コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第7話 その名に思いを(前編)

 

 

 

 

富士山頂

 

 

リリーフとダイダーは、雄叫びとともに発射されてきた人食い花ドラフターの火炎弾を避けつつ攻撃する隙を窺っていた。

 

 

ソーラー「先輩、大丈夫ですか!? 私も一緒に戦います」

 

 

太陽の光を浴び、全身の修復とともにキュア・ソーラーに変身できたこともあり、そう言い放ったが

 

 

リリーフ「私たちなら大丈夫。あなたは行きなさいソーラ」

 

ダイダー「街で暴れているもう一体のドラフターをお願い。あなたは単体で飛行できる。急いで、ドラフターが究極成長する前に!!」

 

 

二人にそう言われて、ハッと現状のもう一つの危機を思い出した。

 

 

 

ソーラー「わかりました。任せてください!!」

 

 

堂々と胸をたたくと、ライナージェットを上回るスピードで街の方へと向かって飛んでいった。

 

 

 

 

そんなソーラーを見届けたリリーフとダイダーは、力強く頷き合った。

 

 

ダイダー「これで心置きなく戦えるわ」

 

リリーフ「うん、あいつの弱点をなんとか探ってみるよ」

 

 

 

だが、そんな二人をパーリは嘲笑った。

 

パーリ「無駄だ、貴様らといえどもこのドラフターを倒すことはできない。そしてセーリのやつが作ったドラフターは貴様らでなければまず倒せまい」

 

 

ダイダー「なんですって!?」

 

 

 

 

 

甲子市内

 

 

リリーフとダイダーが富士山頂で人食い花ドラフターと戦い始めた頃、突如としてブルドーザーやショベルカーにクレーンなどをごちゃ混ぜにしたような超巨大な重機が街を破壊して回っていた。

 

 

 

そんな中人々は悲鳴とともに逃げ惑いパニック状態になっていた。

 

 

 

河内「さぁ皆さん!! 避難して!!」

 

志夜「慌てないで、足元に十分注意してください!!」

 

 

 

そんな群衆を警察が避難誘導にあたり、パワードスーツを装着したレスキューチームもまた駆けつけていたが

 

 

「く、くそ!! 避難の遅れた人を助けるので手一杯だ!!」

 

「おまけにこのスーツじゃそもそも戦うことなんて…」

 

 

救助に手一杯になる中、自分たちの無力さに歯噛みをするしかなかった。

 

 

 

節子「再び現れた巨大怪物。しかも現在もう一体の怪物が富士山頂に出現しています。我々の抵抗など無力だと言いたげに暴れまわるこの怪物たちに、我々はなすすべなくやられてしまうのでしょうか? いえ、そんなことはありません。我々は決して闇に屈することはありません!!」

 

 

その節子の力強いレポート通り、何人かのパワードスーツ員は重機ドラフターに立ち向かってはいたものの、返り討ちにあって吹っ飛ばされるのがオチであった。

 

 

 

セーリ「よしよし、いい調子だ。パーリの方を片付けるには連中も相当の時間がかかるはず。このままこいつが究極成長すればよし。仮に連中が来ても既にこいつと戦えるだけの力は残ってはいまい」

 

重機ドラフターの破壊力に、セーリは首尾は上々というように頷いていた。

 

 

 

 

 

そんな中、上空から光の矢のようなものが地面に向けて突っ込んできた。

 

 

轟音とともにもうもうと巻き上がる土煙の中、大きなクレーターの中心で一人の少女がみっともない格好でひっくり返っていた。

 

 

ソーラー「ちゃ、着地失敗… でもなんのこれしき…」

 

 

節子「えっ? あ、あれって…」

 

 

 

 

砂埃を払いながら多少バツが悪そうに立ち上がったソーラーは、改めて重機ドラフターをビシッと指差した。

 

 

ソーラー「ドラフター!! これ以上勝手な真似は、この私が…」

 

そこまで言った途端、重機ドラフターがクレーンについていた巨大な鉄球を振り回して、ソーラーに攻撃を仕掛けてきた。

 

 

 

ソーラー「うわっとと」

 

 

なんとかそれを受け止めて、投げ返したソーラーは多少不満げに怒鳴りつけた。

 

 

ソーラー「えぇい、人がせっかくかっこよく決めてるのに!! まぁいいわ、こないだとは違うっていうのを見せてあげる!!」

 

 

 

ソーラーは両腰にセットされていた電磁警棒を取り外すと、伸長させて構えた。

 

 

ソーラー「いっくぞー!! クロムスティック!!」

 

 

 

 

 

そんなソーラーに対して、重機ドラフターは大きなショベルアームを振り下ろしてきた。

 

 

ソーラー「ふんっ!!」

 

 

スティックをクロスさせるような格好でそれを受け止めたソーラーだが、十数メートルものサイズのドラフターとでは体格差もあってじりじりと押されていった。

 

 

 

