ソーラー「こ、このこの!!」
バカにされた憤りもあって、ソーラーは躍起になって飛びかかりスティックを振り回したが、デッドは表情一つ崩すことなく小さく左右に揺れたり半歩下がったりしただけで、完全に攻撃をかわしていた。
デッド「質問する。本気でかかってくるのではなかったのか?」
ソーラー「くうっ!!」
まるで攻撃がかすりもしないことからの焦りか、ソーラーはさらにがむしゃらに攻撃を仕掛けたが、それに伴って攻撃が単調かつ雑になり始めていた。
そして気合を込めて大振りをしようとした瞬間を見逃さず、デッドは一瞬で懐に入り込み膝蹴りを食らわせた。
ソーラー「ガハッ!!」
腹部にまともに攻撃を受けたソーラーはよろめいてしまった。
そこに続けざまにデッドが大鎌を棒術のように振るい、幾度となくソーラーを叩きのめした。
そしてある程度ダメージを与えると続けて回し蹴りが炸裂し、ソーラーは大きく吹き飛ばされた。
ソーラー「キャアアアア!!」
悲鳴とともにビルの壁を突き破りながら吹き飛んで行ったソーラーを見て、デッドは見下したように呟いた。
デッド「唾棄する。その程度の実力でよくぞプリキュアを臆面なく名乗れるものだ」
ソーラー「く、くっそ〜…」
ビルの瓦礫を押しのけてなんとか這い出してきたソーラーは、その言葉を聞いて悔しそうに顔をしかめた。
ソーラー「こ、これでもくらえ!! クロムスティック・ブーメラン!!」
ソーラーはこのままでは終われないと二本のスティックを柄の部分でくっつけて一本の棒のようにして光の力を纏わせてデッドに投げつけた。
光輪となって飛んでいくスティックを見て、デッドのボディを切り裂くであろうことを期待したソーラーだったが、即座にその考えが甘かったことを思い知った。
デッド「貧弱な」
デッドは光輪と化したスティックを事も無げにキャッチし、あろうことか投げ返してきた。
ソーラー「ぎゃいん!!」
自分が投げた時よりもはるかに勢いを増して飛んできたスティックが脳天に突き刺さり、ソーラーは悲鳴とともにひっくり返った。
デッド「通達する。飛び道具とはこのレベルのものだ」
そんなソーラーに対して、デッドは眉一つ動かさないまま右手を向け指先から弾丸をマシンガンのように発射して攻撃した。
ソーラー「うあああっ…」
追撃を受けたことによるソーラーのダメージは大きく、自分を抱きかかえるようにして膝をついてしまった。
ソーラー「こ、こいつ… 強い… 言うだけのことはある…」
その小さな呟きが聞こえたか、デッドは回答をしてきた。
デッド「否定する。所詮偽物は偽物、お前が弱いだけだ。私の姉やいとこすらまともに守れなかったほどにな!!」
ソーラー「くうっ…」
ご丁寧に自分の呟きを否定してきたデッドに対して、さっき豪の母親に言われたことが頭によぎり、ソーラーは歯ぎしりをした。
ソーラー「〜!! こんの〜!!」
迷いを吹っ切るかのように拳を握りしめて突撃し、渾身の力を込めたパンチをデッドの顔面に炸裂させた。
が
ソーラー「え…?」
デッドは表情一つ歪めるどころか微動だにしていなかった。
ソーラー「あ… あ…」
愕然としたソーラーに対して、デッドは軽く拳を振り抜いてソーラーを大きく殴り飛ばした。
ソーラー「うあーっ!!」
勢いよく地面を転がっていき、ようやく止まったところでなんとか立ち上がったソーラーだったが、顔をあげた瞬間恐怖に凍りついた。
すでに眼前に迫っていたデッドが躊躇なく大鎌を振り下ろしてきたからである。
ソーラー「ギィヤァアアア!!!」
とっさに多少なりとも後ろに下がったのか、寸断されることだけは免れたようだったが、確実に斬撃はソーラーのボディを切り裂いていた。
それを証明するかのように、切り口から火花とともに偽装用の人工血液が吹き出し、一瞬のうちに周辺に赤い水たまりを作っていた。
そして悲鳴をあげたソーラーをやかましいとばかりに、デッドはマシンガンもかくやと言うレベルで拳を連続で叩き込んだ。
ソーラー「ガハッ…」
そうして第ダメージとともに倒れこみかけたソーラーだったが、それすら許さないというようにデッドは顔面を鷲掴みにして持ち上げた。
ソーラー「うがぁ…」
メキメキといった音がし始めた中ソーラーは必死にあがいたが、デッドの手はビクともせず、あろうことかそのまま思いっきり頭部を地面に叩きつけてきた。
ソーラー「がべっ…!!」
おかしな悲鳴をあげたソーラーに対して、デッドは冷たい目で見下した
デッド「唾棄する。雑魚が!!」
そう吐き捨てると、もはや触ってすらいたくない汚いものだとでも言うようにソーラーを大きく投げ飛ばした。
ソーラー「ぐぅあっ…」
一度も攻撃を当てることもできず、一方的にボロボロにされて投げ捨てられたソーラーだが、まだ最後の意地が残っていた。
ソーラー「ま、まだだ… こっちには… 切り札があるんだから…」
ヨタヨタながらもなんとか立ち上がると、最後の賭けと言わんばかりに残ったエネルギーを集中させた。
ソーラー「行くよ!! モードディヴィジョン!!」
その掛け声とともにソーラーは立体映像投影装置を起動させ、髪の色が赤と青と黒になっている三体の分身を作り出した。
デッド「ほう。評価する。そんな機能は私にはないな」
ソーラー「〜っ!! フルパワー!!」
何か言いたげに顔を歪めるも、四人になったソーラーはデッドに四方から組みつき、そのまま上空まで持ち上げていった。
ソーラー「タァッ!!」
そしてトンボを切って距離をとった次の瞬間、ソーラーの足は何かに掴まれた。
ソーラー「えっ?」
ギョッとして自分の足に目をやるとワイヤーにつながった左腕だけがそこにあった。
ソーラー「こいつ、左手を飛ばせ… うわっ!!」
驚いたのもつかの間、その左手はデッドの方に戻っていき、当然つかまれていたソーラーも引き寄せられた。
