幼女戦記×編隊少女   作:アル・ソンフォ

19 / 20
更新がのびのびなって申し訳ありません。少しづつでも進めていきます。


第17話:着任挨拶

■視点:ある操縦士の少女■

 金髪碧眼の少女、白い肌と整った顔立ちはドレスを着ていれば貴族の令嬢といっても通用するような小さな少女が壇上に立って、私達に語り掛けています。

 私達の誰よりも小さいかもしれない西洋人形の様な少女、しかし、彼女の纏っているのは男性用と変わらない変哲のないモスグリーンの軍服、本来なら似つかわしくない組み合わせのはずなのに、それ以外の姿が想像できないほど彼女に馴染んでいる少女の名前はターニャ・フォン・デグレチャフ、階級は少佐、きょう正式のこの極東基地に配属された私達の新しい仲間、少なくとも、仲間だよと藤堂司令官は紹介されました。

 

 最初、その少女が壇上に現れたとき、キレイな子が来たと思いました。あの無造作に束ねられた金髪をブラシを入れて整えたら可愛くなるに違いないあの少女が、昨日の食堂の話題となっていたアデルやグンヒルドを模擬戦闘訓練で簡単に手玉に取り、あまつさえ、訓練中に突如襲撃してきたボス級のフーファイターをほぼ単機で墜とした少女にはとても見えないと思いました。 

 

 ですが、彼女は簡単な挨拶の後に発した言葉が、その幻想を打ち砕きました。彼女は、淡々とこう口にしたのです。「私は大隊長として、司令官より勝利と諸君ら全員を生き残らせることを命ぜられた」と、唖然とする私達に彼女は続けてこういったのです。

 

「諸君、私は確かに諸君らより幼く見えるかもしれない。だが、問題はない。私はこれでも軍大学を出ている。そして、大隊を一から編成し、それを率いて剣林弾雨の戦線を駆け巡ってきた。」と

 

 そして、少女に似つかわしくない冷たい碧眼で私達を見わたした後、急に明るい表情になりこう続けたのです。

 

「諸君らは、人類の敵たるフィーファイターと戦える特殊な能力を有する貴重な人的資源だ。よって、私は諸君を丁重に扱うことを約束する。私は諸君らが平和と護るために女性の身でありながら志願して戦い続けていることに敬意を示そう。」

 

 壇上の少佐殿が語られ続ける言葉は、『少佐』として相応しい言葉であっても『少女』には、似つかわしくない言葉、でも、もはや、私には違和感を感じることはできなかった。壇上では、少佐殿が語り続けている。

 

「だが、安心してほしい、今まで私が率いていた大隊は屈強な男性が殆どであったが、この基地にいる操縦士は全員が女性だ。そのことを配慮するようにとの司令官の要請を私は理解し尊重しようと思っている。だから、訓練について諸君らが何も気にすることはない。私のような一二歳の子供でも耐えれるような訓練にするつもりだ。優秀な諸君であれば脱落するなどということは考えられない簡単な訓練となるだろう。まあ、おままごとのような生温い訓練と諸君らに思われないよう気を付けるとしようか」

 

 私達は何を安心したらよいのでしょうか。私達を見るその凶悪かつ嬉しそうな微笑は、獲物を見つけ狩り取ろうとするその瞳は、首元に光る血を吸ったような赤いペンダントは何でしょうか。

 藤堂司令官様、私たちは力不足だったのでしょうか。フィーファイターとの終わりの見えない戦いに勝利しようとするあまり何を召喚されたのですか。壇上にいる少佐という方は本当に私達の仲間なのですか。ほら、私の横ではエディッサが十字架に向かってなにかつぶやいています。前の方ににいる綾小路さんも何かいつもと様子が違います。少女の皮を被った少佐によって私達はどうされてしまうのでしょうか。。

 

■視点:デグレチャフ少佐■

「各員傾注!司令官に敬礼!」

 エミリア・ユンカース大尉が号令をかけると、少女達が壇上にいる司令官に向かって敬礼する。

 司令官と共に壇上に立っているターニャは、眼下にあるその隊列が一応整っているものの規律が重視される軍隊にあっては満足に足るものでは状態であることを見て無意識のうちに顔をしかめる。

