ツインテールとゲームで世界を守る。【とりあえず凍結】   作:熊0803

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一ヶ月近く更新が途切れてしまい、申し訳ありません。
今回から二章開幕です。楽しんで頂ければ幸いです。


【第二章】SECOND STAGE!!!
ツインテール部誕生!


 Welcome to the new game!

 

 Next is〝SECOND STAGE〟

 

 Are you ready?

 

 GAME START!!!

 

 

 ●◯●

 

 

 ツインテール、と言う髪型を、皆様はご存知でしょうか。

 

 ほんの少し前ならば、こう問いかけて回ってもおそらくほとんどの人は首をかしげたことでございましょう。ツインテールというのは、頭部の側面で左右二つに結った髪型のことです。しかし、そのまま体を表している名称でありながら、今まで多くの人が連想すらできませんでした。

 

 つまりは、ツインテールというものはごく普通に生きる人たちにとってそれくらいの認識でしかなかったのです。けれどある日、その髪型は唐突に世界中に広がることとなりました。

 

 そう、あのツインテイルズの影響でです。まあ、パラちゃ……テイルパラドクスの影響で、リーゼントや髪を逆立たせた髪型をまねる方々も多くいるのですが。え?今何を言い間違えたのか、ですか?

 

 ……いいえ、まだ確証があるわけではございません。ですので、その点を言及することはご容赦ください。

 

 とまあ、それはともかく。そんなツインテールは私にとって、幼さの象徴でありました。

 

 どれだけ大人になりたくても、大人であろうとしても、誰もそうは見てくれませんでした。人一倍勉強をしても、品性を正し優等生として振舞っても、生徒会長になって何千人という生徒の代表になったとしても、誰一人としてわたくしを大人と認めてはくれません。すでに婚姻を結べる年齢にもなっているのに。

 

 …いいえ。これは、当然のことなのでしょう。百人が見れば百人が小学生と答える……わたくしは、そんな幼い風貌なのですから。その外面(ハンデ)を埋めるために内面をどれだけ高めようとも、及びませんでした。

 

 しかしだからこそ、わたくしには逆にツインテールが必要でした。もはやどうにかなるとは思えない発育という現実から目を背けるための逃げ道として。リボンをほどいてしまえば簡単に失われてしまうそれは、わたくしにとって非常に都合の良い言い訳だったのですから。

 

 ツインテールだから。ツインテールさえなければ。幼い頃からお母様の言いつけで今まで続けてきたそれに全ての幼さを押し付けたのです、わたくしは。

 

 だからこそ、わたくしは友人である神崎正斗くんがうらやましくもありました。誰に強制されたわけでもなく、幼少期から一般的には子供の多くが遊ぶもの……すなわちゲームをこよなく愛し、 そのひたむきな熱情と規格外の才能で世界の頂点に上り詰めてしまったのですから。

 

 お母様の言いなりな部分の多いわたくしには、到底実現し得ないことです。そして神崎くんはついに、異世界からの侵略者を撃退するヒーローの力まで生み出してしまいました。それも、わたくしが長年欺瞞で自分を慈しんでいた、ツインテールで。

 

 話は変わりますが、わたくしはヒーローが大好きです。特に、子供番組のヒーローが。なぜなら誰に理解されずとも、孤独に戦い続ける。フィクションのヒーローである彼らは誰もが気高く、決して誰にも打ち明けられぬ心を抱いて足掻き続けるわたくしにとって何よりの心の支えだったからです。

 

 そんな私の前に現れたのが、二人の本物のヒーロー。テイルレッドと、テイルパラドクス。かたやツインテールを心から愛す力で、かたやゲームのような力で戦う彼女らを、わたくしはまたうらやましく感じてしまいました。

 

 世間の奇異の目と礼節を欠いた流言を受け流し戦い続ける彼女らと違って、わたくしは一片もツインテールが好きでないことすら、胸を張っていうことができないのですから。

 

