ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

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ついに決戦です。
楽しんでいただければ幸いです。
そして、みなさん新年あゲムしておめデウスです!


特別編 仮面ライダードラゴンズ[裏技]My Heroineを奪還せよ! ファイナルステージ

 

  千優とグラファイトは、それまでのものとは一線を画する、一段一段に金色の装飾ときらびやかな彫刻、そして両脇に神殿にあるような石柱が立っている白い階段を駆け上がっていく。後一階層……ゲムデウスを攻略すればゲームクリアである。

 

  自然と二人の足は早まっていき……そしてついにそこにたどり着いた。そこは、いかにも決戦の舞台にふさわしい凄まじい存在感を持つ大きな部屋であった。柱一つ一つに豪奢な装飾が施され、赤いカーペットが敷き詰められている。天井にはシャンデリアがいくつも輝いていた。

 

  だがそれよりも目を引くのは……等間隔に並べられた石像だろう。一つ一つが凄まじい完成度を誇るそれは、まるで今にも動き出しそうである。

 

  右側には、黒と金の戦士、両刃の薙刀を持つ六本角の赤と銀の戦士、片手に龍を模した武器を持つ赤い龍のような戦士、赤いスーツと銀色のプロテクターを纏った戦士、全身に黄金の鎧を纏った大剣を持つ戦士、背にバチを背負い、剣を構える鬼戦士、銀と赤、黒で構成された鎧を纏うカブトムシのような戦士、赤いアンダースーツに胸の部分に目のような黄色いパーツが付いた鎧、カラフルな仮面の四つの顔がついた剣を携える戦士、黄金の鎧と赤いマントをたなびかせる戦士、ピンクと黒のバーコードのような戦士。

 

  左側には、エックスを模したかのような仮面の剣と盾を持った戦士、六枚の鳳凰の翼を広げ片腕に円形の武器をつけた戦士、ロケットを模した大剣を持つ青色の戦士、ダイヤモンドのような水色の宝石と銀色の鎧を着た戦士、南蛮鎧のような甲冑を纏った七色の目を持つ戦士、左肩にタイヤをつけた赤色の戦士、ロングコートのようなフード付きパーカーを纏った一本角の戦士、黄金の長髪をたなびかせる星をかたどった黄金の鎧を纏う戦士、そして赤い目と青い目を持つ黒色の戦士。

 

  総勢十九人に昇る戦士たちの石像の並ぶ奥……部屋の最奥にある真紅の幕が垂れ下がった場所は、これぞまさに魔王の座する場所と言わんばかりの豪奢な椅子が設置されており……そしてそこには、足を組み不敵な笑みをたたえている正斗が座っていた。

 

  二人は顔を見合わせて頷きあい、正斗に向かって走り出す……が、あと少しで正斗にたどり着くというところで、突然ヌッとどこからか現れた四つの影に進行を邪魔されて立ち止まる。二人の歩みを邪魔したのは四人の男女だった。

 

  一人目は、正斗の世界でポッピーとライバル関係な言で有名なアイドル善沙闇子(いいすなあんこ)こと、ツインテイルズの一人であるイースナ。幼い頃は弱気でコミュ障であった彼女は背筋を伸ばし、堂々と立っている。その手の中に持つのはEの文字が刻まれた白いUSBメモリ……T2エターナルメモリだ。

 

  彼女を変えたのは一人の男。男に鍛え抜かれた彼女は、千優の世界のイースナと違い生身でありえないほどの強さを誇る。愛香とタメを張るレベルといえば分かりやすいだろうか。そんなイースナが纏うのは、男と同じ赤いラインの走った黒いジャージだ。

 

  二人目は、左門司翔介(さもんじしょうすけ)。かつて一人の男に拾われたハーフボイルドな探偵の息子であり、彼もまた名の知れた探偵の一人だ。仕事に関しては、父の意思を継ぎハードボイルドであろうとしているが、やはりハーフボイルドであるのが悩みどころである。

 

  また彼は正斗の中学時代からの友人であり、正斗がその人柄を信頼して専属探偵として……まあぶっちゃけ正斗は自分で大抵のことはこなせるので、主に社員の……雇っており、更に正斗より受け取った力でツインテイルズの陰で密かに人間が作り出した怪物たちを倒すヒーローでもある。

 

  三人目は善沙テティスこと、元メガ・ネプチューンMr.Ⅱ。一度プテラギルディの手により大破し正斗の手によって人間として再生した彼女はイースナの肩に手を置いて不敵に笑っていた。特徴は黒と白の混ざったツインテールにした髪と眼鏡だろうか。

 

  人として新たに生を受け、イースナをその命の続く限り守り抜くという決意をしたテティスもまた、正斗により力を与えられたツインテイルズの一員だ。その手にあるのは……丸い形の眼球のようなものの上に無限のレリーフが肩作られた黒いアイテム。

 

  そして最後の一人は……一言で言うならばメイドだった。そのメイド服に身を包んだ女性の名前は桜川尊。神堂慧理那に仕えるメイドであり、また戦闘もこなせるプロフェッショナルである。ちなみに正斗の学校では妖怪結婚したいの名前で有名だ。

 

  本来なら守るはずの慧理那とグラファイトに守られ続け、自分の弱さに歯噛みしていた彼女はその想いの強さ故かガシャットを起動するに足りうるツインテール属性を持ったことによりツインテイルズの一員となったものである。

 

  突然現れた四人に困惑する二人に、正斗が拍手をして声をかけた。

 

「二人とも、よくここまでたどり着いたな。賞賛を送ろう」

「……ああ、マジで大変だったよ」

「だが、慧理那のためと思えば……この程度、へでもない」

「ふっ、そうか……ならば最後の関門だ。四天王を倒し、私にたどり着いてみろ。さあ、第四ステージスタートだ」

 

  その正斗の声に従うようにまたしても近くの壁が開いて観客席がせり出し、そこに先ほどのメンバー+龍兎と龍美、映二。そして本来なら留守番しているはずの千優の世界のトゥアール、膝の上にライゼクスの幼体を乗せた千優の弟守友、Dr.シャインがいた。

