ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜   作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官

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初日限定連続投稿。


第1話、最も長い通路!part1〜二者一択〜

 

巣の中央で、堂々と眠る巨大な火竜。

洞窟の長さは目測で80メートル程。

地面にはご丁寧によく音を立てそうな骨がゴロゴロしている。

 

ぶっちゃけ、崖を降りた方がまだ生き残る可能性があるのでは無いかと思えてしまう。

 

よし、崖から行こう!度胸出せ!………。ボク!

……自分に呼びかけようとしたけど名前を覚えてなかったよ。

 

なんだか締まらないが、取り敢えず崖を降りるために崖の下を見下ろしてみる。

 

 

ヒュゥー……

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ↑

 

 

……もうやだ。お家帰る。

 

ゲームの中で見るとそうでも無かったのだが、この崖…というか縦穴、実際に見るとめちゃくちゃ高い。しかも壁が垂直というね。

さらに、崖の中腹にはご丁寧にランゴスタが群れていた。

……初めて知ったよ。ランゴスタって人間よりデカかったんだね。

 

ここを降りるのは即却下。

怖すぎ死ねる。

 

崖の下にはオルタロスもいたよ。オルタロスって確か2メートルオーバーだったよね?うん。無理。

崖を降りるという選択肢は完全に消失した。これならモンスターペアレント(物理)として有名なリオス家の御宅を不法侵入ピンポンダッシュしたほうがまだマシだよ。死ぬときは一瞬だから。

 

崖に行ったら意識があるまま麻痺させられて蜂に集われるか、酸で溶かされながら蟻の巣に運ばれるかという最悪の未来しか浮かんでこない。

 

 

リオスの巣を通過するしか無い。

 

 

 

…ふう、覚悟を決めろ。

リオレウスは今は寝ている。大丈夫、慎重に、冷静に、音を立てずに通れば大丈夫なはずだ。

 

よくエリアの構造を把握して安全なルートを見つけ出すんだ。そのためにも観察は大事。

 

 

エリア6から、エリア5の中を覗くように見る。

リオレウスは依然眠ったままであり、先程と状況は動いていない。

たぶんもう少し待てば完全に熟睡するはず……。

 

 

(……っ!!)

 

 

リオス夫婦の巣に、三匹の侵入者が現れた。

 

 

3メートルを超える巨体に、特徴的な青い縞模様の皮。長い前足にある爪は見た感じだと20センチくらいはある。

クチバシのような口と、その中に生えそろった鋭い牙。あれで噛まれてしまえば死は免れないだろう。

鳥に似た頭部には、小さな赤みがかった鶏冠が頂上に据えられている。

 

 

それは、鳥竜種モンスター、ランポス。

モンスターハンター界の雑魚代表として名を馳せている獣脚恐竜型のモンスターだが、その実態はヴェロキラプトルやディノニクスの上位互換と言って過言では無い。

 

脚、腕、牙の全てが武器となり、なんと自分の体高よりも高く跳び上がるという驚異的な身体能力を有している。

基本的にはスリーマンセルで行動し、その連携力は人間さえ舌を巻くほどだ。

 

 

……はっきり言おう。一匹ですら普通の人間が勝てる気がしない。

ハンターとは一体何種に分類されるモンスターなのだろう…。古龍種かな?

 

 

 

巣の中に侵入したランポスが、ゆっくりとリオスの巣に近付く。

どうやら巣に散乱した、まだ僅かに肉が残っている骨の残骸が目的らしい。随分とハイリスクローリターンな行動だが、おそらくリオス夫婦が現れたことによってアプトノスを狩り辛くなってしまったのだろう。あるいは別の要因があるのかも知れないが。

じっくり見るとどのランポスにも大きな傷跡がある。傷のせいで狩に貢献できない個体が、玉砕上等で食料を確保しに来たといったところか…。

それとも、群れ全体がみんなあんな感じで、狩をする能力が無くなってしまっている?

 

まあ、どちらでもいい。

 

ガンバレ!ランポスッ!!

 

 

思わずランポスを応援したくなり、その行動を固唾を飲んで見守る。

 

 

一歩、また一歩とリオス夫婦の巣に近付いていくランポス達。

やがてその距離は数メートルも無くなり、目標達成まではあと一息ついといったところになった。

 

 

ドンッ!!

 

 

爆音が鳴り響くと同時に、ランポスの青い身体が紅蓮の炎を纏いながら吹き飛んだ。地面と水平に吹き飛ばされたランポスは、そのまま地面を二転、三転とボールのように転がり、そして二度と起き上がることなく燃え尽きていった。

 

仲間の惨状に動きを止めるもう一匹のランポスが、リオレウスの大木のような尻尾によって薙ぎ払われる。

リオレウスの尻尾を身体の中心で受け止めたランポスは、斜め上に吹き飛んで石の壁面に全身を強かに打ち付けられ、血の跡を残しながらズルズルと滑り落ちていった。

 

三匹目のランポスは、その様子を目の当たりにして震えながらリオス夫婦の巣から逃げ出そうと走った。

しかし、王者は愚かな侵入者を逃しはしない。

素早く立ち上がり、ランポスよりも遥かに速くその後を追走すると、巨大な口によっていともアッサリとランポスの首を咥える。

リオレウスの鋭く長い牙がランポスの首に突き刺さり、赤い血をぽつぽつと地面に垂らす。

リオレウスは最期の抵抗とばかりに暴れるランポスを気にも留めずにさっきまで自分が寝ていたところまで引きずると、半分寝るような姿勢で堂々とランポスの体を喰らい始めた。

 

 

それは、10秒ほどの短い時間の間に起きた出来事だった。

 

 

リオレウスは、接近する三匹のランポスに、気づいていなかったのでは無い。

気付いた上で、自分の動きが最小で済むところまで引きつけたのだ。

 

 

……。

 

…なんという無理ゲー。

 

 

 

うん。崖に行こう。そうしよう。

 

 

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ↑↑

ギャァアアアッ!!!

