのおかげといっても過言ではない。

 

 

「そうね、私も少し恥ずかしいわ…!でも、やっと貴女に会えることが出来て私嬉しいわ!ここ最近音沙汰が無くて少し寂しかったけれど……!!」

 

「ご、ごめんなさいダフネ…色々あって……」

 

 

お母様が亡くなって、家の事や様々な手続きを数ヶ月に渡って対応していた為にダフネと話す時間を設けられたなかったのだ。

 

全面的に私が悪い、反省の限りである。

 

暫く談笑した後にダフネに一言言ってトランクの中からソワレさんを出していると、ダフネが何かに気づいたように声をかけてきた。

 

 

「そういえばシャルの瞳は澄んだ紫色じゃなかったかしら?私の記憶違い?」

 

「いいえ、紫よ。これカラーコンタクトなの、魔力を抑える為に必要な成分的にどうしても青になっちゃうみたいで」

 

「魔力を抑える?どうして?」

 

 

ダフネはシャルロットの言葉に首を傾げる。

 

そういえば言ってなかった。

 

 

「知っての通りフリンデルは異能持ちの家なんだけど、私の能力は周囲に影響を及ぼしてしまうものだから、このコンタクトで魔力ごと押さえ込んでるの。これ作るのに何年もかかったんですって」

 

「シャルも大変ねぇ…」

 

「ええ…でも、この力を制御できるように練習はしてるのよ?だけどうんともすんとも言わなくて…はぁ……」

 

「大丈夫よシャル、貴女ならいつか制御出来るようになるわ!それよりお昼ご飯、食べない?ママがランチボックスを渡してくれたんだけど量が多くて…」

 

「い、いいの?ありがたく頂くわ!ダフネのお家の料理は凄く美味しいってずっと聞いていたから気になってたの!」

 

 

そんな感じで仲良く昼食をとっていると、肩に乗せていたソワレがさっきから凄く頭をつついてくる。

 

何かあったのだろうか?それとも何か忘れてるとか?

 

今朝は忙しくて思いたる節しか無いのだが……あ、挨拶とお祈りをしてくるのを忘れていた。

 

しまった。これはお祖母様に怒られる。

あっなんか胃が痛くなってきた。悲しい。

 

 

「え、ちょ、ちょっとどうして泣いてるのシャル!?」

 

「自分の不甲斐なさに涙が………このチキン美味しい……」

 

「そ、そう……?ありがとう」

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

 

汽車がホグズミード駅に到着したのを確認すると、寝ているダフネをそっと起こす。

 

昼食をとったあと早めに着替えを済ませ、しばらく歓談していたのだが、ダフネが眠気を訴えてきたので暫く寝かせておいたのだ。

 

 

「ん……ぅん…まま…?」

 

「……ん?違う、ダフネ待って私ママじゃない、あっちょっと抱きつくのやめて!?起きて!!皆もう動いててこっちのこと見てるから!!!」

 

 

私の叫びを耳元で聞いたダフネはパチリと目を開けると、頬を染め目をそらした。

 

ついでに凄い小声でごめんなさいって言ってた。

 

うちのダフネちゃんがかわいい(かわいい)

 

 

「気にしなくていいわ、さ、ダフネ、はやく降りましょう。1年生はもう外で集まってるみたい」

 

「えっえっ大変…!急ぐわよシャル!」

 

 

2人は慌てて汽車を降りると、1年生をまとめているらしい大男の元へ向かった。

 

案内に従って歩いていくと、湖の湖畔へたどり着いた。

 

どうやらここからは4人組で小舟へ乗ってホグワーツへ行くらしい。

 

ダフネとシャルロットの同乗者はパンジーとミリセントという人達だ。

 

サクッと自己紹介を終わらせると早速お喋りタイムが始まる。

 

 

「ところでダフネ、あんたって双子だったっけ?」

 

 

パグ顔のような女の子__パンジー・パーキンソンがダフネに尋ねる。

 

 

「ふ、双子!?違うわよ、私は2つ下の妹がいるだけよ!?そりゃ、シャルは凄く可愛いけど…そんなに似てる?」

 

「金髪、長い髪、同じくらいの身長、でも顔はダフネが綺麗系シャルロットは可愛い系だね、後ろから見たら間違いなく判別つかないよ」

 

 

