幼女戦記×編隊少女   作:アル・ソンフォ

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編隊少女とのクロスオーバーなのに、編隊少女のキャラクターたちが殆ど出ていないそういわれそうなので、冒頭で出してみました。
やっと、少佐殿は着任を受け入れてくれました。
なかなか、戦闘が始まらないとクレームが来そうです。


第4話:転生者

>>>西暦一九四二年六月二十日午前 極東基地内の廊下<<<

 

「よう、美羽。さっき、子供を司令官室に連れて行っていたようだけど。司令官の娘かなにかか?」

司令官室を退出した鳩森美羽に、アデル・ガーランドが声をかける。赤尾茜もアデルの後ろから顔を出す。

「俺っちよりも、小さかったもんな。でも、金髪だったのよ。司令官さんの娘と違うっしょ。迷子でも保護したんだべか」

「残念、違いますよ。私たちの新しい仲間です。たしか、デグレチャフ少佐とかいう名前でしたよ。」

鳩森美羽の返答に二人は反論する。

「おいおい、少佐って本当か。確かに軍服は着てたけど、ありゃ、どう見ても子供だったぞ、コ・ド・モ。アタシたちだって、操縦士ってことで少尉だの中尉だのといった将校様だけどよ、佐官はないだろうって」

「そーだよ、先任小隊長のエミリアだって、やっと、最近大尉とかいってたべ。実はああ見えて俺たちより年上なのか。それもと、どっかの王様のお姫様ってか?」

鳩森美羽は二人にデグレチャフ少佐の印象を話す。

「どうなんでしょうねえ。でも、少し会っただけの印象ですが、なんというか、少女というよりも、かっちり纏った軍装がまさにぴったりで、本当に将校っていう感じだったんですよ。あっ、そういえば十二歳とか聞いたような」

「十二歳!余計少佐なんてありえないだろ。年下だぞ。」

「そうさよ!そうさよ!俺っちより年下じゃねーか」

二人はあきれたような声を出す。

「でも、司令官さんは、デグレチャフ少佐は士官学校を次席で卒業し軍大学もでてるって、あと、エースオブエースだとおっしゃてましたよ。あと、実戦経験実績も豊富だとか」

鳩森美羽の答えに、アデル・ガーランドは顔を手で押さえて言い放つ。

「待てよ、十二歳ってさっきいったじゃねえか。十二歳の子供が士官学校も出て、軍大学も卒業、あまつさえ実戦経験ありって、一体、何歳で軍に入ったんだよそのデグなんとか少佐ちゅーのは」

「信じないぞ、美羽。俺っち、いままで美羽は嘘をつかないと思ってたのに。」

茜も続けて反論する。

そこへ、元新聞記者のフィオナ・ウェストバリーが顔を出す。

「面白そうな話をしているじゃない。新しく入ってくる少佐様とやらの話の様ね。今日来たんだ。どんな子なの。すごい戦力になるって聞いているのだけど」

「聞いてくれよフィオナ、そのデグなんとか少佐っていうのは、十二歳なんだとよ。軍大学卒で実戦経験豊富なエリート様らしいぜ。なあ、美羽」

アデル・ガーランドが真っ先に答える。

「ええ、司令官室にお連れしたのはわたしだったんですが、本当に将校っていう感じだったんです。でも、茜さんより小さいんですよ。」

「俺っちを比較対象にするな!」

鳩森美羽の返事に、赤尾茜が突っかかる。

「ふーん、気になりますわねその少佐。その方はまだ司令官室かしら?ちょっと、見てきますわ」

フィオナ・ウェストバリーはそういって司令官室の方へかけていった。

 

>>>同時刻 極東基地内司令官室<<<

 

「藤堂大佐殿、防諜術式展開しました。」

演算宝珠が光る。

「デグレチャフ少佐、了解した。」

藤堂大佐としては、実際、防諜術式がかかっているか確かめる術はない。でも、信頼している。あのデグレチャフ少佐だ。いま、彼女は絶対に情報を必要としている。そして、出来なければ出来ないとはっきりというだろう。値踏みされるということに慣れていないとは言え、自分は司令官という立場なのだ。その立場にふさわしい姿勢を虚勢でもいいから取り続け、彼女を手に入れなくてはならない。そうでなくては、自分も破滅するのだ。

 

「藤堂大佐殿、すべてお話しいただけますか?」

金髪碧眼で容姿が整いまさに西洋人形といった顔とそれに似つかわしくない鋭い目がこちらを見る。これこそ、見た目幼女ながら大隊を率いた強者だ。幼女の皮をかぶったバケモノとかのレルゲン大佐が評したのも今なら共感できる。

「小官の疑問にお答えいただきたい、藤堂大佐殿。まず、本基地がおかれている戦況、本基地の戦力、大隊長としての職務これらを教えてもらいたい。残念ながら、伝達に不備があったのか、どこかのまぬけな伝令将校が忘れたのか知らないが、小官は一切情報を得ていない。」