 

  驚く千優に、警備は万全だ、彼らは私が招待したと正斗から説明が入る。正斗が大丈夫と言うのだから、おそらく大丈夫なのだろうと二人は納得した。

 

  それを見計らったかのように四人が二人に一歩近づき、それぞれ自分の変身ベルトを取り出して準備に入る。

 

  イースナと翔介は赤いスロットが片方だけついた黒いバックル……ロストドライバーを、テティスは腰の前に手をかざしてそこから黒と白の炎と共に一つ目玉とギザギザの歯が並んだ口の描かれたベルトを、尊はゲーマドライバーを。テティス以外の三人がそれぞれのドライバーを腰に押し当てると自動でベルトが装着される。

 

「……いきますよ、翔介さん」

「任しときな、イースナ」

 

  頷きあったイースナと翔介はそれぞれT2エターナルメモリと、Jの文字が刻まれた黒いUSBメモリ……T2ジョーカーメモリを取り出して下部のボタンを押し込む。

 

《ETERNAL!》

《JOKER!》

 

「さあ、暴れたろか!」

 

  手に持ったアイテム……〝シャドウムゲンゴーストアイコン〟の左側のボタンを押し込む。すると七色の目玉が変化して禍々しい形の無限のマークが空中に浮かぶ。

 

「……0速」

 

  不敵に笑った尊は黄色いガシャットを右手に持って前に突き出し、軽くスタータースイッチを押す。

 

《BAKUSOU BIKE!》

 

  二人はロストドライバーのスロットにメモリを差し込み、イースナは右半身を後ろに引いて、翔介は握った右手を構える。ロストドライバーからそれぞれ金色の波動と、紫がかった黒色の波動が空間に広がっていった。

 

  テティスはベルト……カオスドライバーの蓋を開けて中にシャドウムゲンゴーストアイコンをセットし蓋を閉じて右側のレバー…デトネイトリガーを外に引く。するとドライバーの目の部分から黒いロングコートのようなものが飛び出てきてテティスの周りを飛び回った。

 

《ハカイシンカ! アーイ!コッチヲミナー!コッチヲミナー!》

 

  尊の背後には爆走バイクのゲームディスプレイが出現、杯型のアイテム箱が黄色いゲームエリアと共に展開されていった。そして二人の体の前面には《GAME−START》の文字が浮かび上がる。

 

「「「「変身!」」」」

 

  イースナは構えていた右腕を勢いよく振って、翔介は空いていた左手でロストドライバーのスロットを外側に倒し、胸の前で印を組んだテティスはカオスドライバーのデトネイトリガーを押し込み、尊は一回転した後ガシャットをドライバーに挿すとレバーを展開する!

 

《ETERNAL!》

《JOKER!》

 

  イースナと翔介の顔に涙のような複雑なラインが浮かび上がり、右手を上げたままのイースナは加速度的な音声で、こちらもポーズを決めたままの翔介は心が静かに滾ってくるような音声が鳴り響き、周囲に展開された風がそれぞれ白と黒の鎧をその身に纏わせた。

 

《ホウカイガン! シャドウ!MY NAME IS DARK! SHADOW!PAIN! ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴーストォ!》

 

  クルリと体を反転させ、背中を見せたテティスの体にロングコートが覆いかぶさり、漆黒の炎がその体を覆ったかと思えばその身を変身させた。

 

《ガシャット! ガッチャーン! レベルアーップ!》

《爆走!独走!激走!暴走!爆走バイク〜!》

 

  尊は体の周りに現れた光輪のパネルのうち一つを回し蹴りでセレクトし、パネルが巨大化して彼女の体を通り抜けて変身させる。

 

  まずイースナだが、その体に上から下にかけてグラスギアの融合した黒と白のツートンカラーの体にぴったりと張り付くような軽装鎧を纏っていた。そのダイナマイトボディ……これも千優の世界のイースナとは圧倒的に違う……に対して割と際どかった。

 

  頭に側頭部の両側面より前に曲がった機械じみた黒い角に、前面にはEを横に倒したかのような純白の三本角を。両目は黄金色に変わり、眼鏡は白色に、そして無限を模したかのような形状へと変化している。

 

  首にはあらゆる攻撃を跳ね返す顎下から足首まで背部を覆い隠す黒いマントを羽織り、その下の豊かな双丘の揺れる胴体には一見鱗のようにも見える白いグラデーションのかかった鎧と水着のようなスーツを纏っていた。

 

  両腕と両足には胴体の鎧と同じく白でグラデーションのかかった機械じみたアーマーをつけ、ところどころのパーツが金色に発光している。また、露わになっている細いながらも程よく肉のついた太ももには所々白いアーマーが張り付き、左太ももには右腕と胸同様、黒いスロットがいくつも連なったリングが装着されていた。

 

  これが、イースナの変身したテイルエターナルの姿である。

 

  次に翔介。こちらはツインテイルズや庄助のような戦士……仮面ライダーに共通する体全てを覆い隠す全身アーマーだった。彼は他の三人と比べ、比較的シンプルな見た目をしている。

 

  手首と足首、肩アーマーの縁には複雑な模様の刻み込まれた紫色の角ばった形状のリングが装着され、全身をぴったりと黒いアーマーが覆っている。規則的に角ばったラインの走るアーマーはシャンデリアに照らされてきらめいた。丸い両目は赤く輝き、その上には銀色の装飾が輝いている。その体に銀色のベルトが良く映えた。

 

  それが、左翔介の変身する仮面ライダージョーカーの姿である。

 

  さらに次はテティス。ゆっくりと自動的に被らされていたフードを下ろすと、銀色がかった美しいツインテールの黒髪が露わになった。そして振り返れば、額に七色の一本角が生えているのがわかった。顔には黒い模様が浮かび、両目はオレンジ色に輝いている。

 

