コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第33話 死を招くメロデイ(前編)

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

 

リーフ「それじゃ、私と博士でランちゃんの退院を迎えに行くね」

 

ダイーダ「頼むわねリーフ。私はここの留守番と掃除と洗濯をやっておくから、ソーラあなたは…」

 

ソーラ「はい、買い物に行ってきます。 博士のご飯とランちゃんの退院祝いですよね、ここのスーパーで安売りしてるレトルトカレーとか冷凍食品とか…」

 

 

先回りして自分のやることを言い当てたソーラに、リーフもダイーダもウンウンと頷いていた。

 

ダイーダ「そうそう。あなたもわかってるじゃない」

 

リーフ「いろいろここで勉強できたんだね。すごいよ」

 

 

 

ソーラ「いえ、まだまだですよ。もっともっと勉強しなくちゃ…」

 

 

目の前でかわされる三人の会話を聞いて、遠藤博士は切実な思いで呟いた。

 

遠藤「そうじゃな、是非ともインスタント以外の料理が簡単なものでいいからできるようになってほしい。いい加減飽きてきた」

 

 

 

 

 

 

ランと豪がDr.フライのけしかけた車にはねられて入院してから、早一ヶ月。

 

 

なんとかかんとか経過は良好であり、豪は体力と打ち所の問題もあり先日退院し、本日ランも無事に退院を迎えることになっていた。

 

 

しかし、この研究所の家事を一手に担っていたランが入院してしまったため、家事はこの三人が分担してやっているのだが、お世辞にもまともにできているとは言い難かった。

 

 

遠藤「まぁ、お主達プリキュアが三人揃ったことで連中のことをほとんど気にせんでもよくなったのはありがたいがな…」

 

 

 

この一ヶ月、何度かドラフターが出現しておりその度に三人で対処していた。

 

しかし、ソーラの戦闘力が大幅に増強したことに加え、リーフとダイーダも揃った今の状況では苦戦らしい苦戦もすることなくあっさりと浄化できるほどになっていた。

 

 

ソーラ「当たり前じゃないですか。先輩達が帰ってきたらこんなに頼りになる人たちはいませんよ」

 

リーフ「そんなことないよ。あなただってもう立派なプリキュアだよ」

 

ダイーダ「プリキュアが三人揃えば、怖いものなんてないわ」

 

 

二人の言葉にソーラは満面の笑みを浮かべた。

 

ソーラ「はい、ありがとうございます。じゃ買い物行ってきまーす」

 

 

 

 

 

 

 

 

元気良く飛び出して行ったソーラを見て、リーフとダイーダも満足げに笑みを浮かべた。

 

 

ダイーダ「博士ありがとうございます。本来あの子の指導は私たちがしなくちゃいけなかったのに」

 

リーフ「うん、また迷惑かけちゃったよね」

 

深々と頭を下げた二人に、遠藤博士も笑いながら返した。

 

 

遠藤「なーに気にするな。お主達にはこの世界を守ってもらっとるんじゃからな、持ちつ持たれつじゃ。 しかし…」

 

そこで真剣な顔になって尋ねた。

 

 

遠藤「本当にお主達にも心当たりがないのか? 連中がどういう理由で世界を暗黒に染めようとしているのか?」

 

 

リーフ「…はい、私たちも言われて気がついたぐらいで」

 

ダイーダ「マイナスエネルギーの塊みたいな奴らだから、暗黒世界を好むのかと思ってたけど、確かにそれだけじゃないみたいで…」

 

 

遠藤「うーむ。フライのやつに問い詰めるというのも手じゃが、他に何か手がかりがあればなぁ」

 

 

ダイーダ「手がかりですか… 他の可能性といえば…」

 

リーフ「うん、あの子だよね…」

 

 

どこか暗い顔をした二人に遠藤博士は興味を持った。

 

遠藤「ん? あてがあるのか?」

 

 

リーフ「はい、あの子ならたぶん…」

 

遠藤「あの子? あぁ…」

 

 

 

 

 

 

甲子市内 某スーパー

 

 

 

 

ソーラ「えーっと、インスタントラーメンに、インスタントお味噌汁にレトルトカレーに、カップうどんとカップそばと、冷凍コロッケと焼売と餃子と…」

 

 

ソーラは店内を物色することもなく、インスタント食品をかたっぱしから買い物カゴに詰め込んでいた。

 

 

周りはそんなソーラを見てヒソヒソと何かを話し合っていたが、そんなことは御構い無しに棚のほとんどのものをカゴに詰め込むとレジへと向かっていった。

 

 

