コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第29話 太陽が消える日(前編)

 

 

 

 

 

ソーラー「タァアアア!!」

 

街中で暴れている手足の生えた自動車といった姿のドラフターに対して、ソーラーはクロムスティックを手に飛びかかって行った。

 

 

光のエネルギーが注入されと電撃をまとったスティックの一撃はボディを切り裂き、ドラフターにかなりのダメージを与えていた。

 

 

悲鳴にも似た雄叫びをあげた自動車ドラフターは、お返しとばかりにライトの部分からレーザーを発射して攻撃してきた。

 

 

ソーラー「当たるもんか!!」

 

ソーラーは得意そうに言うと、見事なフットワークで攻撃をかわしていった。

 

 

ソーラー「どんなもんよ、ん?」

 

胸を張ったソーラーだったが、目の前のドラフターとは別の方向から爆音が響いてきたことに気がつき振り返った。

 

すると巨大なオートバイというようなドラフターが猛スピードで突っ込んできた。

 

 

ソーラー「なっ、もう一体!?」

 

ソーラーは同じようにかわそうとしたが、オートバイドラフターは小回りが効く上、ソーラーが切り返したところを狙ってミサイルを発射してきたため、少しずつだがソーラーを追い詰めていった。

 

 

ソーラー「くっ、こいつも早い!!」

 

悔しそうに歯噛みをしてオートバイドラフターの突撃とミサイルを避けることにとらわれていたソーラーは、自動車ドラフターのことを失念してしまった。

 

 

ソーラー「うわっ!! 何これ!?」

 

自動車ドラフターの射出してきたタイヤを頭から何個も被せられ、全身を締め付けられたソーラーは身動きが取れなくなってしまった。

 

 

そしてそこを狙ってオートバイドラフターが突撃し、ソーラーを跳ね飛ばした。

 

 

ソーラー「お、お〜… 効いたぁ…」

 

受け身も取れないまま、頭から地面に激突したソーラーは、目から星を出してフラフラになってしまった。

 

当然、その隙を二体のドラフターが見逃すはずもなく追撃を加えてきた。

 

ソーラー「ギャフン!! うぎゃ〜!!」

 

 

 

 

ビームとミサイルの連続攻撃を受けて妙な悲鳴とともに吹っ飛んだソーラーに対して、トドメに押しつぶしてやると言わんばかりに地響きを立てつつ猛スピードで突っ込んできた。

 

 

ソーラー「ま、まだまだぁ!!」

 

フラフラになりつつも、太陽光線が降り注いできたことも相まってパワーを回復したソーラーは気合いとともに自分を拘束していたタイヤをぶっちぎり、二体のドラフターの突撃もギリギリのところで大ジャンプしてかわした。

 

 

その結果突っ込んできた二体のドラフターは鉢合わせし、お互いに誤爆しあって逆にダメージを受けてしまった。

 

 

ソーラー「今だ!! クロムスティック・ブーメラン!!」

 

 

隙ありとばかりに腰の左右のクロムスティックを取り外し、そのまま二本のスティックを柄の部分でくっつけて一本の棒のようにして光の力を込めて投げつけた。

 

 

光輪のように投げつけられたスティックに、二体のドラフターのボディを大きく切り裂かれ、甲高い悲鳴とともに倒れ込んでしまった。

 

 

ソーラー「よし、一気にトドメだ!!  モードディヴィジョン!!」

 

 

その掛け声とともにソーラーは立体映像投影装置を起動させ、髪の色が赤と青と黒になっている三体の分身を作り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「フルパワー!!」

 

そして分身完了するとともに、四人になったソーラーは二体のドラフターに四方から組みつき、そのまま上空まで持ち上げていった後、トンボを切って距離をとった。

 

直後上空に閃光が走ったかと思うと、光り輝くダイヤモンド インフィールドゾーンが完成していた。

 

 

 

ソーラー「プリキュア・シャイニーダイヤモンド…」

 

ソーラーは着地すると同時に腕を構えた。

 

 

 

ソーラー「フィニッシュ!!」

 

その掛け声とともに指を鳴らした瞬間、インフィールドゾーンの中で強烈なプラスエネルギーが電撃の嵐のように降り注ぎ、閉じ込められた自動車ドラフターとオートバイドラフターを一撃のもとに葬り去った。

 

そして、刺々しい金属の玉のようなものが二つ、ゴトリと降ってきて地面に転がった。

 

 

 

ソーラー「ふ〜っ、一件落着っと」

 

 

戦いに勝利し、ドラフターにされていた人たちが浄化されたことを確認したソーラーは、満足げな笑みを浮かべて飛んで行った。

 

 

 

 

パーリ「ふん。プリキュアめ、いい気になるなよ」

 

セーリ「まったくだ。しかし、あの男の作戦をあてにすることになるとは情けないものだ」

 

