コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第2話 新たなる闇(後編)

 

 

 

 

 

 

階段を下り、地下の研究室についた遠藤博士は電灯のスイッチを入れながら、さてというように話し始めた。

 

遠藤「よし、まぁまずはこれの話から始めるか…」

 

 

河内「う… ん!? こ、こいつは!!」

 

突然明るくなったことで、少しくらんだ河内警部だったが、目が慣れてきた瞬間そこにいた存在に驚きの声をあげた。

 

豪「まぁ、驚くよね」

 

ラン「…私たちもそうだったもの」

 

 

そこにいたのは、透けるような白い肌をしたプラチナブロンドのロングヘアの少女であり、その特徴的な容姿にはここにいる全員に見覚えがあった。

 

 

河内「四季…ゆう…  な、なんでこいつがここにいるんだ!?」

 

 

四季ゆう

 

 

遠藤博士の息子で、ランの父親でもある遠藤央介が作った治安維持用戦闘型アンドロイド。

 

 

ランの妹を自称していた彼女だが、完成直後Dr.フライに強奪。プログラムを改造されてプリキュアの死神を名乗り幾度となく戦うことになった。

 

だが、その純粋さから徐々にDr.フライやパーフェクトの一味からも疎まれるようになり、最終的には用済みとして別の世界に放逐された存在である。

 

 

 

豪「落ち着いてよ河内警部。この人、ゆう姉ちゃんそっくりだけど、違う人だから」

 

河内「何? いやしかしこいつは…」

 

ラン「ゆうさんって、お父さんが作ったロボットでしょ。だからこの人は…」

 

 

遠藤「うむ。央介が言うにはDr.フライに奪われた後、残されていたデータから再開発された量産試作機じゃそうじゃ」

 

 

志夜「こ、これがロボット!? 人間そっくりじゃないですか!?」

 

 

戸惑う二人に対して、皆が事情を説明し始めた。

 

 

遠藤「もともと、ゆうは理論実証機ともでもいうべき実験機でな。とりあえずコスト度外視でできる限りのものを作ったというのが実情じゃ」

 

豪「そういう意味だと姉ちゃんたちと同じだね」

 

 

遠藤「うむ、そしてそのデータをもとに量産することを前提にした試作機がこいつだそうじゃ。 まぁもっとも、その計画は完全に廃案になりこいつも本来は廃棄される予定だったらしいがな」

 

遠藤博士は、どこか悲しそうな顔をしながらそう続けた。

 

 

河内「廃棄!? なんでまたそんな?」

 

 

ラン「おじいちゃんのパワードスーツができたからよ。そっちの方が色々便利だってことになったの。ただお父さんも廃棄するのに忍びないって、うちに送ってきたの。 一週間前よ」

 

豪「おじさんってば、ただじいちゃんに押し付けただけって気もするけどね」

 

 

とりあえずの事情を理解した河内警部は、ふむふむと頷きつつ

 

河内「なるほど。で、今こいつを使って色々テストしてるということか」

 

 

遠藤「…まぁな。あんまりいじくり回すのも忍びないが、せめてもの供養にと思ってな。我ながら身勝手だとは思うが…」

 

豪「だよね…」

 

ラン「うん…」

 

 

 

このロボットの顔は、央介の母親 つまり遠藤博士の今は亡き妻の顔がベースになっている。

 

肌や髪の色のせいで与えられる印象はまるで違うが、ゆうのことも相まってやはりイマイチ割り切れないところが遠藤博士を始めランや豪にもあるらしかった。

 

 

 

河内「まぁ、気持ちはわかるがな。で、新型のバッテリーってやつの性能の方は? 確か今のパワードスーツが6時間の充電で実働約15分というところだったが…」

 

遠藤「ああ、そいつはさっきバッテリーの組み込みとプログラムの調整が終わっただけじゃ。性能チェックは充電してからじゃな」

 

 

 

河内「…おい。その充電にはどのぐらいかかるんだ?」

 

不吉な予感がした河内警部は、なんとなくオチが読めたかのように尋ねた。

 

