ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜   作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官

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第5話、最も長い通路!part5〜40mの攻防!決着〜

 

出口まで残り約20メートルの地点で、リオレウスの吸い込むような青い瞳がボクの姿を捉え、そして忌むべき侵入者を駆逐せんと追い始めた。

 

その巨体から生み出される速度は凄まじく、ボクとリオレウスの差はあっという間に縮まっていく。実際に振り返って確認した訳ではないが、だんだんと大きくなる足音が、自らの命のカウントダウンが秒読みで短くなっていることを教えてくれていた。

 

リオレウスの速度、体重で激突されれば、ボク如き矮小な存在は成す術なく即死するだろう。まして今のボクは殆ど裸。完全に防御力ゼロである。吹っ飛ぶどころか掠りでもしたら身体が粉々にされてしまう。

 

 

最悪の事態が脳裏をよぎる。

それでも、ボクはその幻想を打ちはらい、ひたすらに出口目掛けて駆け抜ける。

 

リオレウスが火球ブレスを使わずに追ってくるかどうかは完全に賭けだった。

しかし、一説によるとリオレウスはブレスを吐き出す際に自らの喉も同時に焼いてしまっているらしい。脅威的な再生能力によって焼けた喉もすぐに再生するので損傷はさほどでもないが、だからと言って明確な危機でもない相手にバンバン……具体的には連続で3発以上は吐かないだろうという、希望的観測という誹りを免れないような単なる予測だった。

 

ただ、非怒り状態のブレス頻度から考えれば、ありえない話ではないという程度の……。

 

 

だが、実際、リオレウスはブレスを使わず、その足でボクを追って来た。

もちろん、ボクがリオレウスにとって明確な脅威であるならば、迷わずブレスを放って来たことであろう。しかし、彼にとってボクは、「巣の中に迷い込んだ哀れで弱い生き物」だ。

 

殺そうとしている理由も、食べるためでも生きる為でもなく、ただ自分の巣の中で目に付いたからという程度のもの。追い払えば問題ない話であり、殺し切らなくてもリオレウスにとり大きな損害が生じるものでもない。

 

 

故に、そこにつけいる余地がある。

 

 

すぐ後ろに迫るリオレウスに、ボクは「朽ちたボーンククリ(劣化型)」の()を投げ付けた。

 

後ろも確認せず放り投げたといった感じだが、どうやら運良くリオレウスの顔面に命中したらしい。

この状況で反撃されるとは思いもしなかったリオレウスは、わずかに歩みを遅らせた。

 

 

 

そして、出口までの距離は、残り5メートル。

 

……リオレウスの頭との距離、恐らく1メートル未満。

 

 

 

迷わず光に向かって飛び込んだ……。

 

 

 

 

ズガガガガァァァァァアアアンッッ!!!

 

 

 

リオレウスの巨体が洞窟の壁にぶつかる凄まじい轟音をバックに、ボクの体は砕け散った無数の岩と共に投げ出される。

リオレウスは口をグパッと開き、ボクの足を咥えんと牙を剥く。

 

 

そして、リオレウスの口に整然と並ぶ牙が、ボクの足を咥えこもうとして…………、

 

 

あと1センチというところで、リオレウスの体がピタリと止まり、結果、その牙がボクに届くことは無かった……。

 

 

 

本当にギリギリだった。

このリオレウスがあと一回り小さかったら、或いは大きかったら、ボクの動きが一瞬でも遅かったら、洞窟が少しでも広かったら、投げ付けた盾がリオレウスの顔に当たっていなかったら……ボクは足を咥えられ、巣の中に引きずり戻されていたことだろう。

 

 

 

だが、事実、ボクは無数の偶然の上で、命をギリギリで掴み取ることに成功したのだ。

 

ボクはすぐに起き上がり、どうやら岩に引っかかったようで抜け出せていないリオレウスの頭に触れた。さっきまで自らを殺そうとしていた強大な存在の頭に触れるのはそれは恐ろしい。だが、そうしないと死ぬのであれば、迷いはない。

 

そして、神から授かった(と思われる)転生特典を発動する。

 

 

 

悪魔の誘惑(マインドコントロール)

 

 

 

《さあ、目の前の敵が隙を晒しているぞ、今がチャンスだ!ブレスを放てっ!焼き尽くすのだ!》

 

 

ボクの能力によって囁かれた「悪魔の誘惑」を聞いたリオレウスは、その言葉に従い、"目の前の敵"であるボクを焼き払おうと口内に炎を滾らせながら大きく息を吸う。

…それは、典型的な火竜のブレスの予備動作。

ゲームの中で、何百、何千と見て来た動き……。

 

 

三、二、一、…………っ!!

