幼女戦記×編隊少女   作:アル・ソンフォ

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デグさんが戦闘機と編隊を組みます。


第8話:模擬戦闘2

>>>西暦一九四二年六月二十日一四五〇時 極東基地上空<<<

 

 ターニャ・フォン・デグレチャフ少佐は小回りと制空力、打撃力を生かす攻撃ヘリのような運用こそ魔導士の最適な運用と考えている。

 いかに魔導士同士で空対空戦闘を行っているとはいえ、実際の戦闘高度は四千とか六千、自分の指揮する二〇三航空魔導大隊以外で高度一万越えで戦闘を行える部隊などいない。そもそも二万という高度で戦闘を繰り広げることもある戦闘機との編隊などということを航空魔導士は想定していないのだ。

 それゆえ、訓練開始までターニャは高度一万までの上昇力こそ戦闘機に匹敵しても、それ以上の高度で隊形を組んだり戦闘を行えないだろうと考えていたし、こちらの世界で提供された新型魔導具でも無理と思っていた。 

 しかし、実際に空に上がってみたら最初こそ制御に戸惑ったものの、すぐに慣れる。特に演算宝珠の助けなしに魔道具側で常時酸素生成と耐冷術式を発動するという今までいた世界になかった機能は、防殻膜強化にリソースを回すことができる優れもので、高度一五〇〇〇でも行動が可能であった。

「この新型魔導具は確かに優秀だ。酸素生成の精製式や耐冷にリソースをとられない分防殻術式に対する魔力負担がが今までと全然違う。だが、エレニウム九七式のみでは単調な機動はとれでも、乱数回避起動や戦闘は九五式の起動が必要となりそうだな」

空を飛びつつターニャは思った。高高度の戦闘は戦闘機で行えばいいのだ。いくら防殻術式とかでいけるからといって生身の人間が、それも幼女と言って差支えのない体でおこなうものではない。

 

「しかし、本当に人間があんな装置だけで飛行できるのですね。」

 

 先程、司令官から突然編隊訓を行うと告げられた鳩森少尉が、鷹登まつり少尉、吹雪 舞弥准尉とともに滑走路に到着してみれば、そこにいたのは、今朝、司令官室への案内したデグレチャフ少佐、飛行服らしい服装をしているが、戦闘機に乗るにしてはおかしなものがいくつか目に入る。

 まず目に入るのが腰元に装着された大きなバック、右足にはまるで金属鎧のようなブーツを装着、なぜか大きなバックと金属ブーツはホースで接続されていた。加えて、短機関銃まで肩にかけている。

 事態をつかめていない私達に司令官がいった言葉をすぐには理解できなかったのは無理もないこと、司令官はこういったのだから「いまより三人はデグレチャフ少佐と編隊訓練を行う。なお、少佐は航空魔導士であるのでこのまま飛行する。訓練の詳細はユンカース大尉が説明する。」と、そして今、少し離れてしまったが、本当にデグレチャフ少佐は戦闘機並の速度で飛んでいるのだから。

 

「すごいね、美羽ちゃん。あんな子が本当にお空をとべるなんて、驚きだよ。ららら~ん♪」

「信じられないのであります。鳩森小隊長」

 

 無線越しにまつりちゃんと舞弥ちゃんの声が入ってくる。二人ともまだ驚いているようだ。二人と違って今朝司令官室に案内し、司令官さんからエースオフエースだの軍大学出のエリートだの言われても西洋のお人形さんみたいな金髪碧眼の小さな少女、意思の強そうというか鋭い目つきがそうでないことを示している少佐さんと戦闘機を駆って大空を飛んでいるなんて昨日まで想像すらしなかったのだから。

 

「鳩森小隊長、遅れて申し訳ない。そろそろ所定ポイントだな。編隊指揮をお願いする。」

いつのまにか横に飛んできたデグレチャフ少佐から無線が入る。新型魔導具での初飛行で慣れるのに手間取った申し訳ないとも言っていた。

「はい、デグレチャフ少佐。司令官の指示通り一四三〇よりアブレスト、アローヘッド、スカイノービスの順に陣形を編成、一連の動きを評価し問題が生じなければ、あとから合流するガーランド小隊と模擬交戦をおこないます。」

 

