コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第32話 絶望からの大逆転(後編)

 

 

 

 

 

 

 

Dr.フライ「3!!、2!!、1!!、ゼロ!!」

 

 

 

Dr.フライがゼロカウントをした瞬間、大爆発が起きた。

 

 

 

 

 

Dr.フライ「うぎゃあああ!!」

 

パーリ「ぐはっ… どうなってやがる?」

 

 

手元のスイッチを入れようとしたまさにその瞬間、足元に何かが着弾したことによる爆発に吹っ飛ばされた三人は、想定外のことに事態が把握できなかった。

 

 

セーリ「ん? やつはどこに行った!?」

 

爆煙が晴れていくと、磔にしていたはずのソーラの姿までもが消えており、それを見たDr.フライはみっともなく当たり散らした。

 

 

Dr.フライ「エェイ、どうなっとる? どこのどいつじゃわしの天才的な作戦で始まる最高の一日を邪魔しおったのは!?」

 

 

 

「ここのこいつよ!!」

 

 

その凜とした声にDr.フライを始め、セーリとパーリも青ざめた。

 

パーリ「なっ…」

 

Dr.フライ「こ、この声は…」

 

 

 

引きつった顔のまま声のした方に振り返ると、そこにはソーラを抱きかかえた一人の少女がいた。

 

 

その少女はボリュームのある濃いピンクの髪にフリルのついた赤を基調にしたドレスのようなものを纏い、小さなロケットが装備された黄色の腕をしていた。

 

 

 

「闇を吹き消す光の使者 キュア・リリーフ!!」

 

 

 

セーリ「キュ、キュア・リリーフ… 貴様、生きて… と、すれば…」

 

 

あることに思い当たった瞬間、強烈な火炎が降り注ぎ三人は火だるまにされた。

 

 

「「「うおおおおっ!!」」」

 

 

 

そして同時に飛び出してきた白い影は華麗に空中を回転しつつ、リリーフの横に着地した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その白い影は腰まで伸びた五本の金色のポニーテールを翻した、フリルのついた純白を基調にしたドレスのようなコスチュームの少女であり、何かの噴射口のようなもののついた緑色の腕をしていた。

 

 

 

「悪を蹴散らす光の使者 キュア・ダイダー!!」

 

 

 

 

リリーフ・ダイダー「「ピンチ一発、大逆転! コズミックプリキュア!!」」

 

 

 

 

Dr.フライ「ぬぁっ… コ、コズミックプリキュア… なぜじゃ!? 貴様らは溶岩の中に飛び込んだと」

 

驚愕の表情とともに湧き上がってきた当然ともいう疑問を口にすると、二人は凛とした声で言い放った。

 

 

リリーフ「忘れたの? 私たちはプラスエネルギー生命体とでもいうべき光の精霊だよ。休眠状態になって全身をそれで包み込んでボディを維持するぐらいはできる」

 

ダイダー「最も、全ての力を使ったから身動きもろくに取れなくてね。おまけに溶岩の対流に流されたから、今まで帰ってこれなかっただけよ」

 

Dr.フライ「お、おのれ… それにしてもよりによってこのタイミングで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悔しそうに歯ぎしりをしたDr.フライに、続けて飛び込んできた遠藤博士の嬉しそうな声が聞こえてきた。

 

遠藤「どうじゃ、正義の生み出す奇跡に恐れ入ったかフライ!! 恐れ入ったと両手をつけい!!」

 

 

Dr.フライ「くうっ… 遠藤、貴様性懲りも無く邪魔を!!」

 

そんな遠藤博士を見て憎々しげに歯噛みをしたDr.フライだったが、河内警部の怒声が飛んだ。

 

河内「懲りとらんのは貴様だ、この極悪人が!! もう一度逮捕してくれる!!」

 

 

Dr.フライ「ほざくな、愚かな人間の分際で!! わしを誰だと思っておるか!!」

 

相も変わらぬ口癖とともに、Dr.フライの体からは黒いモヤのようなものが吹き出し、やがて黒づくめの男たちといった姿のマイナーとなっていった。

 

 

志夜「くっ、マイナー!?」

 

Dr.フライ「ヒャハハハ。これがわしが人を超えた証じゃ。行け、奴らを八つ裂きにしろ!!」

 

 

Dr.フライの命令一下マイナーの大群が遠藤博士たちに襲い掛かっていったが

 