 

遠藤「まあ明日の昼というところじゃろうな」

 

その答えに対して、河内警部は当然のように怒鳴り散らした。

 

河内「馬鹿野郎!! もう日が沈むころだぞ!! 充電に丸一日もかかってたらいざという時に間に合わんだろう!? 全く相変わらずどこかズレとる男だな」

 

 

遠藤「ふっふっふっ、このわしがそんないい加減なものを作ると思うか? 日が沈んだからこそ明日まで待たねばならんのだ。なぜならばこいつに組み込んどるのはただのバッテリーではない。その名も…」

 

 

遠藤博士が自慢げにバッテリーの説明をしようとしたところで、先ほどの光の玉が地下室に入ってきた。

 

 

遠藤「ん? なんじゃこりゃ?」

 

豪「えっ?」

 

ラン「まさかこれって!?」

 

 

 

突然のことに、まさかというような思いでいた一同の眼の前で、その光の玉はアンドロイドに吸い込まれるように消えて行き、突如光輝き始めた。

 

 

豪「う、うそだろ!?」

 

 

今の目の前の光景に誰よりも見覚えがあった豪が驚きの声をあげた瞬間だった。

 

 

 

 

アンドロイドを包んでいた光は一際激しく輝き始め、ついには爆発を引き起こしたのである。

 

 

 

河内「うおおおおっ!!」

 

志夜「ああああああっ!!」

 

ラン「キャアアアア!!!」

 

豪「うわぁあああ!!」

 

遠藤「のわぁあああ!!!」

 

 

そしてその爆発に一同は悲鳴とともに吹っ飛ばされる羽目になった。

 

 

 

ラン「ゲホゲホ。なんなのよ一体!?」

 

河内「何がどうなったんだ?」

 

 

ぶつけた体をさすりながらも何とか気を取り直した一同は、目の前の爆煙が晴れていくとともに、目を丸くした。

 

 

 

「ap、apeofp… di、dia;s dapf wq@w…」

 

 

当のアンドロイドも当然ひっくり返っていたが、わけのわからない言葉を話しながら全身をさすりつつ、感覚を確かめるように軽く肩を回し始めたからである。

 

志夜「う、動き出した…」

 

 

遠藤「馬鹿な… AIなんぞ簡単な動作をできる程度にしかプログラムしとらんのに…」

 

ラン「ね、ねぇ… もしかしたら…」

 

豪「う、うん。あん時と一緒だぜ…」

 

河内「ま、まさか…」

 

 

 

キョトキョトと辺りを見回していたアンドロイドは、遠藤博士の方にルビーのように真っ赤な両目を向けると、ニッパリと微笑んで駆け寄ってきた。

 

 

「うっわーっ!! あなたが遠藤博士ですよね、この世界でいっちばん立派な人だっていう」

 

突然持ち上げられた遠藤博士は一瞬戸惑ったが、すぐに自慢げに胸を張った。

 

遠藤「おお、その通りじゃ!! 実に正直かつ人を見る目があるのう」

 

 

「わぁありがとうございます。さすが立派な博士ですね!!」

 

その喜びの声とともに手を握ったところで、遠藤博士は悲鳴をあげた。

 

 

 

 

遠藤「ギャエオー!! 手が〜 手が〜!!」

 

 

 

 

ラン「もうおじいちゃんってば、調子にのるからよ。 それよりあなたまさか…」

 

 

握りつぶされかけ真っ赤に腫らした手にフーフーと息を吹きかけながら半泣き状態になっていた遠藤博士に呆れながらも、ランはまさかというような問いかけを行った。

 

 

「あ、あなたたちが遠藤ランさんに、速田豪さん。それと河内警部ですね。先輩から話は聞いてました」

 

 

しかし、当の相手は全く話を聞こうともせずに興奮気味かつ一方的に喋りまくっていた。

 

 

「本当に会えたんだ。大感激!! すっごーい!!」

 

 

 

河内「なんなんだこの子は? なんかやかましい子だな」

 

 