スパッと言いきったこの人はミリセント・ブルストロード。凄くガタイがいい。

 

 

「ま、あんた達より私の方が最高にイケてて可愛いけどね!もうどの男の子もメロっメロよ!」

 

「パンジー鏡見る?」

 

「なんでよミリセント」

 

 

ぎゃーぎゃー言い争いを始める2人を見ながらさらに話を進める。

 

 

「でもダフネは基本面倒見がいいわよね、やっぱりアステリアがいるからかな?身長も私より大きいし…」

 

「そうかしら…?大きいと言っても2.3cmの差じゃない!」

 

「でもさっきみたいに甘えるとことかはすっごく可愛いわ…!」

 

「忘れて……あの事は忘れて………………」

 

 

う〜~、と頭を抱えるダフネにクスクスと笑っていると、あっという間にホグワーツへと到着した。

 

案内役を副校長に引き継がれた後、新入生は小部屋へ突っ込まれる。

 

 

「いよいよ、組分けだわ…シャルはどこの寮がいいの?」

 

「うちの家系は皆バラバラだから予想がつかないわね…でも私はダフネと一緒だと嬉しいわ」

 

 

それからまた他愛ない話をしながら待っていると、前方の方がなにやら騒がしい。

 

が、副校長が戻ってきたことによりおさまったようだ。

 

さて、いよいよだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかんだで待つこと十数分。

 

「フリンデル・シャルロット」

 

ファミリーネームがFだから割と早い。

後ろにはダフネが控えてる、よし、頑張れ私の運命力。

 

シャルロットは意を決して組分け帽子なるものを被った。

 

『さて、君はフリンデルの子か。

おや、君には大きな野望があるようだね?』

 

『……貴方が何故それを』

 

『おや、あんまり怒らないでおくれ。これを皆に暴くつもりもない故な』

 

『御託はいいからさっさとしなさい、私にはやるべき事がある』

 

『それを叶えるためにはどんな手段も厭わない?』

 

『当たり前でしょう。私は絶対に________。』

 

『よろしい、ならば決まりであろうな』

 

「スリザリン!」

 

 

 

よし!やった、やった!!ダフネがスリザリンなのはほぼ間違いない、よくやった私の運命力。

 

スリザリンのテーブルへ向かうと、先に組分けされていたミリセントがおめでとうと言ってくれた。ありがとう。サンキュー。

 

ミリセントの向かい側へ席に着いたちょうどその時に、また組分け帽子がスリザリンと言う声が聞こえた。

 

恐らく私の後のダフネだろう。

顔を向けると、やっぱりダフネだった。

 

微笑みながらで足取り軽やかにこちらへ向かってくる。

 

うちの娘がかわいい(かわいい)

 

ダフネは迷いなくシャルロットの隣へ腰をおろす。

 

 

「やったわねシャル!これから卒業までずっと一緒よ!!」

 

「ええ、本当に一緒でよかった…嬉しいわ」

 

 

それからも着々と組分けは進んでいき、校長の二言三言が終わると待ちに待ったディナータイム。

 

スリザリン寮の皆と一言二言交わしながら夕食を食べ進めていたのだが、やたらと籠の鳥姫だのなんだの言われている気がする。

 

いったいなんなのだそれは。

 

それにしたってパンジーがやばい。

 

すっごい男の子達にアピールしてるけど、全力で無視されてる。

でも当の本人は無視されてるって気づいてない。なんという鋼のメンタル。

 

 

「あ、シャル、その糖蜜パイどこにあったの?」

 

「マルフォイの方、パンジーに取り分けてもらったの、これかなり好きだわ」

 

 

いやこれ美味しい、初めて食べたけど本当に美味しい。

死ぬほど甘そうで砂糖の塊吐きそうだと思ってたけど、隠し味のレモンの酸味がいい感じにマッチしてて甘酸っぱい仕上がりになっている。

紅茶と凄く合う。ありがとう神様、ありがとう。

 

 

「だふ、グリーングラス、もしよかったらこのパイをあげよう。僕がわざわざ取り分けたんだ、ありがたく受け取れ」

 

 

会話を聞いていたらしいマルフォイがダフネに糖蜜パイの乗った皿を突き出す。

その行動に、その場にいた全員が目を丸くする。

 

 

「あらドラコ、私の為にありがとう」

 

 