ダイダー「させない!! 超低温冷凍ガス発射!!」

 

ダイダーがすかさず左腕から真っ白いガスを噴射しマイナーを一瞬で凍りつかせてしまった。

 

 

 

リリーフ「こっちも!! チェンジハンド・タイプブルー!! エレキ光線連続発射!!」

 

続けてリリーフが両腕を稲妻模様の走った青い腕に換装し、電撃光線を連続で打ち出すと、直撃を浴びたマイナーは感電しつつ次から次にと浄化されていった。

 

 

中には、攻撃を免れリリーフとダイダーに飛びかかって行ったマイナーもいるにはいたが、相手にもならないというようにあっさりと叩きのめされていた。

 

ソーラ(先輩… やっぱりすごいな…)

 

 

リリーフに抱きかかえられながら、ソーラは二人の強さに改めて尊敬の念を抱いていた。

 

 

 

 

 

パーリ「チッ、この場は撤退だ」

 

セーリ「ああ、もうここにいる必要もない。ドラフターは最終段階にまで成長しているしな」

 

 

元々ソーラの最期が見られるならばといった程度の感覚でしかなかったため、明らかに旗色の悪くなった今ここに止まる理由はない。

 

そう判断したセーリとパーリはあっさり引き上げて行った。

 

 

Dr.フライ「ま、待て!! わしを置いて行く気か!!」

 

 

一人取り残されたDr.フライは、軽いパニックになりかけたがマイナーを盾がわりに出現させてなんとか逃げ出して行った。

 

 

ダイダー「逃したか。でも今はそれどころじゃないわ」

 

リリーフ「うん。博士、ソーラを頼みます。私たちはあのドラフターを!!」

 

 

こうしている間にも街中で砲撃を続け破壊の限りを尽くしている戦車ドラフターを放っておけないと、ソーラを遠藤博士に託すとビルの屋上をジャンプに次ぐジャンプでドラフターへと立ち向かって行った。

 

 

遠藤「気をつけろ!! 奴は相当手強いぞ!!」

 

その見送りの言葉に力強くサムズアップを返しながら。

 

 

 

 

 

河内「ハハッ、帰ってきやがったな。あいつらが」

 

遠藤「まったくじゃ、これで鬼に金棒。おっとソーラ、待っとれよ。すぐにエネルギーを…」

 

 

嬉しそうな笑みを浮かべつつ、太陽スペクトル光線砲をソーラに向けて照射すると、ゼロだったソーラのエネルギーはフルパワーとは行かないまでも回復した。

 

 

ソーラ「先輩… よーし私も行きます。情けないとこばっかり見せられない」

 

志夜「その意気です。頑張ってください!!」

 

 

志夜刑事の励ましにソーラはどんと胸を叩いたが、それだけでふらついてしまった。

 

河内「おいおいおい、無理をするな。 現地まではパトカーで送ってやる。それと、プレゼントも詰め込まないとな」

 

遠藤「そうじゃな。目にもの見せてくれるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、市街地では戦車ドラフターの猛攻が続く中、人々は我先にと避難しており、刻一刻と廃墟と化していく町並みと相まって地獄絵図と言う言葉がぴったりときていた。

 

 

そんな状況下でも節子は誰一人立候補しなかった現場レポートを単身行なっていた。

 

 

節子「皆様、こちらは実況放送中の突撃レポーター甲斐節子です。巨大な戦車の怪物は現在この近くまで迫ってきております。 プリキュアの処刑場からの映像は現在途絶えてしまい、状況は絶望的です」

 

そのレポートをした直後、背後に砲撃が着弾し、夜中だと言うのに一瞬昼のように明るくなった。

 

カメラマン「ちょっと、これやばいよ。早く逃げないと!!」

 

この状況を撮影していたカメラマンもさすがにやばいと感じたか逃げるよう青い顔で促したが、節子は頑として首を縦に振らなかった。

 

節子「テレビをご覧の皆様、ただいまの映像をご覧になられましたでしょうか。今からではもはや退避する時間もないでしょう。ですが、それでも私は本望です。こんな残虐な行為を平然と行われることがあっていいはずはありません。それを訴え、決してテロに屈しないことを伝えるためここで捨て石になる覚悟であります」

 

 

その力強く語られた言葉をマスコミの鏡ととるか、命知らずの馬鹿野郎ととるかは意見の別れるところであろうが、少なくとも覚悟を決めて撮影に付き合っているカメラマンだけは前者ととるべきであろう。