ソーラー「グググ… だあっ!!」

 

 

押しつぶされそうになる直前、なんとか力任せにショベルを払いのけたソーラーは一旦距離をとった。

 

 

 

ソーラー「なかなかのパワーね。なら」

 

 

ソーラーは自信満々に大ジャンプすると、ドロップキックを放った。

 

 

ソーラーがかなりの気合を込めて放っただけあり、空気との摩擦で足先が赤熱するほどであった。

 

 

ソーラー「タァアアア!!」

 

 

気合とともに炸裂したドロップキックは、重機ドラフターに相応のダメージを与えることには成功した。

 

 

もっとも装甲をぶち破るまでには至らず、横に跳ね飛ばすので精一杯だったが、それがまずかった。

 

 

当然ソーラー自身も小さく跳ね飛ばされる格好になり、ドロップキックはそのまま近くにあったビルに鈍い音とともに突き刺さった。

 

ソーラー「うう… ととと… あ、足が抜けない…」

 

 

 

 

 

両足がビルの外壁に突き刺さり宙ぶらりんになってしまい、慌ててジタバタしていたソーラーに対して、体勢を立て直してきた重機ドラフターは再びショベルアームを振るってきた。

 

 

ソーラー「キャアアア!! むにゅ!!」

 

 

身動き取れない状態だったソーラーは、ビルの壁が破壊されるとともに大ダメージを受けて地面に不自然な格好で激突し、変な悲鳴をあげた。

 

 

 

ソーラー「あいたたた… はっ!!」

 

 

なんとか立ち上がったソーラーの真っ赤な両目に、ドラフターの攻撃の余波で崩れかけていた瓦礫と、その下で避難活動をしていた志夜が目に入った。

 

ソーラー「あぶなーい!!」

 

 

 

志夜「よし、これで避難は大体終わった。私も避難しないと…」

 

そこまでつぶやいた時に聞こえてきたソーラーの叫びに慌てて見上げた時にはすでに手遅れだった。

 

 

志夜「はっ!! キャアアアア!!」

 

河内「志夜!!」

 

崩れてきた瓦礫にとっさに身構え、押しつぶされることを覚悟した志夜だったが、すんでのところで猛スピードで飛び込んできたソーラーに助けられた。

 

 

 

ソーラー「大丈夫ですか?」

 

志夜「は、はい… って、え?」

 

 

ソーラーに背負われるような格好になっていた志夜だが、礼を言うと同時に気がついた。

 

 

 

志夜「あ、あの、前見てください!! ビルが!! 壁が!!」

 

自分を背負ったまま、ソーラーがものすごいスピードでビルの壁に向かって一直線に突っ込もうとしていたからである。

 

 

ソーラー「わかってます!! いくら私だってそれぐらいは…」

 

 

慌てたようなソーラーの言葉に、志夜はさらに大慌てで叫んだ。

 

 

 

志夜「止まってー!!」

 

ソーラー「止まんなーい!!」

 

 

 

 

その叫びとともに、ソーラーは案の定ビルの壁に激突してぶち破り、突っ込んでいった中のオフィスもめちゃめちゃにする羽目になった。

 

もっとも、そのおかげでブレーキがかかり、ひっくり返りつつもなんとかかんとかソーラーは止まることができた。

 

 

 

 

ソーラー「は、はひぃ〜…」

 

目を回しながらぶっ倒れてしまったソーラーに、投げ出される格好になった志夜は不安げに声をかけた。

 

 

志夜「あなたこの間の子よね。前は全然戦えなかったのに、今度はどうしたのよ?」

 

 

ソーラー「へ、変身できるようになってパワーも上がったけど… コ、コントロールがまるで効かない…」

 

 

そんなソーラーの耳にリリーフの声が聞こえてきた。

 

 

リリーフ『ソーラ聞こえる?』

 

ソーラー「ほえ? 先輩? ど、どこですか?」

 

不意に聞こえてきたその声に、あたりをキョロキョロと見回したがどこにもリリーフの姿はなかった。

 

 

ダイダー『緊急通信システムで連絡を入れているの。そっちの状況も聞いてたから大体事態は飲み込めてるわ』

 

 

ソーラー「ほ、ほんとですか?」

 

 

リリーフ『あなたは無駄な動きが多いんだよ。 だから隙も多くなる』

 

ソーラー「は、はい…」

 

その言葉にソーラーは少し小さくなった。

 

 

ダイダー『いい、指示するからその通りもう一度やってみなさい』

 

ソーラー「はい!!」

 

 

 

 

その言葉に励まされ、ソーラーは改めて重機ドラフターへと立ち向かっていった。

 

 

ソーラー「よ、よ〜し。どっからでも来なさい!!」

 

言葉だけは勇ましいが、ソーラーは自分のパワーがイマイチ理解しきれておらず、どことなくへっぴり腰になっていた。

 

 

そんな彼女を恐るるに足らずと判断したか、重機ドラフターはショベルアームの先をドリルに変形させて、一気に振り下ろして来た。

 