 

近くのビルの屋上でそんなことを呟いているこの二人に気づくこともなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

ソーラ「たっだいま〜!!」

 

遠藤「おお帰ったか。ご苦労じゃったな」

 

 

元気よく研究所に帰還したソーラを遠藤博士も機嫌よく出迎えた。

 

 

ソーラ「はっはっはっ!! ご苦労だなんて、そーんなことありませんですよ!! この体の使い方も完璧に覚えましたし、何より完璧な必殺技のシャイニーダイヤモンドフィニッシュまで開発しましたからね。もう怖いもんなしですよ」

 

 

自慢げに踏ん反り返ったソーラを見て、遠藤博士は引きつりながらたしなめた。

 

遠藤「こらこら。あんまりお調子にのるんじゃない。完璧などというものはこの世に存在せんのじゃからして、くれぐれも気を抜かんようにせんか」

 

ソーラ「なーに、大丈夫ですよ。連中もかなり追い詰められてきてますしね」

 

しかしそんな注意などなんのそのというように、ソーラはかんらかんらと笑い飛ばした。

 

 

遠藤「ん? 追い詰められとる? なんでそんなことがわかる?」

 

 

ソーラ「だって、連中ドラフターを二体も同時に出してきたんですよ。元々ドラフターが究極成長させればいいだけなんだから一体出せばそれでいいんですよ。おまけに下手に同じ場所に複数出したりしたら共食いする可能性だってあるのに、あえてそれをしたってことは、そうしなきゃいけないほどになってるってことですよ」

 

 

実に得意そうにドヤ顔で説明をしたソーラだったが、遠藤博士はだんだんと真剣な顔つきになっていった。

 

 

遠藤「…本当にそうなのか? なんらかの理由で複数出したんじゃなかろうか? あるいは…」

 

 

 

じっと何かを考えていた遠藤博士だったが、仕掛けていたタイマーが鳴ったことで正気に返った。

 

遠藤「おっとイカンイカン、約束の時間じゃ。ソーラ、一仕事した後にすまんが、前々から頼んでいた通りに頼むぞ」

 

ソーラ「まっかさっれよー!!」

 

自信満々に胸を叩いて踏ん反り返りながら研究所を出て行ったソーラに、遠藤博士は一抹の不安を覚えため息をついた。

 

 

遠藤(どーもあやつはイマイチ不安なところがあるな。油断大敵火がボウボウという言葉を教えてやったほうがよかったか…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

科警研

 

 

 

ここ科警研から、厳重な警備の元あるものが運び出されようとしていた。

 

 

研究員「では河内警部お願いします。くれぐれも万が一のことがないようにお願いします」

 

河内「うむ、お任せください」

 

志夜「警部殿、では私は前方の護衛車に同乗しますので」

 

河内「うむ、頼むぞ」

 

 

見事な敬礼とともに、前の車両に向かっていった志夜刑事を見て、河内警部もまた気を引き締めた。

 

 

河内「よし。こいつがあれば、あのドラフターとかいうやつらとも互角に戦えるかもしれんからな。絶対に守らなければ… そのために保険も用意したんだしな」

 

 

河内警部がちらりと近くのビルの屋上を見ると、ソーラが小さく手を振っているのが目に入った。

 

 

 

 

 

数日前

 

 

 

ソーラ「トリプルP? なんですかそれは?」

 

突然真剣な顔で遠藤平和科学研究所に訪ねてきた河内警部と志夜刑事だったが、聞いたことのないその単語にソーラは質問した。

 

 

遠藤「ああ、去年の暮れじゃったか。科警研から極秘にということで相談を受けたやつじゃな。新型の液体爆薬じゃったな」

 

河内「うむ、小さなカプセルに詰まったものでも十分な破壊力があって、実にニトログリセリンの約30倍程度の威力があるやつだ」

 

志夜「危険なものではありますが、うまく取り扱えれば強力な武器になります。それを今度科警研から警視庁に輸送するのですが…」

 

そこまで話を聞いてソーラは納得したように頷いた。

 

 

ソーラ「なーるほど。もしかしたらあいつらが襲ってくるかもしれないと」

 

 

河内「まぁ情けないがそういうことだ。こっちでも護衛はつけるが、普通の人間相手ならともかく、あいつらが攻めてきたら俺たちだけではどうにもならん」

 

 

自分たちの力不足を痛感していた河内警部は悔しそうにため息をついたが、ソーラは首をかしげた。

 

 

ソーラ「普通の人間って? あいつら以外にもそんなことをしようって考えるやつらがいるんですか?」

 

 

志夜「…言わないでください。それが人間の弱さと情けなさですよ。こんなご時世なのに自分のことしか考えない人というのはいるんです。これを奪って金儲けしてやろうとか…」

 

 