  膝下の半ばまで届く星のように白いラメが散りばめられた黒いロングコートに繋がっている両肩のアーマーはやや角ばった形状で、そこから伸びるすらりとした両腕には無限の模様が刻み込まれた薄い鎧を肌に纏い、手首と両手には黒色のリングと手袋をつけている。

 

  ロングコートに隠されたイースナ以上の豊満な体には黒くきらめくアーマーを装着しており、巨大な双丘を覆う胸部装甲には炎と禍々しい形の目を合体させたかのような模様が刻まれている。その下には白いアンダースーツを纏い、細いウェストにやや不釣り合いな大きなドライバーの下から伸びる長い両足にも腕と同じような装甲を纏っている。

 

  それが善沙テティスの変身する、テイルシャドウこと仮面ライダーシャドウゴースト:シャドウムゲン魂の姿であった。

 

  最後に、尊。彼女もまたなかなか露出度の高いアーマーを身にまとっていた。ガシャットを使うライダー共通の胸部装甲に首を守る銀色の襟のようなパーツ、上結びにされた茶色だったツインテールはスカートと肩アーマー、ブーツに合わせるように黄色に変わり、髪留めとカチューシャも棘が出されてピンク色のアーマーになっていた。体には白いペイントが描かれている。

 

  桜川尊の変身する、テイルレーザーこと仮面ライダーレーザーターボ:バイクゲーマーレベル0の姿はそのような感じである。

 

  それを見た千優とグラファイトもまたバグルドライバーを装着、ドラゴナイトハンターツウィンガシャットを起動させ変身する。

 

《ガシャット!》

《ランクアーップ!ドラゴナイトハンター!ツウィン!》

《パージアッープ!ドラゴナイトハンター!ツウィン!》

 

  テイルエターナルはメモリスロットの付属した両端に大きな鎌のついた三メートルにもなる武器を、ジョーカーは半身を引いて拳を構え、ゴーストドライバーからガンガンセイバー:薙刀モードを取り出し、レーザーターボは黄色やピンク色の色あざやかな鎌弓……ガシャコンスパローを構える。二人もそれぞれガシャコンドラゴンファング、ガシャコンドラゴンブレイドを構えた。

 

「「我ら竜騎士、愛する姫を助けんがため、この力を振るわん!」」

「……心ゆくまで踊るがいい。死神のパーティタイムじゃ」

「さあ、お前の罪を数えな!」

「っしゃ〜! 命、燃やしたるでぇ!」

「ノリノリでいくぞ!」

 

 ゲーム、スタート。

 

 

 ●◯●

 

 

  イースナことエターナルと翔介ことジョーカーのガイアメモリコンビは、千優ことドライトの方へと向かっていった。正斗の世界でも相性が抜群であり、恋人同士でもある二人のコンビネーションは正斗とパラドに匹敵するほどだ。千優にとっては最大限警戒すべき敵である。

 

  また、もう一方のテティスことシャドウゴーストと、尊ことレーザーターボはグラファイトの方へと向かっていく。テティスはオカン、尊はメイド長、グラファイトは兄貴と、ある意味全員保護者の対決だった。こちらもなかなかに油断ができない。

 

  エターナルがその手に握った両刃の大鎌……エターナルサイスを軽々と振り回し、まるで回転させるように二つの刃をドライトめがけて振り下ろした。ドライトはそれを咄嗟にガシャコンドラゴンファングをあげて防御。金属がぶつかり合い、火花が散る。

 

  と、そこへジョーカーがドライトの背後に回り、強烈なパンチを叩き込む。それをドライトは片翼を出現させて防ぐ。その一瞬の意識の移動を機敏に察知したエターナルはサイスへと向けていた力をふっと抜き、柄を真ん中で折るように分割。その場で駒のように回転しドライトに斬撃を浴びせかけた。

 

  ドライトは抜群の反射神経でギリギリそれを下げたガシャコンドラゴンファングで防いだ。が、あまりのパワーに少し後退させられる。またその隙をつくようにジョーカーが蹴りを叩き込んできた。ドライトはそれを片足を上げて防ぐ……が、そこに刈り取るようなエターナルの蹴りが残った足に炸裂した。

 

  あまりの威力と足からくる激痛に一瞬苦悶の声を上げるドライト。それを見てエターナルはエターナルサイスを元に戻して跳躍、空中でエターナルサイスを振るった。頭上から背中を切り裂かれ、アーマーから火花が散る。

 

「くっ!」

「ハッ!」

「がはっ!?」

 

  思わず膝をついたところに、ジョーカーの膝蹴りが仮面に叩き込まれる。とっさにガシャコンドラゴンファングを手放し両腕をクロスして防いだが、その体は大きく吹き飛ばされていった。

 

  地面をゴロゴロと転がり、ドライトは運良くトロフィーにぶつかる。すると壊れたトロフィーから回復のエナジーアイテムが出現し、少量だが回復ができた。これ幸いとドライトは脚を使って減速し、近くにあったトロフィーを足場にしてまっすぐエターナルへ飛ぶ。

 

  エターナルに接近すると、右腕の前腕に付けられたアーマーに備え付けられている鋭い二つの爪で刺突を繰り出す。エターナルはそれをサイスでいなし……ドライトはその流される力を利用して大げさに体を動かして一回転し蹴りをエターナルの顔に叩き込もうとした。かなりの速度がついたものだ。

 

  だが……エターナルはそれさえも防ぐ。空いていたもう片方の手で黒いマントを引いて、それでドライトの蹴りを防御する。あらゆる技術を駆使して作り上げられた、あらゆる事象を跳ね返すマントはドライトの物理的な攻撃をも無意味と化した。

 

  それどころか逆に脚を掴まれ、そこにジョーカーのハイキックが叩き込まれる。またしても大きく吹き飛ばされるドライト。そのまま壁に激突する。エターナルは小さく鼻で笑いながらマントをはたき、ジョーカーは深く息を吹き出しながらまた拳を構える。

 