ターニャとしては聞きたいことは多いが、常識的な質問から開始する。存在Xの姿こそ見ていないが、間違いなく今までいた世界とは異なる、ましてや、日本だなどと言っていても、前世の世界とも異なることは確実だ。

だが、最初からここは異世界ですかなどという質問をするのは馬鹿のすることだ。帝国に転生して十二年、ダキア首都兵器工廠の誘爆を見た際につい「たまやー」と叫んだ以外あちらでも転生者であるなどというそぶりは見せたことはない。

「デグレチャフ少佐、戦況だの当基地の戦力だの職務などはおいおい説明しよう。聞きたいのはそれではあるまい。先程私は防諜術式展開展開を命じた。それらも重要だが、わざわざ防諜術式を展開する必要はあるまい。本当に聞きたいことを質問したまえ。遠慮はいらんすべて答える」

 

藤堂大佐は間違いなく知っている、ターニャは確信した。

「すべてを語っていただけるとは気前の良いことですな、小官がそれほど必要で?」

「必要だ。本物の大隊指揮官である貴官がいなければ遠からず破滅する。私と貴官は同じ境遇者として協力していく他、ここで生き残る道はない。」

藤堂大佐は自分の手を固く握りしめ言った。

「同じ境遇者?それはどういう意味ですか藤堂大佐。」

ターニャは身構える。目の前の人物が次に告げる言葉がこわい。

「異なる世界からの転生者ということだよ。元人事課長殿。」

 

そこから、藤堂大佐とやらは、この世界とこの私ターニャ・フォン・デグレチャフについて知っているということを語った。なんとこの世界はゲームの世界だという。そして、私は累計二百万部以上売れアニメ化までした小説の主人公だというのだ。そして、最後にこう言った。

「私も元々日本のサラリーマンだ。残念なことにあなたほど優秀な人材ではなかったけどね。このゲームをプレイしている最中に気を失って気が付いたらここで司令官をやっている。感覚的に二日ほど前のことだ。」

「はっ、私が小説の主人公!もとからフィクションの存在だと!貴様はそういうのか、貴様も存在Xの手先か何かか。」

ターニャは激昂し、思わず目の前の男に魔導刀を突きつける。

「落ち着いてほしいデグレチャフ少佐。君は先程珈琲を飲みケーキを食べただろう。味はしたかな?香りは?食感は?きちんと感じただろう。」

そういわれて見れば珈琲もケーキにも味も香りもあった。

「少し冷めてしまったが、おかわりでもどうかな。」

藤堂大佐はターニャのコーヒーカップに珈琲を注ぐ。再度、口をつけてみれば確かに冷めてはいるがコーヒーに違いない。ターニャは飲み干してしまう。

 

藤堂大佐は立ち上がって言う。

「デグレチャフ少佐。現実主義者であるあなたが小説の主人公などというふざけたことを受け入れられないのはよくわかる。でも、それは私の世界における事実で、あなたの世界の事実ではない。そして今だ。さっき私はこの世界がゲームの世界といったがどうだ。君も私も非現実のアニメキャラクターに見えるかな。見えないだろう。さっきの補佐官も、基地にいる操縦士の少女たちも産毛の一本一本まで見えるし、呼吸も体温だってある。当然、お腹も空くし眠くもなる。我々にとって今時点での現実とはこれなのだ。わかってほしい。そして、助けてほしい。」

そして頭を下げた。

「取り乱して申し訳ない。謝罪させていただきます。あと、藤堂大佐とお呼びすればよろしいでしょうか、それとも、元の世界の名前を憶えておいででしたら、そちらの名前でお呼びしましょうか。」

ターニャは落ち着きを取り戻し、謝罪する。

「気遣いは無用だ。こちらでの立場に慣れねばならない。こんな私ではあるが今後も司令官か藤堂大佐と呼んでもらいたい。あと、こちらはこの世界の情勢に関する資料だ。司令官の権限で取り寄せたものだからこちらの世界のものだ。一部機密指定のものもあるが、貴官なら適切に管理できるだろう。」

藤堂大佐は資料の入った厚みのある封筒をターニャに渡した。

 

「ありがとうございます。確かに協力していかなくては生きていけないようですね。航空大隊大隊長を引き受けましょう。」

「引き受けてくれるかありがとう。では、今後ともよろしく頼む。いま、案内を呼ぶから宿舎の方へいって休んでくれたまえ」

「ありがとうございます」

互いでお気遣い敬礼を交わした。

 




追伸:
デグレチャフ少佐も編隊少女の操縦士たちもみんな設定された声優さんの声をしていると思ってください。
悠木碧ボイスのリアルな金髪碧眼のデグレチャフ少佐、さぞ美幼女?なのでしょうね。中身おっさんですけど。

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