ソーラ「これだけあれば色々博士やランちゃんにもご飯を楽しんでもらえるよね。でも他に何かあればなぁ…」

 

買い占めたインスタント食品を持ってきたエコバッグに詰めながらソーラも、何か他にできることはないかと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「い〜しや〜きいも〜 甘くておいし〜いお芋だよ〜」

 

 

そんな折、スーパーの外から多少調子の狂ったスピーカーの音が聞こえてきた。

 

 

ソーラ「美味しいもの!? これだ!!」

 

 

いいものを見つけたと指を鳴らしたソーラは一直線に販売トラックに駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラ「すみませーん。これください」

 

にこやかにそう告げたソーラの笑顔に、焼き芋売りも気分が良くなった。

 

 

「へい毎度。お嬢ちゃん可愛いからちょっとおまけだ。1,000円でいいよ」

 

その言葉にソーラも嬉しくなり満面の笑みを浮かべた。

 

 

ソーラ「わぁ、ありがとうございます」

 

 

そうしてホクホク顔で気分良く帰路に着いたソーラだったが、その焼き芋売りに対する通行人の評価は散々だった。

 

 

 

 

 

「今時焼き芋なんてダサいよなぁ」

 

「そうそう、それにあのスピーカーなんか調子が狂っててうるさいし」

 

「おまけに見ろよ。1,500円? 高いにもほどがあるよ」

 

 

 

そんな通行人の陰口に対して、焼き芋売りはイラついていた。

 

 

「けっ、こちとら芋から厳選してるんだよ。名産地のいい芋を使ってるから高いんだ!!」

 

 

とはいうものの、今日は多少温かいのも相まって、朝からずっと売り歩いているにもかかわらず先ほどのソーラが初めての客だった。

 

そういう事情もあって、だんだんと不満が溜まってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中、どこからか突然黒づくめの太った男が現れて焼き芋のトラックに近づいていった。

 

 

セーリ「俺も一つもらおうか。代金は貴重なこのクリスタルで支払ってやる」

 

「い、いえ、け、結構です!! きょ今日はもう店じまいで!!」

 

本能的に危険を察したか、慌てふためいた焼き芋屋だったが

 

セーリ「遠慮するな。滅多にない貴重な経験もおまけに体験させてやる」

 

そう嘯きながらセーリは手にしたダーククリスタルを焼き芋屋に対して押し付けた。

 

 

セーリ「闇よ、解放しろ!!」

 

「うわぁああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、退院するランを迎えに車を飛ばしたリーフと遠藤博士だったが、道路が大渋滞を起こしてしまい立ち往生していた。

 

 

リーフ「全然動かないね。何があったのかなぁ?」

 

遠藤「フゥむ。この先にある踏切で事故でもあったようじゃな。こりゃしばらく動かんぞ」

 

タブレットで交通情報を調べた遠藤博士は、渋い顔で呟いた。

 

 

 

 

 

この大渋滞にドライバーは皆イライラし始めていたが、それだけではなかった。

 

 

 

「ただいま、踏切内で発生した事故によりダイヤが大幅に乱れております。お急ぎのところお客様には大変ご迷惑をおかけ致します」

 

 

駅のホームでもお詫びのアナウンスが繰り返し流れていたが、それで皆が皆納得するわけもなかった。

 

 

「ったく、こっちゃ急いでるのによ」

 

「いつになったら次の電車が来るのよ、まったく」

 

 

ホームでイライラしている客を見て、アナウンスを行なっていた駅員もイラつき始めていた。

 

 

「別に俺のせいじゃないってのに、どいつもこいつも勝手ばっかり言いやがって」

 

 

実際、何度か客にいつになったら動くのかと当たり散らされるように怒鳴りつけられており、立場上強く物が言えなかったこともあって、かなり不満が溜まっていた。

 

 

そんな中、黒づくめのガリガリの男が音もなくその駅員の後ろに立った。

 

セーリ「気に食わんのなら、溜め込むことはない。もっと当たり散らしてみろ」

 

 

ニヤリと笑うと、セーリはダーククリスタルを駅員に対して押し付けた。

 

セーリ「闇よ、解放しろ!!」

 

 

「ぎゃああああ!!!」

 

 

 

 

 

遠藤「ふあ〜あ。しっかし全く動かんのう。ランのやつ待ちくたびれとるじゃろうなぁ」

 

リーフ「そうですね。またランちゃんに怒られちゃいそう」

 

大アクビをしながらの遠藤博士の言葉にリーフもまた退屈そうな調子で返した。

 

 

 

そんな中、遠藤博士のタブレットが一発で目も冷めるような呼び出し音をけたたましく鳴らした。

 

