コズミックプリキュアS   作:k-suke

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最終話 闇の滅ぶ日

 

 

 

 

節子「世界一命知らずな突撃レポーターの甲斐節子です。謎のUFOの前に町が闇に覆われていくという危機の中、私は最後の瞬間までこの状況をレポートしようと思います。この世界が闇に消えるのももはや時間の問題かもしれません。しかし、最後の瞬間までみなさんが諦めないことを祈りつつ、私はレポートを続けさせていただきます!!」

 

 

 

このレポート通り、刻一刻と闇に覆い尽くされていく空により、昼過ぎだというのに一面はほとんど一寸先も見えない状況であった。

 

 

あちこちにあったネオンや街灯はブルペノンの発射したミサイルによってことごとくが破壊し尽くされており、かろうじて残ったわずかな明かりがぼんやりと光っているだけであった。

 

闇に覆われた世界では、木々や草花も次々と力を使い果たしたように枯れていき、虫や小動物も耐えられないというように力尽きていった。

 

 

市民は皆避難し街中には人一人姿が見えていなかったことと相まって、まさに世界の終末という空気が漂っていた。

 

 

 

絶え間なくブルペノンの放つミサイルやどす黒い弾によって、物理的超常的な現象的にも街が消滅していく中、同じく報道に命を賭けて… いや捨ててるようなカメラマンとともに、節子がまともに聞いているかどうかも怪しいレポートを続けていた。

 

 

そして案の定そんな彼女達に向かって無差別乱射によって放たれたミサイルの流れ弾が飛んでいった。

 

 

節子「ああっ!! くっ!!(ここまでか… しかしレポーター冥利につきる終わり方)」

 

 

もはや回避不可能と判断したか覚悟を決めた節子だが、決して逃げることも伏せることもしようとせずに毅然とした態度を崩さなかった。

 

 

 

するとどこからともなく飛んできた電撃と火炎が直撃し、どす黒い弾は爆発とともに対消滅した。

 

 

リーフ「大丈夫ですか!?」

 

ダイーダ「危険ですからあなたも早く避難を!!」

 

 

到着したこの二人の有無を言わせぬ迫力に押し負けたか、節子とカメラマンは現場を離れていった。

 

もっとも

 

節子「皆様、コズミックプリキュアが来てくれました。あの凛とした姿、まさしく人類最後の希望!! 私も及ばずながら全力で応援したいと思います」

 

少しばかり距離をとっただけであり、変わらぬレポートを続けるところはさすがであった。

 

 

 

ソーラ「やっぱりすごいな… こんな状況でも諦めずにいるなんて…」

 

どうにかボディの修復が終わり、エネルギーの方も太陽スペクトル光線砲によりなんとか戦闘可能状態にまで回復したソーラがそんな節子を見て呟いた。

 

 

ダイーダ「ええ、ここで終わっていい世界じゃないわね」

 

リーフ「でもこっちも万全じゃない。一気に突っ込んでいくしかない… ソーラ行ける!?」

 

 

その問いかけにソーラは力強く頷いた。

 

ソーラ「はい!! そのためにエネルギーを温存してここまで来たんですから!!」

 

ダイーダ「上等!! いくわよ!!」

 

 

 

その言葉に三人は力強く頷きあった。

 

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

リーフとダイーダはジャンプしてトンボを切ると、全身が光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。

 

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

 

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

 

ソーラ「モードプリキュア、ウェイクアップ!!」

 

ソーラもまた掛け声とともに頭の上でクロスさせた両腕を大きく開くとソーラの全身は万華鏡のような幻想的な光のオーロラに包まれていった。

 

その光のオーロラを身にまとうかのようにすると、彼女は深緑のフリルのついた黒光りのするドレスのようなコスチュームに変身していた。

 

 

 

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

ソーラー「光り輝く太陽のかけら キュア・ソーラー!!」

 

 

 

リリーフ・ダイダー・ソーラー「「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その変身の光を敏感に察知したか、無差別に攻撃をしていたブルペノンはプリキュアに狙いを定めた。

 

(消えろ、光!!)

