ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】 作:熊0803
二章最後の戦いです。
楽しんでいただければ幸いです。
グラファイトが慧理那の言葉を勘違いし、空高くぶっ飛ばされてから数日経った頃。
アルティメギル基地にて、クラーケギルディとリヴァイアギルディは先日のイエローの初陣の映像を見て話し合っていた。新たな戦士の登場。それは正斗……仮面ライダープロトクロノスという絶対の強者に敗北を喫した二体の心に重くのしかかる。
しかし二体は今は強大なツインテール属性を持っているとはいえまだまるで力を使いこなせていないということで一応の落ち着きを取り戻す。が、それはもう情報が古い。
アルティメギルのあずかり知らぬところで、すでにイエローは覚醒しているのである。主にグラファイトの奮闘によるおかげであるが、最後の最後に致命的な
まあ、それはともかく。師匠であり最高幹部であるポセイドギルディによりクロノスに与えられたダメージをほぼ完璧に回復させた二人はある決意をした。
「面目もない。私が取り乱したばかりに、先の戦いではいいようにやられてしまった」
「ふ、貴様らしくもない……が、それは俺もまた同じこと。あれほどまでに完敗しては何も言えまい」
「随分と殊勝ではないか」
「いつまでも争いをやめぬ部下たちを見続ければ慎みも生まれよう」
そう言うリヴァイアギルディに、クラーケギルディは神妙な顔をして頷く。今しがた言った通り、すでに彼らの部下の争いは泥沼化しているのだから。
巨乳と貧乳。組織を二つに割る争いを繰り広げているリヴァイアギルディとクラーケギルディの部下たちは諍いをやめず、それどころか戦闘行為にまで発展するケースも散見されている。
これ以上、自分たちについてきた部下たちがあたら無駄に命を散らしていくのを見過ごしてはいられまい。それに、焦る理由はもう一つある。
フェンリルギルディのことである。スタンドプレイも甚だしい若造ではあったがその実力は本物だった。それなのにある日ふと姿を消したのだ。その理由に思い至らない二人ではない。
すでに闇の処刑人は降臨し、自分たちの尻に火をつけているのかもしれない…と考えるのが自然であろう。
決断の時である。リヴァイアギルディとクラーケギルディは目を見合わせて、無言で頷いた。長年喧嘩をしてきた二体だ、言葉に出さずとも相手の意思はわかる。
どちらか、ツインテイルズのツインテール属性を奪った方が今ある部隊を全て率いる。絶対的な力を手に入れたものがそれを以って屈服させる、実に単純明快なやり方であった。
彼らは征服者。言葉ではなく力で統一する方がそれらしい。威風堂々とした佇まいで二体は再度うなずきあうと、無人の会議室へと向かう。
そこでリヴァイアギルディとクラーケギルディは互いのパソコンをテーブルの上に置き、二体ともスパロウギルディに向けて今後の舞台のまとめ方、詫びの言葉を綴り、ポセイドギルディに対してはこれまでの感謝と別れの文を綴った。
リヴァイアギルディは不器用な文面ながらも、スワンギルディとイグレットギルディに対しての激励の言葉も残している。お前たちは先が楽しみな戦士だ、我らの跡を継ぎ、義父上の下で存分に鍛えるがいい、と。
そしてリヴァイアギルディはそれだけでなく……ある者に対しての、自らの心中も書き綴る。それが終わると同時に二体は立ち上がりパソコンを閉じた。そうするとパソコンに背を向ける。
「ーーー征くか」
「応よ」
たった一言の応酬。それだけで充分だった。会議室を後にする二体。その足取りは堂々たるもので、背中にまとわりついていた哀愁を粉微塵に吹き飛ばしている。