 

 

予備動作からブレスの吐かれるタイミングを計る。

そして、ブレスがリオレウスの口内から解放されるその瞬間、ボクは素早くアオキノコへと変身した。

 

 

結果、ボクが急激に縮んだことによって目標を見失った火球は、そのままボクの真上を素通りし………

 

 

……青い巨体に衝突して、爆ぜた。

 

 

リオレウスの火球によって吹き飛ばされたドスランポスは、そのまま段差を落下し、茂みの中へと倒れ込んだ。

当然茂みの葉にも炎は燃えうつり、ドスランポスの全身を高温の炎が包み込む。

 

空腹によって弱っていたドスランポスは、火球が直撃した衝撃から復帰できず、そのまま高温の炎に包まれ続け、熱せられた空気を吸ってしまった影響で肺を焼かれ、やがてピクリとも動かなくなった。

 

 

…ドスランポスも処理。

 

 

もともと、このドスランポスは……いや、ランポスの群れ全体は、総出でここに来るほど、切迫詰まっていた。

まるで、火竜の近くにいた方が、かえって安全だと言わんばかりに…。

 

恐らく、リオレウスの寝付きがやたらと浅かったのも、機嫌が悪かったのも、同じ原因だと思われる。

 

 

何かに警戒していた?

 

番いの火竜が、警戒するほどの相手?

 

 

 

わからないが、取り敢えずリオレウスにかけた「悪魔の誘惑(マインドコントロール)」は一時的に解除しておく。解除自体は、ノンタッチでも可能らしい。

変身を解いて人間の姿になった瞬間また火球を放たれたらたまったものでは無いからね。

 

相手がいなくなったことに気が付いたリオレウスは、取り敢えず自らが放った火球が(・・・・・・・・・)新たに侵入しようとしていたドスランポスに命中したことに満足し、自分の寝床へと戻っていった。

 

 

………

 

 

リオレウスが完全に眠りについたことを確認し、ボクは変身を解除してリオレウスに気付かれないようそっとエリア4へと脱出した。

 

 

段差から飛び降りる。

意外と高い段差のため、飛び降りた瞬間、ジーン…と膝が痺れるような痛みを感じたが、それも数秒後には元に戻り、ボクは歩き始めた。

 

すぐ横には、焼け焦げた茂みとドスランポスの死骸。

……棚ボタである。

 

 

蠱惑の肉壺(ベニヒサゴ)」を発動し、手元に赤い壺を召喚する。

そして、まだ少し熱いドスランポスの巨体を、壺の中に突っ込んだ。

 

その途端、ドスランポスの巨体が吸い込まれるように赤い壺の中に入っていき、やがて始めから何もなかったかのように壺の闇の中へと消えた。

どうかんがえても壺のサイズ的にドスランポスの体は入らないのだが……本当に不思議だ。

 

というか、死骸を吸い込む時だけ本家紅瓢にそっくりだな。

 

 

 

さて、何か作れるようになったかな?

 

・・・

 

焦げたドスバイトダガー(劣化型)

焦げたランポスクロウズ(劣化型)

ランポスの大皮

ランポスの大爪

ドスランポスの頭

レッドフィン

改造ドスランポス(劣化型)

 

・・・

 

つまり、新鮮な素材を要求すると…。

ちょっと一番下に途轍もなくヤバそうな記述があるけど、これは無視するとして…。

 

見たところ、一匹の、それも損傷した素材だけだと、構造が複雑な操虫棍の「青の銃剣」やボウガンの「ショットボウガン」、それにサイズが大きい大剣の「蛇剣」や狩猟笛の「ドスランポスバルーン」なんかは作れないらしい。

構造が単純で小さい双剣や片手剣でも二段階劣化型だが。

 

勿論、他にも解放条件などがあるのだろう。

 

 

それから、投入したものを素材に変換することもできるようだ。骨を突っ込んだ時には「なぞの骨」や「竜骨【小】」が候補に出ていたし。

 

 

便利な能力と言えなくも無いが……、強さが無い。

言ってみれば支援系の能力だ。

 

まあ、収納ボックスとしては有能かな?

 

 

 

さて、ドスランポスの死体も手に入れたことだし、さっさと行動を起こすとしよう。

……そろそろ空腹が天元突破しそうだから。

 

 

ああ、ハンターさん。可愛いボクがお腹を空かせているよ、助けに来て……!

 

 

などという冗談はさておき、このままベースキャンプに向かうか、それともサシミウオを取りに行くか……。

アオキノコが食べても大丈夫だと判明した今、サシミウオを取りに行くのはそこまで急務では無くなった。

 

 

それにしてもエリア4、平和だなぁ。

モンスター一匹いない。

いや、ついさっきまではランポス達やドスランポスがいたんだっけ?

 

……まあ、それでも、あの生きるか死ぬかのギリギリのラインをタップダンスで探すようなあのエリア5よりはずっと安全だよ。

それでも、油断してはあげないけどね。

ここで油断できるほど死んで無いよ?

 

 

 

………、

 

エリア5を振り返る。

雲一つない空に、燦々と輝く太陽が、緑の大地を優しく照らす。

そして、その奥にポツンと存在する、小さな横穴。

 

既に、その洞窟の内部の様子を窺い知ることは出来ない。

 

 

……短いようで、途轍もなく、途方もなく長かった。

時間的にも、距離的にも。

 

そしてそれも、ようやく終わりを告げたのだ。

ボクは無事、エリア5から脱出することに、成功したのだから。

 

 

 

「最も古いトラウマクエストの聖地、「森丘」、エリア5……か。」

 

 

ようやく、ため息を吐くことができた。

 

 

「………はぁ。その名前、伊達じゃあ無かったよ………まったく。」

 




未だ嘗てエリアを一つ移動するのに6話も使用したモンハン小説が存在しただろうか?(あるかもしれない)

なお、本章のタイトルは【ボクの最も危険な森丘!】である。
つまり……

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