 

 

 

そのドスの効いた言葉とともにコズミックプリキュア目掛けて、ミサイルやどす黒い弾が雨霰と発射されて来た。

 

 

リリーフ「くっ!!」

 

ダイダー「負けるか!!」

 

見事なフットワークでその砲撃をかわした三人だが、ひっきりなしに襲ってくる攻撃にだんだんとジリ貧になって行った。

 

 

ソーラー「まずい、このままじゃこっちのエネルギーが先に無くなっちゃう!!」

 

闇に覆い尽くされている空では、エネルギーの補充など望むべくもないため、この前哨戦であまり派手な行動をするわけにいかないソーラーはかなり焦り始めていた。

 

リリーフ「確かに、でもこの状況じゃ… せめて急所がわかれば…」

 

 

その時、研究所から通信が入った。

 

遠藤『急所か… リーフ、イエローハンドで奴の内部をスキャンするんじゃ!!』

 

リリーフ「博士? あてがあるんですか?」

 

遠藤『ああ、不本意じゃが一応な』

 

 

それを聞いたリリーフはすかさずマルチハンドを換装した。

 

リリーフ「チェンジハンド・タイプイエロー!!  センサーアイ、発射!!」

 

掛け声とともに換装された黄色の腕から、小さなロケットセンサーアイが発射された。

 

 

それからもたらされたブルペノンの情報はリリーフを通して研究所の面々にも伝わった。

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

Dr.フライ「ここじゃ!! ここにある妙なスペースを調べようとしたらわしは放り出されたんじゃ」

 

リリーフのイエローハンドからもたらされたスキャン映像を指令室のモニターで見ながら、Dr.フライは叫んだ。

 

 

遠藤「間違いなかろうな!?」

 

Dr.フライ「当たり前じゃ!! わしを誰だと思っとる!! 一度見ただけじゃが絶対に忘れんわ!!」

 

遠藤「信じられんのはお前の記憶力ではない、お前自身じゃ!! 変なことを教えてあやつらを嵌める気ではあるまいな!?」

 

 

相も変わらないセリフを吐いたDr.フライに対して、さしもの遠藤博士も当然だとでもいうように疑いを投げた。

 

Dr.フライ「ふん!! 今回ばかりは本当じゃ!! 悔しいがあのUFOに仕掛けをする時間がなかったものでな。あやつらプリキュアに負けてもらっては困る!!」

 

 

ラン「今回ばかりは… って」

 

豪「自分で言ってりゃ世話ねぇよ」

 

 

豪とランも今の言葉には引きつっていたが、それは現場も同じであった。

 

 

 

 

 

 

リリーフ「…Dr.フライ、私たちの体も修理してくれたけど本当に信用できるのかなぁ」

 

ダイダー「確かに。罠じゃないと断言できないのがね…」

 

Dr.フライは一度戦った相手であり、人間性もよく知っている。

 

やはりどうしても割り切れないところが今一つあり、信用していいものかどうか躊躇していた。

 

 

ソーラー「私は信じます!! …というより信じて賭けてみるしかないじゃないですか!!」

 

 

そんな空気を払うかのようにきっぱりと言い切ったソーラーの言葉に、リリーフとダイダーもフッと笑った。

 

リリーフ「そうだよね。それじゃ一丁行きますか」

 

 

 

しかし、決意を新たにしたところでブルペノンからの攻撃が止むわけではなく、それどころか一層激しくなってきていた。

 

 

 

 

 

ダイダー「くっ… これじゃ攻め込むどころか、まともに攻撃も…」

 

 

そうして防戦一方になっている中、極太のビーム砲が次々と発射され、どす黒い弾を消滅させて行った。

 

 

リリーフ「えっ!?」

 

ソーラー「これは…」

 

 

 

河内「無事か!? コズミックプリキュア!!」

 

ダイダー「河内警部!? なぜここに!?」

 

 

志夜「避難誘導に時間を取られてくるのが遅くなりました。援護しますから思いっきりやってください」

 

 

その言葉とともに、河内警部と志夜刑事の二人は小脇に抱えたプラスエネルギー砲を乱射した。

 

 

ソーラー「いや、答えになってませんって。危険ですから早くあなたたちも避難を!!」

 

そこに河内警部の怒声がすかさず飛んできた。

 

 

河内「馬鹿野郎!! この世界と本来無関係な奴が全力で戦ってるのに、この世界を守らなにゃならん警察官がおめおめ避難できるか!!」

 

 

ダイダー「ふっ、そうでしたね」

 

リリーフ「じゃあ、早くあいつをなんとかしないと大変だね」

 

ソーラー「志夜刑事ありがとうございます。じゃあ遠慮なくお言葉に甘えて」

 

