幼女戦記×編隊少女   作:アル・ソンフォ

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真が開いてしまい申し訳ありません。
クロス作品ですから編隊少女のキャラにも場を与えないといけません。


第14話:ちょっとの間

基地の飛行場に降り立つとセレブリャコーフ少尉が駆け寄ってきた。

「少佐殿、藤堂司令官殿がお待ちです。」

ターニャは取り外した魔道具をセレブリャコーフ少尉に渡す。

「すぐに行こう。まったく、訓練の予定が着任早々の空中戦になるとは、余程私は戦争に好かれているらしい。」

「藤堂司令官は少佐殿の戦闘に感心しきりでしたよ。やはり、少佐殿は戦場でこそ輝いておられます。」

「セレブリャコーフ少尉、私を何だと思っているのだ。私は平穏な環境こそ好みなのだがね。んっ?」

 

 気付くとターニャの前には、金髪に羽根つきの黒い軍帽を被り、左腰に重厚な機関銃らしきものを装着し、裂けたマントを羽織った少女が、左手の親指を立てドヤ顔で立っていた。

「おっ、いたな。先程の戦い、新入りながら貴様なかなかヤルではないか!私に援護など不要だったのだがな。」

「き、貴官はだれだ?」

「わーっはっはっはっは!よくぞ聞いてくれた。この私こそ本基地所属の急降下爆撃エース、かのヨハンナ=ウルリカ・ルーデ・・・痛い!」

突然現れて不意を突かれたターニャをよそに始められた彼女の名乗りは、後ろから慌てるように駆け寄ってきたアデル・ガーランドの突っ込みで中断させられた。

「いや、すいませんね、デグレチャフ少佐殿。こいつにはアタシがよ~く言い聞かせておきますので」

「まだ、名乗り終えていないのだぞ、アデル、痛い!引っ張るでない、むぐっ!」

「さっさと来い、ヨハンナ。新人とみると虚勢を張るその癖いつか痛い目をみるぞ。」

アデル・ガーランドはその少女を口を押えて引っ張りながら器用に敬礼をして兵舎の方へ戻っていった。

 

「い、一体何だったんだ。あれ?」

「さあ。ユンカース小隊の一員でしょうか?滑走路の方から来たようですけど」

ターニャはセレブリャコーフ少尉と目を合わせやれやれといった表情をする。

「まったくここの基地の軍紀は一体どうなっているのだ。あとで藤堂司令官殿と話し合う必要がありそうだな。」

「まったくです。少女ばかりというということで緩いのかもしれません。」

「おいおい、私と貴官もその女性だぞ。ひとたび軍服を纏ったら軍規に従う。そこに男女の違いなどない。教育が必要なようだな。うむ」

セレブリャコーフ少尉は、デグレチャフ少佐の表情と声からあの少女の受ける教育を想像しちょっとだけ同情した。

 

 変な少女と遭遇こそしたが、そのあとは特に妨害もなく司令官室に到着した。

「藤堂司令官殿、失礼します。」

セレブリャコーフ少尉を連れて司令官室に入ると、笑顔の司令官がソファーの方に招き寄せる。

「デグレチャフ少佐。素晴らしい勝利を見せてもらった。あのような不意遭遇戦であっても流石だな。疲れただろう楽にしてくれ。」

「はい、我々は軍人であり戦時中である以上常在戦場の心持がなくてはなりません。とはいえ、小官も先程の戦闘ではいささか疲労しておりますのでお言葉に甘えさせていただきます。」

「いま、一戸瀬補佐官に今回の戦闘での観測データをまとめさせている。ユンカース大尉と鳩森少尉も小隊の損害状況を確認次第来る予定だ。来たら、戦闘概報を作成しようとおもうが、時間がありそうだ。そうだ、セレブリャコーフ少尉に珈琲を淹れてもらっても構わないか。そこに用意してある」

「ええどうぞ、セレブリャコーフ少尉、用意をしたまえ」

 

 

 セレブリャコーフ少尉の淹れた珈琲を飲むことで、ターニャはやっと一息入れることができた。丁寧に風味を引き出しているこの淹れ方は元いた世界のセレブリャコーフ少尉と同じだ。これさえあればこの世界でも乗り越えられそうだなとソファーによりかかる。

 

「ところで、藤堂司令官殿、いささか気になっていたのですが。この基地の軍紀はゆるくありませんか?」

「デグレチャフ少佐、少女ばかりということでなかなか普通の軍隊と同じ様にはいかないのだよ。陸軍さんのようなことをしたらみんな逃げてしまって戦えなくなってしまう。なにか問題でもあっただろうか?」

「いえ、さっきも司令官室に向かう途中にやたら尊大ぶった少女に道を遮られましてね。名乗り途中でガーランド少尉が引っ張っていきましたが、まあ、同じてっ、ああドイツ人として恥ずかしい限りです。」

「あっ、なんだもうヨハンナ・ルーデルに会ったのか。あれは新入りを見るといつもあんな挨拶をするのだ。あれでもかわいい方だぞ。小心な性格をああやって隠そうとしている健気な子だよ。そうか、少佐は規律には厳しいから不快に思ったか。ははは。」

「しかし、上官に対してあれはないでしょう。いささか教育が必要ですな。」

藤堂司令官は、珈琲を飲み干すとすっと立ち上がり、ターニャの座るソファーの後ろに回り肩の近くのソファーの背をつかみ、少佐にこう告げだ。

「まあ、危惧するところは良く分かる。なかなか男性の身では若い女性に細かな規律を押し付けるのも難しくてね。だからこそ少佐、貴官が着任してくれたことは本当にありがたい。無論、本基地における大隊長の服務には教育が含まれる。着任してすぐにそれを指摘してくれるとは、教育よろしくお願いするよ。」

ターニャが後ろを振り向き見上げると、満面の笑みをしてやったりという顔の司令官の顔があった。どうもこの司令官は私に面倒ごとを押し付ける気があるようだ。ちょっと気を抜いたところで言質を取られてしまった。

「いや、どうやって少佐に教育係をお願いしようか考えていたんだが、そちらから積極的に申し出てくれるとは手間が省けた。方針は少佐に任せるが、さすがに大隊選抜試験のようなことはしないでくれよ。おっ、準備ができたようだな。さあ、今日の戦闘を検証しよう。」

 

 なんというタイミングであろうノックとともに大量の資料を持った一戸瀬補佐官と共にユンカース大尉と鳩森少尉も入室してきた。ターニャは反論の機会を逸し、少女ばかりのこの航空基地の部隊教育までする羽目になってしまったのであった。

 




おまけコント6:ヨハンナ・ルーデルの不幸

ヴィーシャ:「そういえばさっきの子、少しだけ少佐に似ていましたね。」
デグさん:「どこがだ?セレブリャコーフ少尉」
ヴィーシャ:「金髪で碧眼のところとか、なんというか雰囲気とか」
デグさん:「私があいつと一緒だと。ん?」
ルーデル:「私がこいつと一緒だと。私の方が勝っておるだろうが」
デグさん:「どこがだ!」
ルーデル:「よく見ろ、私の方にはきちんと胸があるだろう。貴様はまな・・・痛い!」
作者:「恐れを知らないとは怖いな。さあ、戻るぞ。」
デグさん:「作者よ、ちょっとソイツ渡してくれないか。ピクニックに連れて行くからな。」
ルーデル:「ピクニックか、気が利くではないか。焼きアーモンドはおやつに含まれるのだな」
作者&ヴィーシャ:(彼女生きて帰れるかな)

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