異能の少女は何を齎す   作:如月しらす

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3 ダイアゴン横丁、再び

 

 

 

 

 

 

1週間後、シャルロットはミラとダイアゴン横丁に来ていた。

 

もちろんコンタクトをつけて。

 

そのコンタクトは薄氷色のカラーコンタクトになっていて、シャルロットの紫紺色の瞳は隠されていた。

 

 

「お、お祖母様…大丈夫?これ、被害出てないかしら?」

 

「うん、大丈夫そうだよ、ほら、魔力ごと抑え込んでいるから影響も少ない。本当に少しばかり威力が上がるだけだから問題はないわね」

 

 

ミラの言葉にホッとする。

 

こんなに人の多いところは5歳のあの時以来だ。

 

 

「それじゃあ私は銀行に寄ってくるからその間に制服の採寸と杖を見繕っておいで。連絡はこれでね」

 

 

そういうとミラは自分の耳につけていたイヤリングを1つシャルロットに手渡す。

 

これはミラの夫、つまり、シャルロットのお祖父様に結婚の時にプレゼントされたものらしい。

 

どんなに離れていても対になったイヤリングを持つもの同士で会話ができるという魔法具だ。

 

少し両面鏡と似ている。

 

 

「じゃあお祖母様またあとで…!」

 

 

お互いに軽く手を振って別れる。

 

まずは制服の採寸に行こう。

 

 

 

 

シャルロットはマダム・マルキンの洋装店の前までやってくると、恐る恐る扉を開けた。

 

 

「あら、いらっしゃい。制服の採寸かしら?」

 

 

若干ふくよかだが、人の良さそうな笑顔を浮かべた女性に話し掛けられた。

 

彼女がマダム・マルキンなのだろうか。

 

 

「あの、すみません…お邪魔しています、ホグワーツの制服の採寸をしていただきたく「ホグワーツね、こちらに来ていただける?」あ……はい…!」

 

 

会話は途中で遮られ、呼び寄せられる。

 

きっとこの時期は学生がひっきりなしに来る為に忙しいのだろう。

 

指定された場所に行くと先客がいた。

 

私よりも明るいプラチナブロンドの髪をオールバックにした少年だった。

 

 

「やぁ、君もホグワーツなのかい?」

 

「え、ぁ…ええ、そうなの、貴方も?」

 

 

驚いた。まさか話しかけてくるだなんて思っていなかった。

 

どうしたらいいのだろう、こんな感じでいいのだろうか?同年代の子と話すのはほとんど初めてだから緊張どころの話じゃない、死にそう。

 

 

「ああ、僕はマルフォイ、ドラコ・マルフォイだ。君は?」

 

「マルフォイ…?マルフォイってあのマルフォイ?凄い…!初め、まして……私はシャルロット・フリンデルよ」

 

 

マルフォイといったら知らない人がいないくらいの有名な名家じゃないか。

 

家なんかよりずっと名のある凄い家だ。

 

外の世界って凄い…なんかもう怖い。

 

 

「ああそうだ、君の思っているとおりのマルフォイさ、ふふん。逆に僕の家以外のマルフォイなんていない。それにしてもフリンデル…?長らく社交界に姿を表さないから廃れていたのかと思っていたよ」

 

 

あ、ちょっと失礼な人だこの人。

 

いや、確かに社交界に出ていなかったフリンデルも悪いけど…悪いけど!

 

 

「…少し事情があったの。両親にかわってお詫びするわ」

 

 

とりあえず謝っておこう。

 

ここは穏便にすませておきたい。

 

 

「ふ、じゃあ僕はもう終わったから出るよ、また学校で会えたらいいね」

 

 

出ていくオールバックの少年と交代でやって来たのは丸眼鏡にくしゃくしゃした茶髪の男の子だった。

 

やっぱりひっきりなしにお客さんが来るんだなぁ、なんて思っているとばっちり目が合ってしまった。

 

いけない、ずっと引きこもってた私みたいなのには辛い流れ……観念するしかない。

 

 

「こ、こんにちは…?こ、ここ、ここは初めて?」

 

「え?うん、そ、そうなんだ。僕ハリー・ポッター、よろしく」

 

 

手を向けられた。

 

こ、これは握手ということでいいのでしょうかお祖母様…!

