コズミックプリキュアS   作:k-suke

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第12話 新必殺ブレストフラッシャー(後編)

 

 

 

 

食品加工工場

 

 

 

大量の食料を貪り食い、ちょっとした小学校レベルのサイズになった子豚ドラフターは、そのサイズの体を維持するためにさらに大量に工場や倉庫の食料を食べさらに巨大になる…、といったことでますます手に負えないようになっていってしまっていた。

 

 

 

従業員「うわーっ、逃げろーっ!!」

 

従業員「助けてー!!」

 

そんな子豚ドラフターに、工場の従業員は恐れおののき取るものもとりあえず逃げ出していた。

 

 

そうして、食料を食い漁っていた子豚ドラフターだが、だんだんと飽きてきたのか、近くで腰を抜かしていた倉庫の警備員を見つけると、ぼたぼたとヨダレを垂らし始めた。

 

 

警備員「よ、よせ!! や、やめろ!!」

 

自分がどういう目にあうのかを悟った警備員は、腰を抜かしつつも必死に這いずって逃げ出そうとしていたが、子豚ドラフターの蹄に捕まってしまった。

 

 

そして大きく開けた口を警備員に近づけていったところで、どこからか飛んできた光線に、子豚ドラフターは悲鳴をあげることになった。

 

 

豪「大丈夫? 早く逃げるよ」

 

豪の撃ったアンチドラフターガンはマイナスエネルギーを簡易的に浄化できる機能を持った光線銃で、物理的破壊力こそないものの並みの拳銃よりはドラフターにもダメージになっていた。

 

子豚ドラフターが痺れているかのようになっている隙に、豪は腰を抜かしていた警備員に肩を貸して避難していった。

 

 

ソーラ「豪くん、そっちは頼んだよ」

 

 

 

警備員が無事に逃げられそうだったことを確認し、ひとまずホッとしたソーラは、ルビーのように真っ赤な瞳でドラフターを睨み付けると両腕を頭の上でクロスさせ力の限り叫んだ。

 

 

 

ソーラ「ソーラーエネルギー全開!! モードプリキュア、ウェイクアップ!!」

 

 

 

掛け声とともに両腕を大きく開くとソーラの全身は万華鏡のような幻想的な光のオーロラに包まれていった。

 

その光のオーロラを身にまとうかのようにすると、彼女は深緑のフリルのついた黒光りのするドレスのようなコスチュームに変身していた。

 

 

 

ソーラー「光り輝く太陽のかけら キュア・ソーラー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「クロムスティック!! ヤァアアア!!」

 

 

ソーラーは電磁警棒を取り外し、伸長させて子豚ドラフターに殴りかかった。

 

 

 

 

しかし、すでに全長20メートルを超えるサイズに巨大化した子豚ドラフターは、全身が厚い脂肪で覆われており、スティックの打撃を全く受け付けず、それどころかその弾力で跳ね返してしまった。

 

 

ソーラー「なっ!? 効かない!?」

 

 

跳ね返されつつもなんとか体勢を整えて着地したソーラーを見て、豪は感心半分焦り半分といったところだった。

 

 

豪「ソーラ姉ちゃん。最近の特訓の成果が出るみたいだけど、あれじゃどうしようも…」

 

 

むろん、その心配はソーラーが一番しており、かなり険しい表情をしていた。

 

 

ソーラー「よーしこうなったら… とうっ!!」

 

ソーラーは大ジャンプすると、気合とエネルギーを込めてドロップキックを放った。

 

足先が空気との摩擦とソーラーのエネルギーとの相乗効果で赤く発光しており、素人目にも相当の破壊力があるのがわかるほどであった。

 

 

 

 

 

 

ソーラー「う、うわーっ!!」

 

 

以前ビルの壁を軽く貫き、今ならばそれをはるかに上回るであろう威力のキックも子豚ドラフターを貫くことはできなかった。

 

それどころか、ゴムのような弾力の子豚ドラフターに対して中途半端に高い威力の攻撃をしたことで、さっきよりも派手にソーラーは跳ね飛ばされることになった。

 