 

 

そうしている間にも、戦車ドラフターは地鳴りのような音ともに現場に近づいてきており、ついには彼女たちの背後にその巨体を現した。

 

 

節子「皆様、これが私の最後の映像となるでしょう。ですが悪を憎み平和を望む心は不滅です。さようなら、皆さんさようなら」

 

 

その覚悟を決めたレポートを行なった瞬間、何かが猛スピードで突撃したため戦車ドラフターは砂煙をあげて後退することになった。

 

 

節子「えっ?」

 

 

その何かとはもちろん

 

 

リリーフ「間に合った!!」

 

ダイダー「無事なようですね」

 

 

節子「コ、コズミックプリキュア… い、生きてたの!?」

 

驚きの声とともにあんぐりと口を開けた節子だったが、すぐに気を取り直した。

 

 

節子「み、皆さま。今私は奇跡を目の当たりにしました。数ヶ月前怪物とともに富士山の火口に消えたはずのコズミックプリキュアが今ここに復活したのです!!」

 

嬉しさを堪えきれないというような興奮気味のレポートを背中で聞きながら、リリーフとダイダーは戦車ドラフターに立ち向かっていった。

 

 

 

そんな二人に対して戦車ドラフターは砲撃を行おうとしたが、縦横無尽かつ猛スピードのフットワークに翻弄され照準をまともに定めることができなかった。

 

結果、砲撃を一発放つこともできないままダイダーに足元の死角に潜り込まれた。

 

 

ダイダー「行くわよ、チェンジハンド・タイプレッド!!」

 

その掛け声とともにダイダーの両腕は一回り大きなゴツゴツした赤い腕に変わった。

 

 

ダイダー「ヌゥオオオリャァアアア!!」

 

ダイダーのレッドハンドは本来、災害時における瓦礫等の撤去を迅速に行うためのものであり、その超パワーで戦車ドラフターにパンチを浴びせると、続けて軽々と持ち上げて地面に叩きつけた。

 

 

リリーフ「タァアアアア!!」

 

そこにリリーフの飛び蹴りが炸裂し装甲が陥没したが、そこまでであった。

 

 

リリーフ「えっ?」

 

戦車ドラフターには大したダメージにはなっておらず、イラついたように雄叫びをあげると全身から何本も砲塔を生やしてきた。

 

 

ダイダー「!! まずい!!」

 

 

 

次の瞬間、戦車ドラフターは全身の砲塔から四方八方に無差別乱射を行い、あたり一面を火の海にしてしまった。

 

 

 

ダイダー「くっ、チェンジハンド・タイプグリーン!!  超低温冷凍ガス噴射!!」

 

その掛け声とともにダイダーの両腕は噴射口のようなもののついた緑色の腕に換装され、左腕から真っ白いガスを噴射して周辺の消火を行なった。

 

 

だがそんなものは焼け石に水であり、あっという間にリリーフとダイダーは炎の渦に閉じ込められてしまった。

 

 

ダイダー「くっ、まずいわ。このままじゃいつまで耐えられるか…」

 

リリーフ「でも飛び出したらそれこそ狙い撃ちだよ。どうしたら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突破口が見当たらず苦戦をしているコズミックプリキュアだったが、彼女たちの耳に車が猛スピードで突っ込んでくる音が聞こえてきた。

 

 

遠藤「リーフ、ダイーダ、無事か!?」

 

河内「今助けてやる、もう少しの辛抱だ!!」

 

 

リリーフ「博士!?」

 

ダイダー「河内警部!? 無茶です!!」

 

 

しかし、そんな二人の叫びなど御構い無しに河内警部の覆面パトカーはスピードを一層あげた。

 

 

 

河内「志夜!! よく狙えよ!!」

 

志夜「任せてください、運転は得意なんです。遠藤さん、そちらは?」

 

遠藤「バッチリじゃ!!」

 

ソーラ「よーし、みんな捕まって!!」

 

 

そしてソーラが三人を抱えて飛び出したが、車はついた勢いそのままに戦車ドラフターに特攻した。

 

 

 

 

 

その直後

 

 

 

 

大地が大きく揺れ、昼間と見紛うほどの火柱が上がり、戦車ドラフターは大きく吹き飛び自慢の装甲もボロボロになっていた。

 