 

その言葉にもっともだというように苦笑いをすると、ソーラーは腰の左右のクロムスティックを取り外して両手に構えた。

 

 

 

ソーラー「行っくぞー!! プリキュア・ドリルドライバー!!」

 

次の瞬間、スティックを両手に構えてドリルのように高速きりもみ回転しながらソーラーは弾幕の中を一直線にブルペノンに突っ込んで行った。

 

 

リリーフ「私たちも!!」

 

ダイダー「負けてられないわ!! 来なさいライナージェット!!」

 

 

そのダイダーの呼びかけに応え、空を切り裂いてライナージェットが飛来してきた。

 

 

二人は大ジャンプしてそれに飛び乗ると、ソーラーの後に続くようにブルペノンへと突っ込んで行った。

 

 

もちろんそんな彼女たちに対して一層激しい攻撃が行われたが、

 

 

ダイダー「チェンジハンド・タイプグリーン!!  超高熱プラズマ火炎発射!!」

 

リリーフ「チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線連続発射!!」

 

 

各々マルチハンドを換装し、それを迎撃しひるむことなく突撃して行った。

 

 

 

 

河内「頼むぞ… コズミックプリキュア…」

 

志夜「お願いします。この世界を…」

 

 

 

 

 

そしてそんな光景を近くのビルの屋上で見ていた存在がいた。

 

 

ゆう「…賞賛する。さすがは私の叔母だ。臆することなく立ち向かうとはな。あの紛い物もそれなりにはやるか」

 

 

小さく呟くとゆうは左手を親指・人差し指・中指の三本を立てて前に突き出した。

 

ゆう「チェインジ!!」

 

 

そう叫ぶと、突き出した左手の指を立てたまま、手の甲を内向きにして顔の前へと横向きに持って行き、人差し指と中指の間から赤い右目を光らせた。

 

ゆう「スイッチ・オン!!」

 

 

次の瞬間、黒い電流のようなものが火花をあげてゆうの全身を走り、彼女の姿は、フリルのない落ち着いたデザインのロングスカートの黒一色のドレスとなっており、同じく黒一色の肘まである手袋とブーツを着用していた。

 

バトルスタイル キュア・デッドにチェンジしたゆうもまた、何かを確認したいというように単身ブルペノンへと飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「とりゃあああ!! よし、突入成功!! って、え?」

 

ブルペノンにどうにか接近し、外壁をドリルのようにぶち抜いて中に侵入したソーラーだが、そこで目を疑った。

 

 

ソーラー「な、なにこれ? 真っ暗じゃない」

 

 

ブルペノンの中は真の闇というのがふさわしい空間であり、ソーラーのアイカメラでもやっと見えるかどうかといったレベルだった。

 

ソーラー「一体、こんな中でどんな人がいるの…」

 

 

 

(近づくな… 光…)

 

 

どこからともなく声が響いたかと思うと、周辺から銃弾が次々とソーラーを襲い始めた。

 

 

ソーラー「う、うわっ!!」

 

 

侵入を必死に拒み、何とかして追い出そうと四方八方から執拗に仕掛けられる攻撃にソーラーは苦戦していた。

 

 

ソーラー「くっそー!! これじゃ進めない」

 

攻撃をかわしつつスティックを振り回して、攻撃を防いでいたソーラーだがじりじりと後退せざるを得なくなっていた。

 

 

 

その時、隔壁をぶち破ってライナージェットに乗ったリリーフとダイダーが飛び込んできた。

 

リリーフ「こんなもの!! エレキ光線連続発射!!」

 

ダイダー「ソーラ、あなたは行きなさい!! 超低温冷凍ガス発射!!」

 

ソーラー「はい!! ありがとうございます!!」

 

 

 

 

マルチハンドをフル活用して、一面の銃口を破壊し突破口を開いてくれた先輩に感謝しつつ、ソーラーは奥へ奥へと進んでいった。

 

ソーラ「なんとしてでも、相手の本当の正体を知りたい。 それがわかれば、この戦いの理由も、そうすればきっと…」

 

 

その想いから全力で突き進んでいたソーラだったが、一層激しくなって行く攻撃は如何ともし難かった。

 

 

ソーラー「私はここで負けられない!! こうなったら…」

 

ソーラーは目の前で両腕を組み全身に力を溜めると、全身が輝き始めやがて光の塊になった。

 