 

とりあえず握手しておこう。

 

 

「私はシャルロット・フリンデル…って…待って、ハリー?ハリー・ポッター!?うわぁ…本物……凄いわ……」

 

 

ハリー・ポッターといったら生き残った男の子として有名だ。

 

本しか読んでない私でもよく知ってる。

 

え?何、外の世界ってこんなに有名人にホイホイ会えるものなの?こわい

 

 

「そ、そんなに有名人なのかな、僕って」

 

「有名人もなにも…本しか読んでない私だって知ってるくらいだもの、もう超有名人といっても差し支えないんじゃないかしら…?この魔法界に知らない人はいないと思うわ、多分」

 

「君、本しか読んでないの?外に出た事とかは?」

 

 

結構ぐいぐい来るんだなぁこの子。

少し驚いた。

 

 

「5歳までは1度も。その後は年に数回くらいかしら?でも私はそれで満足してるからいいのよ、それに、本好きなの」

 

「そ、そうなんだ。変なこと聞いてごめん悪気はなかったんだけど…」

 

「いいのよ気にしないで、採寸も終わったし、またホグワーツで会いましょう」

 

 

私はドアの方へ向かうが、最後にマダムに呼び止められる。

 

 

「ミス・フリンデル、買い物が終わった頃にでも受け取りに来てちょうだいね」

 

「はい、ありがとうございます。お邪魔しました」

 

 

シャルロットはペコリとお辞儀をしてからお店をあとにした。

 

 

「あの子可愛いし、礼儀もいいし、いい子よねえ。他の名家の子みたいに驕ってないわ」

 

「あの子……フリンデルさんの事ですか?」

 

「あらやだポッターさん、独り言聞こえてたかしら?」

 

 

この人かなり大きい声で話していた気がするのだが…そこはつっこまないでおこう。

 

 

「すみません、聞こえちゃったんでつい」

 

「やだもう謝らなくていいのよ、私声が大きいってよく言われるの、ほほほ。それでフリンデルさん、あの子もかなりの名家なのに自意識ないのかしらね…?」

 

「そんなに有名なんですか?」

 

「ええ、そりゃもう、フリンデルといったら異能持ちのお家ですもの。その中でもあの子は異質。フリンデルの籠の鳥姫なんて言われてるわね、生まれてこの方1度も社交界に出されたことがないの。少し…不憫よね」

 

「そう………なんですか」

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

 

 

 

 

「見つけたわ、オリバンダー杖店、ここね」

 

 

シャルロットは意気込んでお店の扉を開けた。

 

店内は少し暗めだが、木の良い香りがした。

 

棚に収まりきらないくらいの数々の杖がシャルロットを出迎える。

 

 

「おぉ、いらっしゃいませお嬢さん、杖をお求めかな?」

 

 

カウンターの後ろで杖を整理していたおじいさんがシャルロットに話しかける。

 

きっとこの人がオリバンダーさんなのだろう。

 

 

「はい、お願いしても大丈夫ですか?」

 

「もちろん、喜んで。お名前と杖腕をお聞きしてもよろしいかな?」

 

「ぁ、えと……シャルロット・フリンデルです。杖腕は…右?かしら」

 

 

シャルロットの名前を聞いたオリバンダーはカウンターから身を乗り出す。

 

 

「おお!なんと、フリンデルのご令嬢であったか……!これはこれは、お会い出来て光栄です」

 

「え!?あの、オリバンダーさん…?私は、そんな、畏まられるような人間じゃありません…!顔を上げてください…そ、それよりも杖を……!」

 

 

突然のオリバンダーの畏まった態度にわたわたするシャルロット。

 

こんな姿お祖母様に見られたら絶対絶対叱られる気がする。

 

 

「おっと、私としたことが……そうでした、杖ですね?少々お待ちを」

 

 

そういうと、オリバンダーはいそいそと店の奥へ消えていった。

 

数分後、大量の箱を抱えて戻ってきたオリバンダーさんにシャルロットが気を使ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

あれから何本か試したが、一向に決まる気配がない。

 

オリバンダーもシャルロットも困った顔をしていた。

 

そこへ、用事の終えたミラが合流した。

 

先程イヤリングでオリバンダーの店にいると連絡をとったのだ。

 

 

「あらシャル?貴方まだ杖が決まってなかったの?」

 

「なかなかに難しいお客さんでして…」

 

「んー、そうねえ……」

 

 

ミラは少し考え込むと、かなり上の方にある白い箱を指さした。

 

あれなんていいんじゃないかしら?なんて言いながらこっちに引き寄せる。

 

 

「おや、これは…月桂樹にユニコーンの鬣とガーネットの粉末を混ぜ合わせたもの、24cm。所持者に従順で扱い易い。その代わり信頼を得るのは少し大変。どうぞ、お嬢さん」

 

「いや、お祖母様?そんな簡単に選んだ杖がぴったりな訳…な、い………あれ?」

 

 

ミラが選んだ杖をオリバンダーから手渡される。

 

それを軽く振ると、シャルロットの周りに魔力で出来た色とりどりの蝶が舞った。

 

 

「おお、素晴らしい…!!早速お包みしますので、さ、杖をこちらに」

 

「ほらみなさい私の見込み通りね!」

 

「流石お祖母様……!!」

 

 

その後、杖の代金を払ってから、家には置いてない足りなかった教科書やら鍋やらを買ってその日は終わった。

 

魔力をコンタクトで押さえつけるのは少しキツイが、外の世界はとても楽しかった。

 

新しい出会い、人との触れ合い。

シャルロットは当たり前のことが出来る喜びに浸っていた。

 

 




ハリーとフォイは邂逅できませんでした。
よかったねハリー(白目)

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