  強い。ドライトは短い攻防でこちらを見ているであろうエターナルとジョーカーにそう直感する。コンビネーション、テクニックともに頭を抱えたくなるほど高水準だ。流石はそれぞれのガイアメモリとの適合率が最大数値を叩き出すだけはあった。

 

  だが、ここまで戦ってきて今更諦める気などドライトには皆無。ドライトは両手を使って新体操よろしくバク転して立ち上がる。そうすると転がっていたガシャコンドラゴンファングを拾い、二人に向かって走っていった。

 

  一方、グラファイトの方もまたかなりの激戦となっている。テティスことシャドウゴーストの光の粒子を引くガンガンセイバー:ナギナタモードの荒れ狂う濁流のごとき凄まじい剣舞をなんとかいなし、その隙をつくように飛んでくるエネルギーの矢を回避する。

 

  グラファイトがガシャコンドラゴンブレイドを両方とも振り下ろせば、シャドウゴーストはそれをするりと受け流す。そしてつかみどころのない動きで回し斬りを放ってきた。それを上半身をそらすことで回避し、そのまま地面を蹴ってサマーソルトキックを食らわせた。

 

  それはガンガンセイバーに当たって剣の軌道をずらし、腕ごとバランスを崩させる。それを着地したグラファイトは地を這うような動きで剣を斬りあげた……が、飛んできたガシャコンスパロー:鎌モードの片方がどこからともなく飛んできてその剣を弾く。

 

  その鎌に追随するようにレーザーターボがグラファイトの懐に飛び込んできて、咄嗟にガードするためにクロスされたガシャコンドラゴンブレイドごと残っていた鎌で切り裂く。長時間の連続戦闘で動きが鈍くなっているグラファイトはそれを受けて吹き飛んでしまった。

 

  吹き飛ばされたグラファイトは金と黒、赤い瞳の凄まじき戦士の石像の台座に激突する。特殊な素材で作られている台座は壊れることはなく、少し揺れただけだった。グラファイトはすぐさま立ち上がって武器を連結、グレングラファイトファングにすると飛び出していった。

 

  そのまま高速で接近し、レーザーターボに旋回斬りを三連続でお見舞いする。それをレーザーターボは巧みに両手の鎌で起動をずらしていなし、一瞬で鎌を弓に帰るとゼロ距離でグラファイトに発射した。グラファイトはそれを察知して飛び退くが……光矢が脇腹をかすめる。

 

  勝負を決めるつもりだったのか通常よりややエネルギーが上乗せされたその矢は正斗特製のスーツを切り裂き、ジワリと嫌な赤いシミをスーツに広げた。グラファイトは脇腹を押さえ、話たてのグローブに血が付いているのを見ると舌打ちする。

 

  そんなグラファイトを嘲笑うように手の中で鎌モードのガシャコンスパローをくるくると回し、レーザーターボは挑発的にクイックイッと手首を傾けた。グラファイトは仮面の下で獰猛に笑い、その挑発にあえて乗って特攻をかます。

 

  グラファイトがグレングラファイトファングで猛攻撃を仕掛ければ、レーザーターボとシャドウゴーストはそれぞれお互いの隙を埋めあって応戦した。全く付け入る隙のない二人に対し、少しずつグラファイトの動きが鈍くなってくる。

 

  考えてみれば、当然である。千優もグラファイトもこれまで全員が全員強敵揃いの戦いを3度もくぐり抜け、二回戦に至ってはグラファイトは回復をしたとはいえボロボロの体で一人で二人の敵を引きつけ続けていたし、千優も吐血するほどのダメージの中で猛攻を仕掛けたのだ。

 

  そんな激戦を何度も繰り返したのに、さらにそこに一人が二人同時相手に戦うなどということが普通ならできるはずがなかった。それでも防戦できているのは、ひとえに二人の実力が並外れているからである。

 

 スギャァァッ!!!

 

「「ガッ!!?」」

 

 だがそれも、ここまでだった。

 

  エターナルのサイスとジョーカーのパンチを同時に受けたドライトとシャドウゴースト、レーザーターボの蹴りを同時に叩き込まれた二人は思い切り吹き飛び、ゴロゴロと地面を転がる。

 

《ガ、ガガガガガガ、ガッシュシュッシューン、ガ、ガッシュ、ガ……》

 

  その中で体に蓄積されていたダメージが限界値を大幅に超えてしまい、制御システムが混乱してしまったせいで二人のバグルドライバーがバグを起こしてしまった。変身した姿になったかと思えば生身の姿になり、を繰り返しまるで点滅しているようにも見える。

 

  そんな二人に引導を渡さんと言わんばかりに、エターナルとジョーカーはロストドライバーからメモリを引き抜き、エターナルはサイスに、ジョーカーはベルトのマキシマムスロットに差し込んだ。

 

《ETERNAL! MAXIMUM DRIVE!》

《JOKER! MAXIMUM DRIVE!》

 

「これでパーティも終わりじゃ……」

「いくぜ……」

 

  シャドウゴーストはシャドウドライバーのデトネイトリガーを引いて必殺技待機状態に移行させ、ガンガンセイバーにエネルギーをチャージしていく。レーザーターボもキメワザスロットホルダーに入れていた黒いガシャットを取り出して起動し、ガシャコンスパローのスロットに装填した。

 

《ハメツ!ダイカイガン!》

《ニクシミストリーム!》

《GIRI GIRI CHANBARA!》

《ガシャット!キメワザ!》

《GIRI GIRI CRITYCAL FINISH!》

 

  エターナルの振るったサイスから紫の炎で構成されたエネルギー刃が発射され、飛び上がったジョーカーの紫色の炎に包まれた右手が迫り、シャドウゴーストの振るったガンガンセイバーから発生した黒いエネルギー刃がどんどん視界に大きく写っていき、空間に無数に出現した光矢が向かってくる。

 

  なんとか体を動かそうとする二人だが、限界を超えて疲労の蓄積した体は鉛のように重く、全く思うように動いてくれない。

 

  その現実にしばらく抗っていたが、しかし騎士二人はやがて悟った。

 