 

 

河内「くぅっ、すげぇなこりゃ…」

 

遠藤「どうじゃみたか!! 新型爆薬トリプルPの威力じゃ!!」

 

志夜「連中に使われなくてよかったですよ。もし悪用されてたらと思うと…」

 

 

 

戦車ドラフターが吹っ飛んだことで、炎の渦から解放されたリリーフとダイダーの二人も、いまの大爆発には呆然としていた。

 

リリーフ「す、すごい…」

 

ダイダー「やっぱりこの世界はすごい… 自分たちの力でどこまでも進んでいこうとする…」

 

 

 

ソーラ「先輩、大丈夫ですか!!」

 

そのソーラの呼びかけに二人は正気に戻った。

 

 

ダイダー「はっ、こうしちゃいられないわ」

 

リリーフ「うん、チャンスだよ!!」

 

 

二人は頷きあうと必死にボディの修復をしようとしている戦車ドラフターを睨みつけた。

 

 

リリーフは大きく振りかぶると手の中に、虹色の光の玉を輝かせ始めた。

 

 

リリーフ「受けなさい!! プリキュア・レインボール!!」

 

 

その叫びとともに、リリーフは虹色の玉を亜音速で投げつけ、戦車ドラフターのボディを貫通させた。

 

するとその貫通した穴から、黒い靄のようなものが溢れ出し始め、苦しみの叫び声をあげた。

 

 

 

それを見たダイダーは、光のスティックのようなものを取り出した。

 

 

ダイダー「もう一丁、プリキュア・シャイニングスイング!!」

 

そう叫びながら、ダイダーはスティックを野球のスイングのように一振りした。

 

 

すると光の斬撃が飛んでいき、戦車ドフターのボディを真っ二つに切り裂いた。

 

 

その切り裂かれたところから、さらに大量の黒い靄のようなものが溢れ出し、ついに復元が間に合わなくなり、装甲がボロボロと崩れ始めた。

 

 

 

 

ソーラ「よーし、トドメだ!! モードプリキュア、ウェイクアップ!!」

 

掛け声とともに両腕を大きく開くとソーラの全身は万華鏡のような幻想的な光のオーロラに包まれていった。

 

その光のオーロラを身にまとうかのようにすると、彼女は深緑のフリルのついた黒光りのするドレスのようなコスチュームの姿 キュア・ソーラーに変身し、リリーフとダイダーに遅れを取るまいと気合を込めて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「行くよ!! モードディヴィジョン!!」

 

 

その掛け声とともにソーラーは立体映像投影装置を起動させ、髪の色が赤と青と黒になっている三体の分身を作り出した。

 

 

 

ソーラー「フルパワー!!」

 

そして分身完了するとともに、四人になったソーラーはボロボロになり始めた戦車ドラフターに四方から組みつき、そのまま上空まで持ち上げていった後、トンボを切って距離をとった。

 

 

ソーラー「タァッ!!」

 

 

 

続けてソーラーはクロムスティックを二本とも取り外し、先端から光のビームを発射した。

 

 

ソーラー「ビームライン・シュート!!」

 

 

ドラフターの四方に陣取った四人のソーラーが同じようにビームを発射した結果、ビーム同士がちょうど正方形を描いた。

 

さらにソーラーは今度はスティックをそれぞれ上下に向けてビームを放ったため、ドラフターを閉じ込めるようにビームを辺にした正八面体が完成した。

 

 

ソーラー「インフィールドゾーン完成!!」

 

 

そのビームの正八面体 インフィールドゾーンの頂点からは閉じ込められていたドラフターに対して強烈なプラスエネルギーが電撃の嵐のように降り注いでおり、相当のダメージを与えていた。

 

 

ソーラー「プリキュア・シャイニーダイヤモンド…」

 

ソーラーは着地すると同時に腕を構えた。

 

 

 

ソーラー「フィニッシュ!!」

 

その掛け声とともに指を鳴らした瞬間、インフィールドゾーンの中で目もくらむばかりの強烈な閃光とともに大爆発が発生し、ドラフターの末期の悲鳴が爆発音の陰でかすかに聞こえた。

 

 

そして、刺々しい金属の玉のようなものがゴトリと降ってきて地面に転がり

浄化の完了した中年男性へと姿を変えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラ「や、やった…」

 