デッド「理解不能。ダメージも碌に与えていない相手に通用する技でもあるまいに」
バカにするように言い捨てるとソーラーの足を掴んだまま大きく一回転して、空中で見事なまでの一本背負いを決めて、勢いよく地面に向かって頭から叩きつけた。
直後轟音とともに砂煙がもうもうと巻き起こり、地面には底が見えないほどの深い穴ができていた。
その穴の底では手足が変な方向に折れ曲がり身動きすらできなくなったソーラーがいた。
ソーラー「だ、だめ、ここで私が負けたら… ドラフターが… この世界があいつらに…」
デッド「否定する。その心配は無用だ」
うわごとのように呟き必死にあがいていたソーラーの言葉が聞こえたか、デッドはそれをバッサリ切り捨てると、容赦のかけらもなく左太もものミサイルを穴に向けて発射した。
直後、大地が震えると同時に発生した爆発音とともに巨大な火柱が穴から吹き上がり、何かがボロ雑巾のように上空に舞い上がった。
火柱が収まったのを見計らうように、デッドはなにもなかったかのように平然と着地すると、落下してきた「それ」を手にしていた大鎌で突き刺して受け止めた。
デッド「ん? 熱源確認、来たな」
先ほどまでのソーラーとの戦いの中ではずっとつまらなさそうな仏頂面をしていたデッドだが、何かが風を切り裂いて飛んでくる音を聞いて嬉しそうに口角を上げた。
ランからの緊急電話のこともあり、ライナージェットで至急現地に駆けつけたリーフとダイーダだったが、現地で展開していた光景に絶句するしかなかった。
リーフ「!! ソーラ!! デッド、あなた一体何をしたの!?」
デッド「回答する。薄汚い偽物を処分しただけだ。これで当面の間邪魔はない、私と勝負しろコズミックプリキュア」
それだけ告げると、手足が今にももげ落ちそうになりボディやら首やらからバチバチと火花を噴き出し始めていたソーラのボディをなんの感慨もなく、大鎌にまとわりつく汚いゴミのように放り捨てた。
ダイーダ「あなた… 相変わらずそれが目的ってこと」
デッド「肯定する。私は死神、コズミックプリキュアを破壊するためだけのものだ」
以前にも増して凄みを感じるキュア・デッドにもはや言葉は通じないと判断したリーフとダイーダは腹を括った。
しかもそれ以前の問題として自分たちの大切な後輩を傷つけたデッドを二人は許せなかった。
リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」
リーフとダイーダはジャンプしてトンボを切ると、全身が光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。
ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。
ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。
そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。
リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」
ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」
リリーフ・ダイダ「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」
変身した二人の姿を認めたデッドは、待ち望んでいた恋人にようやく会えたかのように嬉々としながら大鎌を振りかざして宣言した。
デッド「破壊する。最優先ターゲット、コズミックプリキュア」
遠藤平和科学研究所
先ほどの戦いの映像を指令室のモニターで確認していた遠藤博士だったが、ランからの連絡も含めデッドの言葉にふと疑問を感じていた。
遠藤「四季ゆう… 相変わらずの戦闘力… しかし、あやつがあのドラフターを生み出すやつを始末したというのは本当か?」
ラン『本当よ。ゆうさんが嘘つくわけないじゃない』
遠藤「いや、わしもあやつを疑っとるわけではないが、フライのやつがまだおるわけじゃし… それにどうも嫌な予感がする…」
どうにも拭えない不安を覚えつつも、今はそれどころではないとソーラ達を救うべく慌てて準備を始めた。
甲子市上空 静止衛星軌道上 ブルペノン
セーリもパーリも消えたことを確認した今、Dr.フライは一人上機嫌にシステムをいじっていた。
Dr.フライ「ひゃっはっはっはっ!! わしほどの男をないがしろにした報いじゃ。やはりわしこそが次元皇帝にふさわしいということの証左。ど〜れ、この円盤のシステムを解析するとするか。まずはそれからじゃな…」
そうしてシステムをチェックし続けることしばらく、ふと何かに気がついた。
Dr.フライ「ん? 妙なスペースがあるな。なにか厳重なロックがかかっているが…」
それを調べようとした瞬間、どこからともなく声が響いて来た。
(触れるな… それに触れるな…)
Dr.フライ「な、なんじゃ!?」
突如聞こえて来たドスの効いた声に思わず辺りを見回すも、そこには誰もいなかった。
Dr.フライ「で、出てこい!! わしを誰だと思うておるんじゃ!!」
その声から感じる得体の知れない不気味さを振り払うように叫んだDr.フライだったが、それに対する返事はなかった。
(消えろ… ここはお前の居場所ではない…)
Dr.フライ「な、なに!?」
(ここは我が主人の世界… 消え失せろ!!)
その怒声とともに足元が抜けてDr.フライは声にならない悲鳴とともに外へと放り出された。
(…防衛端末からの定時連絡なし、消失したと判断する。 最終防衛システム起動…)
地上にてリリーフとダイダーがデッドとの戦いを開始しようとしている中、ブルペノンにおいて低い音とともに何かが起動し始めようとしていた。
続く