 

遠藤「な、なんじゃいきなり!? ん、これはマイナスエネルギー検知アプリか!!」

 

突然のことに一瞬慌てたものの、状況を理解した遠藤博士は真剣な顔になってリーフに即座に指示を飛ばした。

 

 

遠藤「リーフ、直ちに周辺を索敵しろ!! ドラフターじゃ!!」

 

リーフ「はい、ダイーダちゃんからも連絡が来ました。こっちに向かってるそうです。ソーラにも連絡はしたと」

 

 

返事をするやいなや、リーフは車から飛び降りマルチハンドを換装した。

 

リーフ「チェンジハンド・タイプイエロー!!」

 

その掛け声とともに、リーフの両腕が小さなロケットが装備された黄色の腕に変わった。

 

 

リーフ「センサーアイ、発射!!」

 

そう叫ぶと、リーフは右腕を空にかざしセンサーアイを発射した。

 

 

イエローハンドに搭載されたセンサーアイには、半径10km四方の情報を詳細にリーフの電子頭脳に送り届ける機能がある。

 

 

リーフ「この先の駅です。すぐに行って来ます!!」

 

遠藤「うむ、頼んだぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ビルの谷間をジャンプに次ぐジャンプで飛び跳ねていき、駅にたどり着いたリーフは巨大な拡声器とでもいうようなドラフターを発見した。

 

 

リーフ「あれか。周りの避難は完了してるみたいだけど…」

 

警察のパワードスーツ隊が周辺の避難誘導を迅速に行ったため、周囲には人っ子一人おらず静かなものだったが、リーフは疑念を深めた。

 

 

リーフ「どういうことなんだろ。全く動きを見せていない…」

 

 

迂闊に近づかないように警戒していたリーフの元に、修復されたライナージェットが風を切って飛んでくる音が聞こえて来た。

 

 

ダイーダ「リーフ、状況は?」

 

ライナージェットをサーフボードのように操って飛来したダイーダが上空からリーフに状況を尋ねた。

 

リーフ「わかんないよ。攻撃どころかじっとしたまんまで…」

 

 

その言葉通り、雄叫び一つ上げることなく鎮座している拡声器ドラフターに、リーフもダイーダも薄ら寒さを感じ始めていた。

 

 

 

そんな折、二人の元にソーラからの通信が入った。

 

 

ソーラ『先輩、聞こえますか!!』

 

ダイーダ「ソーラ、あなたどこにいるの? 早くこっちに…」

 

 

ダイーダの声を遮るかのようにソーラが焦ったように声を張り上げた。

 

 

ソーラ『それが、こっちにもドラフターが出現して、そっちに飛んで行っています』

 

 

ダイーダ「なんですって!?」

 

 

ダイーダが驚きの声をあげるとともに、背後からもう一体巨大なスピーカーとでもいうようなドラフターが出現した。

 

 

 

 

リーフ「まずい、挟み撃ちだ」

 

 

ソーラ「す、すみません。抑えきれなくて…」

 

スピーカードラフターの出現とともにソーラもまた現着したものの、二対のドラフターに挟み撃ちになってしまった。

 

 

ダイーダ「しっかりしなさい。あいつらがまだ何も仕掛けて来ていないなら、一気に叩くまでよ」

 

その言葉に三人は力強く頷きあった。

 

 

 

リーフ・ダイーダ「「ゴー!!」」

 

リーフとダイーダはジャンプしてトンボを切ると、全身が光に包まれ、着地した時には姿が大きく変わっていた。

 

 

ショートカットだったリーフは、ボリュームのある濃いピンクの髪に変化し、着用している服も、ごく普通の服からフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものになっていた。

 

 

 

ダイーダのポニーテールは、一本から五本にまで増え、背中にかかるかかからないかだったそれも、腰まで伸びて金色になっていた。

 

 

そしてリーフ同様のデザインの純白を基調にしたフリルのついたドレスを着用していた。

 

 

 

 

ソーラ「モードプリキュア、ウェイクアップ!!」

 

ソーラもまた掛け声とともに頭の上でクロスさせた両腕を大きく開くとソーラの全身は万華鏡のような幻想的な光のオーロラに包まれていった。

 

その光のオーロラを身にまとうかのようにすると、彼女は深緑のフリルのついた黒光りのするドレスのようなコスチュームに変身していた。

 

 

 

 

 

リリーフ「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

ダイダー「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

ソーラー「光り輝く太陽のかけら キュア・ソーラー!!」

 

 

 

リリーフ・ダイダー・ソーラー「「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」」

 

 

 

 

 

続く


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