遠藤「まぁなんにせよじゃ。妙なことを仕掛けてくる奴がおらんとも限らず、人類のための発明を悪用されたりしたらことじゃ。ソーラ、当日は陰ながら護衛を頼めるか」

 

 

ソーラ「了解しましった!!」

 

河内「あ〜… じゃあすまんが当日はよろしく頼む」

 

よく言えば明るく元気よく、悪く言えば能天気そうに敬礼をしながらのソーラの言葉になんとなく不安を覚えつつも、とりあえずソーラに護衛を頼んで河内警部たちは引き上げて行った。

 

 

 

 

 

 

 

現在

 

 

 

パトカー数台に先導され、新型液体爆薬 トリプルPを積んだ護送車が道を進んでいく中、近くのビルの屋上をジャンプに次ぐジャンプで後を追いかけながら護衛をしていたソーラは一人ぽつりとつぶやいた。

 

 

ソーラ「今の所異常なし。というか、考えてみれば連中はドラフターを成長させるのが目的なんだし、わざわざ襲ってくることもないよね。普通の人間ならむしろ私が戦わないほうがいいかも…」

 

 

 

そうして気を抜いてソーラがよそ見をした瞬間、爆発音とともにもうもうとした煙が巻き起こり、護送車やパトカーを包み込んでしまった。

 

 

河内「敵襲!! 総員持ち場を離れるな!!」

 

真っ白な煙にあたり一面が覆われ、一寸先もろくに見えない中、護衛に当たっていた警官は皆少なからず混乱していたが、河内警部の一括により冷静さを取り戻し、各々拳銃を構えて臨戦体制に入った。

 

 

しかし次の瞬間、煙を切り裂いて襲ってきた存在にさしもの河内警部も度肝を抜かれた。

 

 

河内「なっ!? こいつらは!!」

 

志夜「資料で見た、マイナー!?」

 

 

全身を黒いタイツで包んだような人間、先の戦いにおいて嫌という程活動していた戦闘員 マイナーだった。

 

 

警官隊はとっさに拳銃を乱射したが、このマイナーに対して通常兵器はほとんど役に立たず、一方的に嬲られていった。

 

 

 

河内「くっ!! いかん、このままでは…」

 

さしもの河内警部も焦り始めた時、マイナーたちが片っ端から殴り倒され始めた。

 

 

ソーラ「大丈夫ですか!? こいつらは私がなんとかします。早くトリプルPを運んでください!!」

 

 

クロムスティックを両手に構え、見事なスティックさばきで次々とソーラはマイナーを打ち倒していっており、それを見た志夜刑事も力強く頷いた。

 

志夜「わかりました。私が運転して運びます!!」

 

 

そうして護送車に駆け寄って行ったものの、時すでに遅く本来の運転手はズタズタにされて道路に打ち捨てられており、護送車はマイナーの運転によりもはや追いつくどころか影も形もないところに行ってしまっていた。

 

 

 

ソーラ「く、くっそー!! 油断した!!」

 

 

マイナーを全て打ち倒したものの、勝負には負けてしまったため、ソーラを始め河内警部たちも皆悔しそうに歯噛みをしつつ、地面を殴りつけていた。

 

 

 

 

遠藤平和科学研究所

 

 

 

遠藤「何!? マイナーが出現して、しかもトリプルPが奪われた!?」

 

ソーラ「はい、すみません。完全に油断してました。まさかドラフターじゃなくてあんなのが出てくるなんて…」

 

 

志夜「いや、それはこっちもです。人間の暴力団関係者やテロは想定していましたが、まさか…」

 

河内「あまり思い詰めるな。もともと責任者は俺だ。なら俺の判断ミスということだ。処分はいくらでも受けてやる。しかし…」

 

うつむき、唇を悔しそうに噛み締めていた二人の肩に手を置き、慰めるように声をかけた河内警部だったが、拭えない疑問を口にした。

 

河内「なんで今更、あんなのが出てきたんだ? それに連中の目的から考えても、トリプルPなんぞ奪っても何にもならんだろうに…」

 

 

ソーラ「そ、そうそう。私もそれ疑問に思ってた」

 

 

尻馬に乗るように相槌を打ったソーラに、志夜刑事も続いた。

 

 

志夜「こちらに対する戦略方針を変えたんでしょうか? 先日の塾の件といい何かこう、以前の力押しというより、こちらの心理につけ込んでいるような…」

 

遠藤「わしも同感じゃ。変なブレーンでもついたか? フライのやつのような…」

 

 

そこまで考えを進めたところで、全員の頭に嫌な予感がよぎった。

 

 

河内「志夜、急いで戻って確認だ」

 

志夜「はい!! ではすみませんがこれで」

 

 

それだけ言い残すと二人は慌てて引き上げていった。

 

 

 

遠藤「まさかとは、思いたいが…」

 

 

 

 

続く


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