((……これで、終わりか。できうる限りのことはやった。それでもここで倒れるというのなら……それも仕方がない。慧理那の写真を公開されるのは恥ずかしいが……))

 

 そうして、二人がゆっくりと目を閉じたーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《INFECTION!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ーーその時。不意に、どこからか音が響いた。

 

  その音とともに一瞬でどこからともなく現れた黒い影の振るった剣により、エターナル達の必殺技は全て打ち破られた。

 

「「……え?」」

 

  呆然と見上げる千優とグラファイト。必殺技を破壊したことにより生じた煙により、自分たちを救った何者かの姿は影しか確認できなかった。

 

  だが、煙はいつかは晴れるもの。まるで夜を突き破って昇る太陽のように。そうしてやがて煙が晴れた時……そこにいたのは、一体の〝鬼〟であった。雄々しきその姿はまるで、守護神のようにも感じる。

 

 

 

《Let's G A M E !!! Soul G A M E !!!! Best G A M E !!!!! What's our〝 N A M E 〟!?》

 

《The 〝W A R R I O R〟!!!!!!!》

 

 

 

  膨大な筋肉を凝縮したかのように洗礼された、それでいて細身で深い蒼色の体躯は二メートルにも達し、その頭に豊かに生える白髪は全て逆立ち、顔だけゆっくりとこちらに振り返ったことにより頭部に二本角が生えているのがわかる。戦国武将が着る薄緑の陣羽織を羽織り、黒の袴を穿き、腰辺りには赤を基調とした犬骸の装飾が施された草摺と脛当を装着し、草鞋に似た靴を履いている右目に刀傷がある鮮烈な赤い隻眼の鬼。

 

「ーー何をやっている。俺が貴様に勝つまで倒れることなど許さんぞ、グラファイト」

「ーーライバー、なのか?」

 

  そうーー千優とグラファイトを救ったのは、グラファイトのライバルにして友である〝ライバー・バグスター〟であった。

 

 

 ●◯●

 

 

  どこからともなく現れたライバーの片手には金と青で彩られた荒々しい形状の妖刀……〝風の凶旋妖刀『禍嵐男爵』〟が握られていた。無数の妖刀や武器を生成して戦うライバーの持つ妖刀の一つであり、闇の風を刀身に纏うものだ。

 

  グラファイトは困惑した。自分をライバルと呼び、また自分もそう認めているこのバグスターは筋金入りの戦闘狂だ。まさか助けられるとは思いもよらなかった。

 

「……何故、俺たちを助けた?」

「フン、言った通りだ。貴様は俺が倒す。それ以外のやつに負けることなど絶対に認めん。こいつらは抑えてやる。貴様らはあの奥でふんぞり返っている男を倒しに行け」

「……感謝する」

「何、こいつら四人まとめて戦うのも楽しそうだからな」

 

  その顔に獰猛な笑みを浮かべ、二人に背を向けたままエターナル達に刀を構えるライバー。千優とグラファイトは頷きあい、力を振り絞って立ち上がる。と、そこでライバーが片方の手の中に純白の小太刀を出現させ、風を纏わせると二人の頭上で振るう。

 

  すると緑色の粒子が降り注ぎ、みるみるうちに二人の傷が癒えていった。十数秒もすると目立った外傷は消えて体の気だるさは消え、かなり軽やかになる。その時、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……驚いているグラファイトは、その違和感に気づかない。

 

  細剣を消して餞別だと言わんばかりに背中で語るライバーに千優とグラファイトは心の中で感謝の言葉を述べ、走り出す。そして阻もうとするエターナル達をライバーが逆に邪魔している間に、面白そうに笑っている正斗の前にたどり着いた。

 

「……ふむ。予想外の乱入だな。まあ、こういう展開もゲームの醍醐味の一つだ、よしとしよう」

 

  そう言うとゆっくりと王座から正斗は立ち上がり、着ていたスーツの胸元の異空間ポケットからガシャコンバグヴァイザー(ドライ)を取り出して黄金のBボタンを押す。そしてオルガンを弾き鳴らしたような音楽とともにバグヴァイザーは上に放り投げられた。

 

 

 ガシャンッ!

 

 

  そしてそれが正斗の手に戻り……転身の儀式が始まる。

 

《Release……!》

 

「さあ……審判の時だ」

 

 

《Let's G A M E !!! Last G A M E !!!! Mad G A M E !!!!! What's my 〝 N A M E 〟!?》

 

 《I'm the 〝GOD〟!!!!!!!》

 

  厳かな声で音声が流れて、正斗の体が変わってゆく。そして一対の翼と天輪、天を貫く一本の角を持った究極のバグスター……ゲムデウスへと変わった。ゲムデウスはゆっくりと手を下ろし、いつものように悠然とした姿勢で二人の前に立った。

 

  それをじっとにらみすえていた千優が、不意にとなりのグラファイトに話しかけた。

 

「……なあグラファイト。俺、一つ怒っていることがあるんだ」

「…それは、慧理那のことか?」

「いいや違う。けどまあ……終わったら言うさ」

「ふっ、ならば絶対に勝たなくてはいけないな」

「ああ。それと……〝サンキューな、グラファイト〟。ここまで一緒に戦ってくれて。最後まで一緒に戦おう!」

「こちらこそ〝感謝する、わが生涯最高の相棒、仲足千優よ!〟」

 

  二人がそう、お互いへの感謝の気持ちを口にした瞬間。

 

 

 

 ーーヴゥヴヴ!

