コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第4話 大逆転!! プリキュア復活(後編)

 

 

 

 

 

甲子市 市街地

 

 

 

散々にソーラをいたぶった馬型怪物は、完全に興味をなくしたかのようにソーラを放り捨てた。

 

そして嘶きをあげると、再び市街地を破壊すべく走り出そうとした。

 

 

 

 

ソーラ「ぐぅっ… さ、させるもんか…」

 

 

ボロボロになったソーラがそうはさせじと、必死に怪物の足を掴んだため、バランスを崩して小さく躓いてしまった。

 

 

出鼻をくじかれる格好になった馬型怪物は、イラついたようにそんなソーラを睨むと足を軽く一振りして振り払った。

 

 

ソーラ「うああっ…」

 

 

ボロクズのように転がっていったソーラだったが、その時何かが手元に転がってきた。

 

ソーラ「これ… 腰の左右についてた飾り… 棒になるんだ…」

 

 

これは特殊電磁警棒であり、治安維持用として開発されていたソーラのボディにあらかじめ取り付けてあった数少ない武装である。

 

 

まだ戦える

 

 

それを確信したソーラは電磁警棒を手に立ち上がった。

 

 

ソーラ「終わってない… あんたたちみたいなのに光に満ちた世界を暗黒の闇に覆わせたりしない!!」

 

 

そうやって必死に自分を鼓舞しながら、警棒の電撃スイッチを入れて声にもならない雄叫びと共に馬型怪物に殴りかかった。

 

 

 

すると今度は電撃も相まって多少はダメージになったらしく、馬型怪物は悲鳴をあげると共に軽く膝を折った。

 

 

 

もっともその一撃で警棒はひん曲がり、ソーラも殴りかかった勢いで着地をミスり、もんどりうって倒れてしまったが。

 

 

 

そんなソーラを見た馬型怪物の侵攻上にいた人々は、気遣うように声をかけてきた。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

「し、しっかり!! お姉ちゃん」

 

 

 

だがソーラはよろめきながら立ち上がると、そんな人たちを背に怪物に向き合い、必死に避難を促していた。

 

ソーラ「だ、大丈夫…です… 早く… 逃げて…」

 

 

 

それを見た人々は後ろ髪引かれる思いはあったものの、再び向かってきた馬型怪物を見て、やむをえないと逃げていった。

 

 

 

そしてそんなソーラにトドメを刺そうとでもしたのか、馬型怪物は口の中に強力な火炎を溜め始めた。

 

 

ソーラ「!!!」

 

 

もはや避ける余力も無かったソーラだったが、泣き言も命乞いも決してしようとせず、なおも必死に立ち向かおうとしていた。

 

 

節子「ああっ!!」

 

河内「いかん!!」

 

 

目の前の光景に叫び声をあげたこの二人だったが、直後頭上を赤と白の二つの影が横切った。

 

 

 

 

そしてその影は馬型怪物の顎に飛び蹴りを放ち、その首をへし折ったことで、発射寸前だった火炎の方向を変えることに成功し、そのままくるくると華麗に回転しながら地面に降り立った。

 

 

その一つはボリュームのある濃いピンクの髪に、フリルのついた赤を基調にしたドレスのようなコスチュームの少女。

 

今一つは腰まで伸びた五本の金色のポニーテールの、フリルのついた純白を基調にしたドレスのようなコスチュームの少女。

 

 

 

 

そんな二人は怪物に対して凛とした態度とともに名乗りを上げた。

 

 

 

「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

 

 

 

 

河内「あ、あれは…」

 

節子「コズミックプリキュア…」

 

 

もう二度と会うことがないと思っていたこの世界の救世主。

 

 

それを目の当たりにしたこの二人は、驚きのあまり言葉も出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

コズミックプリキュアの一撃で首をへし折られてしまった馬型怪物だったが、信じられない回復力でそれを元に戻し、今度は彼女たちに目がけて突進していった。

 

ダイダー「行くわよ、チェンジハンド・タイプレッド!!」

 

その掛け声とともにダイダーの両腕は一回り大きなゴツゴツした赤い腕に変わった。

 

 

そしてその突進を片手であっさり受け止めると、自身の重数倍の重さがあるであろう怪物を大きく振り回して投げ飛ばした。

 

 