 

ソーラー「!! 来る!!」

 

 

とっさにバックステップでそれを避けようとしたソーラーだが、そこにリリーフの声が響いて来た。

 

 

リリーフ『後ろはダメ!! 前に逃げて!!』

 

ソーラー「えっ? は、はい!!」

 

 

その声に反射的にソーラーは前にでて攻撃をかわした。

 

 

ダイダー『そのままパンチ!!』

 

 

続けざまの有無を言わさぬダイダーの声に言われるがままにソーラーは拳を突き出し、結果かなり強力なパンチが重機ドラフターのボディに炸裂し、体勢を崩すことに成功した。

 

 

リリーフ『続けてジャンプして!!』

 

もはや疑いもせずにソーラーは大ジャンプした。

 

ダイダー『キック!!』

 

 

間髪入れず放たれたソーラーの蹴りに、バランスを崩していた重機ドラフターはそのままひっくり返ってしまった。

 

 

 

ソーラー「す、すごい… さすが…」

 

 

遠方からの簡単な指示だけで、自分をここまで完璧に指導できるリリーフとダイダーの技量にソーラーは改めて舌を巻いていた。

 

 

 

 

 

 

富士山頂

 

 

リリーフ・ダイーダ「「キャアアアア!!」」

 

一方、ソーラーに通信を送りつつ人食い花ドラフターと戦っていたリリーフとダイダーだが、倒しても倒しても復活して増殖していく相手になすすべなくじわじわと追い詰められていた。

 

 

 

パーリ「ハッハッハッ。どうした、噂に聞くコズミックプリキュアも大したことはないな」

 

 

 

人食い花ドラフターの連射して来る火炎弾をやっとの思いで避け続け、岩陰に身を寄せてようやく一息ついたところで、響いて来たパーリの嘲笑うかのような声にダイダーが舌打ちをした。

 

 

ダイダー「まずいわね、このまま戦っていたらあのドラフターが究極成長をしてしまう。早くなんとかしないと…」

 

 

リリーフ「イエローハンドのセンサーアイで調べてみたけど、あのドラフターの中心核は溶岩の中だよ。それが根っこみたいになってる」

 

 

ダイダー「…ということは、あの花と戦ってても意味はないってことね。全くもってタチの悪い」

 

 

リリーフ「でも、早く浄化しないとこの世界が暗黒に染められてしまう… なら…」

 

 

リリーフはそう呟くと真剣な顔で黙りこくってしまった。

 

 

ダイダー「リーフ、何を考えてるの?」

 

リリーフ「ふふっ。ダイーダちゃんと同じこと」

 

 

不安げな質問にいたずらっぽく笑いながら答えたリリーフに、ダイダーもまたフッと笑った。

 

 

ダイダー「行きましょうか。ソーラは立派な後輩になってくれたわ」

 

リリーフ「うん。大丈夫だよね、あの子なら!!」

 

 

 

力強く頷きあうと、二人は岩陰から飛び出し少し距離をとった。

 

 

パーリ「ふっ、死にに来たかプリキュア!!」

 

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん!!」

 

リリーフは大きく振りかぶり、手の中に輝かせた虹色の玉をダイダーに向けて亜音速で投げつけた。

 

 

ダイダー「任せなさい!! ダァリャア!!」

 

 

するとダイダーは、リリーフの投げてきた玉を、取り出した光のスティックを一振りして人食い花ドラフターに向けて打ち返した。

 

 

そうして打ち返された虹色の玉はひとまわり大きくなり、直撃すると同時に全体を包み込んだ。

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・レインボー・ツインバスター!!」」

 

 

 

その掛け声とともに、噴火口に大量に咲き乱れていた人食い花ドラフターは全て光になって消滅していった。

 

 

パーリ「何度やっても無駄だ。核を破壊しない限りドラフターは何度でも復元される。貴様らに勝ち目はない!!」

 

 

何度目かになる人食い花ドラフターの消滅にもかかわらず、全く余裕を崩さないパーリに対して、リリーフとダイダーは即座にマルチハンドを換装した。

 

 

 

リリーフ「チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線発射!!」

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!! 超高温プラズマ火炎発射!!」

 

 

突然放たれた電撃光線とプラズマジェット火炎にパーリは思わぬダメージを受けてしまった。

 

ダイダー「よし!!」

 

リリーフ「いまだ!!」

 

 

 

 

 

パーリ「ぐうっ… だがこんな程度で… 何!?」

 

 

ある程度のダメージは受けたもののまだまだ余裕のあったパーリの目に、信じられない光景が飛び込んできた。

 

 

黒い煙が火口から吹き上がり、人食い花ドラフター再生復活をしようとする直前、リリーフとダイダーが火口へと飛び込んでいったのだ。

 

 

リリーフ・ダイダー「「タァアアアア!!」」

 

 

 

 

 

続く


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