 そしてもう一つ……わたくしが、ツインテールを好きでない理由があります。それは……そ、その、わたくしには、密かに想いを寄せている方がいるからです。その方は彼女らとは違う意味でわたくしのヒーローで。ツインテイルズが現れるずっと前から、いつもわたくしを守ってくれました。彼との付き合いは、もう2年にもなります。

 

 喧嘩好きで、無表情で、不器用で、でも危ない時には絶対に助けてくれる、そんな少し変わったわたくしのボディーガード(王子様)

 

  だから、彼のことを二年もの間慕い続けているわたくしは彼に〝 守るべき幼い少女〟ではなく、〝一人の女性〟として見てほしいから。だから、子供っぽさを強調するツインテールが、好きではありませんでした。

 

 わたくしは、このどうしようもない想いをどうすれば良いのでしょうか。わかりません。でも、誰かに聞くことはできない。それがたまらなく、もどかしい。

 

 わたくしは、どうすればいいのですか?

 

 ーー鉛龍(チェンロン)様。

 

 

 ●◯●

 

 

 今日もいつも通り、基本的には平穏な1日が始まった。

 

 パラドとともに起床して服を着替え、いつもこちらに来て食べる総二と愛香とともに四人で朝食をとり、学校へと登校する。通学路ではいつもの光景。俺は透明板でガシャットの設計図を構築し、パラドはゲームをして、総二と愛香が仲睦まじい様子で手を繋ぎ、それをあきれた様子でトゥアールが肩をすくめる。

 

 そして学校に着けば授業を受けて、総二が転校して来た親戚の〝観束トゥアール〟と名乗った彼女との関係を愛香とともにクラスメイト達からからかわれながら昼食をとったり、そのあとは午後もまた授業を受ける。

 

 いたって普通の日常、普通の光景。しかし以前とは少し違う、そんな風景。異世界からの侵略者というイレギュラーな自体から始まって一人増えた、それが唯一にして最も重要な相違点だ。けれどその相違点で生じたデメリットも当然ある。変態たちのと戦いである。

 

 そんな夢物語のような日々は、今日も続いていく。だが今日はまた、ほんの少し違うものになりそうだ。なぜならば総二がその胸に秘めるものーーツインテールへ……特に愛香への……の愛を、公に公表するのだから。

 

 ーーツインテール部。それが、今日陽月学園高等部に新たに加わる俺たちの部活の名前なのだそうだ。休み時間の間に総二が部活新設の申請書を書き上げ、今は受理されたかどうか確認した後に部室の予定の部屋に総二と二人で向かっているところである。

 

 隣でほおを緩める総二の手の中には昼休みに二人で作った超硬度合金製の真新しいプレートが。ずっしりと重量のあるそれは、果たして総二にツインテール部の存在を強く想像させたようで。何、プレートが豪華すぎやしないかって?いいんだよ、普段真面目に仕事してるんだからたまにはこういうことをしたって。

 

 まあ、そんなことではどうでもいい。当のプレートにはゴシック体で綴られたツインテールの文字…と、小さく幻夢コーポレーション陽月学園支部の文章。その横には同じく悪ふざけして描いた、黒いマイティとツインテールのエンブレムが合わさったものが刻印されている。

 

 名付けるならば、〝ツインテールマイティ〟だろうか。うむ、いいな。ここ最近のツインテイルズブームに乗れば売れること間違いなしだろう。早速ゲーム案と関連グッズの計画を立てなくては。

 

 え、だからふざけすぎだって?知らんな。こちとらゲームクリエイターだ。こんなもの遊ぶのうちにも入らない。せいぜい前座だ前座。

 

 そんなことを考えている間に、どうやら目当ての場所までついたようだ。総二と二人で部室棟の突き当たりで足を止める。教室からはかなり遠いが、ここが今日から俺たちの部室ならしい。

 

「総二」

「おう」

 