地面に叩きつけられ、ダメージを受けた馬型怪物だったが、二人を睨みつけるようにして立ち上がりお返しとばかりに火炎を放ってきた。

 

 

 

ダイダー「甘い。チェンジハンド・タイプグリーン!!」

 

 

だが、ダイダーは全く慌てることなく両腕を何かの噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装した。

 

 

ダイダー「超低温冷凍ガス発射!!」

 

 

そのまま左腕を前に差し出すと、真っ白いガスが吹き出し、たちまちのうちに怪物の放った火炎を相殺してしまい、ついでに多少なりとも全身を凍りつかせてしまった。

 

 

 

 

そうして動きが鈍ったことを確認すると、今度はリリーフが両腕を稲妻模様の走った青い腕に換装した。

 

 

リリーフ「チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線発射!!」

 

 

その掛け声とともにその青い腕を怪物に向けてかざすと、稲妻のごとく電撃が放たれていった。

 

動きが鈍っていた状態では電撃をまともに浴びることになり、怪物は苦悶の悲鳴をあげた。

 

 

 

リリーフ「うん。突然持ち出すことになっちゃったけど、この体もマルチハンドの性能も前と変わんないね」

 

赤いドレスを着た少女、キュア・リリーフは体の感触を確かめるように満足げにそう言った。

 

 

 

ダイダー「油断しないで。あいつはメイジャーとは違う、急いで浄化しないと… 一気に行くわよ!!」

 

 

そんなリリーフをたしなめた純白のドレスの少女、キュア・ダイダーは一刻の猶予もないとばかりに光のスティックを取り出した。

 

 

 

リリーフ「うん、わかった!! いっくよ〜」

 

リリーフも頷くと少し距離を取り、虹色の玉を手に輝かせ大きく振りかぶった。

 

 

 

リリーフ「ダイーダちゃん!!」

 

そしてそのまま、その虹色の玉をダイダーに向けて亜音速で投げつけた。

 

 

ダイダー「任せなさい!! ダァリャア!!」

 

 

するとダイダーは、リリーフの投げてきた玉を、スティックを一振りして怪物に向けて打ち返した。

 

 

そうして打ち返された虹色の玉はひとまわり大きくなり、馬型怪物に直撃すると全体を包み込んだ。

 

リリーフ・ダイダー「「プリキュア・レインボー・ツインバスター!!」」

 

 

そう二人が叫ぶと、怪物を包み込んだ光は目も眩まんばかりに激しく輝き始めた。

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ゲームセット!!」」

 

 

そのかけ声とともに、強烈な二人の合体必殺技の直撃を受けた怪物は、嘶きをあげるとともに大爆発を起こして木っ端微塵に吹き飛んだ。

 

そうして爆発が収まった後には、刺々しい金属の玉のようなものがゴトリと降ってきて地面に転がった。

 

 

 

 

河内「なんだありゃ? 金属の塊?」

 

 

河内警部が疑問に思っていると、その金属の塊は少しずつ溶けるように形を変えていき、最終的には一人のホームレスへと姿を変えていった。

 

 

それを確認したリリーフとダイダーは、心底ほっとしたように胸をなでおろした。

 

ダイダー「やれやれ。無事浄化できたみたいね」

 

リリーフ「うん、間に合ってよかったよ。あの人も無事みたいだしね」

 

 

 

 

遠藤「あれは… 人が怪物に囚われとった… いや、怪物にされとったのか?」

 

節子「ん? ああ遠藤博士。あんたも来たの… って、しまったー!!」

 

 

車を飛ばしてようやく到着したらしい遠藤博士に声をかけた節子だったが、

 

節子「完全にレポートを忘れてたー!! くぅっ、一生の不覚!!」

 

 

仕事が完全に頭から飛んでいたことに気がつき、悔しがっていた。

 

 

 

豪「っか〜… あの人も相変わらず。でもそれより…」

 

変わっていない節子に呆れていた豪だったが、そんなことよりももっと興味のあることがあった。

 

 

ラン「うん。リーフさん… ダイーダさん… よね」

 

 

どこか確かめるように話しかけると、リリーフとダイダーはにっこりと微笑みながら変身を解除した。

 

 

リーフ「豪くん、ランちゃん。久しぶりだね」

 

ダイーダ「遠藤博士、それに河内警部。またお世話になります」

 

