幼女戦記×編隊少女   作:アル・ソンフォ

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なかなか話が進まないとお思いかもしれませんが、きちんと戦闘や世界観の補完も書いていきます。
あくまでも編隊少女の世界を舞台としますが、本作品は「幼女戦記」メインとなるように進めてまいります。



第2話:司令官室

>>>西暦一九四二年六月二十日午前 極東基地司令官室<<<

 

「ターニャ・フォン・デグレチャフ魔導少佐であります。藤堂大佐殿お目にかかり光栄であります」

未だ状況はわからないが、司令官と名乗る人物から歓迎された以上、ターニャは藤堂大佐と名乗る司令官に規則通りの動作で敬礼し挨拶をして見せる。

 

「大いに結構。上からは極めて優秀な将校ときいている。」

藤堂大佐は敬礼を返すと、すぐに機嫌よさげにターニャを見続ける。

この身になって以来、このような挨拶の度に戸惑う態度をとる上官や同期、衛兵を数多見てきたが、幼女というべき自分が現れて上機嫌などという上官は初めてだ。同じ年頃やそれより幼い娘を持つ上官や軍大学の同期などむしろ自分の娘が戦場に送ることを想像して動揺したこともあるぐらいだ。まさか、幼女愛好家か何かではないだろうかと警戒しつつも表に出しては完璧な軍人の姿勢をとり続ける。

 

「はっ、過分な評価をいただいております。」

「そうだな、では、本基地での貴官の任務について説明しようと思うが、ああ、その前に鳩森少尉、君は新たに着任したデグレチャフ少佐を見てどう思う?ちょっと大切な質問なのだ。正直に答えてくれないか?」

「えっ、はい、藤堂司令官。少佐はまさに将校というべき方に見えます。」

後ろにいた鳩森少尉とかいった少女が戸惑いながら答える。

「本当にそう思うかね。本当はこんな幼女が少佐?どこかの王族か貴族のご令嬢か、初期のフーファイターとの戦闘で殉職した航空士官遺族の名誉将校かなにかと思っていないかね。」

藤堂大佐だという男は笑顔を浮かべたまま困惑した顔の鳩森少尉に問いかけ続けている。表情からしてある種の話のネタにしているようだが自身の名誉にかかわる。ターニャは抗議をしようした。

 

だが、先に一戸瀬補佐官と名乗っていた少女が司令官にちょっとだけ怒ったような表情で、藤堂大佐を咎めた。

「司令官、デグレチャフ少佐殿に失礼ですよ」

「そうだな。申し訳ないな少佐。貴官に失礼な話をしていたようだ。不快な思いをさせたのなら謝罪しよう」

藤堂大佐は軽く頭をさげる。

 

「小官はこのようなことには慣れておりますので。お気遣いなく」

ターニャは謝罪を受け入れる。ここにきてまだここにおける自分のことについて何の情報を得ていないのだ。早く本題に入ってほしい。いささか自分がいら立ち始めているが努めて冷静さを装う。

しかし、藤堂大佐とやらは、まだ本題に入ろうとしない。

「本日着任されたデグレチャフ少佐は、士官学校を次席で卒業し軍大学も優秀な成績で卒業された優秀な参謀将校なのだよ。無論それだけではないエースオブエースというべき撃墜スコアを有し、単機での中隊規模爆撃機の撃退、海上要塞攻略、本当に実戦経験実績豊富な将校なのだよ。」

大げさに手を広げ語り続ける。ターニャは前世で読んだ紅茶党の提督の嫌いだった衆愚政治家を思い出し心の中で少しだけこの藤堂大佐とかいう司令官の評価を下げた。

 

「司令官、報告書は読みましたが、少佐殿は12歳ですよね。21歳のタイプミスかと思っておりましたが、本当に12歳の少女なのですね。」

一戸瀬補佐官という少女は何かの書類を再度見直してながら驚きを隠せないという表情をしているし、鳩森少尉という少女も豆鉄砲を食らったように12歳とつぶやいている。やはり、衝撃的なのだろう。

「やはり、君達でも驚くかね。対FF耐性ということで少女ばかりのこの基地に配属されている君達でも不思議がるのだ。ましてやこの身長、本当に戦闘機を操縦できるか疑っているのだろう。その点についていえば問題はない。彼女の撃墜数は本物だし、空を自由に駆けることができるが、操縦士ではない。航空魔導士というのだ。これについては、後で皆に紹介するときにでも説明しよう。」

考えてみれば130㎝にも届かないこの体、目の前にいる司令官やらだけでなく、少女たちまでも身長は10㎝単位で上なのだ。第二〇三遊撃航空魔導大隊の隊員たちはすっかり私の体が小さいことを忘れていたようだが、こういわれてしまうと自分が小さいことを思い出し情けなさが襲ってくる。

ただ、一つ司令官とやらが言った「少女ばかり」「操縦士」という言葉がターニャの脳裏に引っかかり、そちらに思考を向け、その思いを封印する。この基地には一戸瀬補佐官や鳩森少尉みたいな少女が大勢操縦士として配属されているとでもいうのだろうか。

 

「すまないが、一戸瀬補佐官、鳩森少尉、デグレチャフ少佐と任務について打ち合わせを行う。2人とも退室してよろしい。ああ、あと、一戸瀬補佐官、コーヒーは用意できているかな?」

「はい、用意しております。でも、本当に砂糖もミルクもご用意しなくてよかったのでしょうか。今からでもお持ちいたしますが?」

「不要だ。デグレチャフ少佐は地獄のように濃く天使のように甘い香りがするコーヒーが好みなのだ。官給品などではなく私が用意した珈琲豆で淹れてくれたかな?」

一戸瀬補佐官が副官室のような扉から出て戻ってきたときには、その手には芳しい本物のコーヒーの香りとともに、コーヒーポットとコーヒーカップが2客、ご丁寧にケーキまで用意されている。戦場ではいつ見たかも忘れたような代物が平然と用意される。ターニャはこの基地は相当優遇されているだと考えてしまう。

応接セットのテーブルに並べさせると、藤堂大佐は二人を退室させる。

「では、二人とも退室したまえ。ご苦労だった」

「はい、司令官失礼します」

2人の少女が退室し、この部屋には藤堂大佐という司令官の男性とデグレチャフ少佐だけが残った。

「では、デグレチャフ少佐。そこのソファーにかけてくれたまえ。好みに合うように淹れることができているかわからないがコーヒーも用意した。戦時下だ甘いものも久しいだろう。遠慮せず食べてほしい。では、本題に入ろうか」

 




ルビの振り方がわからない・・・

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