 総二が入り口のルームプレートを、空きを示す無地のものから差し替える。するとどうだろう、先ほどまでただの空き部屋だったそこは、一瞬にしていっぱしの部室へと早変わりしたではないか。

 

 ちなみに、部長が当然総二で副部長が俺、あとの二人が部員という構成になっている。幻夢コーポレーションの最初期を思い出すな。あの時も、こんな人数だったか。

 

「ツインテール部、か……」

「兼、幻夢コーポレーション支部だがな」

「そうだな」

 

 二人顔を見合わせてフッと破顔しあって、自然と拳をコツン、と軽くぶつけあった。いつも何かうまく行った時の、総二とのテンプレのようなものだ。

 

 それが終われば、次は言葉で。

 

「これから一緒に盛り上げていこうな!」

「ああ、もちろんさ」

 

 決意も新たに、扉を開けるとーー

 

「いい加減に、しろっ!」

「「あだぁっ!?」」

 

 ーーなぜか、パラドのゲンコツが愛香とトゥアール二人の頭に振り下ろされていた。さすがにぽかんと硬直する俺と総二。

 

「全く…」

「……何をやっているんだ?」

「あっ、エム。それにTTも」

 

 やれやれと腕組みをしていたパラドは俺を見た途端パッと花開くような笑顔を浮かべ、俺に抱きついてきた。俺はそれを受け止める。うん、可愛い。あと柔らかい。

 

 と、そうではなくて。だいたい予想はできるが、一応パラドに事の顛末を聞かなくては。

 

「で、さっきのはどういうことなんだ?」

「あー、えっと……」

 

  パラドが言うには、やはりというべきかいつも通りトゥアールが変態発言をしてそれにツッコミ(物理)をかまし、しかしまるでゾンビのごとく這い上がりめげずに下ネタを繰り出すトゥアールにまた愛香がツッコミを入れ……と、そんな応酬を繰り返し、八度目になったときにパラドが我慢できなくなり鉄拳制裁を加えたのだという。

 

  ……まあ、これもここ最近のいつも通り、というわけだ。一般常識的に考えなくても十分特異な日常である。ちなみにいうとパラドはグラファイトのように怪人態を持たない代わりに生身でかなりの身体能力を持っている。愛香と同等レベルといえばわかりやすいだろうか。

 

 それはさておき、これが現状である。トゥアールが開発したテイルギアによって総二と愛香がツインテールの戦士へと変身し、俺のガシャットギアデュアルでパラドが仮面ライダーになる。そして精神生命体であるエレメリアン達からこの世界の人間を守っているのだ。

 

 そんな毎日だが、今朝もまた同じように宣戦布告してきたアルティメギルを見事に打倒した。スク水にこだわりを持った、タイガギルディというエレメリアンである。先日のドラグギルディとバハムギルディの撃破の矢先に援軍の大将の撃破、これで少しは大人しくなってくれるといいのだが。

 

 そういうわけで一応の一区切りがついたので、学校での拠点としてこの「ツインテール部」が設立された、というわけである。もちろんドラグギルディはこちらに引き抜いたので、今は人間の肉体に彼の意識を移動させているところだ。

 

「ツインテールを守り、世界を守る。あ、あとゲームを愛する子供達も。それがツインテール部の活動だ。頑張ろうぜ、三人とも」

 

 復活した愛香とトゥアール、パラドも含め改めて総二がそう言う。そうすれば全員が頷き、俺はそれを見ながらふむ、と顎に手を添える。そしてトゥアールに向けて話しかけた。

 

「それでは早速、ツインテイルズとしての活動を始めようか。まずトゥアール、君には俺と共にこの部室を改造してもらいたい」

「改造、ですか?」

「ああ、改造だ。具体的には総二の地下基地と同じようにな。転送装置、簡易的なモニター、戦いの後の疲労を回復する装置の設置など。ああ後、愛香のために床や壁に自動修理機能もつけておくとするか」