エネルギーが不十分だったこともあり、変身解除するや否や再びふらついて倒れかけたソーラを、リリーフとダイダーが優しく受け止めていた。

 

 

ダイダー「よく頑張ったわね」

 

リリーフ「強くなったねソーラ。 見違えたよ」

 

 

その温かい言葉に、ソーラは満足げな笑みとともに力強く返事をした。

 

ソーラ「はい、ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

甲子市立病院

 

 

 

戦車ドラフターの被害もあり、野戦病院の様相を呈したこの病院の集中治療室に豪とランが運び込まれていた。

 

 

まともに車にはねられたため、機械の音が規則的に鳴り響く中二人は半死半生のままうなされていた。

 

 

 

 

 

豪「う〜…」

 

ラン「うん…」

 

 

そんな夢うつつ状態二人の耳に聞き覚えのある懐かしい声が響いてきた。

 

 

(豪くん)

 

豪「この声… リーフ姉ちゃん?」

 

 

 

(ラン、しっかりしなさい)

 

ラン「ダイーダさん…」

 

 

 

(こんなところで諦めちゃダメだよ)

 

(叶えたい夢が、なりたいものがあるんでしょう)

 

 

 

豪「そ、そうだよ…!!」

 

ラン「私は…!!」

 

 

 

 

 

看護師「あっ、京香先生!! すぐ来てください、二人とも気がつきましたよ!!」

 

 

目を見開いた二人を見て、付き添っていた看護師が驚きの声をあげるとともに京香先生を大声で呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

京香「ふむ。気が付いたのはまずは良かったわ。とりあえず峠は越したようですし。あとは安静にしていれば大丈夫でしょう」

 

 

その京香先生の言葉にずっと付き添っていた豪の母親は嬉しさのあまり崩れ落ちた。

 

豪母「よ、良かった…」

 

 

遠藤「うむうむ。何はともあれ良かった良かった」

 

河内「まったくだ。犯人も必ず逮捕してやるからな」

 

 

 

見舞いに来ていた面々が口々に二人の無事を喜ぶ中、豪とランは酸素吸入機越しながら笑顔を見せた。

 

豪「へへっ、ありがとう。でもこんなことでくたばれねぇよ、せっかく励ましてくれた姉ちゃんたちに申し訳ねぇしな」

 

ラン「あら、あんたも? 私もダイーダさんとリーフさんが励ましてくれる夢見たのよね」

 

 

 

そんな二人の言葉を聞いて、遠藤博士たちは顔を見合わせると微笑みあった。

 

河内「はっはっはっ、夢か。とんだ夢を見たもんだなぁ」

 

京香「そうね。あんまりいい夢じゃないですね」

 

 

リーフとダイーダのことをよく知っているはずのこの二人のそんな態度に、豪とランも多少不快そうな顔をした。

 

 

豪「なんだよそれは」

 

ラン「何がおかしいんです?」

 

 

しかし、その直後集中治療室に入って来た二人の少女を見て、豪とランは目を疑った。

 

 

豪「嘘… だろ…」

 

ラン「夢じゃ… ないの?」

 

 

リーフ「ふふっ、ほんとだよ」

 

ダイーダ「二人とも。安静にして、早く元気になりなさいね」

 

 

 

 

病室内からの嬉し泣きの声を聞きながら、力を使い果たし、廊下の椅子で横になったソーラは嬉しそうに微笑んだ。

 

ソーラ「さっすが先輩。よく慕われてるなぁ」

 

 

そんなソーラに付き添いつつ、志夜刑事はどこか不満げな声で問いかけた。

 

志夜「いいんですか? あなただって相当ひどい目にあったのに、なんかほったらかしみたいで」

 

 

ソーラ「いいんですよ。私のは自業自得だし、何より豪くんとランちゃんが元気になってくれればそれが一番です」

 

 

なんの不満も感じないような声でソーラが返すと、ようようにして朝日が昇り始めて来たらしく、窓から陽の光が差し込んで来た。

 

 

ソーラ「やれやれ、これでエネルギーも回復できるか。こうしてまた明るい明日が迎えられたのも、先輩やみなさんのおかげです。ありがとうございます」

 

ソーラの感謝の言葉に、志夜刑事もまた優しい笑みとともに感謝の言葉を返した。

 

志夜「そんなことないわ。あなたが昨日頑張ったからこそ、こうして今日が迎えられた。ありがとう」

 

 

 

 

 

続く


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