「高度一万五千、アブレスト隊形とります。」

無線で鳩森少尉が訓練開始を報告する。

 地上では、藤堂司令官とエミリア・ユンカース大尉、セレブリャコーフ少尉が各種測定器と無線機を前に、デグレチャフ少佐と三人の操縦士との編隊訓練を確認している。

 実際、エミリアは航空魔導士という存在を先ほどまで疑っていた。ドイツ本国にいたときに映画館でその活躍を記録したという映画も見たが、優秀なドイツ民族というプロパガンダにまみれた内容であったし、画面にこのような少女ですら勇猛な帝国の先兵となりえるのだという風に可憐に着飾ったぎこちない表情の幼女が出てきたときにはあきれたものだ。FF耐性を有するのが圧倒的に女性ということで自分を含め少女達が大空を駆け戦闘していようと、デグレチャフ少佐という妙に軍人然した幼女といって差支えのない小さな少女を司令官が真面目な表情で紹介しても信じることはできなかったのだ。

 

 だが、現実はどうだ。いま、計測器に示される測定結果、鳩森少尉からの報告、一三〇センチあるかないかの少女が全幅一〇メートルを優に超す戦闘機と見事な編隊を組んで空を飛んでいる現実、最初こそ、乱れや遅れが見られたが、すぐに修正して見せている。今ここに立ち会っていなければどうやっても信じれなかったことだろう。

 

「やはり少佐殿はお見事です。戦闘機とも編隊行動がとれるなんて見事です。」

 デグレチャフ少佐の副官だというセレブリャコーフ少尉が尊敬を込めたような表情で見ている。彼女も航空魔導士だそうだ。

「編隊行動に問題なし、むしろ、生身で飛び小回りがきくデグレチャフ少佐であれば回避力は並の戦闘機の比ではないだろう。」

藤堂司令官は測定結果を見てうなずく。そして、無線で呼びかける

「デグレチャフ少佐、鳩森小隊長、私は一連の編隊行動から戦闘行動可能と判断した。引き続き、模擬戦闘訓練に移行してもらいたいが、問題はないか?」

「問題ない。」「はい、準備はできています」

二人から返答がある。

「今より一八〇秒後、ガーランド少尉、リュッツオー軍曹が搭乗したメッサーシュミット Bf109Kがそちらに到達する。なお、攻撃はデグレチャフ少佐のみが行い、鳩森、鷹登、吹雪の三人は援護に徹せよ。」

「了解した。航空魔導士というものの実力をお見せしましょう。」

藤堂司令官の指令にデグレチャフ少佐は平然と応答する。

「司令官、本当に問題ないのか?確かに編隊行動は戦闘機と遜色はなかったが、武装が違いすぎるであろう。」

エミリアは驚く。メッサーシュミット Bf109Kは機首上面に一三mm機関銃、モーターカノンと両翼に三〇mm機関砲を備える重武装を備えている。かたやデグレチャフ少佐が担いでいた短機関銃は七・六五ミリ勝負にならないはずだ。

「問題ない。単機で爆撃機の編隊を撃墜したこともある。」

「少佐殿なら問題ないですわ」

藤堂司令官もセレブリャコーフ少尉も平然と答える。何がそこまで二人が信用させるのだろうか。

「百聞は一見に如かずだ。よく見ておけよ。エミリア・フォン・ユンカース大尉」

 




デグさん「ところで、作者、君は私を迎え入れることはできたのだろうか?」
作者「はい、いいえ、少佐殿。まだであります」
デグさん「私をこの世界の呼んでおいてまだ入手していない?怠慢だと思うのだが、私に対する執念が足りないのではないかね?」
作者「はい、いいえ、兵站の問題であります。」
デグさん「課金は食事と一緒というだろう。一回居酒屋に行かなければいいだけだろう。貴官ならできるはずだ」
作者「はい、今日も10連ガチャ挑戦します…」

追伸:
書いていたら、最初と最後のデグさんの動きに矛盾がでてました。
当初冒頭ではデグさんは途中で若干遅れ戦闘機との戦闘は困難と愚痴る内容でしたが、出来ないと思っていたが新型魔導具(本作オリジナル)のおかげで飛べるようにてしまったという内容に変更しております。
なお、攻撃ヘリ云々は原作からの引用です。

メッサーシュミット Bf109Kの装備を、最終型のK-14に準拠

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