その後ろ姿はーーたしかに、大部隊の大将。兵を導く大きな背中であった。
(……クラーケギルディ。貴様を死なせはしないぞ)
ただ、リヴァイアギルディだけは隣にいる宿敵に向かい心の中でとある決意をする。しかしそれを知る者は、ここにはいなかったのであった。
●◯●
所変わって、その数時間後。
正斗たちはいつも通り陽月学園のツインテール部兼幻夢コーポレーション支部にて各々に好きなことをして過ごしていた。
正斗とパラドはゲームを、総二は愛香のツインテールを愛でながら手元の携帯を愛香と二人で見ている。トゥアールはカタカタとパソコンを使ってガシャットとテイルギアのパラメータを確認している。
ちなみに龍美は新しくできたクラスの友人……愛香の友人でもある秋山と瀬川と一緒にショッピングに行っているのでここにはいない。順調にクラスに溶け込んでいるようで正斗は安心した。
「よっ、ほっと」
「む、そちらに中ボスが行ったぞ」
「おっけー、ヘイトこっちで集中させとくから後ろからザコよろしく」
「了解だ。さあゾンビども、おねんねの時間だ」
決め台詞のようなものを言って正斗は画面の中のデンジャラスなゾンビ達にマシンガンを乱射する。それなのに全てのゾンビにヘッドショットが決まっているあたり、さすがというべきか。
一方、パラドの方もゾンビゲームなのに釘が大量についたバットや謎の鉄パイプで三メートルほどの中ボスモンスターを殴りまくっている。一応、これは銃が主体なのだが…パラドらしい。
今更だが、二人がやっているゲームは幻夢コーポレーションのホラーゲーム筆頭である『デンジャラスゾンビ』である。
それも普通のものではなく、頭に幻夢VRと呼ばれるものをつけてテレビの画面と接続しているため、本当に目の前にゾンビ達がいるように見えている。正斗の本気のおふざけがここでも発揮されていた。
「やった、中ボス撃破」
「油断するな、前方から大型のゾンビを確認。大ボスだ、武器は瓦礫の剣と盾」
「あはは、心が躍るなぁ」
ニヤリと好戦的に笑い、コントローラーを操作するパラドとそれの援護をする正斗。楽しそうな二人に、部屋にいる人間は思わず微笑んだ。
と、パラドがゾンビの目玉にサバイバルナイフをぶち込んだところで正斗のポケットが震えた。一旦コントローラーのボタンを押して一時停止する正斗。
《PAUSE…》
「「「「ぶふっ」」」」
渋い男の声に全員が吹き出す中、正斗は幻夢VRを外して机にコントローラーを置き、透明板を取り出して画面をタッチした。すると画面の中にラブマシーンの顔が映る。
目配せをして正斗は席を立ち、壁際に移動した。会社のことなのだろうと静かにするツインテール部メンバー。その間にパラドはこっそりとノイズとともに装いをスーツ姿に変えた。
一言二言話すと、正斗が電話を切る。そして総二たちのほうをを振り返った。
「すまないが、少し会社の方で俺がいなくては進められないことが起きたらしい。会議に出席しなくてはならないのだが…」
「気にすんな、行ってこいよ」
「マサも大変ね」
「感謝する。それと、別に大変でもないさ。楽しいからな。それじゃあパラド、行こうか」
「うん♪」
そう会話を交わして二人が部室を出て行こうとした、その時。部屋の中にアラームが鳴り響いた。全員の表情が硬くなる。エレメリアン出現だ。
即座にトゥアールがパソコンを操作して相手の詳細を確認する。すると強大な
あまりよろしくないタイミングでの出現に、どうするかと正斗は迷った。総二たちをモニターしながらサポートする傍らでビデオ通話で会議に出席するか、と考える。