 

「全員、楽にしてよろしい。さて、みんな。既に聞き及んでいるかもしれないが、君たちに新しい仲間が加わることとなった。紹介しよう。ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐と副官のヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少尉だ。」

藤堂司令官がターニャと副官のセレブリャコーフ少尉を紹介する。

 

「デグレチャフ少佐は、本日付で本基地の航空大隊大隊長となる。少佐は君たちの戦闘技能向上すなわち教導が主任務となる。少佐は一月で精鋭の大隊を鍛え上げた経験を有する教導のプロフェッショナルであり、ここにいる全員が能力を向上させる好機を得たといえる。」

 ターニャは、司令官が教導任務が主業務と明言したことを心の中で喜ぶ。だが、少女達の隊列の方を見ると、幾人かがヒソヒトと私語を交わしている。こんな短い時間でも規律を守れないとは、要注意リストを加えなくてはいけないなと顔を覚えておく。

 

「また、少佐は卓越した戦闘能力を有する。そのことは、昨日の戦闘により既に証明されている。AFFすら単機で斃しうる能力は本基地随一といっていいだろう。この点からも我々は、心強い後衛を得たといえる。」

 心強い後衛、なるほど予備戦力として温存してくれるというありがたい言葉に相違ない。ターニャは、自分が戦闘から遠ざかるためにも少女達の戦闘能力を上げる訓練を考え始める。

 

「・・・以上である。では、デグレチャフ少佐、着任挨拶をお願いする。」

では、私の優秀な盾となってくれる少女達に挨拶をしよう。

 

「私は大隊長として、司令官より勝利と諸君ら全員を生き残らせることを命ぜられた」

着任の目的は再度宣言しておこう。私は後方で君たちの訓練にいそしみたい。

 

「諸君、私は確かに諸君らより幼く見えるかもしれない。だが、問題はない。私はこれでも軍大学を出ている。そして、大隊を一から編成し、それを率いて剣林弾雨の戦線を駆け巡ってきた。」

 精神はともかく見た目はどう見てもここにいる少女達よりも年下だ。実績があることを説明しておこう。

 

「諸君らは、人類の敵たるフィーファイターと戦える特殊な能力を有する貴重な人的資源だ。よって、私は諸君を丁重に扱うことを約束する。私は諸君らが平和と護るために女性の身でありながら志願して戦い続けていることに敬意を示そう。」

 フーファイターと戦える操縦士達は、帝国における航空魔導士と同等以上に貴重な戦力に相違ない。重要な人的資源であると認識していることをはっきり明言しておこう。

 

「だが、安心してほしい、今まで私が率いていた大隊は屈強な男性が殆どであったが、この基地にいる操縦士は全員が女性だ。そのことを配慮するようにとの司令官の要請を私は理解し尊重しようと思っている。だから、訓練について諸君らが何も気にすることはない。私のような一二歳の子供でも耐えれるような訓練にするつもりだ。優秀な諸君であれば脱落するなどということは考えられない簡単な訓練となるだろう。まあ、おままごとのような生温い訓練と諸君らに思われないよう気を付けるとしようか」

 流石に第二〇三航空魔導大隊編成の時のように脱落させることが目的ではないしそれに全員が女性だ。帝国軍規の規定にある女性士官への優遇・配慮も考慮しなくてはならない。合理化して二〇三大隊よりも軽度でかつ適度で意味づけされた訓練にしよう。しかし、考えてみれば、勇ましいことを言いすぎていた気もする。笑顔で語って困難な訓練であるというイメージを払しょくしよう。

 しかし、何故だろう。横のセレブリャコーフ少尉の顔が心なしかこわばっている。ああ、きっと二〇三大隊の訓練を思い出しているだろう。あれはやり過ぎた。ここでは三六時間も砲兵防御訓練も冬山訓練もなしだ。あとで司令官と相談して合理的で有意義な訓練計画を練ろう。

 

「では、諸君、平和と勝利を我々の手で勝ちとろうではないか」

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。