 

その言葉に一同は喜びの笑みを浮かべて駆け寄った。

 

 

豪「ねえちゃーん!!」

 

遠藤「ホッホッホッ、久しぶりじゃのう!!」

 

河内「うむ。元気そうで何よりだ」

 

 

そうやって笑いあっていた一同だが、途端にリーフとダイーダは真剣な顔になった。

 

 

リーフ「本当に久しぶりです。でも…」

 

ダイーダ「ええ、まず何よりも…」

 

 

 

遠藤「ん? なんじゃ?」

 

 

そのままキッと睨みつけるように振り向き怒鳴りつけた。

 

 

 

 

 

 

 

リーフ・ダイーダ「「ソーラ!!」」

 

 

 

 

 

 

その怒鳴り声に一同が驚いてその先に目をやると、こそこそと隠れようとしていたソーラが目に入った。

 

 

そんなソーラは怒鳴られたことでギクゥッという音が聞こえてくるほどにびくりと肩を震わせると、乾いた笑いを浮かべてギギギと振り返った。

 

 

 

ソーラ「あ、あは… あは… せ、先輩… お、お早いですね…」

 

 

 

ダイーダ「誰のせいだと思ってるの!!」

 

リーフ「まったく… いつの間にか居なくなってたからどれだけ慌てたか…」

 

 

 

珍しく声を荒げてソーラを怒鳴りつけるリーフとダイーダに一同は目を丸くしていた。

 

 

豪「め、珍しいね… 姉ちゃんたちがあんなに怒るなんて…」

 

ラン「ホント… ずっと一緒だったけど初めて見たわ…」

 

 

遠藤「あ〜まぁ落ち着け、とりあえずうちに一度帰ろう。話はそこでゆっくりとな。 いろいろと聞きたいことがあるしな」

 

 

遠藤博士の提案にとりあえずリーフとダイーダも納得したか、ソーラへの矛を収めた。

 

リーフ「わかりました…」

 

ダイーダ「さっ、ソーラも行くわよ」

 

 

 

 

 

河内「…しかしあの格好じゃ、連れてくっていうより完全に犯人の連行だな」

 

志夜「ですね。本当に仲間なんでしょうか」

 

 

リーフとダイーダに両腕をがっちり固められ、がっくりとうなだれていたソーラを見て、河内警部達は多少引きつりながらポツリとそう漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

豪「ひぃ〜… やっと静かになった…」

 

ラン「あんなに怒鳴るなんてちょっとびっくり…」

 

 

 

研究所に引き上げてきて早々始まったリーフとダイーダの嵐のような説教がようやく終わり、ソーラは先の戦いのダメージもあってソファでぐったりとしてしまっていた。

 

帰ってきたときには夕飯をという時間だったにもかかわらず、すでにテレビドラマでも見ようかという時間なのだから無理もないのだが。

 

 

 

河内「いやまぁ、気持ちはわかるがな。 俺も昔勝手なことをして先輩に怒鳴られたもんだ」

 

そんなソーラを見て、河内警部はどこか遠い目をしつつ懐かしむようにウンウンと頷いていた。

 

 

志夜「今でも全く変わってませんけどね」

 

 

 

 

 

ダイーダ「まったく… ソーラ!!」

 

ソーラ「は、はい!!」

 

 

ダイーダの再度の呼びかけに、ソーラは反射的に姿勢を正してソファに座り直した。

 

 

ダイーダ「もう一度確認します。あなたの役職は!?」

 

 

 

ソーラ「はい… 特別警備隊見習い隊員です…」

 

 

リーフ「そうだよね。しかも訓練がようやく終わって私たちのチームに研修で来たばっかりだったよね。なのにどうして勝手な行動をして、プリキュアまで名乗ったのかなぁ?」

 

 

ソーラ「そ、それは… その…」

 

 

 

 

河内「あ〜、もう説教はそのぐらいにして、本題に入ってくれ。 さっきの怪物のことから頼む」

 

 

完全に取り調べ状態だったソーラを見るに見かねたか、とりあえず聞きたいことが山積みだった河内警部が半ば無理やりに話を切り替えさせた。

 

 

 

ダイーダ「ああ、はい。えーっと、あの怪物はドラフターって言います。パーフェクトの一味が作ったメイジャー同様マイナスエネルギーの怪物です」

 