しかし悩む正斗に、総二が立ち上がって不敵に笑う。続いて愛香も立ち上がった。
「俺たちが出る。二人は安心して会議に出てくれ」
「そーよ。この前の借り、きっちり返させてもらうんだから」
「まあ、主にその原因は総二だかな」
「そ、それは言わない約束でしょ!」
顔を赤くする愛香にくつくつと正斗は笑い、それではなと言ってパラドを伴い部室を出る。それを見届けた三人は顔を見合わせ、頷きあった。
総二と愛香はそれぞれのテイルブレスとガシャットを構えて、トゥアールは耳にオペレーション用のインカムをつける。それを見た二人はいつも通りの掛け声で変身をした。
「セカンドテイル・オン!」
《ガッチャーン! レベルアーップ!GOLDEN KING SAVIOR!》
「第五撃、変身ッ!」
《ガッチャーン!レベルアーップ! PURPLE BEAST BERSERKER!》
変身を完了した二人は部室に備え付けられたロッカーに隠された時空間跳躍カタパルトを使い、トゥアールが
変身したレッドとブルーが極彩色の空間を突き抜け行き着いたのは市街地から相当離れた、寂れた工場跡だった。
錆びて腐った鉄骨が所々むき出しになった廃工場以外は荒地が広がるその場所に、戦闘員も連れずリヴァイアギルディとクラーケギルディは佇んでいた。
いたるところがひび割れている、元は駐車場だったと思しき地面に両足をつけ、揃って腕組みをする二体のエレメリアンを見て出撃してきたレッドとブルーは怪訝そうな顔をした。
こんな人っ子一人近づきそうもない、ましてや
だがしかし……ツインテイルズには少しメンバーが足りなかった。慧理那とグラファイトである。無事にパワーアップを果たしたはずの少女と頼れる戦士はここにはいなかった。
慧理那はグラファイトの勘違いに拗ねたのか部室にも顔を出さず、総二たちが声をかけても会釈だけされるのである。正斗は何か悟っているのか、何も言っていないが。
ちなみに、グラファイトは先日の慧理那にぶっ飛ばされた時の傷の治療中である。さしもの龍戦士といえどもあれは効いたようだ。まあ、自業自得ではあるが。
閑話休題。
なので今日は正真正銘、リヴァイアギルディとクラーケギルディ、テイルレッドとテイルブルーの二体二の勝負である。
「レッドよ、今日こそ姫をかけて勝負だ!」
「おーおーやってやろうじゃねえか!ぜってえブルーは渡さねえから覚悟しろよ!」
「良い気迫だ!」
『レッド、落ち着いて対処してくださいね』
「わかってる!」
売り言葉に買い言葉ではないが、最初からバチバチと火花を散らすクラーケギルディとレッド。お互いが細剣と全身の触手、テイルカリバーを構えて臨戦態勢に移行した。それをモニターしているトゥアールは苦笑する。
それを見たリヴァイアギルディとちょっと顔を赤くしたブルーもまた、戦うためにそれぞれの武器を構える。ブルーはウェイブ・ボルグオルタを、そしてリヴァイアギルディは……
「テイルブルーよ、そなたの槍と俺の槍、どちらが上か……勝負と行こうか」
「槍? 一体どこに……」
不思議そうに首をかしげるブルーにニヤリと笑い、リヴァイアギルディは体に絡みつけるようにまとっていた鎧を解いた。すると、その正体があらわになってゆく。
それは、股間から生えた一本の巨大な触手であった。勢いよく跳ね、天高く屹立する。そう、まるで長槍を構えるかのように。ブルーは思わず吐血まがいに吹き出す。
確かに、その
しかし、それでもここでやる気が萎えてはいけない。ブルーは自分の昔初めてタコを見た時からの触手嫌いをなんとか抑えつけ、ウェイブ・ボルグオルタを構える。
剣と剣、槍と槍、系四つの武器が構えられた。戦士たちは裂帛の叫び声とともに戦いを始める!