「ちょっ、最後の何よマサ」

「先ほどのことを思い出して自分の胸に手を当てて考えてみろ」

 

 俺がそういえば、愛香はうっと息を詰まらせる。そのままちらりとパラドを見れば、彼女はニッコリと笑ってガシャットギアデュアルを手に持っていた。次は本気でいくつもりらしい。

 

 顔を真っ青にした愛香とトゥアールがぶんぶんと折れそうな速度で首を縦に振ったので、早速改造に取り掛かることにした。

 

 パラド曰くかなり奇妙な音がするそうなので、俺はイヤホンをして音楽をかけながら一緒に作業に取り掛かる。ちなみに曲は我が幻夢コーポレーション所属のボーカルユニット、「ツヴァイウィング」の『逆光のフリューゲル』だ。

 

 うりせけっへ。

 にゃけろっぱ。しょはっはー。

 かろぺれぺれぽぷー。

 ふもえめめ、こみーんみょいみょい。

 

 ………うん、なるほど。確かに奇怪な音だな。

 

 どうテキストに起こしても音感を疑われそうな音を聞いて改造作業を施しながら、奇妙な道具を使って同じように作業をしているトゥアールにふときになることがあったので話しかけてみる。

 

「それでトゥアール、いい相手は見つかったか?」

「!? にゃ、にゃにをおっしゃっているんですかいきなり!?」

 

 おや、思ったより純情そうな反応が返ってきたな。まあ、普段の行動が痴女っぽいだけでこいつは十分少女なのだろうが。そうでなくてはあの思春期の中学生男子の奇行をひっくり返して女にしたような言動を取っている説明がつかない。

 

「いや何、総二のことはもう諦めたのだろう?なら早速積極的に新しい相手を探しているのかと思ってな」

「……いいえ、まだです。総二様のように素敵な男性は、今のところ見つけられていませんね」

「そうだろうな」

 

 俺が即答すれば、トゥアールは驚いたような顔をしてこちらを振り返った。俺はそれにただ無言で肩をすくめ、作業を続ける。

 

 総二は、本当にいいやつだと俺は思っている。理由の一つとしては、こんな異常な俺を受け入れ、長年明るく気さくに接し、親友でいてくれていること。常人ならば薄気味悪がって離れていくだろうに、あいつは真正面から相手をしてくれた。それがどれだけ今の俺を構成する要素の大部分を占めているだろうか。

 

 明るく、気さくで、情に厚く男気がある。普段の愛香とのやり取りからも見えわかるように一途だし、見た目も良い。唯一の欠点があの異常なまでのツインテール愛だが、俺からすればそんなもの欠点にすらなり得ない。総二の大きなあの情熱を受け入れられない女など、俺があいつに近付くことすら決して許さん。

 

  様するに何を言いたいのかというと、だ。そんな総二に、俺の一番大切な親友にかなう奴などそうそういないということだ。だからトゥアールには、せいぜい頑張って欲しい。

 

 と、そのようなことを考えているうちに作業は滞りなく終了した。部室の扉を開け、ものすごい微妙な顔をしている三人に入ってきていいぞという。

 

 そういえばこれは余談だが、四月も終わりというこの時期にマンモス校たるこの学校でなぜこんないい部室が手に入ったかといえば、大昔に女子生徒が自殺しただの幽霊の目撃情報が絶えないだの、要するに曰く付きの部屋、というわけだ。だが教師のところへ鍵を受け取りに行ったとき、愛香や俺がいるなら大丈夫だろうと言われた。解せぬ。

 

「おお、一見さっきと変わらないように見えるな」

「カモフラージュは完璧だ」

 

 感嘆の声を上げる総二にそう答える。ホワイトボード、スチールの本棚、長テーブルに折りたたみ式のパイプ椅子。ロッカー。あと俺の趣味で中身は空っぽのガシャットやマイティの人形が複数飾られている。マイティのライバルキャラ、〝ゲンム〟柄のカレンダーもだ。