 

 

 

  二人のバグヴァイザーから、ドラゴナイトハンターツウィンガシャットがひとりでに動き出した。そして飛び出したライトガシャットとレフトガシャットは空中でクルクルと回り、やがて合体して一つのガシャットになる。そうすると再び分離し、進化して二人の手元に戻ってきた。

 

《DRAGOKNIGHT HERO'S U》

 

  龍を模した全身鎧を纏い、千の黒いドラゴンを背にふた振りの両刃の薙刀を持つ優しき目を持つ騎士の描かれたガシャットには、そう描かれていた。

 

「これは……」

「…グラファイト」

「……ああ!」

 

  二人は新たに進化をしたガシャットのスタータースイッチを同時に押した。

 

DRAGOKNIGHT(ドラゴナイト) HERO'S(ヒーローズ)ULTIMATE(アルティメーェット)!!!》

 

  ガシャットが起動し、なんと赤黒く光った基盤から自らの尻尾を噛んでいる赤い龍と、雄々しく四枚の翼を広げる黒い龍が出現し、室内全体を振動させるような凄まじい咆哮をあげながら二人の周りを飛び回った。

 

  千優とグラファイトはそれぞれ腕を胸の前でクロスさせる。千優はガシャットを持った右腕を上にして左腕を下に、グラファイトはガシャットを持った左腕を上にして右腕を下に。そうすることで、二人の体の間でガシャットを持った手同士でXの文字が出来上がった。

 

  そして二人は高らかに叫ぶ。自分達の魂を込めた、究極の言葉を。

 

「アルティメットステージ……」

「アルティメットウィルス……」

 

「「変身!」」

 

  ドラゴナイトヒーローズガシャットをバグルドライバーに差し込み、バグルアップトリガーが二人の手で押し込まれる!

 

 

 

《ガシャット……》

《ガシャット!》

 

 

 

《ガッチャーン! ムーゲーンー!》

 

 

 

 

《轟け!雷鳴の如く!究極のヒーロードラゴン!DRAGOKNIGHT HERO'S! U!》

 

 

 

 

 ……ここからはEXCITEを流すことをお勧めしますby作者……

 

  バグヴァイザーの中央ディスプレイから左右半分ずつしかないパネルが出現したかと思うと合体してひとまわり大きなパネルとなり、二人の体を通り抜けた。

 

  するとまず最初に千優とグラファイトは仮面ライダードライトと仮面ライダーグラファイトになり……突如、装飾のない半身が粒子となって弾け飛んだ。様子見をしていたゲムデウスも流石にこれには少し驚く。

 

  そうしている間にも残った二人の半身が合体して、そこに飛び回っていた無限龍がエネルギー体になったかと思えば鎧に変化、胸、両腕、両腰、両足に黄金の無限のシンボルが刻まれた強化装甲となり張り付く。

 

  そして最後に再び雄叫びをあげた黒龍がエネルギー体となり、背後から戦士の体を飲み込んだかと思うと丸くツルツルになっていた頭部に龍の頭が、両肩と腰に四肢が覆いかぶさり、後頭部から腰まで届く長い髪とマントを纏わせた。

 

  完全に変身が完了した時……そこには、全く新しい戦士が誕生していた。二人だった頃は半分しかなかった頭部のパーツは一つとなり、両目はさらに激しい形に変わっている。顎と目のすぐそばには竜の牙が伸び、赤と黒の荒々しい形状の髪がどこからともなく吹いてきた風で揺れた。目のような形になっている箇所の後ろからは左右三本ずつ、計六本の角が伸びている。

 

  胸には黄金の龍が無限の形となったレリーフの刻まれた黒いアーマーと脇腹から龍の手の形のアーマーを纏い、右肩にはドライトの竜の頭骨を、左肩にはグラファイトの円形の肩鎧を。二の腕には新たに無限のマークのついた刺々しい形のアーマーが追加され、前腕には左右対称の三本爪になった装甲を。腹部のスーツには二頭竜が描かれ、首回りを守るアーマーからは床まで届く漆黒の鱗のマントを羽織っている。

 

  腰には左右対称のマントと無限のマークの前垂れ、竜の脚を模した装甲。その装甲には二つに折られた薙刀が左右にそれぞれ一組ずつ鞘に収められている。太もも、膝、膝下にも角のような小さな突起のついた無限印のアーマーが追加されていた。

 

  そうしてここに……仮面ライダーヒーロー:ムゲンゲーマーレベルUは誕生した。

 

「「……我、正義の竜騎士。究極のこの力、姫がために振るわん」」

『……ほう。ならばこの我を倒してみせよ、勇者達よ』

 

  ヒーローを嘲笑うようにゲムデウスはそう言い、自らの体内のゲムデウスウィルスからデウスラッシャーとデウスランパードを出現させる。それに答えるように、ヒーローは腰からふた振りの薙刀を引き抜いた。

 

  先に動いたのはヒーロー。黒く煌めくものと赤く輝くもの、二つの片刃の薙刀を左右から挟み込むようにゲムデウスに振るう。当然その超常的な反応速度でデウスラッシャーとデウスランパードに防がれる……が、不意にガクンッ、と両腕から力が抜けるのをゲムデウスは感じた。

 

  謎の脱力にゲムデウスが驚愕している間に薙刀を手元に引き戻したヒーローは姿勢を低くしてクロスに斬りあげる。なんとか力を込め直し、ゲムデウスはデウスランパードでそれを防御。しかしまたしても、それも先ほど以上の脱力が起こる。

 

  勝負はいっそのこと、一方的でもあった。ヒーローの攻撃が当たるたびにどんどんゲムデウスのステータスが落ちていく。そう、まるで()()()()()()()()()()()()()()()。それでも全て防ぎきっているあたり、さすがは究極の神というべきだろうか。

 

  ゲムデウスは自分が使えるあらゆる手段を用いてヒーローを排除しようとした。擬似バグスターの召喚、限定的な範囲のゲムデウスウィルス散布、瞬間移動に強制的なエナジーアイテムによるステータスの上昇。時にはガトリングガンを発砲したりもした。

 

  だがその全てがヒーローには無効化される。バグスターは一太刀で切り捨てられ、ゲムデウスウィルスは出現させた翼を振るって吹き散らされ、瞬間移動は阻害し、いくらエナジーアイテムを使おうともそれ以上の速度でまたステータスを削っていく。

 

  なぜこのような状態になっているのか。その答えは明快単純。ムゲンゲーマーに備わった特殊能力、〝自らが脅威と感じた事象全てを変身解除するまで限界無制限に弱体化〟が働いているからだ。これは二人の意識が完全にシンクロしていなければ発動しない発動条件が厳しい能力だ。

 

  そして今、慧理那を救うという点において二人の魂は完全に重なっている。そのため特殊能力は最大限に発揮されていた。

 

「「ハァッ!!!」」

 

 ザンッ!!!