 

……。

 

ランポスと思わしきモンスターに、数十匹のランゴスタが集い、ランポスと思わしきモンスターは苦痛のあまり絶叫を上げる。

 

何故「ランポスと思わしきモンスター」なのかというと、全身をランゴスタに覆われ、唯一見えた頭部の先も穴だらけな上血で真っ赤に染まっていて、もはや原型がわからないからだ。

 

しかも、そんな状況になってなお悲鳴が聞こえている。

 

 

 

…だ、だからさっき決めたじゃ無いか、巣の方を通ろうって。

で、でも巣の方に行っても無理ゲーだよ!

 

 

……うん、一人で言ってても仕方がないね。ほんとどうするコレ?

普通転生したら人生イージーモードでしょ?なんでこうなるの?

 

 

なんでいきなりハードモードどころかクレイジーモードで始めないといけないの?馬鹿なの?死ぬの?

それとも転生特典で切り抜けるべきところなの?

 

ボクの転生特典、見た所どれも直接的な戦闘能力ナッシングなんだけど……。どうしろと?

 

 

はあ、疑問符ばっかりだな。

いけないいけない。

 

こうなると思考のループに陥っちゃうからね。ここはこうしよう、取り敢えずリオレウスがいなくなるまで待とう。

 

消極的だけど堅実だ。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

やっほー!ボクだよっ!

…一時間たったよ!!

 

リオレウス、依然動く気配無し!ランポスの骸を食べ終えてそのまま寝た!

 

あまりにも腹が減ったから崖の上に生えてる毒々しい青色のキノコを生で食べたよ!椎茸だって生では食べない方がいいのに!生で食べたよ!チクショウッ!!(泣)

 

まぁ、ちゃんとモンハン通りのアオキノコだった。若干エグ味があるけど食べられない味では無かった。

ぶっちゃけアオキノコかどうかは賭けだったんだけど、食べてから15分たっても何も起きてないから大丈夫。たぶん。

 

でもお腹が一杯になるほどあった訳ではない。

それに満腹だろうが空腹だろうが、一生ここを通らない訳には行かない。

 

 

要はリオレウスに気付かれることの無いようにエリア5を渡りきればいいのだ。

あのランポス達は深入りし過ぎた。ボクの目的はただ通過することのみ。出来るだけリオレウスから離れ、一切音を立てないように行動すればなんとかなる。……はず。

 

 

最早迷っている暇さえ無い。

何故か…たぶんリオレウスの巣があるからだろうが…ここまで上がってこないランゴスタ達も、いつどんな気まぐれでこちらに気が付いてもおかしくはない。

 

ここにいる間、一回リオレイアが帰ってきたが、すぐに再び飛び立った。それが十分ほど前の話だ。

すぐに帰ってくるようなことは無いだろう。今がリオレイアに会わずに通過できるチャンスなのだ。

 

 

行くしか無い。

 

 

決死の覚悟……否、みっともなくとも生きる覚悟を決めたボクは、ゆっくりと王の領域に足を踏み入れた。

 

 

 

 

飛竜の巣の中は、適度に涼しく、それでいて暖かく、湿度も丁度良くて、とても快適な環境だった。

 

確か「森丘」がある地方が「アルコリス地方」という名前で、アルコリスは「温厚な心」という意味だったかな?

その名の示す通り、アルコリス地方は過ごしやすい温暖だ気候で知られている。

 

 

…だが、ここには王者がいる。

矮小で脆弱な人間如きなど一撃の下に屍へと変えることのできる、絶対的な飛竜の王。

大翼を以って天空を支配し、灼熱の吐息で地を蹂躙する。その名も火竜、リオレウス。

 

異様なほどに静まり返った洞窟の中で、その存在感は、より大きく、圧迫的に感じられた。

寝ていて尚、王者の貫禄は不滅なのだ。

 

 

 

現在ボクは、飛竜の巣の中で、11歩目の左足を踏みしめている。

…はっきり言おう。これだけで一生分の度胸を使い果たした。

 

意気地なしとでもチキンとでもヘタレとでも骨無しチキンとでも好きに言うといい!簡単に通れると言うならば誰か代わってくれ!

リオレウスの動きに細心の注意を払いながらも、足元の骨や石で転ばないよう慎重に足を進める。

 

……12歩目…。

 

 

リオレウスはボクの緊張なんて知ったことかと言わんばかりに大イビキをかいて寝ている。

そのままずっと寝ていてくれればとってもありがたいんだけど。

 

 

果たしてボクは無事にエリア5を抜けることが出来るのか!?

起きないでリオレウス!起きなければ、ボクが安全に通れるんだからぁ〜!!

次回、ボク、死す!!

 

嘘ですごめんなさい。

 




次回、『ボク』、死す!!

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