「行くぞ!」
「来い!」
「ハァッ!!!」
「シッ!」
勢いよく踏み込んだレッドが、青いスカートと鎧をなびかせながらクラーケギルディに袈裟斬りを放った。とても重いそれを、クラーケギルディはなんとか細剣でいなし防御する。
めげずにレッドはそらされた力を利用して一回転、叩きつけるように大上段から斬りおろしを放った。クラーケギルディは触手を操り防ごうとする。
が、その触手ごと切り裂かれる。驚くクラーケギルディだが、咄嗟に身を引いてかわす。振り下ろされたテイルカリバーにより地面にクレーターができた。その隙を突くように細剣の刺突がレッドのツインテールに迫る。
レッドはそれを直感で回避してめり込んだテイルカリバーを片足で蹴り上げて掘り起こし、空中でキャッチすると横薙ぎに振るった。クラーケギルディはそれを上半身をかがめて回避。下から振り上げるように再生した触手を振るう。
レッドはかかとの裏にある噴射口を使って縦に体を一回転させ、テイルカリバーに炎を纏わせてそれを下段から切断する。それだけにとどまらず、炎の代わりに今度はテイルカリバーに数千度もの超高熱を纏わせて光速の刺突を繰り出した。
飛んでくるテイルカリバーの切っ先に、同じく神速で突き出されたクラーケギルディの細剣の切っ先が激突し、ギリギリと盛大に金属の擦れ合う音と赤い火花を散らす。互いに押し込もうとするが、力が拮抗してなかなかうまくいかなかった。
「やるな、さすがはテイルレッドだ!」
「お前にだけは、負けるわけにはいかねえ!」
叫ぶレッドがテイルカリバーの長い持ち手を半分から折りたたみスライド、幅の広い大剣が一瞬で双剣に変化する。それの片方に吹き上がる白に近い紅蓮色の炎を、もう片方に超高熱を纏ってクラーケギルディに斬りかかった。
左右から挟み込むような一対の剣を、クラーケギルディは駒のように回転して無数にある触手を犠牲にし防いだ。そのままレッドに逆袈裟斬りをお見舞いしようとするが、前腕に装着されたガントレットで防御される。
そのまま細剣の軌道をガントレットの表面で横にそらし、逆手に持ったテイルカリバー:ファイアを横薙ぎに一閃。そこでようやく、クラーケギルディの体に一筋の切り傷が走った。
「くっ!」
「まだまだいくぜ!」
それを皮切りに、レッドは両手に携えた双剣を縦横無尽に操ってクラーケギルディに嵐のような斬撃を浴びせかけていった。クラーケギルディはそれに勇猛にも互角に剣を打ち合わせていく。
レッドの剣が振るわれる度に炎を纏った斬撃が襲いかかり、少しでも擦ればただではすまない超高熱の斬撃が四方八方から飛び出す。負けじとクラーケギルディも触手を操ってそのことごとくを防ぎ、いなす。だがいくつかの傷も体に刻み込まれていった。
一方リヴァイアギルディ対テイルブルーの戦いもまた、かなりの熾烈さを感じさせるものへと変化していた。鞭のようにしなる槍と触れれば呪い殺さんばかりの刺々しい槍、二つの槍が激突する。
リヴァイアギルディの股間から生えた槍の動きは単純、突いて引く、突いて引く、ただそれだけ。だがそれは神速にも匹敵する速度に達し、ブルーはギリギリ対処できているといったところだ。
もとより、触手のあるものが大の苦手なブルー。そのためたとえ正斗のゲームでも、触手系の生き物が出てくるものは滅多に遊ばない。だがそれとこれとは話が別で、今は命をかけた戦いの真っ最中。そんなこと言っている場合ではない。
一応武人であるブルーはそれを理解しており、洗礼され全くブレのない、それでいて絶え間なく発射されるマシンガンのごとき触手を集中して回避していく。
達人の域に達しているリヴァイアギルディの槍術は相当のものであった。わずかに光る点でしかない刺突を、ブルーは同じく鋭い刺突で打ち返していく。