ソーラー「行くぞ、プリキュア・フラッシュダッーシュ!!」

 

 

その掛け声とともにソーラーは、隔壁を破壊しつつ一直線に突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「ふう、なんとかさっき指示されたとこまで来たぞ…」

 

ここに来るまでに相応のエネルギーを消耗してしまっており、どうにか変身を維持できている状態になったソーラーに、遠藤博士から通信が入った。

 

遠藤『ソーラ、聞こえるか!? その扉の奥が中心ブロックじゃ』

 

 

今ソーラーの目前には一際立派かつ頑丈そうな扉があり、いかにも玉座への入り口といった雰囲気があった。

 

 

ソーラー「この先に…」

 

 

ソーラーが力を込めて扉を押すと、鈍い音ともにゆっくりと開いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉の開いた先にあったのは、手狭ではあったものの闇の中でもわかるほど立派な部屋であった。

 

石でできた壁や床、そして部屋のサイズには不釣り合いなほど巨大な椅子があり、そこにはフードをかぶった何者かが鎮座していた。

 

 

ソーラー「あなたが、ここの主人。全ての元凶…」

 

ソーラーを見ても身じろぎひとつしないその存在を見て、ソーラーは意を決して駆け寄った。

 

 

 

ソーラー「あなたは一体誰!? なんでこんなことを、世界を闇に染めようとするの!?」

 

心からの叫びとともに詰め寄ったソーラーだったが、その存在は声ひとつ発しようとしなかった。

 

 

ソーラー「聞く耳も持たないっていうの… だったら!!」

 

自分を完全に無視するかのような態度に、ソーラーはイラついたように椅子に飛びかかった。

 

 

ソーラー「正体を見せなさい!!」

 

その叫びとともにフードを剥ぎ取るとそこにあったものに驚愕した。

 

 

ソーラー「!!!!」

 

 

 

 

 

そのソーラーの見たものは遠藤平和科学研究所にもリアルタイムで送信されており、皆は言葉を失った。

 

 

ラン「きゃあああ!!」

 

豪「嘘だろ!?」

 

Dr.フライ「な、何ぃ!?」

 

遠藤「こ、これは!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「なっ!? ど、どういうこと!?」

 

そこにあったものはすでにミイラと化した死体であり、フードを剥ぎ取られた勢いで椅子から転がり落ちた。

 

 

そしてその衝撃で粉々に砕けてしまった。

 

 

 

ソーラー「これは完全に死んでる… よね… じゃあ…」

 

 

 

 

リリーフ「ソーラ!!」

 

ダイダー「どういうことこれ!?」

 

 

防衛システムをなんとか突破して駆けつけたリリーフとダイダーだったが、この二人にも事態が飲み込めないでいた。

 

 

リリーフ「これ、とっくに死んでる人を守ってたってことなの?」

 

ダイダー「そんなはずは… 死体を守るためだけにこれほどのことをするなんて… 何か他に守りたいものがあるはず…」

 

 

ソーラー「で、でも、生きてる人なんてどこにも…」

 

 

部屋の中を見回したソーラだったが、全く人の気配がしておらず、薄気味悪さを感じ始めていた。

 

 

ソーラー「誰か!! 誰かいないの!! 隠れてないで出て来なさい!!」

 

 

あたりに大声で呼びかけるものも、返事はどこからも帰ってこなかった。

 

 

 

そんな異常極まりない空気の中、コツコツと足音を響かせてデッドが部屋の中にゆっくりと入ってきた。

 

デッド「質問する。まがい物よ、ここの者と対話をするのではなかったのか」

 

 

ソーラー「う、うるさいな!! 話をしようにも相手が見当たらないんだから仕方ないでしょ!!」

 

 

そのどこか小馬鹿にしたような言葉にイラついたように怒鳴りつけたソーラーだったが、デッドは静かに腕を持ち上げて指差した。

 

 

デッド「回答する。この生命維持システムが総力を挙げて守ろうとしていた最後の生物はそこにいる」

 

 

 

 

ソーラー「…えっ?」

 

 

その言葉に怪訝な顔をしつつ、デッドの指差したもの 手にしていたフードをソーラーはまじまじと見つめた。

 

 

リリーフ「それがどうかしたの?」

 

ダイダー「ただのフードじゃない。少し汚れてるだけの…」

 

そこまで考えて、三人はハッと気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「ま、まさか…」

 