 

  二人の繰り出した斬撃により、デウスラッシャーは真っ二つになりデウスランパードは粉々に砕け散った。剣圧によって思わず後退したゲムデウスはヒーローを指差す。

 

『グガァッ! ぐっ、貴様らごときを相手に苦戦するはずなど!』

「「当然だ!この胸に愛がある限り……俺たちは負けはしない!」」

 

《ガ・チーン!》

 

  薙刀の鍔が変形する。そしてパーツが丸出しになった場所同士を合体し、二つの薙刀は四つの刃を持つ武器……ガシャコンアルティメットカリバーに変化した。それを手に、ヒーローはゲムデウスに向かっていく。

 

  ヒーローがガシャコンアルティメットカリバーを振るう。ゲムデウスはそれを拳で打ち返した。めげずにヒーローはさらにひと振り。再度ゲムデウスに防がれる。だが両腕を使わせることには成功した。横薙ぎにガシャコンアルティメットカリバーを振るい、横殴りで吹き飛ばす。

 

《ガ・チャーン!》

 

  鍔の裏に隠されたボタンを押して真ん中で分割し、二つ刃のついた双剣に変えると同じ軌道で右上から振り下ろす。すんでのところでゲムデウスは避けた。だが左足を軸にヒーローは旋回。胴体に双剣を当てることに成功する。そのまま姿勢を直し、大上段から振り下ろした。防ぎきれず、吹き飛び床を転がるゲムデウス。

 

『ガハァッ! グッ……!』

「「ゲムデウス……舞台の上の神よ、お前の運命はここまでだ!」」

 

  なんとか立ち上がるゲムデウスに双剣を投げ捨てたヒーローはそう言うと、トドメを刺すため、黒と赤、銀と薄緑色が見事に調和したバグルドライバーネオのABボタンを同時に二度押す。

 

《キメワザ……!》

《HERO! CRITYCAL STRIKE!》

 

  ヒーローを中心にエネルギーの嵐が巻き起こる。どこからともなく現れた無限龍と黒龍が絡まった右足を突き出して姿勢を低くし、胸の右拳を前に、左拳を半身ごと引いた。

 

『グッ、貴様ら程度に、この我が倒せるものか!』

 

  ゲムデウスもまた、自分の中に辛うじて残っていたゲムデウスウィルスやエネルギーを全て左足に収束した。黄金の嵐が巻き起こり、全身に漲った赤く、またドス黒いエネルギーを集めるように胸の前で腕をクロスする。

 

  そして……ヒーローとゲムデウスは、同時に飛び上がり、お互いに向けて必殺の蹴りを放つ!

 

 

 

 ドガァァァァァァァッッッ!!!!!

 

 

 

「「ハァァァァァァァァァッ!」」

『ガァァァァァァァァァ!!!』

 

  絶叫、轟音、正義。

 

  それら全てをぶつかり合わせながら、空中でヒーローとゲムデウスは回転しお互いを押し込もうとする。互いに互角、ならば勝負の命運を左右するのは……その旨に秘める、熱い情熱だろう。

 

 

 

 ……ズル。

 

 

 

  やがて……ゲムデウスの足が、崩れた。そして勝利したヒーローの必殺の蹴りが、ゲムデウスの体に叩き込まれる!

 

『なっ……グァァァァァァァァァァァァアアァァァァアアァァァァアアァアアアァアアァァァアアァアアァァァアアァ!!!』

 

 

 ドガァァァンッ!!!!!!!

 

 

 

《断罪の一発!》

 

 

 

  断末魔の叫び声をあげて爆発したゲムデウスと、地面に火花を散らしながら着地したヒーロー。その勝利を褒め称えるように、空中に花火とともに《GAME CREAR!》の文字が浮かび上がったのだった。

 

「「ゲーム……クリアだ」」

 

 

 ●◯●

 

 

  ヒーローがバグルドライバーネオからガシャットを引き抜くと変身が解除され、千優とグラファイトに分離される。どっと疲れが押し寄せてきた二人はその場に座り込んで荒い息を吐きながらも、拳を打ち付けあった。

 

  息が整うと二人は立ち上がり、そういえばエターナル達の方はどうなったのかと背後を振り返った。すると四人は床に倒れ伏しており、ライバーは背中の鞘に妖刀を仕舞うと身を翻すところだった。

 

  礼を言おうと二人は手を伸ばすが……ライバーは貸し一つ、とだけ呟いてノイズとなり空間に解けるように消えていった。いつかこの借りは返さなければいけないだろうと二人は苦笑する。

 

  完全に残留していたノイズが消えるまで見送ると、二人はもう一度王座を見る。するとそこにはボロボロになったスーツを纏い、全身に怪我をしている正斗が座っていた。どうやら王座に叩きつけられた拍子にゲムデウスは体内に戻ってしまったらしい。

 

「フゥ、フゥッ……は、ははは。見事だ、二人とも。無事ゲームクリア。おめでとう」

「……ああ。だがその前に……お前にちょっと話がある」

 

  そういった千優によって満身創痍にもかかわらず正斗は床に正座させられ、彼の性格からしてこのゲームの中で許しがたいと感じたところを延々と説教された。そのほとんどが正論であったので、正斗や降りてきたメンバーたちは謝罪する。

 

  30分ほど説教をすると千優はようやく少しだけ溜飲が下がったので一旦説教をやめる。反省していた正斗も時間経過によりほとんどの傷が治ったので軽々と立ち上がった。あまりにも規格外すぎるのはデフォルトである。

 