刺突だけかと思えば、突然まっすぐにそそり立っていた触手がぐにゃりと歪んで横薙ぎに鞭のように振るわれた。風切り音を伴うそれに、ブルーは腰の長い尻尾を地面に叩きつけて磁場を発生、防御する。
だがただ攻撃を防ぐだけはブルーの性に合わない。再びウェイブ・ボルグオルタを脇に抱えて縮地法さながらの踏み込みを見せ、リヴァイアギルディの腹に掌底を叩き込んだ。それだけにとどまらず、槍を振り回しリヴァイアギルディの巨体を吹き飛ばす。
柱の一つに激突したリヴァイアギルディは瓦礫の中から立ち上がり、口元を拭ってニヤリと笑うとブルーに突撃していった。至近距離での槍の打ち合いが再び開始される。突き、薙ぎ払い、斬りあげ……ありとあらゆる技がぶつかり合った。
そういった攻防を繰り返しながら、ブルーは隙あらばレッドの援護に向かおうとする。こちらは点の攻撃だが、あちらは触手の数からして面の攻撃だ。こちらより負担は大きいだろう。
もちろんそれはレッドの触手嫌いなブルーへの配慮だが…しかし、それでレッドの負担が大きくなるかと言えばそうでもない。むしろ、ブルーに手を出そうとした馬の骨野郎をぶっ飛ばそうとやる気満々であった。
まあ、それはともかく。ブルーの思惑を察知したリヴァイアギルディは、さらに槍の速さをあげた。慌てて応戦するブルー。
「クラーケギルディの元へは行かせんぞ!」
「あんだけ喧嘩してた割に、随分、心配するじゃない!」
「む、それは……」
「……? なによ、急に黙って…っと!」
どうしてか言葉に詰まるリヴァイアギルディに首を傾げながらも、ブルーはかけらも緩められていない神速の槍をさばいていく。
しばらくリヴァイアギルディは何かを言い澱んでいたものの、やがて言っても仕方がないことと自己完結したのか押し黙って股間の槍を振るった。どんどん熾烈さを増していく二人の槍撃。
それに負けず劣らず、クラーケギルディとレッドの戦いもかなりの激しさとなっていた。剣士と剣士、槍士と槍士が激しく戦い、辺り一帯に轟音を撒き散らす。完全に実力は互角だった。
当然といえば当然だ。ドラグギルディ…今は龍美となった彼女とその盟友バハムギルディ。この二体の時、全くと言っていいほど二人は幹部級のエレメリアンに太刀打ちできなかった。結局は正斗がきて全てを解決させた。
二人は悔しかった。いつもいつも、正斗に守られていることが。だからこそ、二人はあれ以来より一層、修行に精を出すようになった。
具体的に言うと、以前は弱体化した…それでも十分の一程度だが…コピーゲムデウスを二万体倒し切るものだったのを五万体に増やした。最近ではそれを苦もなく行えるようになってきているあたり、総二もなかなか人外の域に足を踏み入れかけている。
そんな日頃の努力の成果が身を結んだのか、今や一人で互角に幹部級のエレメリアンとの戦闘も可能となっていた。さすがは世界最強のツインテールの戦士である。
だがしかし、戦いとはやがて終わるもの。どちらかが倒れ、どちらかが生き残る。それが自然の法則であり、真理だ。
「ハァァッ!!」
「がはっ!?」
そしてーー倒れたのは、クラーケギルディの方であった。全ての触手を切り裂かれ、ついにはその旨に大きくクロス型に切り傷を結ばれてしまう。そのままレッドの蹴りによって吹き飛ばされた。
数十分に及ぶ斬り合いの末勝利したレッドは地面に両足をつけると、片腕のスロットからガシャットを引き抜き腰のキメワザスロットホルダーに装填して銀色のボタンを一度押した。するとそこからエフェクトが上がる。
《ガッシューン……ガシャット! キメワザ!》
「ハァァァァ……!」
逆手に持っていたテイルカリバーを両方とも一回転させて持ち替え、左のテイルカリバー:プロミネンスを正眼に、右のテイルカリバー:ファイアを片刃を上にして顔の横に構える。そしてもう一度スロットのボタンを押し込んだ。すると、双剣に強大なエネルギーが蓄積されていく。
「くっ……!」