言葉を失いわなわなと震えながら、ソーラーは手元にある小さな黒ずみを見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのソーラーの見たものは遠藤平和科学研究所のモニターにもアップで映っていた。

 

 

豪「なんだってんだよ。ダイーダ姉ちゃんのいう通りちょっと汚れてるだけじゃん」

 

ラン「ん? 待って、ソーラさんの手のところもう少しアップにできる? ほらあの指の爪ぐらいの大きさの黒ずみのとこ!!」

 

遠藤「お、おお。待っとれ」

 

 

機器を操作してランの指摘した部分を大写しにしたところ、その黒ずみがモニター一面に映し出された。

 

 

ラン「やっぱり… ただの汚れじゃないわこれ」

 

Dr.フライ「ん? 確かに… いやしかし、これは…」

 

豪「う、嘘だろ… あれってまさか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤「カビ…か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイダー「まさか…このカビを生かしておくために…」

 

リリーフ「世界を… 闇に…」

 

あまりの事実に皆が愕然とする中、全く動じることなくデッドは淡々と回答した。

 

 

デッド「肯定する。それは光のあるところでは死滅してしまうほど脆いものだからな」

 

 

 

ソーラー「あ、あなた… こ、このこと、初めから知ってて… なんで… 教えて…」

 

 

デッド「回答する。無意味だからだ。そいつはただ生きようとしていただけ。このシステムはそれを守ろうとしていただけ。お前たち同様にな。生存環境が相反するものである以上、決して相容れないことなどわかっていた」

 

 

ソーラー「で、でも…」

 

 

デッド「言ったはずだ。相手に対話の意思などないと」

 

 

ソーラー「〜〜〜っ!!!!」

 

 

感情のぶつけどころがなく、思わず手に力が入ったソーラーは手にしていたフードを握りつぶしてしまった。

 

 

 

そしてその瞬間、何かの警告ブザーのような音が鳴り響いた。

 

 

(全生命体死滅確認。全システムおよび機能停止…)

 

 

その言葉とともにブルペノンは大きく揺れ、ソーラーたちは一瞬浮き上がった。

 

 

リリーフ「こ、これは!?  落下し始めてる?」

 

ダイダー「まずい、これが落下したら街が!!」

 

デッド「状況確認、撤収する」

 

 

このままではまずいとリリーフとダイダーは飛び出していき、デッドもまた壁を突き破って飛び出して行った。

 

 

 

一人残ったソーラーは、肩を震わせながら手にしていたフードをしばらく見つめていた。

 

 

ソーラー「…こんな、こんなことって…」

 

 

リリーフ『ソーラ、どうしたの? 早く脱出して!!』

 

ダイダー『これを落下させるわけにいかない。破壊するから早く!!』

 

 

その通信が入ったところで、ソーラーは声にならない絶叫を上げて飛び出した。

 

 

 

 

 

 

そして外に飛び出すや否や立体映像投影装置を起動させ、髪の色が赤と青と黒になっている三体の分身を作り出した。

 

 

ソーラー「モードディヴィジョン!!」

 

 

そして分身完了するとともに、四人になったソーラーはブルペノンの四方に陣取り、取り外したクロムスティックの先端から光のビームを発射した。

 

ブルペノンを閉じ込めるようにビームを辺にした正八面体 インフィールドゾーンを生成した。

 

 

ソーラー「プリキュア・シャイニーダイヤモンド…」

 

ソーラーは悔しそうに歯噛みをしていたが、何かを振り切るように叫んだ。

 

 

ソーラー「フィニッーシュ!!」

 

 

指を鳴らした瞬間、インフィールドゾーンの中で目もくらむばかりの強烈な閃光とともに大爆発が発生しブルペノンは木っ端みじんに砕け散った。

 

 

その爆発を見上げながら河内警部と志夜刑事の二人は感慨深げに呟いた。

 

 

志夜「…終わったんですね」

 

河内「ああ… 長い長い戦いが…」

 

 

 

そして侵食されていた闇は瞬く間に消滅していき、澄み渡る青空とともに太陽が眩しく輝き始めると、実に嬉しそうなレポートが繰り広げられた。

 

 

節子「テレビの前の皆様!! この光景をご覧になられていますでしょうか。地球はプリキュアの手によって救われたのです。この感激、この感動、もはやなんといっていいかわかりません!! ただひたすら感謝感激を述べるだけでございます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

 

河内「Dr.フライ。逮捕する」

 