 

 文化部らしい質素で最低限の設備に加え、幻夢コーポレーションの支部らしい装飾。うむ、いい感じだ。

 

  一通りの確認を終えたあと、全員で長テーブルにつく。そこでトゥアールがにゅるんと白衣のポケットから宅配ピザくらいの大きさの箱を取り出した。相変わらずの異世界超科学である。少し驚きながら、俺もスマートフォンの箱程度の大きさの箱を二つ取り出し、総二と愛香の前に一つずつ置く。

 

「この箱は?」

「はい、ツインテール部始動の記念に作ったものです!」

「同じく。開けてみろ」

 

  俺たちに促され、総二と愛香がまずはトゥアールの箱を恐る恐る開ける。するとそこにはスマートフォンのような長方形のガジェットが五つ並んでいた。それぞれ赤、青、白、赤と金、赤青黄色のラインが走った黒色だ。

 

「ツインテイルズ用のツールです。五人分あるので、それぞれにお配りしますね」

「おお!」

 

  総二とて男、新しい機械を見るとやはりワクワクするらしい。それに加え、それぞれの色に合わせて五つ用意されている。俺と総二は一瞬アイコンタクトを交わし苦笑する。なかなか遊び心がある仕様だ。

 

「高性能端末、名付けてトゥアルフォンです!」

「…………原子名か」

 

  思わず突っ込んでしまった。それを開発したものや発見したもの、国などの名前をつけるというのはある意味発明品にはテンプレだが、トゥアールもご多分に漏れずそうならしい。まあ、本人は気に入っている様子なので口出しはしないが。

 

  トゥアールからなされた解説によるとどうやらこのトゥアルフォン、地下だろうが深海だろうが宇宙だろうが圏外にならないのは当然として、変声機能、成分分析機能、その他諸々いろんな機能を持ち、バージョンアップで機能の追加も可能なようだ。無駄にハイスペックだった。

 

  というか、なぜテイルギア含め宇宙での戦闘を想定されているのだろうか。いや、俺のガシャットもあらゆる環境に対して万能型になってはいるが、いつかそういう戦いも経験するのだろうか。あ、ちなみに俺もゲムデウスになれば宇宙での行動は地上と全く変わりなく可能だ。

 

「今までのようにブレスを介しての通信は、大勢の人がいるところでは怪しまれかねませんからね。その点、トゥアルフォンならば『通信をリアルタイムに暗号化できる』機能がありますから安心です」

「ほう、それはすごいな」

「はい。声に関しては認識撹乱装置(イマジンチャフ)の穴の一つでもありましたからね」

「え?どういうこと?」

 

  機械モノがあまり特異ではない愛香が尋ねた。

 

「簡単に言えば……例えば総二様が公衆の面前でトゥアルフォンを通じて〝アルティメギルが現れたって!?〟と叫んだとします。その声はトゥアルフォンで受ける私たちにはしっかりと届きますが、周囲の人々には〝今日の夕飯何?〟といった、別の言葉に聞こえるんですよ」

 

  おお、簡単に聞いてもかなり便利なテクノロジーだな。

 

「助かるよ、トゥアールさん。正体がバレないようにするのは一苦労だからね。通信関係がクリアされるのはでかいよ」

「ありがとうございます」

 

  さて、解説も終わったところで。早速実践に移ることになった。総二、愛香、トゥアール、俺、パラドの全員がグループで電話をかけて見る。

 

『ツインテールツインテール、ツインツインツインテール!?(アルティメギルが現れたって!?)』

『はぁ~、はぁ~、私トゥアールちゃん、今あなたの後ろでおっぱい見せてるの(急いで出撃してください総二様、愛香さん、パラドさん!)』

『そーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじそーじ…………(わかったわ!すぐに行く!)』

『さて、今日の会議はと……(気をつけろ、こちらでもサポートをする)』

『エムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエムエム…………(ははっ、心が躍るなぁ!)』

 