地面を転がっていったクラーケギルディは全身から煙を上げ、火傷だらけながらもなんとか立ち上がろうとするが、先の斬り合いでほぼ力を使い果たしてしまったため全く体に力が入らなかった。
なんども立ち上がろうと試みてみたものの、失敗に終わる。やがてレッドの双剣に蓄積されたエネルギーが最大に達した瞬間、クラーケギルディは悟った。もう、自分の命はここまでであると。
まだまだ悔いはあるが……だがしかし、このような素晴らしきツインテールを持つ戦士に倒されるのならば、クラーケギルディは騎士として本望であった。それ故に地に剣を置き、体から力を抜いてただ立ち尽くす。
(……どうやら私は、ここまでのようだな。ふっ、まさか私の方が先に逝くとは……まあ良い。長年いがみ合ってはきたが、リヴァイアギルディならば後を任せられる。本当に癪だがな)
自らの心中でそう言葉を吐露しながら、クラーケギルディはそっと目を閉じ両腕を広げた。それを見てレッドも彼の心を悟ったのか、引導を渡すべく地を駆けた。
《KING! CRITYCAL SRASH!》
エネルギーを纏ったふた振りの聖剣が、クラーケギルディめがけて振るわれる。クラーケギルディは近づいてくる剣の気配と熱気に、明鏡止水に匹敵する無心に帰り自らの死を受け入れたーーー
「ーーさせるか!」
ーーーザシュッ!!!
「ーーカハッ」
ドシャッ
胸を深く切り刻まれ、口から血のように粒子を吹き出し、地面に倒れ伏したのはーーすんでのところで割り込んだ、リヴァイアギルディであった。
「え……?」
「……な、に?」
まさか割り込んでくるとは思わなかったレッドは驚愕に目を見開き、クラーケギルディは恐る恐る目を開け、そして自分の足元に転がる宿敵を見て愕然とした。ブルーもまた、一瞬で自分の目の前から消えたリヴァイアギルディが倒れふす姿に驚きをあらわにする。
クラーケギルディは慌てて地面に両膝をつき、リヴァイアギルディの体を持ち上げて自分の腕の中に収めた。そしてリヴァイアギルディの名を何度も叫び、その体を揺さぶる。いきなりのことに混乱し、ツインテイルズ二人はただそれを呆然とみていた。
やがて、うっすらとリヴァイアギルディが目を開ける。そしてクラーケギルディを見上げ……笑った。
「ふっ……無事、だった…か…我が、
「…何故だ!何故このようなことを!」
「……フン、気がつけば、勝手に、体が動いて、いたまでの、ことよ……」
「な、何……?」
困惑するクラーケギルディに、リヴァイアギルディは力を振り絞って片腕をあげ、そしてそれをクラーケギルディの仮面のような顔に触れた。
いきなり何をと困惑するクラーケギルディにまた竜のような顔で笑い、リヴァイアギルディは静かな声で語った。
「……ずっと、俺は……
((ん?私……?))
「あ、当たり前であろう!我らは対極のものを愛する存在!義父上の下で出会ったその時から、ずっとそうだったではないか!」
「……そう、だったな。貴様は、そうだった。だが……私は、違ったのだ…」
「な……!?」
驚くクラーケギルディに、リヴァイアギルディは悪戯げに笑い。
「さらばだーーー我が、想い人よ」
そして、リヴァイアギルディの手は地に落ちた。
「リ………リヴァイアギルディィイィイイイィイイイイィィィイイイイィイイイイイイィイィィイイイイィイイイイィイイイッ!!!」
クラーケギルディは、力の限り叫ぶ。そこには侵略者の将でも、貧乳を愛する騎士でもない、ただ大切な友を失った、一人の男の姿があった。
その姿に、レッドとブルーは何も言うことができないのであったーー
怒りに打ち震える騎士、圧倒されるツインテイルズ。
そしてーーヒーローは遅れてやってくる。
次回「決戦、烏賊騎士と海竜! 後編」
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