ダフネが微笑んでパイの乗った皿を受け取ると、ドラコの頬が少し赤く染まる。

皆一斉に察したようだがそれを表に出すまいと各々あらぬ方向を向く。

 

 

「もう、シャルったら、頬にクリームがついてるわよ?」

 

「え、あれ、本当に?…さっき食べたトライフルのクリームかしら、どっち?」

 

「え?シャルロットにクリームなんかついてな__」

 

「こっちよ」

 

ミリセントの言葉を遮ってダフネはそう言うとシャルロットの左頬を舐めた。そう、舐めたのである。

 

「!?!??」

 

突然の事にキャパオーバーしたシャルロットは固まる。

そのままダフネはマルフォイの方を見てにやりと笑ったのである。

それを見ていたマルフォイもシャルロットと同じくキャパオーバーで硬直している。

 

この時見ていたスリザリン生は思った。

この人、マルフォイを弄んでいる…と。

 

そのまま夕食をとりおわると、今学期の注意事項やらを言われてから解散となった。

 

 

 

スリザリンの寮は地下にある。

 

寮内は緑と銀で統一されていてやや冷たそうな印象だが、設えられた備品や家具は一級品だ。

 

純潔の貴族様ばかりのこの寮は結構勝手に弄られている様子だったが何気にセンスがいい。

 

 

「我らスリザリンは尊き血をもつもの、優秀なものばかりなゆえに、他寮よりも人数が少ない。部屋もかなり広いしだいぶ余っている。勝手に部屋割りなど理不尽な事はしない。各自個室をとるか相部屋にするかは自由にやってくれ。男子はこっち、女子はあっちだ」

 

 

監督生はそれだけ言うとさっさと自分の部屋へ帰っていった。

 

なんという投げやり加減。

 

スリザリンは血筋に重きを置くところがある。

 

まあ、はっきり言うとこの学年にはマルフォイがいる。

 

監督生だからといってあまり上から高圧的な態度をとるのもよろしくないのだろう。

 

機嫌を損ねてパパフォイにちくられました、結果家がなくなりましたとかは洒落にならない。

 

 

「シャル、もしよかったら相部屋になりましょうよ」

 

「…ダフネ、いいの?」

 

「もちろんよ!長年鏡越しだったし、生の貴方を見て話したいことがいっぱいあるのよ!さあ行くわよ私達のスイートホームへ!」

 

「………え?ちょっと待って何、スイートホームって何、え、ちょ、助けてミリセント……ッ!」

 

 

ミリセントはその様子を見て手を振るだけだった。

 

そんな、唯一の常識人だと思ってたのに!

 

ああ!ダフネ曰くスイートホームへ連れ込まれる…ああああああああああ

 

 

 




イメージしやすいかなと思い、シャルちゃんの見た目を軽く落書きで描いてみました
時間があればデジタルで描けたのですが…

【挿絵表示】



ここでコンタクトについて説明をさせてください。
シャルロットが3歳の時にミラがこのままの状態だと可哀想だと思い、アルフレッド達には内緒で知り合いだったダンブルドアに魔力を抑えるコンタクトの制作とホグワーツの入学前に届けて欲しいという依頼をしました。
魔力を抑えるコンタクトの開発は予想以上に難航し、何年もかかりました。
その間に相談もなしにアルフレッドは命を使ってシャルロットの魔力を封印。
当然実の息子を失ったミラはぼろ泣き。コンタクトのことなんてすっかり忘れていました。
そのあとソフィアが今度は逃がすためにシャルロットの封印を解いた為に、今後どう守れば良いのかミラは困りはてていました。
ですが、シャルロットの11歳誕生日にダンブルドアから手紙が届きました。
軽く抜き出すと、君がいつの日か頼んでいたものを今年の夏に送る予定だが、大丈夫かね、と。
ミラはそこでようやくコンタクトの事を思い出して、シャルロットの能力を抑えホグワーツに守ってもらうという当初の目的を思い出し、シャルロットにホグワーツに行ってもらいました。

どこかでいれようかと思っていたのですが、入れる部分が思いつかなかったのでこちらで説明させていただきました…!



スリザリン内部については自由に、ラフにやって行きたいですね!軽く行きましょう軽く
ダフネとシャルちゃんの話を考えてる時が一番楽しいです




2017/08/23 13:55
金春花様よりご報告いただいた誤字を変更いたしました

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