全てが終わったのち、再び逮捕されることにもなんの抵抗もせず、Dr.フライは連行されていった。

 

 

Dr.フライ「おうおう、好きにせい。どうせわしは不死身じゃからな。愚かな人類が滅亡しても生き延びて、その愚かっぷりを未来永劫語り継いでやるわ!!」

 

 

その捨て台詞だけを残して

 

 

 

 

遠藤「全くフライのやつめ。捨て台詞だけは立派じゃな。しかし…」

 

Dr.フライの態度に辟易しつつも、遠藤博士はソーラたちに感謝を込めて頭を下げた。

 

 

 

遠藤「お前たち、よくやってくれた。ありがとう」

 

深々と頭を下げての礼にもかかわらず、ソーラの表情は曇ったままだった。

 

 

リーフ「ソーラ、もっと胸を張りなさい」

 

ダイーダ「あなたは立派に務めを果たしたわ。もう見習いじゃない、一人前のプリキュアよ」

 

豪「そうだぜ。俺たちがこうして生きてるのも姉ちゃんのおかげだぜ」

 

ラン「ありがとう。プリキュア」

 

 

そんなソーラをリーフとダイーダは褒め称え、豪とランも感謝の意を表した。

 

 

ソーラ「見習いじゃない… ですか…」

 

ポツリとつぶやいたソーラは悔しそうに拳を握りしめた。

 

 

ソーラ「結局私は何にもできなかった。相手を理解することも助けることも… ただ破壊しただけ…」

 

 

 

リーフ「ソーラ…」

 

ソーラ「力を物を壊すことにしか使えなかったなんて… 私はまだまだ…」

 

 

俯いたままのソーラに皆は何も言えなくなってしまっていたが、やがてソーラは意を決したように顔を上げた。

 

 

ソーラ「先輩、私もっと、色々なものを見て、色々なことを知って、色々な人に会ってみたいんです… 自分がしたこと、これからできること、いっぱい考えてみたいんです。だから…」

 

 

ダイーダ「この世界にしばらく残るってことかしら」

 

遠藤「しかも、ここに残るつもりもないな」

 

二人の言葉にソーラはこくりと頷いた。

 

 

ソーラ「すいません。この体、もうしばらくお借りしてていいですか?」

 

 

 

リーフ「ただプリキュアに憧れてた頃のあなたとは大違いだね」

 

ダイーダ「こんなことを言い出すとはね。いいわ、報告は私たちがしておくから、あなたが納得できる時が来たら連絡をしなさい」

 

 

ソーラ「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、リーフとダイーダはアンドロイドのボディから分離し、光の玉となって空高く去っていった。

 

 

それを見届けた後、ソーラもまた研究所の面々に深々と頭を下げた。

 

 

ソーラ「すみません。最後の最後までわがまま言って迷惑かけて」

 

 

 

豪「へへっ。いいっていいって」

 

ラン「ソーラさんにはそれぐらい言う権利はあるもの」

 

 

遠藤「ソーラ。目一杯勉強して立派になるがいい。ただ世界は狭いようで広い。多くを学ぶにあたって辛いことや苦しいことも山のようにあるじゃろう。じゃがな…」

 

優しい笑みを浮かべつつも険しい表情とともに、遠藤博士は言い置いた。

 

遠藤「どんな困難や絶望が迫って来ても決してくじけるでないぞ。諦めることも立ち止まることもせずに前に進むんじゃ。おそらくそれが…」

 

一拍置き、ソーラもまた真剣な顔で次の言葉を待った。

 

 

遠藤「生き残り勝ち残ったものが、滅ぼしたものに対する唯一の責任の取り方じゃろうからな」

 

 

その言葉に、皆真剣な顔で頷くと最後のあいさつを交わした。

 

 

 

ソーラ「私もっともっと強く立派になるよ。 本当に、ありがとうございました!!」

 

豪「うん!! …またね!!」

 

ラン「元気でね!!」

 

 

その言葉に見送られソーラは何処ともなく飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその光景を遠くから見つめる存在がいた。

 

 

ゆう「賞賛する。もっと強くなれ、いつかまた会おう」

 

フッと口角を優しく上げるとゆうはポツリとつぶやいた。

 

 

 

ゆう「私の、妹…」

 

その言葉とともにゆうもまた目の前に黒い空間のようなものを広げてその中に消えていった。

 

 

 

 


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