  まあ、それはともかく。約束通り、正斗を含めた起こされたイースナ、翔介、尊には罰ゲームが執行された。これまでと同じような罰ゲームを大人数の前で執行された三人は絶叫を上げながら崩れ落ちる。もはや見慣れてしまったのが少し悲しい。

 

  そして正斗とテティスだが……正直いって、本人たちにこれといった弱点がないので罰ゲームが思い浮かんでいなかった。正斗はほぼ完璧な人間のようであるし、テティスの想い人はそもそも……どこの世界にいるかわからない。テティスはずっとあの()()()()()()()()()を待っているのだが。

 

  まあ、それはともかく。そういうことで全員で相談しあった結果テティスは大好物であるどら焼きを一週間禁止となった。そして正斗はと言えば……

 

「ゲームマスター、神崎正斗!一応全員で楽しむためのゲームだったとはいえ、互いの世界の総二×愛香、龍兎×トゥアール、映二×龍美、グラファイト×あっちの慧理那、そして俺の慧理那と俺を自らの楽しみに巻き込んだ罪状で……一週間パラドと別室で寝ることを宣告する!」

「じ、地味に痛いところをついてきたな……だが、君の言うことも最もだ。敗者に発言権はあるまい、大人しく従おう」

「よし、それでいい……というか、そろそろ慧理那を返せ」

「ああ、わかっているさ」

 

  正斗は鷹揚に頷きながら、体と一緒に修復されていたスーツのポケットから一つのスイッチを取り出す。そしてボタンをポチッとなと押した。すると広大な部屋のガラスを覆っていた全てのカーテンが弾け飛び、陽光が差し込んだ。

 

  驚くその場にいる全員に構わず、王座の後ろにあった黒いアンダースーツと緑色の筋肉のような強化外骨格を纏ったバッタ顔でマフラーをたなびかせる二人の戦士の石像が左右にスライドしてその後ろの幕も引き上げられ、壁が変形して花の咲き誇るテラスが出現した。

 

 そこにはーー

 

「千優さん!」

「鉛龍様!」

「「慧理那!」」

 

  千優とグラファイトはどこにそんな力が残っていたんだと言いたくなるような速度で走っていき、テラスの中で手を広げている慧理那を抱き上げた。そして強く抱きしめる。そんな二人の背中を、二人の慧理那もぎゅーっと抱きしめ返す。

 

「きっと……きっと来てくれると信じていましたわ」

「あったりまえだろ!慧理那のいるところなら、どこへでも飛んでいくさ!」

「もう、千優さんったら……」

「ああ、鉛龍様……やっぱり貴方は、わたくしのヒーローですわ」

「……そうでもないさ。現に俺は満身創痍だ。だが…お前が危険になれば、たとえどこだろうと駆けつけ、全ての敵を排除しよう」

「うふふ!それでこそ、わたくしの鉛龍様ですわ!」

 

  大量のハートが幻視できるほどイチャイチャする四人。そんな四人を見て、正斗を先頭に追いかけて来た一行は苦笑する。そんな全員の気持ちを代弁するように正斗が声をかけると、四人は途端に顔を赤くして離れた。

 

  やれやれ、と口で言いながらもどこか面白そうな正斗を千優とグラファイト、二人の慧理那がジト目で睨んでいると、いつの間にか紛れていた茶髪の青年……バガモンバグスターの人間態である〝ソラ〟が歩み出てクリア記念に写真を一枚どうかと言った。

 

  四人はそれを快諾し、ニヤニヤとしている正斗の世界の総二と愛香の提案で千優とグラファイトが慧理那をお姫様抱っこをして撮ることになった。W慧理那は慌てふためくが、今更だと割り切って千葉とグラファイトはさっさと抱き上げてしまう。

 

  それににっこりと人好きのする笑顔でバガモンは笑い、カメラを構える。そしてボタンを押した。

 

 パシャッ

 

  小さな音とともにカメラのフラッシュが焚かれる。覗き窓から目を離したバガモンは撮れた写真を確認し、満足そうに頷いた。

 

「うんうん、いい感じに撮れているね。じゃあもう一枚、今度は何かポーズでもとりながら撮るよ〜」

「そういえばソラ、今日は奥さんと一緒ではないのか?」

()()()()()には先に断っておいたから、大丈夫です」

「そうか……なら良しとする」

 

  ふむふむと頷く正斗。そんな宿主にバガモンは相変わらず心配性バガね〜なんて内心思いながら四人に何かするように指示をした。

 

  何かポーズを、と言われてもと戸惑う千優、グラファイト、グラファイトの慧理那。そんな三人に対し、何か覚悟を決めたような顔を千優の慧理那はする。

 

「じゃあいくよ、3、2、1、はいチーズ!」

 

  そう言って、ソラがシャッターを押すその瞬間。

 

 

 チュ……

 

 

「え……?」

 

  千優は、頰に何か柔らかい感触を覚えた。まさか、と思い横を見てみれば……そこには顔を赤くしている慧理那がいた。どうやら、頰にキスをされたらしい。

 

  千優がいきなりの事態に硬直している間に取られた写真を確認したソラが面白そうに笑い、それにつられて全員が覗き込んで……一斉におーー!と言った。となりのグラファイトもくつくつと笑っている。撮影中も羞恥心でガチガチだった慧理那は顔を赤くしていた。

 

「え、慧理那、今のは……」

「た、助けてくれたお礼、ですわ……」

「……そ、そっか。なら、ありがたく受け取っておこう、かな?」

「なんだ相棒、そこは疑問系ではなくしっかりと答えろ」

「う、うるせえよ!恥ずかしいんだよこっちは!」

 

  二人のやりとりにあはは、と笑う一同。それにつられて千優とグラファイトも吹き出し、笑い声をあげる。二人の慧理那も可笑しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ーーそうして。二人の騎士の、姫を助ける長い長い戦いは終わりを告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 GAME CREAR!

 

 To be continued……




コラボは一旦これで終わりです。
後ほど本編の方で再びコラボを計画しておりますので、お楽しみに!
感想をいただけると嬉しいです。

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