 

ラン「ま、まさか… パーフェクトが蘇ったてことなの?」

 

 

不安そうな声をあげたランに対して、リーフとダイーダは困ったように顔をしかめた。

 

 

 

リーフ「…それなら、まだいいんだけどね」

 

ダイーダ「そうね… パーフェクトだったらまだ戦い方がわかってるしね」

 

 

豪「じゃあ、まったく新しい敵ってこと?」

 

 

 

リーフ「…でも、ないというか」

 

河内「えぇい歯ぎれの悪い。はっきりと説明してくれ!!」

 

なんとなくはっきりしない答えをするリーフとダイーダに、河内警部がイラついたように告げた。

 

 

ダイーダ「はい。以前この世界に侵攻して私たちが戦ったパーフェクトなんですが、突然変異で生まれたマイナスエネルギーの塊みたいな奴だと思っていたんですが、そうじゃなかったんです」

 

 

遠藤「な、何?」

 

 

リーフ「あの後、幾つかの世界で戦っていてわかったんですが、実はパーフェクトは一つの端末でしかなかったんです」

 

ダイーダ「多くの世界を暗黒のマイナスエネルギーに染めるためにあちこちに放たれた一つのマイナスエネルギーの結晶体。それがあいつだったんです」

 

 

 

節子「ちょ、ちょっと待って。ということは、またその端末というのが侵攻してきたっていうの?」

 

 

 

リーフ「いえ、はっきり言ってそれよりひどいと思います。この世界に来たのはおそらく、いえ間違いなくその本体です」

 

 

遠藤「何ぃ!!!」

 

 

 

 

 

 

甲子市上空 静止衛星軌道上

 

 

 

小さな円盤のようなものが浮遊しており、暗闇に覆われたその円盤の中で、モニターのようなものだけがぼんやりと光り地上での一部始終を再生していた。

 

 

「チッ!! 最初の三人をうまく加減をつかめず死なせてしまったのが痛かったな。連中が来る前にドラフターを究極成長させようと思ったが、予想より早く追ってきたな」

 

「ああ、コズミックプリキュア。 面倒極まりないやつらだ。この世界があの露払いのおかげで暗黒に染めやすい下地が整えられているとはいえ、邪魔をする奴らがいるのは厄介だ」

 

 

 

コズミックプリキュアの戦いぶりを見て、面倒そうになったと舌打ちをしている骨と皮だけのようにガリガリの男と風船玉のように太った男。

 

ただどちらも頭のてっぺんからつま先まで真っ黒であり、モニターからのぼんやりとした光と鋭くそして醜悪に輝く瞳がなければ、完全に周辺の闇に溶け込んでしまっていたであろう。

 

 

そのうちガリガリの男が提案するように太った男に話しかけた。

 

 

「おいセーリ。まだダーククリスタルには余裕があったな」

 

「? ああ、貴重なものとはいえ相応にはな。だがどういうつもりだパーリ、なぜそんなことを… まさか!?」

 

 

ガリガリの男 パーリから突然の振られた話に一瞬意図が読めなかった太った男 セーリは一瞬戸惑ったがすぐに気がついた。

 

 

 

パーリ「そういうことだセーリ。邪魔者は早いうちに消しておくに限る。たとえ貴重なダーククリスタルを浪費することになってもな」

 

 

セーリ「それもそうか。ただ、できるだけ離れた場所に出現させかつ可能な限り時間差を設けないとな。ドラフター同士食い合うことにでもなったら面倒だ」

 

 

作戦の細かいところの不安を口にしたセーリだったがパーリは心配無用とばかりにモニターを操作した。

 

パーリ「心配するな。場所については目星をつけてあるところがある。露払いが地均しして肥料まで巻いてくれたところがな。 ほらここだ」

 

 

そのモニターに映った雄大な山を見てセーリも納得した。

 

セーリ「なるほどここか。確かにプリキュアの最期の場所にふさわしいな。よし、ならば早速作戦に適したマイナスエネルギーの種を探すとするか」

 

 

そうして頷きあうと、セーリとパーリは黒光りのする宝石をそれぞれの手に持ち、小さな円盤 ブルペノンから姿を消した。

 

 

 

 

 

 

第4話 終

 

 


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