 

その結果、工場内の建物の壁に頭から突っ込んでいく羽目になってしまった。

 

 

 

 

ソーラー「ハラホレ、ヒレハレ…」

 

豪「姉ちゃん危なーい!!」

 

ビルの壁に派手に頭をぶつけ、目を回してしまっていたソーラーだったが、突如聞こえてきた豪の叫びと地響きに正気に戻った。

 

ソーラーの目前には、丸い玉のような姿に変化した子豚ドラフターが、自分を押しつぶそうと転がりながら突進してきたからである。

 

 

 

ソーラー「じょ、冗談じゃなーい!!」

 

自分の視界いっぱいに広がった子豚ドラフターの突進を、ヘッドスライディングの要領で泥だらけになりながらもなんとかかわしたソーラーだが、その結果ドラフターが突っ込んだ建物は押しつぶされるように倒壊した。

 

 

ソーラー「げげっ…」

 

 

驚きの声をあげたのも束の間、建物を押しつぶして動きの止まっていた子豚ドラフターは転進して再び転がり始めてきた。

 

 

ソーラー「わっわっわっ!!」

 

ソーラーはダッシュ力を駆使して逃げ惑ったが、もともとサイズ差がありすぎていることと相まって、ついに潰されてしまった。

 

 

 

ソーラー「ギャアアア!!!」

 

パーリ「仕留めた!!」

 

 

ソーラーが子豚ドラフターに押しつぶされ、悲鳴をあげたのを聞いたパーリは勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーラー「ぐ… まだだよ…」

 

 

ソーラーはすんでのところでなんとか子豚ドラフターを両腕を広げて受け止めていた。

 

 

 

パーリ「えぇいしぶとい!! だがあと一息だ、行け!!」

 

パーリの言葉通り、ソーラーの両足は子豚ドラフターの下敷きになっており、逃げ出すことが不可能な状態の中じわじわと押されていて、最後の抵抗というのがぴったりくる状態だった。

 

 

ソーラー「う、あ… ああ…」

 

豪「ね、姉ちゃん!!」

 

 

 

今にも押しつぶされそうな中、ソーラーの頭は超高速で回転していた。

 

ソーラー「よ、よし。こ、こうなったら…」

 

 

先ほど豪がうったビームガンが多少なりとも効果があったことを思い出したソーラーは、全身にエネルギーを集中し始めた。

 

 

ソーラー「プ、プリキュア…」

 

 

そして、ついに押しつぶされたと同時に、ソーラーは力の限り叫んだ。

 

 

ソーラー「ブレストフラッシャー!!!」

 

 

 

その叫びとともに、ソーラーの上半身と横いっぱいに伸ばした腕から目も眩むような閃光とともに強烈なビームが発射され、子豚ドラフターを飲み込んで行き大爆発を起こした。

 

 

 

豪「う、うわーっ!!」

 

その閃光と爆発に豪はとっさに目をつぶって身構えた。

 

 

そして閃光が収まったのを確認するように恐る恐る目を開いていくと、驚きのあまり目を見開いた。

 

 

豪「す、すげぇ… あの巨大なのが一発で吹っ飛んだ…」

 

 

 

 

パーリ「覚えておけプリキュア。この借りは必ず返す」

 

そしてその声を最後にパーリも姿を消していた。

 

 

 

 

ソーラ「あ、ぐ… なんとかやったか…」

 

 

全エネルギーを照射した結果、変身解除してしまい地面に大の字になって倒れてしまっていたソーラのところに豪が心配そうに駆け寄ってきた。

 

 

豪「姉ちゃん大丈夫!?」

 

ソーラ「な、なんとか… エネルギーが空っぽになっちゃって動けないけど… それより、あの人を…」

 

 

 

 

やっとというように言葉を発したソーラだが、それでもドラフターにされていた人のことを心配していた。

 

 

豪「えっ、あ、ああ」

 

 

子豚ドラフターのいた場所に転がった金属の塊は、少しずつ溶けるように形を変えていき、最終的には一人の見慣れた少女へと姿を変えていった。

 