豪「ほんとだよ。俺たちのこと知ってるみたいだけど… わっランドセルがぐっちゃぐっちゃ。 あれ、宿題のプリントは…」

 

河内警部が顔をしかめる一方、なんとか起き上がった豪だが、今の爆発でランドセルの中身が飛び散り宿題のプリントが見当たらないことに気がついた。

 

 

豪「やった!! これで宿題やんなくて済むぜ!!」

 

ラン「何バカ言ってんの。 ほらここにあるじゃない」

 

 

 

呆れたようにランが足元から拾い上げた宿題のプリントだが、当然かなりグシャグシャになっていた。

 

豪「なこと言ったって、こんなんじゃどの道まともに…」

 

 

そこまで言ったところで、件のアンドロイドが突然そのプリントをひったくるように手に取った。

 

 

「まっかせてください。こんなものなど、この私がチョチョイのチョイで…」

 

 

するとその言葉通り、目にも留まらぬ猛烈なスピードで大量の計算問題を次々と解いていった。

 

 

「「「おおーっ!!」」」

 

 

一同が感心する中、得意満面な顔で全ての答えを埋めたプリントを差し出してきた。

 

 

「はーいできました!!」

 

 

豪「スッゲー!! 全部できてる」

 

感心すると同時に大喜びした豪だったが

 

 

 

遠藤「うむ、確かにすごい。全部間違っとる」

 

ラン「おまけにこれ、ボールペンで書いてあるから消せないわよ」

 

河内「宿題は自分でやれってことだな坊主」

 

ニコニコしながらその光景を見ていたアンドロイドをよそに、それを聞いた豪は無表情にプリントを投げ捨てた。

 

 

 

 

遠藤「で、お主は一体なんなんじゃ? なんでわしらのことを知っておる?」

 

ドタバタが一段落し、ようやく遠藤博士は肝心の質問をすることができた。

 

 

 

「あ、はい。先輩から聞きました。この世界は本当に素晴らしい世界で、ものすごく立派な人たちがいたって」

 

 

河内「せ、先輩だぁ!? まさかそいつは…」

 

 

「はい、リーフ先輩とダイーダ先輩です。いろいろと教えてもらったんです」

 

 

ラン「やっぱり…」

 

 

 

豪「ん? でもさ姉ちゃんたちの後輩ってことは…」

 

 

「はい!! 私も特別警備隊員、プリキュアです!!」

 

 

志夜「プリキュア!? 噂には聞いてましたけど、本当に警部どのと知り合いだったんですね」

 

 

 

プリキュア

 

その言葉を聞いて、一同は目を丸くすると同時に警戒を解いたがすぐにあることに気がついた。

 

 

 

 

遠藤「ん、待てよ。お主がプリキュアで、この世界にまたやってきたということは… まさか!!」

 

 

嫌な予感がした直後、河内警部の携帯が鳴った。

 

 

河内「俺だ、どうした? なにぃ!? わかったすぐに向かう!!」

 

 

真剣な顔で連絡を受けていた河内警部は、苦虫を噛み潰したような顔で話し始めた。

 

 

河内「今、連絡が入った。巨大な怪物が市街地で暴れているとな」

 

 

それを聞いた一同は、驚愕の表情と共に絶句するしかなかった。

 

 

ラン「そ、そんな…」

 

豪「またなのかよ…」

 

 

そんな豪とランの方に手を置き、優しく微笑みかける存在があった。

 

 

「心配しないで、そのために私がこうしてきたんだから」

 

 

その言葉に豪とランはもちろん、遠藤博士も励まされた。

 

 

遠藤「うむ。すまんがまたプリキュアに頼まねばならんな。どうかよろしく頼む」

 

河内「俺からもお願いする。力を貸してくれ」

 

柄にもなく丁寧に頭を下げた河内警部に、胸を叩いての答えが返ってきた。

 

 

「もちろんですとも、こちらこそよろしくお願いします。あ、申し遅れました私コズミックプリキュアの新メンバー、ソーラと申します」

 

 

 

 

 

第2話 終

 


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