 ……………………………………………………。

 

 ああ、一言言わせてもらおう。

 

 こ れ は ひ ど い 。

 

  いや、なんだこれ。総二はもはや古代ツインテール語としか形容できんし、トゥアールはいつも通り痴女だし、愛香とパラドに至ってはただのヤンデレじゃねえか。そしてパラドと聴覚を同調して聞いてみたけど、なんで俺だけ普通だし。一人だけこれって、逆になんか疎外感覚えるわ!

 

「うぉらああああああああああああああああああ!!!」

 

  案の定、自分の携帯で録音していた愛香が甲子園決勝県のラストイニングを思わせる渾身の投球でトゥアルフォンを壁に叩きつけた。

 

「トゥアルフォンがあぁあぁああぁぁああぁっ!?いずれバージョンアップすればテイルブレスと連動して変身携帯になるのにぃ!?」

「何が変身携帯よ、略してヘンタイじゃない!」

「……携帯電話で変身するすべてのヒーローを敵に回す気かお前は……」

 

  そうだそうだ、俺がいくつか開発した対エレメリアン用兵器の一つである555(ファイズ)にも謝れ。いや、トゥアールも愛香もファイズのこと知らないけど。

 

  そんなアホなことを考えながら、俺は愛香のトゥアルフォンを拾い上げ彼女に渡す。全く壊れていないところを見るあたり、かなりの強度がありそうだな。

 

「さて、次は俺からだ」

 

  もう一度席に着き、総二と愛香に俺の方の箱を促す。今度はそこまでゆっくりではなく、普通に開けられた。すると中から出てきたのは、それぞれ違う色、イラストのガシャット。

 

  一つは、黄金色に輝く長剣の切っ先を蒼穹を背に平原に突き刺し、その柄をガントレットに包み込まれた両手で持つ金髪碧眼の軽装鎧と青、白で構成されたドレスを纏った少女のイラスト。どこか騎士の礼節のような規律を感じさせる文字で描かれた名前は《GOLDEN KING SAVIOR》。総二の箱の方だ。

 

  もう一つは今愛香が使っている《BLUE BEAST LANCER》の上位互換版のガシャットであり、炎で燃え上がった戦場の中に積み上がった骨の山の上に赤い満月を背負って立つ、上半身に赤い模様を描き紫色の骨鎧に身を包む、全身に取り付けられた骨と同じ紫色の骨の尻尾を持っている紫槍を片手に持った戦士のイラスト。狂気を感じさせる荒々しい文字で刻印されている名は《PURPLE BEAST BERSERKER》。

 

「これって……」

「新しい強化ガシャットだ。有効活用してくれることを願おう」

「……ありがとね、マサ」

「サンキュー正斗」

「例には及ばんよ。俺はただ、お前達が無事に帰ってくる確率を上げるために渡したまでさ」

 

  俺が手をひらひらと振って言えば、二人はふっと微笑んだ。つられて、俺や他のメンバーも柔らかなわらいをこぼす。

 

  すると、唐突に総二がハッとした様子で部室の扉を見た。俺とパラド以外の二人は不思議そうにする。

 

「……ツインテールの気配だ。近づいてくる」

「はぁ!? 突然エレメリアンみたいなこと言ってどうしたの!?」

「…これは、結構強い波動だね。エム?」

「ああ、そうだな」

 

 それに、この馴染みのある波動は……

 

「生徒会長の、神堂慧理那ですわ。入ってもよろしくて?」

 

  扉をコン、コンと控えめなノックをしてきたのはやはり、俺とパラドの友人にして陽月学園高等部生徒会長の神堂慧理那その人だった。




感想をいただけると嬉しいです。

現れた神堂会長。果たしてどうなるのか。

次回「生徒会長とアドレシェンツァ」

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