 

豪「あ、あいつ… 水原…」

 

ソーラ「さっき話してた子か… でも、無事でよかったよ…」

 

 

嬉しそうに微笑んだソーラだったが、豪は浮かない顔をしていた。

 

 

豪「いや、まぁ、確かにドラフターは倒したし、あいつも大した怪我はなさそうだけどさ…」

 

 

ソーラ「? 何?」

 

 

 

 

キョトンとしつつ尋ねたソーラに豪は、力なく前方を指差した。

 

 

豪「つ、ついでに… 倉庫も、工場も…」

 

ソーラ「へっ?」

 

 

その豪の言葉に改めて前を見ると、先ほど自分の放ったビームで工場や倉庫までもが瓦礫のかけらすらなく消し飛んでいた。

 

 

 

ソーラ「…や、やりすぎた…」

 

 

遠藤『…なるほどな。あやつのエネルギーは太陽電池のソーラーエネルギーと光の精霊の力のハイブリット。プラスエネルギーだけを照射するというわけにはいかんということか』

 

 

ラン『感心してないで… どうするのこれ…』

 

 

研究所のモニターで状況を確認していた遠藤博士とランもこの惨状にはひきつるしかなかった。

 

 

 

遠藤『まぁ、ドラフターによって半壊状態じゃったからな。実質的被害はほとんど無かろう… それが唯一の救いじゃな…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水原「あ〜、お腹すいたー!!」

 

豪「ほらもうすぐうちだろ。頑張れよ」

 

 

あの後、とりあえず正気に戻った水原さんを豪とソーラはうちまで送ることにした。

 

しかし、ドラフターにされていたことでかなり消耗してしまっていたらしく、どうにかこうにかたどり着いた時にはすでにあたりは真っ暗になってしまっていた。

 

 

豪「しっかし、あんなに食ってたのになんでこいつ自身は腹が減ってんだ?」

 

ソーラ「多分、エネルギーの大半がドラフターの成長に使われてたんだよ。それに核になってる人もエネルギーを多く消費されるから…」

 

 

そうやって解説しているソーラも、エネルギーを使い果たし両足が半分潰されていたためかなり歩き方がヘロヘロになっていた。

 

おまけに陽が沈んでしまったせいで回復もできないといった有様だった。

 

 

 

豪「やれやれ。ほら着いたぜ」

 

水原「あ、ありがとう。ただいまー!! ご飯!!」

 

 

もう待ちきれないというように家に飛び込んでいったが、そこには怒りの形相で仁王立ちした母親が待っていた。

 

 

 

水原母「こんな時間までどこにいってたの!! ピアノのお稽古もサボって!!」

 

水原「ご、ごめんなさい!! ちょっと色々あって私も何が何だか…」

 

その怒鳴り声の前にしどろもどろになりながらも説明を始めた水原さんだが、大きく腹の虫がなった。

 

 

水原「お、お説教なら後できちんと聞くから。それより、ご飯」

 

 

両手でお腹を押さえながらそう訴えたが、母親の怒りは収まらなかった。

 

 

水原母「そんなものとっくに片付けちゃいました。そうでなくても食品工場が襲われて食べ物がほとんどないのに!! まともに食べもしないんだから食べなくて結構!! もう寝なさい!!」

 

 

そう言い捨てると、母親は家の中に引っ込んでいった。

 

 

水原「そんな〜!!」

 

情けない声とともに玄関先でへたり込んでしまった水原さんを、豪とソーラは必死に慰めた。

 

 

豪「元気出せよ。でも元はと言えばお前が悪いんだし、一食ぐらい我慢しな」

 

水原「う〜… そうだけど…」

 

 

 

ソーラ「いいのいいの。エネルギー補給の大切さがわかれば安いもんだよ。うん」

 

水原「でも〜…」

 

 

水原さんは自分の行いを反省し、ヘロヘロになっているソーラを見て、それを実感したものの、どこか納得いかない声をあげることになった。

 

 

続く


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